4話
「え、こんな辺鄙なところに人が倒れてる…?!」
慌てて地上に着地して駆け寄る。
「大丈夫ですか?!」
ガタイが良いけど少しボロボロになった服と、怪我を負った男の人が倒れていた。
フードで顔はよく見えない。
「どうしよう、治癒魔法なんて使えないし、かと言って救急キットも無い…」
「お兄さん、聞こえますか…!」
肩を叩いて話しかけてみる。
「そうだ…!私のマフィン食べれば元気出るかも…!」
バケットと、包んでいた毛布を開けるとあたり一面に美味しそうな香りが広がる。
「ん゛…」
「お兄さん…!気がつきそうですか?!
これ、私の朝美味しいマフィンです!
このあと急いで教会に行って人を呼んできますので、これ食べながらなんとか意識保っててください!!」
お兄さんの横に、マフィンを置いて駆け出す。
おそらく教会にいる治癒魔法が使える人を呼べば何とかなるはずだから。
私は自慢の脚と、ちょっと習得した魔法を使いながら大急ぎで教会へ走った。
「すみません!少し離れた森の入り口の方に、倒れていた方がいました!どうか、治癒魔法が使える魔法師様、一緒に来ていただけますか」
教会の牧師団の人々に聞いてみても、「お金が払えなければ助けに行けない」の一点張り。
実は、ヴェールお兄ちゃんが魔法を使えることをバレては行けないから、教会に行ったことがなかった。
初めて入ったこの場所は、なんだから教会という温かい響きからは想像できないほど冷たく、人々の目線も怖かった。
正直、一刻も早くこの空間から出たいとさえ感じた。
「人が困っているのに!傷ついて倒れているのに!あなたたち魔法が使えるんですよね?!その素敵な力を、どうして人のために使えないんですか!?」
思わず、少し大きい声で問いただしてしまい、教会全体に私の声が響いた。
カタっ、と椅子から立ち上がった人が目の端に入る。
少し張り詰めた顔をしたおばさまがこちらに向かってきた。
「教会で大きい声を出すんじゃないよ。一緒に出てやるから、ほら、こっち来なさい」
厳しい語気とは違い、優しく手をひかれる。
おばさまは耳元で囁いた。
「お嬢さん、もしかしてハルルートさんにとリーナちゃんかい。ここは早く出たほうがいいよ」
教会中から冷たい目線を浴びながら、私はおばさまに引きずられるように出ることになった。
「あの、本当は今日、カルファおばさんとラランドルさんたちに私の焼いたマフィンを届けに来たんです。そしたらこんなことに…
私は倒れていたお兄さんが心配なので戻りますが、みなさんにこのマフィン渡しておいてもらえますか?!」
助けてくれたおばさまは、家まで寄って救急箱や水を私にくれた。
「あなたみたいな美しい目をした子は、もう入るところじゃないからね。はい、マフィンはしっかり届けるから、あなたの優しい手でお兄さんを助けておいで」
「何から何まで、本当にありがとうございます。
今日は色々あってマフィン足りなくなっちゃいそうなので、また今度、絶対に出来立てをプレゼントしますね」
私はおばさまの家を出て、急いで倒れているお兄さんのところへと急いだ。




