1話
きっと前世で頑張ったから神様からご褒美をもらえたんだと思う。
会社からへろへろの疲労状態で帰って、カップ麺のゴミや1週間分の部屋の服が散乱した汚部屋の真ん中に倒れるように眠ったはず。
本当はお菓子作りが好きなように、綺麗な部屋に住みたいよ?!
でも、そんな余裕1ミリもなかったの。
そして、目が覚めたら異世界でした。
小綺麗な部屋。いつもより低くなっている目線。
おそらく子ども用の部屋で目覚めた。
私、死んだんだ…異世界転生しちゃったかぁ。
小さくなった自分の手をグーパーしながら、思ったよりも落ち着いた頭でなんとなく理解し受け入れた。8〜10歳のような感じがする。
ドアの外からは美味しそうな匂いと、トントントン…と包丁を下ろす音が聞こえる。
この身体の母が料理をしてくれているのだろうか。
悲しいことに、この身体の記憶がほとんどない。
このあと「お母さん」と話しかければいいのか、「ママ」と呼びかければいいのかすらわからない…
でも、ずっと健康的な料理すら食べてなかったからお腹の虫が鳴り止まない。
我慢ならなくて、居間へ向かう。
なんだから足取りが重い。
かちゃ…と恐る恐るドアを開けると、こちらを振り向く女性と、私より少し年上そうな少年。
酷く驚いた顔で固まり、お母さんは手から包丁が滑り落ちそうになりーーー
(…!あぶない…!)
慌てて動こうとするけれど、身体が思うように動かなくて転びそうになる。
衝撃に備えてぎゅっと目を目を瞑ると、
「わっ…!と」
焦る少年の声。
目を開けると、不思議な力に包まれて浮いていた。
「ヴェールありがとう。大丈夫よ…!」
包丁をキャッチしたお母さんが、まな板に無事に置いてからこちらに駆け寄ってくる。
それと同時に、ふわっと優しく地上に降ろされる。
「リーナ!目が覚めたの?!」
顔を上げれば、涙を浮かべる母がぎゅっと抱きついてくれた。「ああ、神様…奇跡だわ…」と呟きながら頬擦りをしてくれた。ヴェールと呼ばれていた少年も、心配そうな顔でこちらを覗き込んでいる。
なんだかわからないけれど、こうやって人の温もりを感じたのが随分と久しぶりで、私もぽろぽろと涙が出た。
「ぉ、おかあさん、大丈夫?」
私の声を聞いたお母さんとヴェールはまたも目を丸くして顔を見合わせた。
「起きただけでなく喋った…?!」
「何が起きてるの…?!」




