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戦国タイムトンネル  作者: サクラ近衛将監
第三章 出陣

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3ー8 新たな基地づくり

 トト様が丹波西部の領域の8万石を与えられたこともあって、トト様の拠点を朝来(あさご)に移さざるを得なくなったわけじゃが、当然にカカ様とその子たちも転居になるじゃろなぁ。

 徳川幕藩体制の下では、往々にして臣下大名の妻女は人質にされて江戸表に住むことを強制されたが、織田体制では敵性勢力に対するそれなりの人質制度はあるものの、例えば岐阜なり安土なりに織田軍麾下の武将の妻女を置かねばならないという制度は無いのじゃ。


 まぁ、信長の本拠が清州、小牧山、岐阜にあった際は、それぞれの城下町に臣下の宿舎があったものじゃが、少なくとも強大な領域をおさめるようになってからは、それぞれの領域に住むことそのものを許している。

 甘いと言えば甘いかもしれないが、そこまで臣下を疑ってはいないということだな。

 

 で、蒼龍隊の基地だが、秀吉叔父貴が長浜城主である限りは、田村山に基地があってもおそらくは支障が無いかもしれない。

 但し、俺が必要とする時に、隊員が手元に来るまでの時間がかかるのは避けねばならないよな。


 必要な時に俺の下でいつでも動けるようでなければ拙いんだ。

 したがって、トト様が長浜から朝来に根拠地を移すなら、俺も丹波若しくは但馬に根拠地を移さねばならぬし、蒼龍隊も基地を移さねばならぬ。


 そんなわけで、朝来近辺での候補地を探してみた。

 仮にトト様が竹田城に住むつもりなら、とっても不便だから俺としてはお勧めはしないんじゃが、防衛拠点と考えるならば、今でも山城が候補に選ばれるんだよね。

 

 特にこれまで、不穏な地域であった丹波を抱え、なおかつ但馬攻略の前線基地ともなるわけなので、将としての考え方見方が問われることになるから、俺が強制するわけにも行かない。

 但し、籠城戦を考えているのでなければ、平城で動きやすい場所が望ましいんだ。


 少なくとも蒼龍隊が近傍に控えている限りは、籠城になることはほとんどない筈じゃ。

 色々地形を調べてみて候補地として俺が選んだのは、朝来の和田山地区の谷合(たにあい)だな。


 ここへ至る道は市御堂(いちみどう)から東へ続く道が一本だけで守りやすい。

 無論、東西に延びる谷合だから南及び北にある山を越えて来るものが居ないように防備する必要はあるのだが、ここには鉄条網と監視所を設ければ忍び等の侵入は阻止できるだろう。


 間口で一町、奥行き6町ほどの狭い土地ではあるが、工夫すれば1万程度の将兵が住むこともできるだろう。

 無論、地下も大いに利用することにはなるんだが。


 そうして、山を貫通する南北及び東へのトンネル道を複数作れば、何時でも敵の背後から襲撃が可能となるだろう。

 この候補地に仮の城を築くのであれば、蒼龍隊の建設部隊が出動して、幅10間、長さ50間、高さが8間ほどの六階建ての兵舎(600名収容)15棟を二か月で作ることも可能だろう。


 この兵舎群で九千名の将兵が常駐できることになるはずだし、さらに南北の斜面に兵舎を建設すれば、優にこの3倍の将兵を収容できることになる。

 当然に冷暖房完備の兵舎になるし、上下水道等相応の設備も併設されることになる。


 但し、電気関係の照明等はあえて設備しないことにしている。

 まぁ、見えないところで電気設備は設置されるんだが、そこは秘密だ。


 谷合の開口分には広い練兵場を造ることになるだろうな。

 尤も、トト様がここを使わない場合は、蒼龍隊の基地としてだけに使うことになる。


 ここであれば、竹田城や寺谷城の登り口まで約一里の距離なので、いずれの場所にトト様が拠点をおいても蒼龍隊の守備範囲に入る。

 仮に、出石城の方にトト様が移動する場合は、出石城南方の有子山城址、若しくは、北方の寺町山間部に基地を建設することになるだろう。


 基地自体の移転は、田村山にある現施設を亜空間に一旦保管して移動するだけのことで、天神山の地下基地についてはそのままにしておくつもりやから、おそらくは移動時間を含めても三日有れば基地移転は可能だろうと考えている。

 尤も、田村山の周囲に張り巡らした土塀とか柵までは移動するつもりは無い。

 

 田村山の基地を廃止する場合には、電気柵だけは絶対に残しては置けないけれどね。

 トト様が拠点の選定について側近の連中と頭を悩ましているので、周辺の地形が分かりやすいように、紙粘土で立体的な地形図を造ってあげたよ。


 竹田城の南側半里から、寺谷城跡北側半里までの方形の地形図が一つ、出石城を中心に二里四方の地形図が一つである。

 地形とそこにつながる動線である道路や川などを確認できれば、おのずと戦略上の要衝がどこにあるかわかるやろうし、城下町の建設計画も簡単に見通せるやろう。


 一応、俺のお勧めである和田山地区の谷合もさりげなく紹介しておいたよ。

 もう一つ先を見据えて、蒼龍隊水軍基地候補も検討した。


 これからの戦いは、中国攻めが主流になるわけやから、どうしても毛利水軍との海上戦闘が必須になるんや。

 その場合に、陸上兵力だけでは通常の攻撃力が届かない恐れもあるから、海上を自由に動ける戦闘艦若しくは戦闘艇が必要になる。


 その艦艇基地を、できれば秀吉叔父貴の勢力範囲内に設けておきたいと考えているんや。

 色々、探して取り敢えずの仮基地は、播磨姫路の海岸線にある名もなき小さな島を選んだ。


 令和の頃とは随分と地形が変わっているからね。

 多分、姫路の白浜地区にある御旅山の南にある小島やと思うんだが、俺の記憶からすれば曖昧で正確にはわからない。


 東南東に延びる線分で3町半、南南東に延びる線分で1町半ほどしか無い小島だよ。

 水軍基地を造るにはこれぐらいの大きさが有れば十分や。


 秘密を隠すために、原則として地下に基地を隠すからね。

 おそらくは瀬戸内海での運用だから、船は小型の戦闘艇の類で構わない。


 乗員は最大でも10~12名程度で、16隻もあれば十分やろう。

 但し、整備を含めて後方支援要員がたくさんいるやろうな

 

 戦闘艇の運航要員が区切りの良いところで延べ160名としても、後方支援要員はその倍の320名ほどは必要やと思うてる。

 従って、水軍基地要員はおよそやが500名規模になるやろな。


 戦闘艇は、無論俺が用意する。

 武器として速射砲は是非とも必要やし、少なくともリモコン制御の20ミリ機銃は必要やろな。


 基地を造る際に、改めて戦闘艇の選定を行うことにするよ。

 

 ◇◇◇◇


 有子山城を叩き潰したのは9月初めのことやったが、10月半ばにはトト様の方針がようやく決まった。

 俺のお勧めに従って、朝来の和田山地区の谷合に陣屋を造ることにしたようや。


 となれば当然に蒼龍隊の基地はその東側山間部になる。

 トト様に断ってから、俺は先遣隊として朝来に向かうのやが、蒼龍隊総員1200名余も基地に入ったまま、俺の亜空間倉庫で運搬されることになる。


 現地に到着して建設中隊200名が、谷合の陣屋を造り始め、俺と残りの隊員は周囲の鉄条網を設置し、最新の発電装置6基を設置したよ。

 少なくとも、谷合の周囲はこれだけでも十分に守られることになる。


 地下トンネルを掘って来るような土竜(もぐら)攻めに対しては、鉄条網の下に硬い鋼鉄の棒杭を50mほども埋めているから、こいつを(かわす)すのはかなり難しいやろな。

 おまけに棒杭に触れたりすると、放電し、警報が鳴る仕組みになっている。


 トト様は兵の半分約三千を引き連れて11月半ばには長浜を出立するんやが、カカ様達は翌年春に残り三千の兵とともに長浜から出てくる予定じゃ。

 その際には、俺も蒼龍隊百名とともに長浜まで迎えに行くつもりじゃ。


 蒼龍隊基地の方は、トト様が長浜を発つ前には谷合の東部山間部に移転と新設が完了していたし、周辺の鉄条網も完成している。

 現在は、谷合の陣屋予定地に六階建ての兵舎を順次建設しているところじゃ。


 既に5棟は完成しておるから、少なくともトト様達が朝来に来ても宿泊所に苦労することはない。

 兵舎の方は建設中隊に任せて、俺の方は姫路に行って、水軍基地を密かに造ったよ。

 

 島の南側と西側が海がつながっており、船の出し入れはこのいずれかを浚渫して行うことになるじゃろうな。

 概ね100m×200mの基地が造れそうなので、戦闘艇の大きさもそれに合わせることにした。


 選んだのは、ペガサス級ミサイル艇(長さ40.5m、最大幅14.5mの水中翼船タイプ)や。

 こいつを萬屋(お得)通販で購入し、船体に灰色の塗装を施し、船首部に蒼龍隊のマークであるデフォルメした「蒼龍」を付けてもらうようにした。


 通販注文時に、ある程度の追加オファーが可能なんだ。

 ミサイルについては、今のところは不要と思うんやが、念のために艦対地ミサイル(トマホーク)一回戦分×隻数分だけは確保している。


 トマホークのお値段は結構高いんだぜ。

 本家本元の米軍では一発2億円と聞いていたような記憶があるけれど、異世界商店では約1億1千万p(1億5千万円相当)だったよ。


 こんな高価なミサイルだから、明らかに使わないと思われる間は、俺のインベントリに保管しておく。

 そうすれば時間経過に伴う部品劣化や無駄な故障等が防止できるからね。


 必要な時には、購入した当時のまま配備可能というわけや。

 それにしても16隻分32発のミサイル代は高いよな。


 将来的には、複製品を使うつもりではいるんやが、こういう製品は当たりはずれがあっても困るんで、購入品については複製をしておいて実戦で使った結果を確認の上、複製のオリジナルを決めることにする。

 尤も、トマホークで精密な攻撃をするためには、本来GPSが必要なんよ。


 この戦国時代にそんなものはないし、GPSの衛星を自力で打ち上げるのも大変やで。

 だから、俺の場合は式神とドローンを使って誘導することにする。


 但し、この誘導システムは流石に通販の追加オファーでは無理なんや。

 システムの構築が結構めんどいので、俺の宿題として取り敢えずは据え置きや。


 なお、ミサイル以外の兵装は、元々装備されているMk.75 76mm単装速射砲1基に加えて、追加特約で20ミリのファランクス1基を新たに搭載するように注文を付けている。

 この水軍基地が完成した時点で運航要員一隻当たり12名と整備を含む支援要員を選抜して姫路に送り込み、速成教育とシミュレーション訓練を始めたよ。

 

 こうして11月半ばには何とかミサイル艇を運用できる目途がついたな。


 ◇◇◇◇

 

 ところで、トト様の名がついに長秀から秀長に変えることになったんや。

 トト様も信長公の覚えめでたき武将格になったわけじゃが、信長公は部下を名前で呼び捨てにするんじゃ。


 小一郎という名はあるものの、長秀が(いみな)になるから、信長公はそれを言うことになる。

 すると丹羽長秀殿とかち合うことになり、どちらが呼ばれたのかわからないことになるわけじゃ。


 その意味では秀吉叔父貴が呼んでいるように小一郎が良いのかもしれんが、公的な場面で小一郎と呼ばれるのは小姓でも呼ばわっているように見られ、外聞的に悪い。

 そのため、安土城に登城した際に、信長公にお伺いを立てて、「長秀」改め「秀長」に変えてもらったというわけじゃ。


 史実では、信長が死んで後の天正12年に長秀から秀長に改名したという説もあるが、現世ではそれよりも随分早い時期となったわけやな。


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