第56話 黄金の檻⑨
「俺はお前を絶対に許さない」
俺はイザベラに剣先を向ける。
「な、何故……何故お前は動ける?」
『お前の浅はかな仕掛けなど、ここに来た時から気付いていたぞ?』
「そ、ソウジくん?何故貴方は何ともないの?サバオちゃんですら苦しんでいるのに……」
レイシェルは不思議そうな顔で俺に問いかけてきた。
『ルナのやつ、あの時星守に女神の加護を授けていたようだな。おかげで、持ち主の相棒には、身体阻害や精神阻害は効かない』
イザベラは、手に持った魔晶石を見せる。
「お前たち、わかってるのか?ここにいる者の命は私が握って……」
俺は星守で薙ぎ払い、イザベラの腕ごと魔晶石を破壊する。
「ぎゃああああ!!!」
魔晶石が破壊されると魔毒の霧が晴れ、全員苦しみから解放される。
俺はかつてないほど、怒りに震えていた。
「絶対に許さない……」
「ソウジさん、どいてくれるかしら?」
ミシカがイザベラに近寄る。
そして、ミシカはイザベラに平手打ちをする。
何度も平手打ちをするミシカ。
「グッ……!」
「お前が奪った私の大切な人たち……こんなものじゃ済ませない!」
ミシカは立ち上がる。
「イザベラ、お前の罪は死をもって……」
(ドッ!)
次の瞬間、イザベラの心臓を刃が貫いた。
「!?」
「あ、あぁ……な、なぜ……な…の?……ク…ロ...」
「あんたなんて……もう母親だなんて思えない!」
イザベラは倒れ込み、息絶える。
貫いたのはクロエだ。
「クロエ……?」
クロエは重い足取りでミシカに近付き、そして跪く。
「お姉様...こんな奴のために貴方の手を汚させるわけにはいかない。でも、これで私の罪が許されるとは思わない...どんな罰も受け入れます」
「クロエ、顔を上げて?」
「……」
クロエは顔を上げる。
「貴方とはいつか本当の姉妹になれると信じてた...まさかこんなきっかけだとは思わなかったけど」
「お姉様...私は……」
クロエは涙を浮かべる。
「クロエ、貴方も私と同じ……」
ミシカはそれ以上は何も言わず、クロエを抱きしめる。
虐待と憎しみの中にあった二人の姉妹は、この瞬間初めて、家族として向き合ったのだった。
そして、ミシカはジンに歩み寄る。
ジンは跪く。
「ミシカ、ワシが間違っていた!すまなかった……どうか...」
「貴方はお母様を裏切って愛人を招き入れ、結果、大切な人たちを...お母様を死にやった張本人よ?そんな薄っぺらい謝罪で許されると思わないで!」
「……」
ジンは愕然とする。
ミシカは兵士に命令する。
「この男を地下牢に入れておきなさい!貴方は自分の罪と向き合うべきだわ」
「ミ、ミシカ!ワシは……」
ジンの声はミシカには届いておらず、ジンはそのまま兵士によって連行される。
そして、ミシカは民衆に向けて声を上げる。
「民よ、この国の闇は祓った!これからのことは、正統後継者である、このミシカ・ブレイズガルドに任せてほしい」
観客席から大きな歓声が上がる。
俺たちはミシカに歩み寄る。
「ミシカ!」
「ソウジさん、皆さん。本当にありがとう。おかげで大切なものを取り戻すことができました」
ミシカは深く頭を下げる。
「いいって!ここまで来れたのはミシカの力だよ」
「ソウジさん……」
クロエはカエラに寄り添っていた。
「カエラさん……貴方には取り返しのつかないことをしてしまったわ……」
「気にすんな、済んだことだろ?」
こうして大歓声の中、極闘祭は幕を閉じるのであった。
ミシカは棺の中のサラを見つめる。
(お母様、ようやく全て終わったよ……)
その後、改めてサラの葬儀を行い、サラの棺は再び墓地に埋葬された。
(お母様、最後まで力を貸してくれてありがとう。そして10年間、私を守ってくれてありがとう……)
俺たちも葬儀に参加し、サラを弔った。
ーーーー
数日後、俺たちはミシカに呼ばれ、ブレイズガルド城に来ていた。
既にミシカはクレアと共に待ち構えていた。
「皆さん、揃いましたね?」
「おう、来たぜ、ミシカ!」
「そ、ソウジ!彼女は女王様なんですから……」
エピステーメーが慌ててそう言いかけると、
「フフ、いいのよ?貴方たちは大切な仲間なんですもの」
「ミシカ...」
俺たちは皆笑顔になる。
「それで、今日はどうしたんだ?」
俺がミシカに問いかけると、ミシカは、「その前に……」と、カエラの前に立つ。
「カエラさん、全ては貴方に協力して頂いたことが始まりでしたね。本当にありがとうございました。
あの時、もしカエラさんが協力してくださらなかったら……今頃私はここに立っていなかった」
「いいよ、もう済んだことだし。大事なモン全部取り返せたなら良かったじゃんか」
「はい!本当にありがとうございました」
ミシカは改めて俺たちに向き合う。
「今日は家宝を開けようと思って、良かったら皆に立ち会ってもらおうと思ったの」
「いいのか?大事なものなんだろ?」
「はい、とはいえ...私も中身は知りませんから」
ミシカは家宝の入った木箱を取り出す。
「では.....開けます」
ミシカが木箱の留め具に触れると、木箱に描かれている紋章が光り、蓋が開く。
木箱の中からは、一冊の分厚い本が出てきた。
「...これは?」
ミシカが本を手に取る。
「もしや……魔導書でしょうか?」
エピステーメーのメガネが光る。
「中を見てみるわね」
ミシカは最初のページを開く。
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ーーおまけ小話ーー
【魔導書なら……】
「も、もし魔導書なら是非僕に!」
「だ、ダメよ!これはお母様が遺してくれた……」
「エピ、どこぞの悪党と同じカテゴリーになるぞ...」




