第57話 黄金の檻⑩
ミシカは最初のページを開く。
すると、そこには手書きで長い文字が、書かれていた。
《18歳になった私の宝物へ》
「これは...お母様の字……」
《貴方がこの家宝を開く頃、私は元気に貴方と仲良くやっているかしら?それともケンカ中?》
「……」
《私が18歳になって、正式に後継者となった時、私は当時国王だった父に頼んで、世界を旅させてもらったの。このブレイズガルドという狭い世界だけでなく、広い世界中をこの目で見て、色々な人と出会って、自分はどのようにあるべきか。そして、私が王となった時、どのような王であるべきかを知るためにね。》
「お母様が……世界中を?」
《その旅の中で私はジンと出会い、恋に落ち、そして、かけがえのない宝物を授かったの。私は今もジンと上手くやれてるのかしら?》
「…………」
《これから先、どうするかは貴方次第。
でも、貴方にはこの狭い檻を飛び出して、世界へ羽ばたいて、そして、素敵な人になって私たちの家に帰ってきてほしい。できれば運命の出会いも果たしてね♡》
ここまでが前書きの、ミシカへのメッセージのようだ。
ミシカは次のページをめくる。
そこから先のページもたくさんの文字で埋め尽くされていた。
《私たちの宝物が生まれる!名前を決めるのにジンとケンカしちゃったけど、ミシカに決めたわ。》
《ミシカが夜中に光熱を出した。なかなか熱が下がらなくて、本当に生きた心地がしなかったわ。神様、愛しいミシカのためなら、私は何だってするから、どうかミシカが健やかに育ちますように。》
《ミシカが立った!愛しいミシカ。これからも成長が楽しみ!》
《ミシカが歩いた!いつかミシカと色んなところを歩くの。私もずっと元気でいなくちゃね。》
《ミシカか喋った。ママって。何て愛しいの。早く貴方ともっと色んなお喋りがしたいな。》
各ページ、ミシカの成長記録や、ミシカとの出来事を書き綴っているようだった。
《ミシカが苦手な野菜を食べれるようになった!たくさん食べて、素敵なレディになろうね。》
《ミシカが手作りのブレスレットをくれた!世界一のアクセサリー!もう一生外さないわ!》
「お母様……」
ミシカの目に涙が浮かぶ。
その後もミシカの成長記録や出来事が綴られていた。
そして、本の半分目辺りであろうか。
「……?」
ページが貼り合わさったようになっていた。
ミシカは丁寧に剥がして開く。
そこには震えた文字で、一言だけ書いてあった。
《ミシカ、いつまでも愛してる》
恐らく、死の間際に書いたのであろう。
サラが吐血したであろう痕が残っていた。
それにより、ページが貼り合わさっていたようだ。
その後のページには何も書かれていない。
サラはミシカが18歳になるその日まで、この手記を書き綴るつもりであったのだろう。
それを思うと、無念で仕方ない。
俺たちは皆同じ気持ちで、涙を流した。
「……お母様」
ミシカは少しの間沈黙し、そして、サラの手記を胸に抱く。
「お母様……私も、いつまでも愛しています。
家宝、確かに頂きました」
「ミシカ...」
俺はこれ以上かける言葉が見つからなかった。
『伝説級の武器でも魔導書でも、アーティファクトでもない……家宝が母の想いだったとはな。紛れもなく世界に一つだけの、素晴らしい家宝だ』
クサレマグロが呟く。
すると、ミシカはクレアを呼ぶ。
「クレア、ちょっといいかしら?」
「はい、ミシカ様」
ミシカはクレアにしっかり向き合うと、クレアはミシカの前に跪く。
「クレア、本日より貴方を、騎士団名誉団長に任命します。そして、私が不在の間、この国を貴方に任せます」
「ミシカ様?」
ミシカは俺に向き合う。
「ソウジさん。貴方たちの旅、私も同行させて下さい。私もお母様のように世界を見て回り、お母様のような素敵な人になりたいのです」
「ああ!もちろん、歓迎するぜ!」
俺たちはミシカに優しく微笑む。
「わかりました。ミシカ様ご不在の間、全身全霊を賭けて、この国をお守り致します」
クレアはミシカに持っていた槍を渡す。
「クレア?これは...貴方の……」
「はい、私の師である祖父の形見です。私の代わりにミシカ様をお守り致します。
それに、ミシカ様は槍術の心得がありますしね」
「クレア……ありがとう」
クレアは兵士たちに向けて声を上げる。
「皆の者、ミシカ様の旅立ちだ!盛大に見送るんだ!!」
「おぉ!!」
ミシカはサラの想いを受け継ぎ、この黄金の檻を飛び出し、世界へ羽ばたいていく。
そして、ミシカが改めて魔装船にやって来た。
「皆、改めてよろしくお願いするわ」
「わー!ミシカちゃん♡」
ミレアはミシカに飛びつく。
「フフ、ミレアはミシカさんと仲良くなれそうね?」
レイシェルは微笑みながら話す。
「ええ!ミレア、これからよろしくね」
「うんうん!」
「ミレア、私は世界の色々なものを見てみたい……そして、お母様の言うように、その……運命の人と出会えたら……素敵よね♡」
「うん!ミシカちゃんならきっと見つかるよ!」
「フフ、ミレアも一緒に運命の人が見つかるといいわね」
「ほえ?私?」
「ええ、そうよ」
「えーと……」
そこへガリがやって来る。
「ミレアたん♡♡ミシカさんが来てくれて良かったね!」
「あ、ダーリン♡♡
うん、今日は素敵な日よ!ちゅっ♡」
「え、えーと……ミレア?」
「フフ、この子ったら...ミシカさんに言ってなかったのかしら?ミレアとガリさんは結婚してるのよ♡」
レイシェルは微笑みながらミシカに伝える。
「え...
えぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!」(今作最大音量)
こうして、新たにミシカを仲間に迎えた俺たちは、次の目的地へ向かうのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【遺伝子は?】
「エルフと魔物のハーフ……一体どんな子が生まれるのかしら……」
「あ、あの……俺は人間です」
「フフ♡ダーリンに似ればイケメンよ!」




