第54話 黄金の檻⑦
極闘祭二日目の朝。
カエラは兵士によって牢から出される。
「出ろ!」
「……」
不安そうな表情で見つめるリリム。
そこへ思わぬ人物がやってくる。
兵士たちはその場で直立する。
「イザベラ様!何故このような場所に?」
やって来たのはイザベラであった。
(この人がイザベラさん?邪悪というか、すごく嫌な感じ……)
リリムはイザベラを観察する。
イザベラはカエラの前に立つ。
「ーーーーーーッ!?」
イザベラは持っていたナイフでカエラの腹部を刺し、抉った。
「あなた、なかなか腕が立つようね?今日のクロエちゃんとの試合、あなたに勝たせるわけにはいかないの。大人しく殺されなさい」
イザベラはカエラの血の付いたナイフをその場に捨て、立ち去る。
「カエラさん!!」
リリムは青ざめた表情で、牢の向こうから手を伸ばす。
「チッ……中々面白いことしてくれるじゃん?」
「歩け!」
カエラは兵士にそのまま連れて行かれる。
カエラが連れて行かれてから数分後、クレアがやって来る。
「リリムちゃん!行こう、今なら逃げれるわ!」
「クレアさん!カエラさんが!!」
リリムは先程ここで起きたことをクレアに説明する。
「なんてこと……リリムちゃん、とにかく今はここを出よう!」
「はい!」
二人は地下牢を脱出する。
(イザベラ……もうこれ以上、あなたの好きにはさせない!)
リリムとクレアが地下牢を脱出してる頃、俺たちは闘技場の観客席にいた。
ミシカはフードを深く被り、その時を待ち構えていた。
その時だった。参加者としてスタンバイしているはずのアリシアが俺たちの元へ戻ってきた。
「アリシア?この後試合じゃなかったのか?」
「そ、それが……今日の試合はカエラとクロエの試合だけだからと追い返されてしまったんだ。他の参加者もな」
『クク……奴ら相当焦っているな?悲劇姫が居なくなったから、早く事を済ませたいということだろう』
「しかしミシカはこちら側にいますからね!一発逆転の機はクサレマグロ様にお任せします」
クサレマグロは俺にだけ聞こえる声で話す。
『いいか、相棒。やはりこの会場は…………』
「そうか……」
『その時はお前が切り札だ。我もついているが、感情でタイミングを見誤るなよ?』
「……わかった」
会場に銅鑼の音が鳴り響く。
観客たちのボルテージは最高潮に。
ジンが声を上げる。
「これより我が娘、第二王女のクロエと極刑囚の試合を行う!」
「ウォォォォォ!!!!」
更に銅鑼の音が鳴ると、細剣を手にしたクロエが颯爽と姿を現す。
『何だ、あの小娘は?あの程度の者、破廉恥娘なら更に目隠しをされても負けることはないぞ』
「ああ、カエラの強さには本当に驚かされた」
クサレマグロの言葉に、アリシアも嬉しそうに返す。
その後、相変わらず手枷と足枷を付けられた状態のカエラが姿を現す。
「…………?」
『どうした?相棒』
「なあ、何かカエラのやつ...様子がおかしくないか?」
(クソ……痛えし、クラクラしやがる……)
しかしカエラは気丈に立ち続ける。
クロエはカエラに剣先を向ける。
「さあ、極悪人よ!私の手で処刑してあげるわ!」
クロエのパフォーマンスに観客たちは湧く。
「チッ……」
試合開始の銅鑼が鳴り響くと、レイシェルが立ち上がり、声を上げる。
「まずいわ!!」
クロエは剣を構える。
「覚悟なさい!」
クロエはカエラに向かって突進。
「はぁぁぁ!!」
クロエはカエラに突きを繰り出す。
「何だ?あの突きは……ここに出れるようなレベルでは……」
アリシアが言いかけた時だった。
「!?」
クロエの突きがカエラに命中。
「くっ……」
『馬鹿な!あの程度の突きを破廉恥娘が避けれないだと!?』
「やっぱり何かおかしいぞ!どうするんだ……」
『……やむを得ん……乱入するか?』
俺たちが乱入しようと立ち上がると、カエラは俺たちの方を見て、首を横に振る。
「……カエラ?」
俺たちは立ち止まる。
そして、カエラは不敵に笑い、クロエを挑発する。
「よう、世間知らずのお嬢さん?そんな突きじゃ、100回刺されたってアタシは倒れないよ」
「クッ……この下等が!」
クロエは憤慨する。
「どういう事だ?カエラは俺たちの作戦をわかってるのか?」
「いや、そんなはずはない。恐らくカエラをそうさせてるのは……」
アリシアは真剣な表情でカエラを見る。
「……意地だ」
「こんな安い挑発に乗るなんて……アンタホントに大したことないね?」
「死に損ないが調子に乗らないで!!」
憤慨したクロエは怒り任せに何度もカエラを細剣で突き刺す。
しかし、カエラは倒れない。
「もういい……俺は行くぞ!こんなの見てられるか!!」
『相棒!感情的になるな!!』
俺が飛び出そうとすると、アリシアが止める。
「ソウジ、気持ちはわかる。だが、もう少しカエラの意地を見届けてやってくれ。カエラは絶対に負けない」
「…………」
俺はアリシアの言葉で再び立ち止まる。
クロエは血の滲んだ脇腹を見る。
「お母様に刺されたのはそこね?」
クロエはカエラの脇腹を目掛けて突き刺す。
すると、カエラはクロエの細剣を握りしめる。
「やっぱり……アンタらグルだったな?」
「クッ……」
カエラが立ち上がり、反撃をしようとした時だった。
「そこまでだ!!!」
会場に響き渡る声。
声の方を見ると、そこにはクレアとリリム。そして、目の前でイザベラの犯行を見ていたにも関わらず、黙認していた二人の兵士だ。二人の兵士は縛られている。
観客たちは、この異様な光景にどよめいていた。
ジンは立ち上がり、クレアに怒号を浴びせる。
「クレアか!騎士団副団長ともあろうお前が、神聖なる極闘祭に乱入とは何事だ!!」
「そうよ!あんたごときが立ち入っていい場所じゃないわ!!誰か!この女をつまみ出しなさい!!」
イザベラの声で出てきた兵士たちはクレアを取り囲むが、クレアは槍で一閃し、一撃で全て薙ぎ払う。
「神聖な極闘祭?イザベラ王妃!これを見てもそんなことが言えるのか!!」
クレアはイザベラがカエラを刺した、血のついたナイフを取り出す。
すると、リリムは一歩前に出る。
「私、イザベラさんが地下牢でカエラさんを刺すところ見ました!」
「だ、黙れ!そんな物は知らない!クレア、騎士団副団長ともあろうお前が、私を陥れようというのか!!」
「陥れる?ふざけないで!私は真実を述べているだけだ!!」
すると、ジンが声を上げる。
「もうよい!試合はどう見てもクロエの勝ちだ。この試合、クロエの勝利とし、罪人は処刑だ!
これより、クロエを正統後継者として認める儀式を行う!」
ジンは強引に事を進めようとする。
「待ちなさい!!」
フードを深く被ったミシカが立ち上がり声を上げる。
ミシカはそのまま観客席を飛び出し、会場の中央へ向かう。
俺たちもミシカの後に続く。
「な、何だ!お前は!?」
動揺するジン。
ミシカはフードを脱ぎ捨てる。
「!?」
観客席もどよめく。
「ミシカ様?」
「ミシカ様は行方不明のはずじゃ?」
「どうなってるんだ?」
「ミシカ様がご健在なら、正統後継者はミシカ様なんじゃ?」
そして、ミシカはジンとイザベラの前に堂々と立ちはだかる。
「お父様...いえ、ジン!お前がなぜここまで強引に事を進めようとしているかはもうわかってるわ!」
「な、何だと言うのだ...国王はワシだ!」
「黙りなさい!!」
「くっ...」
ミシカの風格に後ずさるジン。
「貴方は正統後継者ではないし、王族の血筋でもない。ただのお飾りに過ぎないわ!」
「だ、黙れ!国王はワシだ...ワシの言うことが全てなのだ!!」
「民はどう思うかしらね?貴方が正統後継者に仕立て上げようしているクロエもその資格はないし、そもそもまだその年齢にすら達してないわ。そんな事も知らずに国王なんて名乗ってたのかしら?」
「くぅ……」
「貴方が焦っているのは、今日が私の18歳の誕生日……そう、私が正統後継者として国を治めることができるようになったからよ!」
ミシカの勢いに、ジンはすっかり気圧されてしまう。
「そして、イザベラ!お前は10年前のあの日、父を誘惑し、愛人となってブレイズガルドに入り込み、予言をでっち上げ、私たちの側近を殺し、母も殺した!その罪を償ってもらうわ!」
「ハッ!何を馬鹿なことを!どこにそんな証拠があるというのだ!!」
「証拠ならあるわ」
ミシカは右手を上げ、合図をする。
「よく見なさい!これが10年前の真実よ!!」
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ーーおまけ小話ーー
【腹が減っては...】
ーー地下牢を脱出し、闘技場へ急ぐクレアとリリム。
「はわわわ!クレアさん!あのクロックムッシュ美味しそうです☆」
「この状況で!?」




