第51話 黄金の檻④
エピステーメーとリリムが部屋に入ると、床に倒れ込んでいる一人の女性がいた。
「ミシカちゃん!?何て酷い怪我...」
「鞭で打たれたんでしょう……一国の姫が何故ここまで……」
二人がミシカに触れると、二人の隠密魔法が解ける。
「ッ!?貴方たちは誰?」
「ミシカちゃん、私はリリム。助けに来ましたよ」
「エピステーメーです。クレアから聞いて来ました」
「クレアから……そう、あの子はまだ私のことを信じてくれているのね」
「ミシカちゃん、一緒にここから逃げましょう!」
「で、でも……」
「ここに居ても何も始まりません。僕たちは貴方の救出と、ある証拠を探しにここに来たんです」
「証拠?」
「貴方のお母上、サラ様が他殺された可能が高いので、その証拠を探しにです」
「ッ!?お母様は病気だったはずじゃ……」
「クレアから聞いた話だと、違和感が多すぎるのです。今こそこの国の闇を払う時です」
「そうですよ!ソウジさんも必ずミシカちゃんとこの国を救うと言ってます☆」
「ソウジ?」
「僕たちのリーダーみたいなものです。少々頼りないですが、信頼できる男です」
「バカでドジでどうしようもない人ですけど、何故かモテるしいい人ですよ☆」
「そ、それは本当にいい人なのかしら……?」
「何にせよ、まずはここから出ましょう!詳しい話はその後です」
「...もしかして、貴方たちはカエラという方の仲間かしら?」
「はい!カエラさんは私たちの大切な仲間です☆」
「やっぱり……あの時彼女に感じたものは間違ってなかったのね」
ミシカは涙ながらに言う。
「ミシカちゃん、この件が片付いたら、お母様の意志を継いでここに残ってもいいですし、良かったら私たちと一緒に世界を回ってみてもいいと思います」
「...世界を?」
「はい!一緒に綺麗な景色を見て一緒に感動したり、一緒に美味しいものを食べて一緒に美味しいねって言うんです!ミシカちゃんには神様から借りてる、人生っていう時間はまだまだあるんですから☆」
エピステーメーはメガネを上げながら、フッと微笑む。
「うん、行く……一緒に行くわ!」
エピステーメーは三人に隠密魔法をかけると、部屋を脱出する。
「貴方たち、証拠を探すと言っていたわね?イザベラの部屋はこっちよ、着いてきて」
エピステーメーとリリムはミシカの後を着いていく。
三人がイザベラの部屋の前に到着すると、周りに兵士が居ないことを確認し、部屋に潜入する。
三人は部屋の中を隈なく探すが、これといって目ぼしいものは出てこない。
「わあ♡♡」
「リリム、どうしました?」
「見てください!こんな大きな宝石、見たことないです!!」
「リリム……僕たちはコソ泥しにきたんじゃないんですから……」
「あはは☆もちろん冗談ですよぉ」
リリムは慌てて宝石を戻そうとすると、木箱を見つける。
「この木箱は何でしょう?紋章が入ってますね...あ、開かない……」
「そ、それは!お母様が遺した家宝の入った箱です!イザベラ……まさか自分の部屋に隠しておくなんて...」
「そうですか。ではこれはミシカが持つべき物ですね。これは持っていきましょう」
「ええ、そうさせてもらうわ」
「ミシカちゃん、中身は何なんですか?」
「それが...私にもわからないの」
「でも開けられなかったですよ?ミシカちゃん開け方を知ってるんですか?」
「それは……18歳の誕生日を迎えて、正式に正統後継者として認められる年齢になったら開けられると言われてるわ」
「ーーーッ!?」
その言葉にエピステーメーは反応する。
「そうなんですね☆ミシカちゃん、お誕生日はいつなんですか?」
「明日よ。明日私は18歳になるの」
(なるほど...ミシカが生かされていた理由はそれか。ということは、明日になると無理やりこの木箱を開けられて、用が済めば殺されてしまうということか...間に合って良かった)
「エピステーメーさん、どうしました?」
「いえ、何でもありません。他に何も無さそうなら行きましょうか」
「そうですね、わわっ!!」
リリムは足がもつれて転けてしまう。
「リリムちゃん、大丈夫?」
「えへへ、珍しく歩いていたら足がもつれて……ん?」
「リリム、どうしました?」
リリムは壁と棚のわずかな隙間に手を伸ばすと、何か液体の入った瓶を手にした。
「これ何ですかね?」
「これは……農薬?」
「農薬って農作物を育てる時に使う物ですよね?イザベラさんは家庭菜園が趣味なんですかね?」
「まさか……あの女がそんな事するわけないわ。それに、このイグニス大陸の土壌と気候で作物なんて育てられるわけないわ」
「……なるほど、わかりました。僕の考えが正しければ...やはりサラ様は他殺されたと断定できるでしょう」
「ーーーーーッ!?」
「これは確かな証拠になります。急いで魔装船に戻りましょう!」
リリムとミシカは頷き、三人はイザベラの部屋を出るのであった。
ーーーー
【闘技場】
「カエラ!!」
俺は立ち上がり、叫んだ。
すると、カエラは観客席にいる俺を発見する。
「主...そんな顔するなよ?アタシがこの程度で殺られると思ったのか?」
男は大きな斧振りかぶり、カエラに突進していく。
「まずはその腕から潰してやるぜ!」
その瞬間、カエラは身体を反転させて斧を躱し、男に蹴りを入れるが、ギリギリ届かない。
「ハッ!馬鹿め、届いてないぞ?」
「馬鹿はアンタだ」
その後反動でカエラの足枷の鉄球が男の顔面に直撃。
男の顔面は潰れ、一撃KOとなった。
「うぉぉぉ!!!」
観客席から大きな歓声が湧き、一部のカエラの惨殺を見たがっていた者からはブーイングが巻き起こった。
「す、すげぇ……カエラってあんなに強かったのか?」
『さすが破廉恥娘だな。くぐり抜けてきた修羅場が桁違いということだ。中途半端な戦士では、例え手足を塞がれてもアイツには勝てないだろう』
(ハハッ!さすがカエラだ!)
アリシアは小さくガッツポーズをする。
会場に銅鑼が響き渡ると、次の対戦相手が出てくる。
カエラは変わらず、不敵な笑みを浮かべている。
「アタシを潰したいんなら、せめてアリシアクラスの猛者を連れてくるんだな」
その後もカエラは次々と勝ち上がっていく。
足枷の鉄球を打ち込み、相手が怯んだところをチョーパンで一撃KO。
相手の剣を手枷で受け、そのままへし折り、大きく薙ぎ払った腕を顔面にヒットさせ一撃KO。
誰もカエラに攻撃を当てられず、カエラは逆に全て一撃で相手を仕留めていた。
「すごいわね...カエラさん、格が違うわ」
「カエラ、ツヨーイ!」
あまりの光景に観客席は静まり返り、異様な空気となっていた。
10人目の相手が出てくる。
「おい、俺は今までの奴らみたいにはいかねーぞ?覚悟しろ」
明らかに良からぬ事を考えてる顔の男。
「……気持ち悪ぃツラしやがって」
開始の銅鑼が鳴り響くと、男はカエラに向かっていく。
男は体術の使い手のようだ。
「お前を辱めて全身の骨を砕いてやる!」
掴みかかろうとした腕を躱したカエラは、男の背後に回り、羽交い締めの体制になる。
『ムニュッ♡』
「おっ♡この感触は……」
「おい、アンタ...何楽しんでんだ?アタシのおっぱいを楽しんでいいのは主だけだぞ?」
『ゴキッ』
男はその場に倒れる。
この時点でカエラは10人抜きを達成する。
「うぉぉぉ!!!」
観客席から大きな声援が巻き起こると、銅鑼を三回叩く音が響き渡る。
すると、ジンが立ち上がり、発言をする。
「本日の極闘祭はここまでだ!明日この場で極闘祭の続きとして、この女と王族から我が娘、第二王女のクロエ試合を行う。
その後、第二王女のクロエを正式に後継者として認める儀式を行う!」
「なんだそりゃ?」
「面白くなってきたところだったのに……」
「クロエ様を?まだ年齢が18歳になってないんじゃ?」
「というか、第一王女のミシカ様は?」
観客席からは様々な疑問や不満が漏れていた。
「以上だ!」
そしてジンは闘技場を後にする。
「お、お父様!私、あんな化け物と対戦なんて……」
「大丈夫だ!必ずクロエが栄光を手にするよう手配する」
「そうよ、クロエ!お母さんも協力するわ!」
「う、うん……わかったわ」
不穏な空気を残したまま、急遽、極闘祭の初日は終了するのであった。
その頃、ブレイズガルド城では、三人は城を脱出すべく、足を急がせていた。
すると、前から二人の兵士が。
「むっ!リリム、ミシカ、壁に寄ってください。前から兵士が来ています」
三人は壁に寄り、その場をやり過ごそうとするが、一人の兵士の足がおぼつかない様子で、フラフラとしていた。
「あー、なんかフラフラするなぁ……」
「お前...夜勤明けで飲みすぎだろ」
その時だった。
「!?」
兵士がフラつき、壁に寄ってリリムに触れてしまい、リリムの隠密魔法が解けてしまう。
「む!貴様、何者だ!?」
リリムはその場で捕らえられてしまう。
エピステーメーが助けようとすると、リリムは首を横に振り、早く逃げるよう合図を送る。
「...必ず助けに来ます」
エピステーメーはミシカを連れ城から逃げ出すのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【怪盗リリム】
「さあ、早く魔装船に戻りましょう!」
「リリム……宝石は置いていってください」
「リリムちゃん……?」




