第50話 黄金の檻③
極闘祭当日。
ブレイズガルド城の尖塔にある小さな部屋。
最低限の家具に小さな窓が一つあるだけの薄暗い部屋。
とても豪華な城の一室とは思えない空間で、ミシカは力なく窓の外を見ていた。
「……お母様」
その瞳に生気はない。
そこへ入ってきたのはクロエ。
豪華なドレスに、余裕に満ちた笑みだった。
「ホントに惨めねぇ……これが正統後継者?」
ミシカは冷たく返す。
「用がないなら出ていって……」
クロエは笑う。
「あんたを残して死んでいった馬鹿な母親にも感謝だわ」
ミシカは怒り立ち上がる。
「クロエ!!」
次の瞬間、クロエはわざと花瓶を落として割る。
「きゃぁぁぁ!お姉様、やめて!!」
「ッ!?」
そこへジンとイザベラ、兵士が駆け込む。
クロエは涙目で演技する。
「私は……お姉様を慰めようとしただけなのに……」
ジンはクロエの言葉を信じ込む。
「ミシカ、貴様ぁ!」
「違うの!私は……」
ミシカは否定するが、ジンは聞く耳を持たない。
そして、ジンはミシカに鞭を振るう。
「この疫病神め!!」
ミシカの悲鳴が響き渡る。
「お父様、もうやめてあげて?お姉様がそんなに私のことが嫌いなら、私が死ねばいいの!」
「クロエ、何を言ってるんだ!お前は生きて、この国を治める存在なんだ!死ぬべきなのはこの不幸者だ!!」
「……お父様」
絶望で愕然とした顔をしているミシカの顔面を殴打。
ミシカは意識が朦朧とし、その場に倒れ込む。
「さあ、行こう、クロエ。怪我はしてないか?」
「ええ、大丈夫です」
クロエは勝ち誇ったような表情でミシカを見る。
イザベラは倒れ込んだミシカに近寄り、耳打ちをする。
「家宝が手に入ったら楽にしてあげるわ」
ミシカは涙目でイザベラを睨む。
「あなたたちに……これ以上お母様の物は触れさせない……」
「生意気な小娘だよ!」
イザベラもその場を去ると、再びミシカは幽閉されてしまう。
その頃、巨大なコロシアムでは、極闘祭の始まりを待つ多くの観客が歓声を上げていた。
俺はレイシェルとサバオと観客席にいた。
「フフ、ソウジきゅん♡こうやって三人でいると……何だか家族みたいね♡♡」
「うん、人間とエルフからドラゴンは生まれないと思うぞ?」
「カゾクー?」
「しかし、何というか……盛り上がり方が異常だな」
『それだけ注目度の高い武闘大会ということだろう?我もどんなものなのか気になる』
俺は後ろの観客が話している内容が気になり、聞き耳を立てる。
「なあ、聞いたか?今年の囚人ってさ、例年の丸腰なだけじゃなくて……」
「えー?マジか!そんなんただの公開処刑じゃん」
「ーーーッ!?」
ソウジは思わず立ち上がり、後ろの観客に問いかける。
「な、なあ!今の話本当か!?」
「あ、ああ。って聞いたぞ?」
「ソウジくん、どうしたの?」
「やべぇぞ……このままじゃカエラが殺されちまう……」
一方、アリシアは参加者の控えスペースでカエラを探していた。
(おかしい……カエラの姿が見当たらない...隈なく探しているつもりなのだが...)
アリシアは同じ場所にいる参加者に尋ねることにする。
「すまない、参加者はここにいる者で全てなのか?囚人も参加すると聞いたのだが……」
「あぁ、それなら、今年はルールが変わるらしく……」
「な、何だと!?それではただの惨殺の見世物ではないか!」
会場では銅鑼の音が鳴り響く。
ジンは観客に向けて声を出す。
「皆の者!よくぞ集まってくれた。年に一度の極闘祭を存分に楽しんでほしい。今年の極闘祭は勝ち残りとし、最後に残っていた者が王族と戦う権利を得られる」
『勝ち残り?なんだそれは……後から出る者ほど有利ではないか』
「ど、どうするんだ?このままじゃカエラが……」
『とはいえ、破廉恥娘程の力があれば問題なかろう?』
「いや、そうじゃなくて……」
「ソウジくん、落ち着いて?私にはカエラさんがやられる未来は見えてないわ」
「レイシェル、本当か?」
「ええ、だからまだ私たちはここで見ておきましょう」
次に銅鑼が鳴り響くと、大きな斧を持った屈強な男が出てくる。
観客から大きな声援と野次、
「うぉぉぉ!!!」
「殺せー!!」
「血を見せろー!!!」
「何だ?この汚ぇ野次は……」
「ホント、下品極まりないわね」
『闘技場なんざ、そんなもんさ。ましてや何もわかってないこいつらからしたら、囚人の処刑が見れるという娯楽なんだろう』
「トップが腐ってる国は民も腐っていくのかしら?」
その頃、アリシアは裏からソウジたちの様子を伺っていた。
(カエラが登場した姿を見たら、恐らくソウジたちも動き出すはず...ソウジが動くまでは、私もここで耐えよう)
続いてカエラが登場すると、ソウジたちは言葉を失う。
「なっ……!」
カエラの手は手枷で拘束されたままで、足にも鉄球の付いた足枷が両足に付けられたままであった。
観客はヒートアップ。
極闘祭という名の惨殺ショーを今か今かと待ち望んでいるようだった。
「ま、マジかよ……あんなんどうやって戦うんだよ……」
『……相棒よ、よく見てみろ。破廉恥娘の目は死んでない。それどころか余裕すら感じるぞ?』
「ソウジくん、カエラさんがやられる未来は見えないわ。何か考えがあるのかも。見守ってみましょう?」
「……わかった」
(ソウジたち、動かないのか……それならば私もまだ動くわけには……カエラ、死ぬなよ)
アリシアは拳をグッと握りしめる。
「へへ、聞いたぜ?お前誘拐罪で極刑なんだってな?どんな奴かと思えば、こんないい女だったなんてな。たっぷり楽しませてもらってから嬲り殺してやるよ」
「できるもんならやってみなよ。アンタのその気持ち悪ぃ顔潰してやるよ」
「テメェ……」
試合開始の銅鑼が鳴り響く。
「カエラ!!」
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その頃、エピステーメーとリリムは隠密魔法により、ブレイズガルド城内への潜入に成功していた。
「リリム、人に触れると魔法が解けてしまいますので気をつけてください」
「大丈夫ですよ!ソウジさんじゃないんですから☆」
「そうですか。ではどこから調べましょうか」
「私はやっぱりミシカちゃんが気になります」
「わかりました。ではミシカの所へ向かいましょう」
二人は予め、クレアからミシカの幽閉されている部屋を聞いていた為、尖塔にある部屋へ向けて歩き出す。
「エピステーメーさん、そういえばちょっと不思議に思うことがあるんですけど」
「どうしました?」
「ジンさんとイザベラさんって、話を聞く限り、国を乗っ取ろうとしてた感じなんですかね?」
「そうですね。その上で当時正統後継者として女王であったサラ様の存在が邪魔で暗殺した...ということであれば理由として通りますね」
「だとすればですよ?じゃあ何でミシカちゃんは生きてるんでしょう?サラ様と同じ正統後継者なら邪魔になるはずですよね?将来的に考えても、イザベラさんは実の娘のクロエさんに国を任せたいのであれば、第一王女で正統後継者のミシカちゃんの存在は間違いなく壁になるはずです」
「確かに、リリムの言う通りです。この問題、まだまだ調べることがありそうです」
「そうですね!まずはミシカちゃんを助けてからゆっくり話を聞いてみましょう!何かわかるかもしれませんね」
エピステーメーが頷くと、二人は尖塔の部屋に向けて足を急がせた。
尖塔に着くと、ある部屋の前に武装した二人の兵士が立っていた。
「エピステーメーさん、あそこじゃないですかね?いかにも!って感じがします」
「そのようですね。他にそれらしきところはありませんし」(王女を幽閉した部屋の前に重装備の兵士が二人?逃げ出さないようにだとしても、あまりにも不自然だ)
「どうします?ぶっ飛ばします?」
「いや、大きな音を立てて騒ぎを起こすわけにはいかないでしょう。ここは僕に任せてください」
エピステーメーは二人の兵士に強力な睡眠魔法をかけると、二人の兵士はその場に倒れ込み深い眠りについた。
「これで三日は起きないでしょう」
エピステーメーは兵士から部屋の鍵を取り出し、部屋の鍵を開け、二人は中に入るのであった。
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【隠密行動】
「あ!ここにミシカちゃんがいる気がします☆」
「リリム、ここは宝物庫ですよ」




