第49話 黄金の檻②
クレアは俺たちに話し始める。
「まずカエラさんが、王族誘拐罪として捕らえられたのは、ミシカ様を助けたからなの」
「ミシカ様?」
俺はクレアに問いかける。
「このブレイズガルド国の第一王女ミシカ様よ。私の幼なじみで、この国で唯一、本物の王家の血を継ぐ方なの」
すると、エピステーメーが声を上げる。
「待ってください。王女を助けたのに、誘拐罪で捕らえられるとはどういうことですか?」
「……現在この国の国王は、ミシカ様のお父様であるジン様、でも彼は王家の血を継ぐ方ではないの」
「ということは、王家の血を継いでいるのはミシカさんのお母様ということでしょうか?」
「ええ、ミシカ様のお母様であり、王家の血を継ぐ正統後継者であるサラ様がこの国を治めていたの」
「では現在の国王のジン様は入婿ということですね?そのサラ様はどうされたのですか?」
「10年前、ミシカ様が8歳の時に多臓器不全で急死したの」
「ーーーーッ!?」
「それであれば、ミシカさんは幼い頃だし、旦那さんのジンさんが国王となるのは自然な話よね?それでカエラさんが捕まるのと何の関係があるのかしら?」
レイシェルは冷静に問いかける。
「……サラ様が亡くなる前、ジン様は一人の占い師を連れてきた。現在の王妃、イザベラ様よ」
「占い師?また怪しい響きだな」
「ええ、後にわかったのだけど、ジン様とイザベラ様は愛人関係にあったみたい」
「……下衆な話ですね」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「当時のイザベラ様は、魔物の襲来、賊の王家襲撃、ブレイズガルド国中心地での大火災と、次々と占いで予言を的中させ、ブレイズガルド国では、“神の予言者”なんて崇められるようになった。そんなある日、イザベラ様はサラ様にある予言をしたの」
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「サラ女王、私から一つ予言があります」
「……何かしら?」
サラはイザベラの言葉に冷たく反応する。
「この国で女性が国王でいると、不吉なことが起きると……だから国王をジン様にするべきです」
「バカバカしい。それに、私は貴方たちのことはわかっています。貴方のことも一切信用していない。これ以上国を混乱させるなら、ジンも含めてタダじゃおかないわ!」
「…………」
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「それから数日後、サラ様は急死したの。その後ジン様はイザベラ様の示した通り国王となり、イザベラ様とすぐに結婚をし、間もなくして第二王女のクロエ様が生まれた。それからのミシカ様は、ジン様から虐待を受け、イザベラ様とクロエ様からは陰湿な虐めを受けるようになったの」
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「クロエ、それはお母様から貰った大切なものなの!返して!」
「うるさいわね!あんたの死んだ哀れな母親なんて知らないわよ!これは私のものよ!」
「クロエ!それ以上は本当に怒るわよ!!」
「あっ!」
クロエはわざとらしく倒れ込む。
「お姉様、酷いわ!いくら私の事が嫌いだからってそこまで」
「あなた、何を言って……」
「ミシカ!!」
ジンがやって来てミシカに平手打ちを喰らわす。
「っ!?」
「お父様、お姉様を責めないで?私が我慢すればいいだけなんだから……」
「まあ、クロエちゃんはこんなにいい子なのに……どうしてこの子はこんなに酷い子なのかしら?」
イザベラは更に増長させる。
「鞭を持ってこい!」
ジンは使用人に鞭を持ってこさせる。
「お父様……お願い、私の話を聞いて……」
「黙れ!この不幸者めが!!!」
ジンはミシカを何度も鞭で打ちつける。
「お願い……もう、やめて……」
「おい、ミシカを部屋に閉じ込めておけ!一歩も出すな!」
「はっ!」
ミシカは尖塔の部屋に幽閉される。
「……ミシカ様」
「クレア?」
「傷の手当てに参りました」
「……クレア、貴方も私に関わらない方がいいわ。貴方まで酷い目に遭わされる」
「私はそんなものに屈しませんよ」
「……ねぇ、クレア?」
「はい、ミシカ様」
「何であの人たちは私とお母様の思い出を奪うの?」
「……」
「いつからこのお城はこんな悪趣味な金装飾になったの?私がお母様と過ごした場所まで奪われるの?私の居場所は……もうないの?まるで檻の中にいるみたい……」
「ミシカ様、私はいつでもあなたの味方です。必ず全て良くなる日が来ます」
「私の大切な人……お母様も、執事も、お世話をしてくれてた人も皆亡くなって……」
「ミシカ様、必ずこの国を救う人が現れるはずです。それまで私が全身全霊を賭けてあなたをお守り致します」
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「それからのミシカ様は、虐待を受ける覚悟で何度も城を抜け出してはこの国を、サラ様との思い出を救ってくれる人を探しに行きました。そこで偶然出会ったのがカエラさんだったんです」
「そういう事だったのか……」
俺はクレアの話を聞いて、胸糞が悪くなったと同時に何とかしたいという気持ちになった。
「きっとミシカさんがカエラさんに出会えたのは、サラ様のお導きね」
レイシェルは優しく微笑む。
「え?」
「そうだな、私たちと出会えた。そうだろ?ソウジ!」
「ああ!カエラもミシカもこの国も、俺たちで助けてやろうぜ」
俺の言葉に全員力強く頷く。
「ありがとう……本当にありがとうございます」
クレアは涙する。
すると、ここまで静かに、考え込むように話を聞いていたエピステーメーが声を上げる。
「少しよろしいでしょうか?」
「どうしたんだ?エピ」
「クレアの話から、解せない部分があります」
クレアは驚いた表情でエピステーメーに問い返す。
「解せない……とは?」
「サラ様の死です」
「どういうこと?」
「先程予言を次々と的中させたと言っていましたね?魔物の襲来、賊の襲撃に大火災と」
「ええ、それは間違いないわ」
「しかし、サラ様の死の部分だけ、具体的な予言ではなく、
“不吉なことが起きる”と、抽象的な表現でした」
「つまりどういうことだ?」
「サラ様は他殺された可能性があるということです」
「ーーーーーッ!?」
「そうね、確かに私も見えた未来を助言するなら不吉なことが起こるなんて言い方しないわ。何が起きるかハッキリ伝えて備えさせるわね」
未来視ができるレイシェルが説得力のある言葉を放つ。
「そ、そんな……私もミシカ様も、サラ様はずっと病気で亡くなったと思っていた……」
「まだ疑わしいという段階です。確証させる為には証拠が必要ですね」
「でもどうする?極闘祭もあるし、カエラのこともある」
「極闘祭は罪人も参加できるの。もし優勝すれば、恩赦が与えられるわ」
「それならば、カエラの実力なら助かる可能性は高いな。念の為、私も極闘祭に参加して、万が一の時はカエラを助けることとしよう」
「クレア、極闘祭の時は城の中は手薄になりますか?」
「ええ、国王も王妃もクロエ様も闘技場の方に行くし、ほとんどの兵士も居なくなるわ」
「それならば、僕は隠密魔法で城へ忍び込んで何か証拠がないか探すこととしましょう」
「あ!それならば私もエピステーメーさんと一緒に行きますよ☆」
「リリムも行くのか?」
「もちろんですよ!ミシカちゃん心配ですし、それに、王家のお宝……うふふ♡♡」
「おい、隠密魔法でコソ泥するなよ……」
「出来ればミシカ様を城から救い出してほしい。明後日には大逆転できるチャンスがあるとしたらミシカ様が鍵となるから」
「なるほど、わかりました」
「任せてください☆」
「俺はどうするか……」
『お前とトカゲと煩悩娘は何かあったらどこでも対応できるように観客席にでもいればいいだろう』
「オー!」
「煩悩娘って私のことかしら?♡」
「では、私は皆が動きやすくなるよう、裏から支援するわ!」
全員で頷く。
クレアが城へ戻り、皆が寝静まった頃、一人甲板で空を眺めているミレアにレイシェルは優しく声をかける。
「ミレア、眠れないの?」
「お姉ちゃん……」
「どうしたのかしら?」
「……私のせいでカエラさんが……私があの時カエラさんに同行をお願いしなければ……」
「ミレア、カエラさんも私たちも、皆ミシカさんの運命に引き寄せられただけよ。あなたが負い目を感じることはないわ」
「……お姉ちゃん、何か見えてるの?」
「フフ、大丈夫。全て上手くいくわ」
「……うん!」
「あなたは安心して待ってるといいわ」
レイシェルは優しくミレアを抱きしめる。
そして翌日、極闘祭の日を迎えることとなるのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【目的は?】
「さあ、張り切ってお宝……じゃなくてミシカちゃんを☆」
「エピ、コイツをしっかり見張っておいてくれ」




