第47話 ユーダイモニア再訪
大聖堂を後にした俺たちは、魔装船へ戻っていた。
船着場では、ガリがしっかりと船を守っていた。
「あ、ソウジさん、おかえりなさい! 留守中、特に異常はありませんでした。」
「ただいま。ありがとう、ガリ。」
船内に入ると、俺たちは早速、次の行き先について話し合った。
「うーん、どこの大陸も、ここからだとなかなか遠いよね」
マリーナがそう言うと、
「この三つの大陸は女神様から示されたものだが、どこを優先すべきかもよくわからない。
今起きていることなど、何か情報があれば、まだ考えようもあるのだが……」
アリシアが考え込むように言う。
「それでしたら、一度ユーダイモニアへ戻ってみるのはいかがでしょう。世界の中心地にありますし、あそこには我々の拠点となる屋敷もあります。ここ最近はなかなかゆっくりする暇もありませんでしたから、一度エヴァンシア市長に顔を出すのもいいかと」
「そうだな、それもありだな。あれから街がどうなったかも気になるしな」
「よーし、そんじゃ、マロ漁港へ向けて出発しよっ☆」
マリーナが声を上げ、船を出航させようとしたその時、外から俺たちを呼ぶ声が聞こえた。
「おーい、待ってくれー!」
声の主は、この地下港を管理する男だった。
「あ、おじさん!どうしたんですか?」
リリムが声をかける。
「あんたたちに、これを持っていってほしいんだ」
それは、この島が記された海図だった。
「この海図は、まだ世界に出回っていないものだ。またいつでもここにすぐ来られるように、あんたたちが持っていてくれ」
「そっか、ありがとな!」
「おじさん、ありがとうございます。また必ず戻ってきますね☆」
「おう、あんたたちも気をつけてな」
こうして俺たちは、改めてマロ漁港へ向けて出発した。
聖都セレスティアを出てから約一週間が経った頃、俺たちはマロ漁港に到着した。
港では、魔装船が帰ってきたと街の人々から大歓迎を受ける。
「おーい!マリーナちゃん、おかえりー!」
「おじさん☆ただいまー!」
マリーナは元気よく手を振る。
※マリーナ着陸。
「あ、ああああの、み、皆さんお元気でしたか……?」
マリーナの平常運転に、町の人たちは安堵の笑みを浮かべる。
「みんな、何か変わりはなかったか?」
俺が町の人に声をかけると、
「そうだ、皆さん。こちらへ来てください」
俺たちは町の広場の中心へ案内される。すると、そこには地下へと続く大きな階段ができていた。
「これは……?」
「はい。あなたが発案した鉄道が通りまして、ユーダイモニアまでつながっております」
「え? マジか。もうそんなにでき上がったのか」
「はい。ユーダイモニアにいるドワーフたちは非常に優秀なので、すでに試運転も終わり、本格的に稼働していますよ」
俺たちは地下への階段を下りると、俺には見慣れた駅のホームがあった。
「すげえ……しっかり本格的に作り込んであるな」
「私も初めて拝見したが……これはすごいな」
「この鉄道は、多くの物資を一度に運ぶことができ、三百人をまとめて輸送できるそうです」
「そうか、三百人もまとめて輸送できるとなると、かなりの規模になるな」
「まだまだこれから拡張していく予定だそうですよ。ユーダイモニアの町の中では、すでに人や物資を運ぶ鉄道も通っていて、半年後には町全体を鉄道が走るようになるそうです」
「へえ、ドワーフってすげえんだな」
「優秀なドワーフたちが集まっているのです。一度どのようなものかさえ分かれば、この程度は朝飯前でしょう」
エピステーメーはメガネをクイっと上げた。
数分ホームで待っていると、列車が到着した。
形はどことなく俺の世界の電車に似ているが、動力部分には魔晶石が装着されており、人工の魔法の力で動いているようだ。
「すげえ、この動力部、蒸気機関車みたいだな」
「わあ、かっこいいですね」
「さあ、皆さん、どうぞお乗りください。お代はいりませんので、ユーダイモニアまでは数十分で着きますよ」
「すごいな。今までの半分もかからないじゃないか」
アリシアは驚きの声を上げた。
俺たちは列車に乗り込み、席に座ろうとすると、車内で車掌と思われる男が声をかけてきた。
「皆さま、皆さまのお席はこちらに特別席をご用意しておりますので、どうぞ」
案内されたのは個室で、豪華な装飾が施され、とても座り心地の良い高価な座席が置かれていた。テーブルも備わっている。
「すげえな……豪華列車ってやつか」
「途中、お酒やお食事もお楽しみいただけるよう、ご用意しております」
「わずか数十分だというのに、すごく手厚いおもてなしなのね」
レイシェルはにっこりと微笑む。
「じゃあ、私とソウジ君の運命の出会いを祝して、みんなで乾杯できるように高級なワインを――」
「待て待て。なんで俺たちがお前とソウジのことを祝福しなきゃならねえんだよ」
「だ、だめだ。ソウジと何を祝福するというのだ」
アリシアとカエラは、俺にしがみついてくるレイシェルとの間に割って入った。
「わあ、またいつものやつですね」
「ヘッヘヘ……変態さん。やっぱり、いつになっても変態さんなんですね」
マリーナは引いている。
俺たちが座席に着くと、貨物車に物資が積み込まれる。
積み込みが終わると、列車は間もなく出発した。
「わあ、すごい。ふかふかですよ」
リリムは座席の座り心地にはしゃいでいた。
「これは素晴らしいですね。まったく揺れもありませんし、とても快適な移動です。もしこれが大陸間の移動にも使えるようになれば、危険な船旅も減りそうですね」
エピステーメーは眼鏡をぐいっと上げる。
「そ、そそ、そんな……私はやっぱり船の方が……でも、乗り心地は最高です」
マリーナは鉄道の乗り心地にうっとりしていた。
マロ漁港からユーダイモニアまでは途中駅がなく、ノンストップで数十分後、列車はユーダイモニアに到着した。
「あれ、もう着いちゃったのか」
「うー、待ってください。まだこのお菓子を食べていません」
「帰りも乗れるんだから我慢しろ、リリム」
俺たちは、あまりに快適な列車の乗り心地に、どこか名残惜しさを感じながら列車を降りた。
ユーダイモニアの地下駅に降りると、ホームにはこれからマロ漁港へ向かおうとする人々で溢れていた。
「すげぇ……大盛況だな」
「長く危険な街道を通らずに、一時間足らずで行けるのです。皆さん迷わず利用するのでしょうね」
地上に出ると、すでに街の中心部では路面電車が走っていた。
わずかな間に、驚くべき発展だ。
「もうこんなに街並みが変わっているのか……本当に、ここのドワーフたちは優秀なのだな」
アリシアが感心している。
「早速、エヴァンシアに顔を出そうぜ」
エヴァンシアの屋敷に着くと、早速エヴァンシアが出迎えた。
「あら、みんな戻ってきたのね!どうかしら?街並みもずいぶん変わったでしょう?」
「ああ、びっくりしたよ!」
「今はユーダイモニア全域に鉄道を通して、その後はネブリナ国にも鉄道をつなげるの」
「ネブリナ国ですか……あの険しい山道はどのように?」
「麓の村から長いトンネルを掘っていく予定よ。少し時間はかかると思うけど」
「す、すすす、素敵です!おばあちゃんとお母さん……会いやすくなります」
マリーナの目が輝く。
「でも山道には魔物が多いから……トンネルに住み着かれても困るし……」
「それでしたら、僕がトンネルに結界の術式を組んでお渡しします。山道の魔物たちは一度見ていますので、問題はないかと」
「ホント!?助かるわ!」
「さ、さささ、さすが王子様♡どこぞの変態さんとは違います!」
「フッ……どこぞの変態さんと比べられては困りますね」
エピステーメーはメガネをくいっと上げる。
「お前らな……」
「エヴァンシア殿、今日は少し聞いてもらいたい話があるのだが」
アリシアが話を切り出す。
「ええ、あなたたちの話なら大歓迎よ」
俺たちはルナに示された三つの大陸の話をし、今どこへ行くべきか相談する。
「そうね……その中なら、イグニス大陸なんてどうかしら?」
「イグニス大陸……し、ししし、灼熱の都市ブレイズガルドがある大陸ですね」
「そう。そのブレイズガルドにあるコロシアムで、毎年“極闘祭”っていう武術大会があるんだけど、そろそろその時期のはずよ」
「へぇ、俺たちでも出られるのか?」
「ソウジさんは雑魚だから、やめておいた方が……」
「やかましいわ!出るならアリシアもカエラもエピもサバオもいるだろ?」
「うわぁ……他力本願ですね☆」
「こ、こいつ……」
「ちなみに、その武術大会で結果を残すと、どのようなメリットがあるのでしょうか?」
エピステーメーがエヴァンシアに尋ねる。
「そうね。その時の大会によって変わるけれど、なかなかお目にかかれない貴重なものがもらえるらしいわよ」
「おお、お宝ですね」
リリムの目がキラキラと輝いている。
「そうね。お宝の時もあれば、貴重な武器や魔道書がもらえることもあるわ。いずれにしても、あなたたちの旅に役立つものは確実にもらえるはずよ」
エヴァンシアは笑顔で言う。
「ほう、貴重な魔道書……ですか?」
エピステーメーのメガネがきらりと光る。
「へえ、お宝なんて聞くと、わくわくするな」
カエラも不敵に笑う。
「私はソウジ君と一緒に過ごせるものがもらえれば……」
レイシェルはとろけるような顔で言う。
「な、なあ、アリシア。お宝やらなんやらって聞いたら、こいつら目の色変わってるけど、大丈夫なのか、その武術大会」
「ふむ、私も噂程度でしか聞いたことはないが、それだけ貴重なものが手に入るのだ。世界中から見たこともないようなものが集まるのだろう。参加するのはいいことだが、気を引き締めなくてはな」
アリシアは真剣な眼差しで言った。
「まあ、どちらにしても、次の行き先は決まりだな。イグニス大陸に向けて出発だ」
「今日はもうこんな時間だから、あなたたちの屋敷でゆっくりしていくといいわ。せっかくですから、みんなで夕食でも食べましょう」
そしてこの日は、エヴァンシアたちとゆっくり夕食を取り、体を休めた。
翌日、俺たちはイグニス大陸へ向けて出発するのだった。
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ーーおまけ小話ーー
【寄り道】
「で、あれからどうなったん?もうできちゃった系??」
「お、おおおおおお母さん!やめてぇ!!!」
「?」




