第40話 千年の約束①
今、ソウジたちのいる世界のおよそ千年前。
そこには、言い争いをしている若い男女がいた。
「クーちゃん!また他の女を連れて歩いて!!ほんとに信じられない!!!」
「お、落ち着け!あれは我が偶然助けた女が、勝手についてきただけで……」
生前のクサレマグロと、まだ女神になる前のルナだ。
激しく言い争う姿に、周りで見物していた一人の男が心配そうに声を上げる。
「な、なあ……アイツら大丈夫なのか?」
「ん?いつものことじゃねーか。あと少しすりゃ仲直りして、そのまま熱い夜に突入するだろうさ」
街の人たちからすれば、この光景は日常茶飯事のようだ。
「どうせその後、【自主規制】とか【自主規制】したんでしょ!?」
「そ、そんなことするわけがないだろう!?我が愛するのはお前だけ……」
「そうやって言えば済むと思ってるでしょ?いつもいつも……もう騙されないわよ!このクズ男!!」
「な、何だと!?貴様だって、酒をかっ喰らって酔っ払ったら、すぐ他の男に股を開こうとするじゃないか!!」
「誰かさんがすぐ他の女にいくからでしょ?大体いつも抱かれる前にすっ飛んでくるから、私はあなたと違って、あなたしか知らないの!」
「あ、当たり前だ!他の男に触れさせてなるものか!それに我もお前しか知らん!!」
「もういい、信じない!!私はこの先、一人で行くから!!!」
ルナが立ち去ろうとすると、クサレマグロはルナの手を引き、抱き寄せ、そして強引に唇を重ねる。
「ん……♡」
「何度も言わせるな。我にはお前しかおらんのだ」
「もう……クーちゃん♡」
すっかり落ち着いたルナは、今度は自らクサレマグロに唇を重ねる。
「……今夜は眠れると思うなよ?」
「そんなこと言われたら、期待しちゃうじゃない♡」
「行くぞ……」
クサレマグロはルナの手を引き、部屋の奥へと消えていった。
「な、大丈夫だったろ?この後はとても描写できない展開だし、俺たちも戻ろうぜ」
「あ、ああ……」
若かりし頃のクサレマグロは、真の強さを求めて世界を旅していた。
その途中、ある使命を果たすために旅をしていたルナと出会うのだが、二人が恋に落ちるのに時間はかからなかったという。
ルナには使命を果たすため、女神の聖域へ行かなければならなかったのだが、年頃の彼女はクサレマグロと離れたくないという想いから、出会ってから5年間、共に旅を続けていたのだ。
そして、あの激しい言い争いの後ーー
「んん……♡」
ーー カタカタカタ……
『あ……あぁぁ♡♡』
「おやおや、今日はまた一段と激しいねぇ(笑)」
「今日はずいぶんと派手に大喧嘩してたらしいよ」
『あぁぁぁ♡♡壊れちゃうぅ♡♡♡』
「その分、こっちも派手に……ねぇ……」
その後も、二人の激しい嵐は朝方まで止むことはなかったという。
ーー翌朝。
「ルナ、起きろ」
「んん……」
クサレマグロの声に、ルナは目を覚ます。
「クーちゃん……もう起きたの?昨夜はいつもより激しかったから、私まだ壊れそうなんだけど♡それとも……まだしたいの?」
「ば、馬鹿者!そうではない。何やら不穏な気配を感じるのでな……お前も感じないか?」
「――――ッ!?女神様の気配が!」
「ああ、急ごうではないか」
「わかったわ!」
ルナはベッドから飛び起きる。
「……」
「クーちゃん?どうしたの?そんなにジロジロ見て……」
「……もう一回だ」
クサレマグロはルナを抱き寄せ、強く唇を重ねた。
「ん……もう♡」
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――現在の女神の聖域
「へぇ……ずいぶんとお猿さんみたいだったんですね?クーちゃん☆」
「お前……人のこと言えないくらいチャラかったんだな?クーちゃん」
「それだけ激しく愛していたのね?クーちゃん♡」
『やめんか!!お前らがクーちゃん呼びするな!!』
「クーちゃんは隙あらば私の身体を求めてきて……ウフフ、今思い出しても幸せな日々だったわね♡」
ルナは顔を赤らめながら、千年前のことを思い出す。
『ルナよ……そんなことよりも、もっと話すべきことがあるだろう……』
「あら?私にとっては、あなたと愛し合った日々は、これ以上ないくらい大切なことよ?」
「聞かされてる方はたまったもんじゃないが……」
「ソウジ、クサレマグロ様はもっとたまったものではないと思いますよ?」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「それじゃあ、続きを話しましょうか♡」
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すでに聖都セレスティアにいた二人は、聖域の扉へと急いでいた。
「ルナ、大丈夫か?」
「はぁ、はぁ……どこかの誰かさんが朝から三回もしてくれるから……私、身体が壊れそうよ?」
「うぐっ……す、すまなかった」
「フフ♡謝る必要があるかしら?」
そして二人は、聖域の扉に辿り着く。
「よし、ルナ!早速、扉を……」
「…………」
「どうした?」
「ねぇ、クーちゃん?私と旅を始めた時に話したこと、覚えてる?」
「……ああ」
「この扉の向こうは……私の旅の終着点。だから……」
ルナの脳裏に、クサレマグロと出会ってから今に至るまでの思い出が駆け巡った。
「私……この旅を終わらせたくなかった!あなたと、もっと世界中を旅していたかった……本当は、またセレスティアを出て、違うところへ行きたかった!」
「……ルナ」
「使命なんて、無くなればいいと思った……あなたと、もっと愛し合って、子供が生まれて、幸せな家庭を築いて……私たちが世界中を旅したことを、子供に伝えるの。この旅の先には……そんな人並みの幸せが欲しかった……」
ルナは大粒の涙を流しながら、クサレマグロにすがりついた。
世界最強の魔剣士、クザレ・マクロイヤー。彼はどんな不可能も可能にしてきた。
しかし、ルナは自身の使命にだけは抗えないことをわかっていた。
「ルナよ、我がお前に言った言葉、覚えているか?」
「……お前との子供が欲しいとか?今晩は眠らせないとか?今晩は一晩中抱いていたいとか?今すぐしたいとか?」
「違う違う!今そんな場面ではなかろう!?」
「我が愛するのは、これまでもこれからも、ルナ――お前一人だ。お前がどんな姿になろうと、何者になろうと、誰に変わろうと、我はずっと変わらない。だから、何も案ずることはない。これから先、お前の理想の未来を叶えるためには、やり遂げねばならんのだ。我は何百年、何千年経とうとも、必ずお前との幸せな未来を約束しようじゃないか」
「クーちゃん……」
「そんなこと出来るわけない、という顔をしているな?いつも言っているが……」
「ウフフ、そうよね。やるかやらないか、よね!あなたは不可能を可能にしてきたものね」
「そうだ。さあ、行こうではないか」
「ええ!」
こうして二人は、聖域の扉をくぐるのであった。
二人は聖域に入ると、奥へと進む。
するとそこには、血まみれで倒れている女神の姿があった。
「女神様!?」
ルナは女神に駆け寄る。
すぐさま治癒魔法をかけるが、まったく効果がないようだ。
「女神様!一体誰がこんなことを!?」
「……ルナ、もう時間がありません……早く、継承を……」
「――――ッ!?はい……」
ルナは急いで奥にある泉へ向かう。
ここで女神の継承を行うのだ。
ルナの使命とは、女神の継承を行い、新たな女神としてこの世界に君臨することであった。
ルナが泉へ降り立つと、大きな光に包まれ、外界と遮断される。
(……これでもう……クーちゃんとは……)
「クザレ・マクロイヤー……こちらへ来てもらえますか?」
女神は、立ちすくんでいたクサレマグロを呼ぶ。
「クザレ・マクロイヤー、ルナをここまで連れてきてくれて、ありがとうございます」
「いや、何というか……もっと早く来ていれば、こんなことには……悪かったな」
「いえ、私はどのみち消えゆく運命にありました。これが……ルナでなくてよかった。彼女はあなたと出会えたことで、この難を逃れ、何より、幸せを知ることができた。あなたには感謝しているのですよ?」
「……」
「クザレ・マクロイヤー、あなたにだけ伝えておきます。決して他言は……特にルナには、言わないようお願いします」
「何だ?」
「私を襲撃したのは……。」
「なっ!?」
「そして、彼の狙いは……。」
「ばっ……馬鹿な!?なぜそのようなことを……」
「わかりません。ですから、ルナを守るためにも、彼女は知るべきではない……」
「……わかった。安心しろ、何があってもルナは我が守ると約束しよう」
「あなたなら、そう言ってくれると思っていました。さあ、継承が終わるまで、あと数十分。ここからが正念場です」
「どういうことだ?」
「――――――ッ!?」
すると、いつの間に湧いてきたのか、女神の継承を阻止せんと言わんばかりの者たちの姿が現れる。
「……クザレ・マクロイヤー、私にはもう、彼女の継承を見届けるだけの力しか残っていません。あなたたちの未来のため、どうか……彼女の継承を守って!」
「くっ!」
クサレマグロは剣を構えた。
――継承終了まで、あと48分。
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ーーおまけ小話ーー
【ルナの着こなし】
「女神様って聖職者だったのにすごくセクシーな服装だったんですね!」
「ウフフ、クーちゃんはいきなりしたがるから、いつでも応えられるようにしてたのよ♡」
「はわわわわわ!それでいつも下着をつけてなかったんですね!調教というやつですね☆」
『ルナよ……本当にもう勘弁してくれ……』




