第38話 聖都セレスティア③
おやおや、騒がしいと思ったら……あなたたちでしたか……アリシア元少佐ァ」
「お前は……!」
「お前は……誰だっけ?」
「お月様みたいな顔をしていますね。魔物でしょうか?」
「魔物って喋るのか?」
「私はゲネイオンですねぇ!相変わらず失礼な連中ですねぇ!!」
「それで、ゲネイオン……貴様がこの一件の首謀者か?」
「そうですねぇ!我が皇帝様の命により、女神を連れてくるよう仰せつかっているんですねぇ。
そして、その女神の居所を知っているのが、この大司教カテリーナというわけなんですねぇ」
「やはり、聖域を狙ってきたのか」
「カテリーナを連れ出し、そして女神も連れ出し、皇帝様のもとへ献上する……。そして、大司教カテリーナは私に……ぐふふ♡」
「うわぁ……あんなアゴしてるくせに、いかがわしいこと考えてますよ」
「な!あんなアゴしてるくせに。大司教様に何する気なんだろうな?」
「本当に失礼な連中ですよぉ!お前たちは!!」
「ゲネイオンよ。愚かな真似はやめて、さっさと兵を連れてこの街から出て行け」
アリシアがゲネイオンに向かってそう言い放つ。
「ほう。この前、私に手も足も出なかったあなたが、よくそんなことが言えたものですねぇ」
「私たちはこの前とは違うぞ!」
「まあいいでしょう。しかし、この兵士たちの数を前にいつまでそんなことが言っていられますかねぇ!今回は下級兵士ではありません。全員、上級兵士です。さあ、お前たち!この者たちをやっておしまいなさい」
『………………』
「うん?お前たち、どうしたのです?」
すると、その場にいた兵士たちが全員、どさっと倒れ込んだ。
「な、なんとぉぉぉぉ!!!」
「で、こいつらが上級兵士だって?」
カエラが呆れ気味にそう言うと、
「もう、弱すぎて描写すらなかったじゃないの!ソウジくんにいいところ見せたかったのに」
「ムフフー、ボク、ツヨイ!!」
ゲネイオンの言う“上級兵士”たちは、すでにカエラ、レイシェル、サバオの手によって殲滅されていた。
「卑怯な!そんなやたらと強い連中を連れているなんて、卑怯極まりないですねぇぇぇ!!!」
「いや、魔晶アーマーなんか使ってるお前に言われる筋合いはないぞ」
アリシアが冷静につっこむと、
「そうですよ。お月様みたいなアゴしてるくせに」
「うーん……アゴって関係あるのかな?」
「アゴは関係ないんですねぇ!いつまでそのくだりやるつもりですかねぇ!!」
しかし、ゲネイオンは不敵に笑う。
「ふふふ……まあいいでしょう。そこまでお望みでしたら、魔晶アーマーの力でお前たちを――」
ーーヒュン。
レイシェルが音もなく矢を放ち、ゲネイオンに直撃する。
「あいたっ!? ちょ、ちょっと待ってください!今私かっこよく変身しようとしているところなんですねぇ!!」
「何を言ってるんだ……こいつは」
「何か勘違いしてますね。お月様みたいなアゴしてるくせに」
「ぐう……くそー、くそー!魔晶アーマーよ、今こそ……」
次の瞬間、カエラが目にも止まらぬ速さでゲネイオンに一撃を入れる。
「ぶべらっ!!」
ゲネイオンは堪らず膝をつく。
「くっ……魔晶アーマー……」
レイシェルの矢、カエラの突撃、サバオの殴打、そしてアリシアの斬撃。
四人は一斉にゲネイオンへ総攻撃を仕掛け、魔晶アーマーを纏う隙を与えない。
「ひ、卑怯ですねぇ!一人に対してそんなに大勢で!!」
「いや、だから……お前、どの口が言ってるんだよ」
「ぐっ……今日のところは一度引き揚げるんですねぇ!お前たち、覚えていなさい!!」
ゲネイオンはそう言い残し、逃げ出した。
「……あっ、逃げた?」
「うーん……でも、野放しにしておくのもなあ。よし、追いかけようぜ」
「なあ、でも、その飛空船ってやつで逃げられたら、厄介じゃねえのか?」
カエラがそう言うと、
「あら、それならさっき……」
「クソ……クソ、あいつら……次に会ったら絶対に皆殺しなんですねぇ!今日のところは一度戻って体勢を立て直して、魔晶アーマーはさらに強化して…………へ?」
ゲネイオンは、どこから出たのか分からない間の抜けた声で驚愕する。
「そ、そんな……飛空船が……」
そう、飛空船は先ほど、レイシェルの矢によって見るも無残な姿へと変わっていた。
その場にいた手勢では修復もできず、彼らはすでに逃げ場を失っていたのだ。
「そ、そんな馬鹿な……」
次の瞬間、空から無数の矢の雨が降り注ぐ。
「ぎゃあああっ!!」
まさに一網打尽。
ゲネイオンも含め、その場にいたすべての兵士たちは殲滅された。
「さてと……こいつら、どうするか」
「うーん……セレスティアにも、一応、悪い人を捕まえておく地下牢はありますけれど……こんなにたくさん、入りますかねえ」
「すまないが、捕縛は勘弁してもらえないか?」
俺たちは、声のする方へ振り返る。
俺たちは声のする方を振り返る。
そこには、あの黒き仮面の者が立っていた。
「くっ……また貴様か」
俺たちは一斉に武器を構える。
「待ってくれ。私はここで争う気はない」
「なんだと?」
「とりあえず、こいつらは私が全員引き連れてこの場を撤収する。そして、ゲネイオン以下、この街に無礼を働いた者どもには、厳しい懲罰を与えることにする。だから、この件はそれで収めてくれないか」
黒い仮面の者はその言葉通り、その場にいた帝国兵や下級兵、そして他の場所にも無数に散らばって倒れている帝国兵たちを、すべて光の向こうへと消し去った。
もちろん、飛空船もだ。
「すげえ……あいつら、一体どこに消えたんだ?」
「とりあえず、全員帝国領へ飛ばした」
「そんなことが可能なんですね……」
リリムが驚愕していると、
「そのくらいのことは、たやすいものさ」
黒い仮面の者は淡々と言う。
「それじゃあ、私はこれで」
「待って!」
俺は黒き仮面の者を呼び止める。
「……まだ何か用か?」
「いや、そのさ……名前」
「……え?」
「お前の名前、なんて言うんだ?」
「……私の名など聞いて、どうする?」
「いや、そのさ……お前は帝国のやつで、俺たちからしたら敵なんだろうけど……どうも、お前だけは悪い奴に思えなくて」
「……アナスリア」
「え?」
「私は、帝国ではそう呼ばれている」
「それでは失礼する」
そう言い残すと、黒き仮面の者――改めアナスリアは、光の向こうへと消えていった。
「本当に……何なんだろうな、あいつら」
「帝国の者も、どうも一貫性がないな」
「と、いうと?」
「皇帝のもとに、とは言ってはいるものの……なんとなくな」
すると、そこへエピステーメーが合流する。
「皆さん、お怪我はないようで?帝国兵たちが急に消えたものですから」
俺たちはエピステーメーに、これまでの流れを説明する。
「なるほど、そういうことでしたか。
僕の方も、やはり何人かの帝国兵が攻めてきましたが、僕とガリと、あの地下港の方とで、すべて一掃できました」
「さて……大司教様って無事なのかな?」
「そうだ、カテリーナちゃん!早く行かないと」
「カテリーナちゃん?」
「大司教様の名前ですよ。ほら、早く行かないと」
俺たちは急いで大聖堂へと戻る。
すると、帝国兵の気配がなくなったのを感じたのか、大聖堂はすでに結界を解き、街の人たちも外へと出ていた。
そして、大聖堂の中へ入っていくと、奥に大司教カテリーナの姿があった。
「カテリーナちゃん!」
リリムが急いで駆け寄る。
「あら、リリム……お久しぶりですね。もしかして、一筋の光って……」
「え?」
「あ、いえ、その……あなたたちが助けてくださったのですね」
「ああ、まあな」
(えっ……この人が大司教様?俺はてっきりじいさんとかばあさんかと思ってたけど……まさかこんな若くて綺麗な人が……)
「この街を救ってくださり、ありがとうございます…………はっ!?」
「どうしました?カテリーナちゃん」
「騎士様……私の騎士様。この街を……そして私を救ってくださった、騎士様……」
「ん? 待て……もしかしてこの流れは……」
カエラが身構える。
「はわわわわ!まさかのカテリーナちゃんまで、ソウジさんのハーレム計画の……」
「騎士様♡救ってくださりありがとうございます。私、この身も心も、貴方に捧げる所存でございます」
――がしっ。
「え、ええと……」
そうしてカテリーナが膝をつき、しがみついた相手は……
アリシアだった。
「えええええええええええ!?(@一同)」
「ああ……なんて素敵な騎士様……。私、貴方様になら、この僧侶の身を捨ててでもお仕えいたしたいと思っております♡♡」
カテリーナは顔を紅潮させながら服を脱ぎ始めた。
「まずは貴方を慰めさせていただき……」
「ま、待て待て!私は女性だ!君とそんなふしだらな関係になるわけには……」
アリシアはひどく動揺している。
「へえ……大司教サマって、そっちだったんだ?」
カエラがニヤニヤと笑いながら言うと、
「うふふ、愛のかたちはそれぞれよ。いいじゃない、アリシアさん♡」
レイシェルがどこか楽しそうに言う。
「バカなことを言うな、お前たち!」
アリシアはひどく動揺している。
そろそろ先の話をしたいところではあるが、まずはこの興奮したカテリーナを何とかしなければと、俺たちはカテリーナを宥めるのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【カテリーナの好み】
「カテリーナちゃんはどういう人が好きなんですか?」
「アリシア様!」
「あ、いや……男性で……」
「アリシア様!!」
「……責任取れよ?作者…」




