第31話 新たな旅へ~酒は飲んでも飲まれるな~
カエラ、レイシェル、ガリ、ミレアを新たに迎えた俺たちは、ヴェルディパークを出港し、次の大陸へ向かおうとしていた。
リリムが一度聖域に立ち寄りたいと言うので、聖域のある大陸へ向かう予定なのだが――
『……どうしても行くのか?』
「せっかくですし☆ 一度女神様に顔を出しておこうかと」
「俺も女神様ってどんな人か気になるしな」
『それならば、我はここで置いていってくれ』
「なんでだよ?」
『……いや、その……なんというか……』
「クサレマグロさん、何か悪いことでもしたんですか?」
「クサレマグロ殿の場合、今というより……生前に何をやらかしたのか、という話だろうが…」
『ばっ……! 我は真っ当に生きていたつもりだ!』
「真っ当に百八十年も生き抜いたっていう時点で、そもそも……」
エピステーメーはメガネをクイッと持ち上げる。
「まあまあ☆ ここは民主主義ってことで~。クソマグはおとなしく付いてきなって!」
『ぐぅ……』
(こいつ、ここまで拒絶するってことは……本当に女神様に何かやらかしたことがあるんじゃ……)
そして、その後。
皆で食事の時間となった。
ミレアが料理が得意だということで、船での調理は彼女に任せることにした。
「うわぁ……見たことのない調味料がたくさんありますね!」
調理場に入ったミレアは、豊富な調味料や調理器具、様々な食材に目を見張る。
「これはソウジさんの世界で買ってきたものなんです! 私はカップ麺だけあれば十分なんですけど☆」
「それは俺が勘弁してくれ……」
ミレアは一つひとつ調味料の味を確かめると、さっそく調理に取りかかった。
「すごい……これ! これ一つだけでも、すごく美味しい料理が作れそうです!」
本当に楽しそうだ。
「ミレアは料理が得意なんだな」
アリシアが、無駄のないミレアの手際を見て感心したように言う。
「ミレアはどんな食材でも美味しく調理できる天才なの。
またミレアの手料理が食べられるなんて嬉しいわ」
レイシェルは嬉しそうに語った。
「レイシェルも料理するのか?」
俺は何気なくレイシェルに尋ねる。
「私は狩猟専門よ。私が捕まえてきた獲物をミレアが調理するの。
あ、でもソウジきゅんが私の手料理を食べたいなら、どんな化け物でもかっ捌いちゃう♡」
「怖そうだから遠慮しておくよ……」
しばらくして。
「ご飯できましたよー!」
ミレアの声に、俺たちは食堂へと集まった。
そこには豪華な料理が所狭しと並べられていた。
「す、すごいな……これは」
アリシアが並んだ料理を見て感嘆の声を漏らす。
「えへへ。つい楽しくて、作りすぎちゃいました」
「ゴハン! ゴハン!」
「いーじゃんいーじゃん! 新しいダチもめっちゃ増えたんだしさ~。
今日はもう朝までコース確定じゃね?」
「はは! 朝までは勘弁だが、今日は楽しむとするか!」
アリシアの一声で、宴会が始まった。
皆それぞれ楽しそうに談笑しながら食事をしていた。
「そういえば、気になっていたことがあるのですが……」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「レイシェルは、ソウジを運命の人と信じてやまないようですが……
何か決定的な理由があるのですか?」
「……私には、少し先までだけど未来が見えるの」
「え?」
皆が食事の手を止め、レイシェルの話に耳を傾ける。
よく見ると、レイシェルの瞳は左右で色が違う。
左目の金色の瞳――それこそが、彼女の特別な能力。
“未来視”である。
「これから起こることや、他人の未来も……その人の目を見れば分かるの」
「なんかさ、パッと聞くと便利そうだけど……
アタシだったら絶対イヤだな」
「そうでしょう?私は生まれた時からこの力があった。
その人と関わると、この先どうなるのか……その人の運命も、寿命も……その気になれば全部見えてしまう。
だから私は、この力がすごく嫌だったの」
「姉さん、普段はこの力を抑えるために、すごく努力してたものね」
「ええ……完全に見えなくなるわけじゃないけれど。
でも、ずいぶんマシにはなったかしら」
「そうか……ネメルヴァとの戦いの時にも不思議に思っていたが、そういうことだったのか」
アリシアはあの戦いを思い出しながら呟いた。
「私がまだ幼かった頃、一族の長老に言われた言葉を……私はずっと信じて生きてきたの」
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「レイシェルよ。未来が見えるのが嫌なのかい?」
「うん。すごく嫌。だって……全部分かっちゃうんだもん」
「ほっほっほっ。それならば、お前がどんなに頑張っても未来の見えない人――その人こそが、お前の運命の人なのだろうね」
「……そんな人、いるの?」
「きっといるさ。私たちの生涯は長い。この長い人生の中で、いつか必ず出会える。どんなに見ようとしても未来が見えない、レイシェルの運命の人に」
「……私の運命の人?」
レイシェルは頬を赤らめた。
「もし出会えたなら――どんなことがあっても、その人と離れてはいけないよ」
「うん!」
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「私はその時から今日まで、長老に言われた“運命の人”に出会えると信じて生きてきたの」
「えっと……それって、もしかして……」
「うん!ソウジくんは見えないの!! ユーダイモニアで初めて一瞬目が合った時、未来が真っ暗になった。そんなこと、今まで一度もなかった。だから、もしかしたらこの人がって……そして」
レイシェルは、俺に抱きついてきた。
「やっぱりソウジきゅんは私の運命の人だったの♡
どれだけ頑張っても、ソウジきゅんの未来もソウジきゅんとのこの先も、何も見えないの♡♡」
「そ、そういうことだったのか……しかし、それはそれだ」
アリシアが立ち上がる。
「そうだな」
カエラも同時に立ち上がった。
「ソウジにベタベタするな!」
「主にベタベタするな!」
二人は同時に叫ぶ。
「ふふ……姉さん、ソウジさんに出会えて本当に良かった」
(ソウジさんって、基本一度死んでるから未来がないだけじゃ……)
リリムはそう思ったが、空気を読んで黙っていたそうな。
※後日談
――数時間後。
「いえーい!! エピ先輩、飲んでるぅ? まだまだキメるよ~☆」
「ま、マリーナ……貴方は本当に……酒豪ですね……」
マリーナは酒瓶を片手に、楽しそうにはしゃいでいる。
リリムとサバオ、そしてレイシェルは、すでに部屋へ戻って眠ってしまっていた。
食堂に残っているのは、俺とアリシア、エピステーメー、マリーナ、カエラ、ガリ、ミレアの七人。
ミレアはガリにもたれかかるようにして、すでに寝息を立てている。
「カエラ、そういえば、あのアクタはどうしたのだ?」
「ああ、アイツなら、帝国に関する情報を集めるって。アタシたちとは別で動くそうだ。そのうちどっかでまた会うだろ」
「そ、そうか……彼の情報収集能力は素晴らしいものだったからな」
「それに関しては本当に優秀なヤツだよ、アイツは」
「ところで……」
アリシアはソウジに目をやる。
「ソウジ、かなり顔が赤いが……大丈夫か?」
俺の様子を見て、アリシアが心配そうに声をかけてくる。
「主ぃ~、今ならアタシが手厚く介抱してやるぞぉ」
ほろ酔いのカエラが上着を脱ぎ、俺に抱きついてきた。
「き、貴様! またソウジをたぶらかそうと……!」
「これがアタシたちの主従関係ってやつさ♡
な? 主♡♡」
カエラは俺の耳元に息を吹きかける。
「カエラ! 貴様、表へ出ろ!!!」
「おっ、なんだ? やんのか、堅物女」
「まあまあ、お二人とも落ち着いてください」
エピステーメーが慌てて仲裁に入る。
「キャハハ! アリシア姉さんとカエラ姐さん、マジマブだよね☆」
「どこがですか……」
「うーん、もうダメだ……俺、先に寝るわ」
酒が回り、意識が朦朧としてきた俺は部屋に戻ることにした。
「お、主。それならアタシが部屋まで送ってやるよ♡」
「待て! 貴様、その後やましいことを考えているだろう!? 私がソウジを連れて行く!」
「あぁん? アンタだってラッキースケベ狙ってんだろ!」
「あ、あの……一人で大丈夫だから……」
まだ言い争いを続けている二人をエピステーメーに任せ、俺は食堂を出た。
「うーん……えっと……俺の部屋……あれ? あ、ここか……」
扉を開けると、俺はそのままベッドへ向かう。
――その瞬間。
そこには、一糸まとわぬ姿のレイシェルがいた。
俺の気配に気付き、レイシェルが目を覚ます。
「そ、ソウジくん!?」
レイシェルは慌ててブランケットを引き寄せ、体を隠した。
「ん……? 俺の部屋にレイシェル? レイシェルが俺の部屋? あれ……レイシェルは俺の……?」
「え、えっ!? ソウジくん!?」
俺はそのままレイシェルの方へ倒れ込む。
思わず身構えるレイシェル。
しかし――
次の瞬間、俺はそのままレイシェルの膝の上で眠ってしまった。
「び、びっくりした……。
まあ、私はそのまま襲われてもよかったんだけど………………ッ!? ……うふふふふふ♡
ソウジきゅん、今は……ゆーっくり眠ってね♡」
――窓から朝の光が差し込む。
「ん……?」
俺は目を覚ました。
だが、昨夜食堂を出てからの記憶がない。
「えーと……俺……あの後、部屋に戻ったんだっけ?」
その時、手に何か柔らかいものが触れる。
「いやん♡」
「――――――――――ッ!?(声にならない衝撃)」
「もう、ソウジきゅん……朝から元気ね♡」
「れ、レイシェル!? なんでお前ここにいるんだよ! ていうか、なんで裸!?」
「え……ひどいわ……ソウジきゅん……昨夜はあんなに激しかったのに……」
「えっ……?」
「忘れちゃったの?」
「え、えーと……レイシェルさん、俺……何したんだろ……?」
「………♡(照)
私に言わせるの?」
「んがァァァ!!!!!!!(白目)」
俺は慌ててベッドから飛び降り、レイシェルに土下座する。
「ご、ごめん! 本当にごめん!!俺、酔ってて全然記憶がなくて……!」
「えー、ひどーい!私にあんなにたくさん――したり、――させたり……ソウジきゅんがどうしてもって言うから、今も裸でいるのよ?」
「ご、ごめん! 許してくれ、レイシェル!!」
「えー、どうしよっかなぁ♡」
「姉さんは寝る時、いつも裸族でしょう?」
「へ?」
入口の方を見ると、水を持ったミレアが立っていた。
「はい、姉さん。朝のお水」
「ありがとう、ミレア」
「ソウジさんも、お水飲む?」
「あ、はい……」
俺はミレアから水を受け取る。
「あ、ソウジさん。さっきから姉さんが言ってることは全部ウソだと思うから(笑)
姉さん、すごく可愛いでしょ?」
そう言い残すと、ミレアは部屋を出ていった。
「えと……嘘……なのか?」
俺は恐る恐るレイシェルを見る。
「ウフフ……ソウジきゅん?さっきの話――真実にしてみましょうか♡♡♡」
「やめろぉぉぉぉ!!!!」
どうやら俺は部屋を間違え、レイシェルの部屋に入ってしまい、そのまま眠ってしまったらしい。
「さて、ソウジくん。服を着るから、あっちを向いててくれるかしら?それとも……もっとしっかり見たい?♡」
「ぬぁぁぁぁぁ!!!!」
――その時。
『ーーーーーーーー!!!!!』
「ん? 何か騒がしいわね?」
「ご、ごめん!」
「あ、ソウジくんじゃなくて……」
レイシェルの言葉で我に返ると、確かに外が騒がしい。
「急ぎましょう!」
レイシェルはベッドから飛び出す。
「あ……いやん♡」
※裸族のレイシェルさん
「んがぁぁ!! 先に行ってるぞ!!!」
俺は慌てて部屋を飛び出した。
⸻
甲板へ出ると、そこには――
船の倍はあろうかという巨大な魔獣が、航路を塞ぐように立ちはだかっていた。
「な、何だ……これは?」
「ソウジ、どこへ行っていたんだ? あれは海の魔獣だ!」
アリシアが状況を説明する。
どうやら俺たちは、この魔獣の縄張りに入ってしまったらしい。
襲撃を受けかけたところで、ガリとマリーナが応戦。
マリーナの放ったハープーンは見事に命中したが、それが逆鱗に触れてしまったようだ。
船に直接攻撃が及ばないよう、後から合流したアリシア、エピステーメー、カエラも加わり、必死に攻撃を凌いでいるという。
そこへ、レイシェルも駆けつけた。
「ッ!? まずい! マリーナさん、すぐ舵を切って!!」
「え? オッケー! 任せろし!!」
マリーナが舵を切った、その瞬間――
『ガガガガガッ!!!』
ついさっきまで船があった場所の真下から、巨大な尾が突き上げるように飛び出した。
「あっぶなぁ……レイシェルちゃんの声がなかったら、やられてたかも……」
「ソウジー! クサレマグロー!」
サバオが星守を抱えて駆けてくる。
『相棒よ……昨夜は部屋に戻らず、どこで何をヤッていたのだ?』
「何もヤッてねーよ……」
※文字でないと伝わらない会話
「とりあえず、クサレマグロ――いくぜ!」
俺は星守を振り抜いた。
放たれた衝撃波が一直線に魔獣へ叩き込まれる。
魔獣は断末魔のような咆哮を上げると、そのまま海中へと沈んでいった。
「相変わらず、デタラメな剣だな……」
「まあ、クサレマグロ殿がデタラメな強さだからな…」
俺たちは何とか危機を乗り越えた――が。
「ヤバっ、舵が利かない!!さっきのでやられたっぽい!!!」
「え?」
「このまま航行を続けるのは危険そうですね……」
エピステーメーが眼鏡をクイッと持ち上げる。
「マリーナ、近くに停泊できる場所はないのか?」
「んー、一応あるっちゃあるけど……ガルドリア大陸なんだよね」
「そこって何か問題があるのか?」
「獣人たちを中心に成り立っている大陸だ。
奴らは他所者を嫌う。血の気の多い連中ばかりだぞ」
「うげ……それはちょっと嫌だな」
俺は顔をしかめた。
「でも、直すところ直さないとね!まあ、みんないるし何とかなるっしょ☆」
「いや、舵が利かないんだろ?ガルドリア大陸までどうやって行くんだ?」
「フフフ。ここはウチのサバオちゃんの出番ですわね!」
――野生のリリムが現れた。
「マリーナちゃん、ガルドリア大陸までもう近いですよね?」
「うん、あと少しだよ」
「では、サバオ! 行きましょう!」
「オー!」
サバオは背中から翼を生やすと、船の後方へ回り込み、そのまま船体を押し始めた。
「おおー! すごいすごい!!これで何とかガルドリア大陸に行けるね!」
「なあ、サバオって人の姿のまま翼だけ出せるんだな?」
「フフフ。画像生成が大変だから、擬人化したまま飛べるようにしたんです☆」
「作者都合かよ……」
こうして俺たちは何とかガルドリア大陸へと辿り着く。
そして――
ガルドリア大陸唯一の港を持つ城塞都市、
鉄牙砦ドランガルへと到着するのだった。
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ーーおまけ小話ーー
【昨夜はどこへ?】
「ソウジ……昨夜はどこで何をしていた?」
「…内容次第では、もう二度と悪さできないようにーー切り落とすぞ?」
「お前ら、マジで落ち着いてくれ!!!」




