表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
32/50

第29話 エルフを救え⑥

挿絵(By みてみん)


――その頃、エピステーメーとサバオは俺たちと合流するため、急ぎ足で森を進んでいた。


「ふむ……とてつもない魔力を感じますね。サバオ、急いだほうがよさそうです」

「ワカッター!」


その時、エピステーメーはふと足を止めた。


「……これは?」


建物の周囲には、兵士や悪魔を思わせる石像が無数に並べられている。どれも不気味なほど精巧で、どこか生々しい存在感を放っていた。


「これは……一体なんでしょう?」

「オニンギョウサン!」

「いずれにしても、こんな場所にこれほど多くの像が置かれているのは不自然ですね。……何かあると見て間違いないでしょう」


エピステーメーは眼鏡をクイッと押し上げ、少し考え込む。


「……よし。サバオ、この石像をすべて粉々に破壊してください。できるだけ急ぎでお願いします」

「ハーイ!」


サバオは楽しそうに飛び出すと、次々と石像を木っ端微塵に砕いていった。


「キャッキャッ!」

「うーん……凄まじい力ですね……」


やがて無造作に並べられていた石像は、すべて瓦礫の山と化した。


「これで全部のようですね。さあ、サバオ。先を急ぎましょう」


こうして二人は再び足早に進み、俺たちの元へと急いだ。


――対ネメルヴァ戦の最前線。



「はわわわわ……!なんだかソウジさんが、とてつもなくイケメンでかっこいいお方に見えるんですけど☆」


リリムが落ち着かない様子でおろおろしている。


「え、えーと……お前は本当にソウジなのか?」


「ああ、体は相棒のものだ。だが中身は我――クザレ・マクロイヤーだ」


「どういうことだ?」


「このまま相棒を放っておけば、そのまま命を落としていただろう。だから我がその体に入り込み、今は奴に抉られた心臓を修復し、出血を止めているところだ。少々時間はかかるが……これで相棒は助かるはずだ」


「そうか、よかった……クサレマグロ殿、感謝する」


アリシアは涙をにじませながら安堵の表情を浮かべた。


「主……よかった。私はまた大切な人を失うところだった…」


カエラも涙ながらに続ける。


「うーん……でもクサレマグロさんの方がかっこいいですし、もうソウジさん、このままでいいんじゃないですか?」


『いや、よくねえだろ!』


剣の中から俺は思わず叫ぶ。


「あれ?ソウジさん、いたんですか?」

『なんかよく分かんねえけど……俺、今、剣なのか?』


「ああ、そうだ。壊れることはないから安心しろ、相棒よ。ただ……少々凄惨な光景になるだろうがな。しばらく我慢して見ていろ」


『え?』


クサレマグロはゆっくりと剣を構えた。


「……これはクサレマグロ殿の戦いを見られる貴重な機会なのでは…」


アリシアは真剣な表情でそう呟き、その一瞬たりとも見逃すまいと、鋭い視線で戦場を見据えた。


「聖剣を持つ者……まずはお前からだ――」


ネメルヴァは再び姿を消し、クサレマグロへ襲いかかった。


「……うっ……やはり、あなたは運命の人……ごめんなさい……見えません。先が……見えないんです……」

「どういうことだ?」


苦しげに言葉を吐くレイシェルにアリシアは問いかけた。


挿絵(By みてみん)


クサレマグロは静かに目を閉じ、集中する。


「――甘い」


一歩踏み出しただけで、ネメルヴァの攻撃は紙一重でかわされる。


同時に振り上げられた剣が閃いた。

次の瞬間、ネメルヴァの右腕が宙を舞う。


「馬鹿な……!」


だがネメルヴァは嗤う。


「……ならば、これならどうだ」


無数の魔力の糸が空間に張り巡らされ、一斉に襲いかかる。


「これで貴様に逃げ場はない。粉々に切り刻んでやる!」


だが、目にも留まらぬ剣気が走り、すべての糸が一瞬で断ち切られた。


「馬鹿な……魔力の糸だぞ。なぜ、こうも容易く……!」


「甘いな――化け物よ」


ネメルヴァは次の手を考えるように身構える。


クサレマグロが追撃するには十分な時間はあったが、彼はあえて待った。


「ククク……さあ、化け物よ。次は何をして楽しませてくれる?久しぶりの戦いなのだ。我を思う存分愉しませてくれ」


「はわわわわ……!ソウジさんなら絶対に言えないセリフベスト3に入ります!もうやっぱりこのままでいいんじゃないですか?主人公入れ替えでお願いします☆」


『なんでだよ!』


剣の中から俺は叫ぶ。


『というか……俺、今めちゃくちゃ怖いんだけど。ここ普通に地獄の最前線だろ……』


「ならば――これでどうだ」


ネメルヴァは残った左腕を高く掲げると、

凝縮した魔力の塊のようなものを空へと放った。


「さあ来い……従順な下僕たちよ!」



「……で、何が来るというんだ?」


腐れマグロは退屈そうに肩をすくめる。


「なぜだ……なぜ来ない……!」




「残念ですが、貴方が呼び出そうとしていた石像なら、もうすでにすべて破壊しておきましたよ」


その声とともに、エピステーメーとサバオが戦場へ駆け込んできた。


「エピステーメーさん、サバオ!」


「お待たせしました。……さて、どういう状況でしょうか?」


エピステーメーは周囲を見回し、銀髪となった俺の姿を見て目を細める。


「……あれは、ソウジ?いや……何か違うような?」


すると、リリムがこれまでの経緯を手短に説明する。


「なるほど。どうりで圧倒的な戦況なわけですね」


「くそ……くそぉ……!」


片腕を失い、追い詰められたネメルヴァが歯ぎしりする。

空には満月、最も蒼月が輝く時間となっていた。


「血さえ……ハイエルフの“血”さえあれば……!」


次の瞬間、ネメルヴァは狂ったような形相でレイシェルへ突撃した。


「ッ!?」


だが、それよりもさらに早く――クサレマグロが反応する。


振り払われた星守が閃き、ネメルヴァの足を容赦なく斬り落とした。


挿絵(By みてみん)


「ぐああああっ!!」


ネメルバは地面に倒れ込み、のたうち回る。


「さてと……トドメだ、と言いたいところだが」


クサレマグロは軽く息をつき、剣先を下ろした。


「おい、破廉恥娘。トドメはお前が刺したいのだろう?悪かったな、ここまで遊んでしまって。

あとは好きにするといい」


そう言って一歩退く。


カエラはゆっくりとネメルヴァの前へ歩み出た。


「殺せ……さあ、早く殺せ。どうした、怖気づいたか……」


ほとんど戦う力を失い、瀕死の状態にありながら、それでもネメルヴァは悪態だけはやめなかった。


「……みじめだな、ネメルヴァ。これが悪党の末路ってやつだ」


カエラは静かに言い放つ。


「お前が死ねば、町の人たちの洗脳も解けるだろう?さらばだ、ネメルヴァ!」


そう言うと、彼女は躊躇なくネメルヴァの胸へダガーを突き立てた。深く、抉るように。


刃が心臓を貫く。


ネメルヴァ体はびくりと震え、やがて力なく崩れ落ちた。


挿絵(By みてみん)


「……破廉恥娘よ、仲間の無念は晴らせたか?」

「……ああ」


しかし次の瞬間、異様な気配が周囲に満ちていく。


ネメルヴァの亡骸に、いや……その身を覆う魔晶アーマーに、どこからともなく禍々しい力が集まり始めていた。


「これは……持ち主を失ったことで、鎧そのものが暴走しているのか?」


アリシアが息をのむ。


その時、クサレマグロが一歩前へ出た。


「さあ……こいつは我の楽しみとさせてもらおう」


低く、どこか嬉しそうに言い放つ。


すると――魔晶アーマーは不気味な軋みを上げながら形を変え始めた。


激しい金属音とともにまばゆい光が炸裂し、

次の瞬間、そこに現れたのは――


ネメルヴァそのものではない。

だが、どこか酷似した姿を持つ異形の存在だった。


「……ほう、凄まじい力を感じるな。で、お前は何者だ?」


クサレマグロはどこか楽しげに問いかける。


挿絵(By みてみん)


しかし、目の前のそれは何も答えない。


氷のように冷たい視線。

そこにあるのはただ一つ……

この場にいるすべての者へ向けられた、純粋な殺意だけだった。


次の瞬間。


ネメルヴァに似たその存在は、目にも留まらぬ速さで一気に襲いかかってきた。


「フンッ!」


クサレマグロは、ネメルヴァに似た異形の存在へ向けて一閃を放つ。

凄まじい衝撃波が走り、相手は一瞬その場に踏みとどまった。


しかし次の瞬間、異形の手元に光が集まり、

やがてそれは剣の形を成す。


そして――

目にも留まらぬ速さの剣技でクサレマグロへと斬りかかってきた。


「ほう……これはなかなか」


クサレマグロは嬉しそうに笑いながら、放たれるすべての斬撃を軽やかに受け流していく。


挿絵(By みてみん)


「こ、これは……なんという剣技の応酬だ……!」


アリシアは目を見開きながら、思わず息をのむ。


「クサレマグロ殿の剣は、とてつもなく基本に忠実だ。だが……その“基本”が、あまりにも高みに達している……。私は、あと何年修行すれば、あの域に辿り着けるのだろう……」


畏敬にも似た表情で、彼女は呟いた。


「大変申し訳ありませんが……これはもはや、我々人間が立ち入れる領域の戦いではありませんね」


エピステーメーは眼鏡をクイッと押し上げながら、冷静に分析する。


「うーん……でも、ウチのサバオちゃんなら二人まとめて吹っ飛ばせますわよ☆」


「ヤル!ヤル!」


当のサバオは目を輝かせて身を乗り出す。


「とりあえず黙って見ておけ……」


カエラが呆れたようにため息をついた。



「さて、異形の者よ。楽しい時間はここまでだ。そろそろ終わりにしようじゃないか」


クサレマグロはそう言い放つと、星守を両手で握り締め、静かに力を込めた。


「さあ、相棒。よく見ておけ!これが我の剣技だ」


『ゔ……うぷっ……』


剣の中にいるはずの俺だったが、その凄まじい光景に、まるで乗り物酔いのような吐き気を覚える。


「――行くぞ」


その動きはあまりにも速く、音すら生まれなかった。


次の瞬間。


ネメルバに似た異形の存在は、パンッという乾いた破裂音とともに、文字どおり木っ端微塵に砕け散っていた。


挿絵(By みてみん)


『……えっと、クサレマグロ。今、何をしたんだ?』


「至って普通のことだ。魔力を込め、剣を何度も打ち込んだだけだ」


『何度もって……?』


「うーん……一秒間に数千回、といったところか」


『マジで怖すぎるって……』


こうしてネメルヴァも、暴走した魔晶アーマーも完全に消滅した。


「さてと、相棒よ。楽しい時間を過ごさせてもらった。お前の負った傷も、もうすっかり治っているようだ」


『え……そうなのか?』


「お前の体を借りた瞬間から、出血した部分と抉られた心臓を、我の魔力で再生していたのだ。

これでもう死ぬことはない。――さあ、元に戻ろうか」


ブンッ、と空気が震える。


次の瞬間、俺の意識は自分の体へと引き戻された。


「はっ……!生きてる……?!」


『だから言っただろう?あ……でもな、相棒――』


「うわああああああああっ!!」


俺はこの世のものとは思えない悲鳴を上げた。


「ソウジ、戻ったのか!どうした!?」


「ソウジくん!」

「主!」

「ソウジさん!」


仲間たちが一斉に駆け寄ってくる。


「い……い……い……」


「い?」


「どうしたというのだ、ソウジ」


「痛えぇぇぇぇ!!体中が痛えぇぇぇぇ……!!!!死ぬ……いや、いっそ殺してくれぇぇぇぇ!!!!!!」


「……(×7)」


『すまないな、相棒。我が……まあ、二割ほどではあるが、お前の体を使って戦ったからな。お前の本来の限界を遥かに超えた力だったのだ。体が壊れかけても不思議ではない』


「先に言えぇぇぇ!!!!!」


こうして――

無事にレイシェルを救出した俺たち。


満月が強く輝く夜。


静まり返った森の中に、俺の絶叫だけがいつまでもこだましていた。



ーーーーーーーーーーーーーーー


ーーおまけ小話ーー


【やり残したこと】


挿絵(By みてみん)


『あ、しまった!下着娘とロマンスするの忘れてた!!』

「絶対変わんねーぞ?」

「頼むからソウジはソウジのままでいてくれ…」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ