第23話 何故勝てない!?
エリアスの館を出た俺達は魔装船に帰還してた。
「せっかくのリゾート地なのに高級ホテルとか泊まらないんですか?」
「すまない。なんと言うか…この街に居るのが落ち着かなくてな」
アリシアは申し訳なさそうにリリムに謝罪する。
「わ、わわわわ私は船がいい…です」
「…僕も出来れば宿の方が……」
「あ、あの…お、おおおおお王子様は、船お嫌いですか?」
マリーナは幼気な瞳でエピステーメーを見つめる。
「ま、まさか…嫌いなわけ…」
「良かったです!」
笑顔になったマリーナは、エピステーメーの袖をつまみ、一緒に船に乗り込む。
※マリーナ乗船
「エピ先輩~♡」
『カチャッ』
「…今のは何の音です?」
「いいじゃんいいじゃん☆細かい事は気にしなーい!」
「いや、後ろ手にされてる気が…」
「エピ先輩♡♡今夜は…一緒にブチ上がろうね☆」
何となく楽しそうな2人を尻目に、俺達は明日の事について話し始める。
「さて、とりあえず明日どうすっか…」
「そうだな。今回は闇雲に探すのではなく、しっかりと計画を立てて…」
「なになに?作戦会議??そんなら私の部屋でやろーよ☆」
そして俺達はマリーナの部屋へ。
何故かエピステーメーは鎖で繋がれているが…とりあえず触れないでおこう。
「んでんで?明日どーする感じ~?」
「うーん、この街めちゃめちゃ広いよな?どこからどうやって探したらいいんだか…」
「ましてやリゾート地だ。観光客も多いから聞き込みをするにしても骨が折れるだろう」
少しの沈黙の後、マリーナが元気よく口を開く。
「そんならさ!とりあえずカジノでパーッと盛り上がっちゃおうよ☆」
「は?カジノ!?」
「いや…遊んでる場合では……」
「ほら、探し物ってさ、探してる時ほど見つからないもんじゃん?だったらいっそ全部忘れて満喫してたらいい事あるって☆」
(こいつ…どこぞの剣と同じこと言ってるな)
すると、どこぞの剣から声が聞こえてくる。
『我も爆烈娘に賛成だぞ?それに情報屋のような人間であれば、賭博場のような場所に紛れていても不思議ではない』
「ふむ、クサレマグロ殿の言う事も一理あるか」
「ですです!ここはひとつ、カジノで一発逆転ドリームといきましょう!!」
リリムの目が爛々と輝いている。
「おいおい、遊びに行くんじゃねーんだぞ?」
「何を言ってるんですか!夢はでっかくですよ☆」
(要はお前も遊びたいだけだろ…)
「ははは!私達らしくていいじゃないか。でもリリム、お金なら私達には既に一生遊んでくらせるだけの金貨はあるんだぞ?」
「それはそれです!」
リリムは笑顔で答える。
(やっぱり遊びたいだけじゃねーか…)
「よし、それでは明日はまずカジノから行ってみよう。夜も遅いし、私はそろそろ寝るとするよ」
「スヤスヤ…」
「あら、サバオも寝ちゃってるので私達も失礼しますね☆」
「んじゃ俺も」
「そ、それでは僕も…」
『ガシャン!!』
「……」
「フフフ……エピ先輩♡♡やっと2人きりだよ…これから一緒に…」
「ちょっ!ソ、ソウジ!!助け…」
(何だかんだ幸せそうだからほっといていいよな?)
そう思いながら俺は自分の部屋へ戻る。
その後、あの二人がどうなったか、知る者はいなかった。
そして翌日。
俺たちはさっそくカジノへ向かったのだが――
カジノ近くのカフェには、エピステーメー、サバオ、マリーナ、そして頬を膨らませたリリムの姿があった。
「むぅぅぅ…お子様は入れませんってどういうことですか!」
俺たちはあれからカジノへ入ろうとしたのだが、そこで「子供は入れない」と言われてしまったのだ。
もちろんサバオとマリーナは入れず、リリムは当たり前の顔で入ろうとしたが門前払いを食らってしまい、今に至るわけだ。
「で、でででででも……私たち、実際まだ10代ですし……」
※蚊の鳴くような声
「私は立派な大人のレディです!」
リリムがそう言い放つと、
「すいません。僕にもお子様にしか見えません」
「なんで!?」
「お、王子様は一緒に入らなくてよかったのですか?」
マリーナがエピステーメーに問いかける。
「僕は貴方たちの保護者ですからね。フッ…」
エピステーメーは眼鏡をクイッと上げる。
「だから、私は立派な大人のレディです!」
リリムはさらに憤慨した。
『仕方がないだろう、ロリっ子。お前には色気がないんだから』
クサレマグロの追撃。
「ムキーッ!」
※カジノは武器持込み禁止だったので、エピステーメー達が預かっています
「とりあえず、僕達はここでソウジたちの良い報告を待ちましょう」
――カジノ内。
俺はアリシアと一緒にカジノの中を歩いていた。
「なあ、アリシア。その腕を組む必要はあるのか?」
「いいじゃないか。その方が怪しまれずに済むだろう」
「一体、誰に怪しまれるって言うんだよ」
「ソウジ、とりあえず何かやってみないか?」
「うーん……俺こういうギャンブルって弱いからなあ」
「そうか? 普段のソウジを見ていると、なかなかに運がいいようには思えるが」
とりあえず俺は持っていた金貨をカジノメダルに交換し、ルーレットの席に着いた。
しかし――
「…全然当たらねえ!」
「す、すごいな、ソウジ。さっきからまるでかすりもしてないじゃないか」
「だから言っただろう。俺はこういうギャンブルはダメなんだよ」
「そ、そうだったのか」
俺がルーレットに夢中になっている間も、アリシアは周りをよく見ていたようだ。
「しかし、こうして見ても、エリアスの言っていた女性がいるのかどうか全くわからないな」
「そうだな、人も多いしな」
とりあえず、もう少しカジノ内を見て回るか――と思ったその時。
「お兄さん、ちょっといいかい?」
声のした方へ振り返ると、そこには一人の女性が立っていた。
黒髪のショートカットで、どこか男性っぽい雰囲気ではあったが、非常にスタイルが良く、どちらかというとクールな美女といった感じであろうか。
「ええと……」
「ああ、すまない。さっきアンタのルーレットを見ていたんが、すごいね!」
「え?」
「あそこまで完璧にずっと外し続ける人、逆にいないよ」
褒められてるんだか、けなされてるんだか、よくわからない。
「君は?」
アリシアが女性に尋ねる。
するとその女性は俺の腕を組み、胸を押し当ててくる。
「ねえ、お兄さん。どう? アタシと一つ勝負しない?」
「むっ!」
俺が戸惑っていると、横でアリシアがとても恐ろしいオーラを出していた。
とても今アリシアの顔を見れない。
「アンタらさっきから誰かを探してただろう?」
「ッ!?」
(いつから見られていた?この女、只者ではないな?)
アリシアの表情が更に強ばる。
「アタシと勝負して、勝ったらいいこと教えてやるよ?」
「教えるって…」
「アタシはやる価値はあると思うぞ?それとも何か?このままここで無駄に時間を過ごすのか?」
「……」
「ま、アタシは別にどっちでも構わないけど」
女にそう言われると、
「やる!」
俺はそう言い放った。
「そ、ソウジ、大丈夫なのか? まだ何の勝負かも……」
アリシアが心配そうにする。
「そんならポーカーでどうだい?アンタポーカーぐらいできるだろう?」
俺は女に案内されたテーブルに着く。
「さあ、それじゃあ始めようか!アタシが賭けるのは情報だ。で、アンタは何を賭ける?」
「え、俺も何か賭けないとダメなのか?」
「当たり前だろう。じゃなきゃ賭けが成立しないじゃないか」
俺は何を賭けたらいいものやら悩んでいた。
「ちなみに言っとくけど、アタシの情報は高いんだ。中途半端なモン賭けたって成立しないからな」
その時だった。
「それなら私を賭けたらどうだ?」
アリシアが言い出す。
「え、アリシアを?」
「そうだ。君の情報は高いのだろう?もしソウジが負けたら私を好きにしてもらって構わない。それでどうだ?」
「悪くはないけど……アンタにあんまり興味はないんだよね」
女は俺を見た。
「じゃあ、アタシが勝ったらお兄さんを貰うよ」
「そ、そんなのダメに決まって――」
アリシアが制止しようとする。だが、
「やる」
俺は言い放った。
「へえ、受けるんだね?」
「男に二言はねえ」
「よし、成立だ。それじゃあ始めようじゃないか」
こうして俺とこの謎の女との熱き戦いが幕を開けるのであった。
――三十分後。
「くぁ~……」
アリシアは大きなあくびをしていた。
「えっと、ワンペア」
俺は恐る恐る手札を出す。
「ブ…ブタだ……」
「じゃあ、また俺の勝ちってことで」
「……何故だ!!!何故なんだ!?」
「ん?」
「何故勝てない!?この男、さっきからワンペアしか出してないじゃないか!!!」
「あ、はは…」
「なのに、なぜ私は一つも揃わないんだ!」
女はひどく動揺していた。
「クソッ、もう一回!もう一回だ!!」
「えっと、いいけど……お前もう賭けるものなくないか?」
あれから何度も再戦を繰り返し、女はその度に所持金や私物をベット。遂には今着ている衣服まで掛け始めたのだ。今の勝負で最後の衣服を脱ぎ捨てた彼女は、下着姿となってしまっていた。
「こ、これが最後!最後はアタシ自身をベットだ!!!」
なんと、女は自ら身体を賭けてきた。
「まだ下着が残っているのにもう身体を賭けるのか?」
アリシアが冷静にツッコむ。
「ばっ、馬鹿かお前!!全裸で身体賭けてポーカーなんかやったらコンプラに引っかかるだろ!!」
「お前ら何の会話してるんだ?」
(もう十分引っかかってると思うが……)
「じ、じゃあ、これで最後な?」
そして最後の一勝負。
「えっと……ワンペア」
「クソォォォォォ!!!!!!」
女はカードを投げ捨て、最後の下着を脱ぎ捨てようとする。
「待て待て待て!もういい、もういいから!」
「ダメだ!女に二言はねえ!約束は破らねえ!!」
女は勢いで全て脱ごうとする。
すると、
「もうよいではないか」
アリシアが女を抱きかかえ、周囲から彼女の姿がさらされないように覆った。
「クソ……どうなってんだよ」
その後、女が落ち着いたところで、俺たちは女からゆっくり話を聞くことにした。
「さっきは取り乱して悪かったな」
女は意外にも素直に謝ってきた。
「あ、あぁ、まあまあ、気にすんなよ」
「君の心意気、しかと見届けさせてもらったぞ」
アリシアは優しく笑う。
「それで、君の言う情報とはなんだ?」
「うん、自己紹介がまだだったね」
「アタシの名前はカエラ」
そしてニヤリと笑った。
「そう言えばアンタ達は喜ぶんじゃないかい?」
そう――
先ほど俺たちの目の前で、自らの裸体をさらしそうになった女。この女こそ、俺たちが探していたカエラなのであった。
「え、ええ!? あんたがカエラ!?」
「まあ、大抵ここへ来て誰かを探してる奴ってのは、アタシのことを探してるんだけどね」
「そ、そうなのか…」
「それで?何を聞きたいんだい?」
俺とアリシアは顔を見合わせる。
「場所を変えて話したい。仲間とも合流したいしな」
「……うん、アンタがそう命令するなら構わないよ?」
「は?」
「当たり前だろ?アタシはアンタに負けたんだ。今のアタシは身も心もアンタのモンだよ?主♡」
「ーーーーーー!?(声にならない衝撃@アリシア)」
「い、いやいや!俺はお前から情報貰えればそれでいいから!!」
「何を言ってるんだ?アタシの下着手に持って…満更でもないんだろ?」
「んがっ!!!」
「……ソウジ?」
※優しい声の殺意
(あ、これマジであかんやつ……)
こうしてカエラを探し出すことに成功した俺達だが、俺はこの後来るであろう、最大の修羅場をどう切り抜けようかということで頭がいっぱいになっていたのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【ご乱心のカエラさん】
「クソぉぉぉ!!約束だ!!!もうどうにでもなりやがれ!!!!!」
「やめておけ。これ以上はコンプラが……」
「この回アウトだろ…」
※この後回収した下着をカエラに返し忘れたソウジ




