第22話 新大陸へ!ヴェルディパーク到着
マロ漁港を出港して三日、俺達は次のアルカディア大陸を目指していた。
魔装船は魔力を動力にするということで、俺はてっきりエピステーメーが魔力を注いで…なんて思っていたが、マリーナは父の形見であるというコンパスを舵の真ん中にセットすると、魔装船が起動する。
「マジ神号はねぇ、これで動くんだよ~!」
「そ、そうなんだ」
「このコンパスに魔力が込められてるんでしょうか…」
「てか…マジ神号って…」
「可愛いっしょ☆」
こうして俺達はマロ漁港を出発した。
アルカディア大陸に着いたら、まずはヴェルディパークという街に行くという。
ヴェルディパークはこの世界でもトップクラスの大都市で、リゾート地としても人気がある街だ。
リゾートエリアでは高級宿、高級レストラン等が軒を連ねており、何よりも美しいビーチがあるとのこと。プレイエリアにはカジノや闘技場があり、ショッピングエリアには様々な店が並んでいるという。
そして、高級住宅エリアが高台にあり、上に行くほどセレブな貴族が住んでいるらしい。
夜になり、皆それぞれ船内の個室で休んでいた。
俺はそろそろ寝ようと思っていたら、扉を叩く音が聞こえた。
「ん、誰だ?」
扉を開けると、そこにはエピステーメーが。
「ソ、ソウジ。夜分遅くに申し訳ないのですが、少しこちらに居させてはもらえないでしょうか?」
エピステーメーは随分と慌てた様子であった。
「いいけど……どうしたんだ?」
「そ、その……マリーナなんですが……」
「マリーナがどうした?」
「マリーナからのアピールというか、誘惑というか……非常に積極的でして…」
「え、えーと……?」
「こ、このままだと私の理性が崩壊してしまいます!落ち着くまでこちらに居させてください!」
エピステーメーは必死だった。
「わ、わかった…」
「感謝します」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「…エピもちゃんと人間なんだな」
「当たり前です。僕だって健全な成人男性です」
そしてこの日はエピステーメーと朝方まで語り尽くしたのだ。
マロ漁港出港から三日ほど経ったところで、アルカディア大陸最初の街、ヴェルディパークに到着する。
「すげぇな…ここもめちゃめちゃデカい街だ」
「でもどこか品があるというか、やはりリゾート地だな」
今日はリゾート地ということで、普段は鎧のアリシアも最低限の装備だ。
「早速行ってみましょう☆」
街着に着替えたリリムが元気よく船を降りていく。
マリーナも船を降りながらエピステーメーに話しかける。
「リゾートとかマジアガるんだけど~☆エピ先輩、これから一緒にビーチに行って…」
※マリーナ着陸
「その…あの……ビ、びびびびびビーチ!?み、みず、、水…着……くぁwせdrftgyふじこlp(故障)」
「あ、戻った」
「…ある意味興味があります。是非全身くまなく研究させて頂きたい」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「貴様…好奇心旺盛なのはいいが、マリーナに変な事をしたら…わかっているな?」
アリシアは笑顔で鞘から刃をわずかに覗かせた。怖ぇって。
俺達は街を見て回る。どこも多くの人で溢れており、皆楽しそうだ。
(皆観光で来てるのかな?)
「さて、せっかくビーチがあるのでみんなで遊びましょう!!」
リリムははしゃぎながらビーチへ向かっていく。
「は、はうぅ!!び、びびびびびビーチ…み、みず、水、水……着…」
「船の上のマリーナならダッシュでビーチだったんだろうな…」
「しかし水着か…どうしたものか……」
「ん?どうした、アリシア?」
「いや、海で訓練をしたことはあるが、水着を着てとは……」
「あ、はは…それぞれ思い出の形は違うんだな」
「そ、ソウジは……その…私の水着姿を見たいと思うか?」
「え…あ、ああ…うん、見たい…かも……?」
「わかった。それではすぐに調達して来よう!」
アリシアは足早に街の中へ消えていく。
「…フッ、この後どのようなハプニングが起こるのか…乞うご期待ですね」
エピステーメーのメガネが妖しく光る。
「お前誰に言ってんだよ…」
『キャッキャッ♪』
海辺で楽しそうにはしゃぐリリム、マリーナ、サバオ。
俺とエピステーメーは少し離れたところで三人を見守る。
「何だかこうしてあの三人を見ていると、保護者になった気分です」
「…お前、マリーナに理性崩壊しそうになったろ」
「何を言ってるんですか?あの幼気なマリーナにそんな気持ちを抱けるはずがない!」
(昨日必死で避難してきたじゃねーか…)
「それにしても、アリシアのやつ遅せぇな?」
「ほう、アリシアの水着姿がそこまで楽しみだとは…」
エピステーメーのメガネが鋭く光る。
「そんなんじゃねーよ!」
「…まあ冗談はさておき、探しに行ってみては?ショッピングエリアの入口付近に水着を売っている商店がありましたので、そちらにいるかと思います」
「わかった、行ってくる!」
ーーーーーー
ーーショッピングエリア入口付近の商店
「こ、これは…こんな物を着ている時に敵襲があったら大変なことに…」
アリシアは水着を手に、恥ずかしい気持ちと騎士としての意識の狭間にいたようだ。
「そこの麗しきお方!」
「ん?」
アリシアは声のする方へ振り返ると、そこには一人の男が立っていた。
「おお!何て美しい人…貴方の様な美しい人は初めてだ!良かったら…」
「断る(即答)」
「…せめて最後まで……」
「断る(即答)」
「いや…あのだから、話を…」
「断る(即答)」
もはやその男の事など眼中にないアリシアは、男に再び背を向ける。
「い、いや、わかった。すまない!真面目に話すから聞いてほしい」
アリシアは大きくため息をつく。
「…何だと言うのだ?」
「僕はエリアス。この街に住む者なんだが、最近この界隈も随分物騒でね?我が館で強力な警備隊を組もうと募集をしていんだが…なかなか僕の思うような戦士は集まらなくてね」
「……」
(この男…この街の貴族か?)
「君は見たところ腕が立ちそうな剣士だ。是非僕の館に…」
「貴殿は私の何を見てそう思った?」
「それはもう!このような美しい人は…」
「断る(即答)」
「い、いやいや!僕の直感さ」
「…すまないが、どちらにせよ貴殿の誘いには応えられない。私には守るべき大切な人がいるのでな?」
「あ、いたいた!アリシアー!!」
「ソウジ!」
「なかなか戻らないから心配してたんだよ」
「そうか。それはすまなかった。何というか…その…この水着、布がだな……」
「水着ってそういうもんだろ…」
「君は?」
「ん?誰?」
「エリアスだ。…僕の直感が告げている。君達にならお願いできそうだ。良かったら僕の頼みを聞いてほしい」
俺とアリシアは顔を見合わせる。
「頼みって?」
「良かったら僕の館に案内する。僕一人ではどうしようもできないんだ。是非お願いしたい」
エリアスは深々と頭を下げる。
「わかった。じゃ皆も連れてくるから、話は聞くよ」
「ありがとう!それでは後ほど迎えを向かわせるよ!」
それから俺達はビーチにいるエピステーメー達を呼び寄せ、エリアスの館に行くこととなる。
指定された場所で待っていると、他の街では見た事のないような豪華な馬車が迎えに来た。
「す、すごい!フカフカですよ☆」
「ソウジまでどこへ行ったかと思えば…まさか貴族と知り合っていたとは…」
「声かけられたのはアリシアだけどな」
高台を登ること数分。
一番高い位置にある最も大きな館に到着する。
「はわわわわ!!大豪邸ですよ!!!」
「こ、こんな大きな…な、何か怖いです」
「話からすると、この館の当主はこの街一番の貴族では?」
「…逆に何か怪しくなってきたな」
『…とりあえずあの男、悪い者ではなさそうだ。まあ、無類の女好きといったところか』
「そ、そそそそんなことまでわかるんですか?」
『…まあな』
館に着くと、早速エリアスが出迎える。
「やあ、皆さん!お越しいただきありがとう」
エリアスはアリシアに目で合図を送る。
もちろんアリシアは見ていない。
「それでは早速だが、話をさせてもらうよ」
エリアスはソファにドカッと腰掛ける。
「僕は今、とある活動に力を入れていてね?」
「とある活動?」
「エルフの保護活動だ」
「エルフの?」
「ああ…」
エリアス云く、エルフという種族は、なかなか数が増えない。それは彼らが、人間ほど恋愛や子孫繁栄に強い執着を持たないからなのだとか。
長命であるがゆえに、伴侶を求める感情そのものが希薄なのだという。
「そんな彼らの支援や、時には結婚に至るまでのお手伝いもしてるんだよ(※エリアス結婚相談所)」
「そ、そうか…」
「エルフの力は貴重だ。我々と上手く共存する事でお互いの未来は明るい、僕はそう思ってるんだ」
「それで、僕達に相談とは?貴方の話を聞く限り僕達に手伝える事があるとは思えませんが?」
「…最近そんな僕を悩ませる事件が多発していてね」
「事件?」
エリアスの表情が一気に強ばる。
「エルフ狩りだ」
「ーーーーッ!?」
「世界各地に点在しているエルフが行方不明になる、そんな事が多発してね。調査を依頼したところ、とある組織がエルフ狩りを始めて奴隷商に売り飛ばしているということがわかったんだ。それが今や裏稼業のビジネスとして世界中に広まってしまっていると…」
「なんと卑劣な…」
「そ、そそそのエルフさん達はどうなってしまうんでしょうか?」
「エルフ達は長命だからね。先何世代にも渡って奴隷として使われたり、中には美しいエルフもいるから…」
「胸糞悪い話だな」
「何人かのエルフは僕の人脈で助け出すことはできたんだが、まだまだ被害は後を絶たないんだ」
「もしかしてソウジさんがユーダイモニアで見たっていうエルフの方って…」
「ああ、もしかすると…」
「何を見たのか教えてくれるかい?」
俺はユーダイモニアで見た占い師と、檻に入ったエルフの事をエリアスに話した。
「それは…間違いなくそのエルフはエルフ狩りに巻き込まれているね」
「占い師っても、全然占い師に見えなかったけどな」
「君達にはエルフ狩りに関わる者共の壊滅と、今捕まっているエルフ達を解放してほしい。僕は人脈を使い、彼らに売り飛ばされたエルフ達の救出にあたりたい」
「なるほど、話はわかりました。しかし、かなり危険を伴う可能性がありますね」
「それは重々承知だ。事が済んだら僕の人脈や財力で君達の旅を支援すると約束しよう。それに、その組織は帝国絡みかもしれないという話もある。君達にとっても好都合だろう?」
「…貴殿は何故私達の旅の目的を知っている?」
「僕には人脈があると言ったろう?先程ソウジ君を見てピンときたんだ。君達の話は聞いた事があったからね」
「直感じゃねーじゃねぇか…」
「君達なら大丈夫と思ったのは直感だよ?」
「何にしても情報を集めなくてはなりませんね」
「エリアス、何か情報はあるのか?」
「そういえば、この街のどこかにカエラという女性がいるんだけど、彼女なら何か知ってるかもしれない」
「よし、それじゃあ明日はまずそのカエラって奴を探そうぜ!」
「今日はもう遅いから良かったらこの館に泊まっていくと…」
「断る(即答)」
「え、えぇ~!遠慮しなくてもいいのに」
一刻も早くこの館を出たそうなアリシアを連れて、俺達は船に戻るのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【あの日の思い出】
「なあ、海で訓練ってどんな事やるんだ?」
「そうだな…鎧を着けたまま海に沈められるとか?」
「殺人未遂!?」




