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第20話 もう一度海へ

挿絵(By みてみん)


俺達はマリーナを探し出すべく、ネブリナ国内を総出で捜索していた。


城下町を歩き回り、あちこちで話を聞く。

しかし――成果はゼロだった。


「マリーナ?」


「さあ…知らないねぇ」


「聞いたこともないな」


ネブリナ国王から聞いた特徴を伝えても、誰一人として心当たりがないと言う。


「おかしいですね…」

エピステーメーはメガネをクイッと上げる。


「国王は確かにここにいると言っていたのだ。必ず何処かにはいるはずなのだが…」

アリシアも腕を組む。


「うーん…」


そんな中、城下町の外れまで来た俺達は小さな商店を見つけた。


店先では一人の老婆が椅子に座り、気持ちよさそうに日向ぼっこをしている。


「すみませーん」


俺が声をかけると、老婆はゆっくりと目を開けた。


「なんだい?」

「人を探してるんだ。えと、マリーナって子で…」

俺は老婆にマリーナの特徴を伝える。


すると老婆は、少し考えてから言った。


「……ああ、その子なら知ってるよ」

「本当か!?」

「たまにここに買い物に来る女の子さ」


しかし、どこに住んでいるかなどは全くわからないと言う。


「訳ありっぽかったからねぇ。あんまり詮索しなかったんだよ」

「なるほど…」


話を聞いたリリムが言う。


「もしかしたら今日買い物に来るかもしれませんね☆」


するとリリムは、そのまま店先に座り込んだ。


「じゃあ待ってみましょう☆」

「いや、お前休みたいだけだろ…」


サバオも隣に座る。


「ヒナタボッコー!」


老婆と一緒に日向ぼっこを始めたリリムとサバオ。

結局、リリムとサバオは商店に残ることになった。


俺はアリシア、エピステーメーの二人と再び捜索へ向かう。


しばらく歩き回るが、やはり見つからない。


その時、背中の剣から声がした。


『探し物は探している時ほど見つからない。一度一息入れたらどうだ?』


「なるほどな」


俺は頷く。


「じゃ俺トイレ!」

「は?」

「ちと行ってくる!」

「ソウジ、迷子にならないようにな!」

「…子供じゃないんですから」


俺はその場を離れた。



俺が用をを足していると――

ふと、一人の女の子が目に入った。


青い髪。


小柄な体。


そして髪飾り。


挿絵(By みてみん)


(……聞いてた特徴と一致する)


俺は慌ててベルトを締めようとする。


「おーい!」


俺はベルトをガチャガチャしながら、満面の笑みで駆け寄った。


しかし。


「キャァァァ!!」

女の子は小さな悲鳴を上げ、全力で逃げ出した。


「え!?ちょっと待って!」

※ベルトが閉まらない


ここで逃してなるものかと、俺は必死に追いかける。


「待ってくれぇぇ!!!」

※まだ閉まらない


「こ、ここここここここ来ないでぇぇ」


挿絵(By みてみん)


女の子が逃げた先には、アリシアとエピステーメーがいた。


「何があった!?」


アリシアが声をかける。

女の子は震えながら言う。


「へ、へへへへへへ変態さんです…」

「何!?」


二人は構えた。

そこに必死に追いかけてくるのは…俺だ。


「あ、二人ともその子を捕まえてくれ…」


「ソウジ…貴方はこの幼気な少女に何をしようとしたんです?」

エピステーメーはメガネをクイッと上げる。


「い、いやいやいや!違うって!!ほら、聞いてた情報と一致する子を見つけたからさ!それで話を…」


アリシアが低い声で言う。


「ほう…その格好で何の話をしようとしてたんだ?」

ゴミを見るような目で俺を見るアリシア。


俺のズボンは下がっており、下半身丸出しだった。


「あ…」

「ーーーーー!?(声にならない衝撃)」


女の子はそのまま放心した。


「ソウジ…君は…」

「ち、ちがっ!!違うってホントに誤解だって!!!」


エピステーメーは放心した女の子を抱き上げる。


「…もういい、わかったからズボンを履け」


挿絵(By みてみん)


アリシアに言われ、俺は慌ててズボンを直す。

するとアリシアが耳元で小声で言う。


「そ、その………そういう事がしたいのならまずは私に相談に来い(照)」

「何を言ってるんだよ!!!」



俺達は女の子を保護し、商店へ戻ることにした。


途中で女の子が目を覚ます。

最初に目に入ったのはエピステーメーだった。


「おや、気が付きましたか?」


その瞬間。

女の子に戦慄が走る。


「私の王子様…」

「…?エピステーメーです」


商店へ戻ると、老婆が言った。


「おや、マリーナおかえり」

「へ?」

「あ、おばあちゃん、ただいま」


蚊の鳴くような声でマリーナは答えた。


なんとこの老婆はマリーナの祖母だった。

そしてマリーナの父であり、マロ漁港で英雄と呼ばれたポセイドン。その母でもある。


「えぇ~!!!」


そんな話を聞いた俺達は、マリーナに魔装船の操舵手を頼む。


しかし。


「……無理です」


マリーナは首を振る。


「私は…海に…」


蚊の鳴くような声で何かを言いかけたところでそのまま走り去ってしまった。


すると祖母が静かに語り始める。


「実はねぇ…」


マリーナの父ポセイドンもまた、過去に海が怖くなったことがあり、祖母と共にネブリナ国へ移り住んだという。


「全く…似た者親子だねぇ」


老婆は遠くを見る。


「あのバカ息子は結局また海に出ちまって、最期も海で死んじまったけどね…」



その話を聞いたあと、エピステーメーは一人外へ歩き出した。


しばらくして。

街の片隅でマリーナを見つける。

エピステーメーは隣に座った。


「ッ!?王子様…?」

「エピステーメーです。もし話せたらで構いません。貴方に、お父上に何があったか教えていただけませんか?」


マリーナは蚊の鳴くような声で語り始める。


「私は幼い頃からマロ漁港で育ち、マロ漁港の英雄と呼ばれた父の背中を見て育ってきました。よく父の船に乗せてもらって、それで操船技術を覚えたんです」

「なるほど、お父上の技術を…」


「ある日父は、数十年に一度現れるという海の突然変異種が現れたと言い、海に出る準備をしていました」



✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


「マリーナ、俺ぁこれからちとバケモンを仕留めてくる!」

「化け物?父さん、もしかして…」

「俺がやらなきゃ誰がやるってんだ!心配すんな!必ず無事帰ってくっからよ!!」

「父さん!私も一緒に…」

「ダメだ!お前を巻き込む訳にゃいかねぇ!お前に何かあったら母ちゃんに殺されちまうしな(笑)」

「父さん…」

「晩メシはいつもの頼むぞ!んじゃ、いってくらぁ!」


✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


「その後父は消息を断ち…数日後、港に船が帰って来ました。でもその船には誰も乗ってなくて…父は…」

「……」


「その後私は父の仇をと腕を磨き、父の向かったとされる海域へ向かいました」


✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


『ゴゴゴゴコゴゴ…』

「あれは!?」


大きな音と共に、海面に船をも飲み込んでしまいそうな大きな生物が。


「クラーケン!?」


マリーナは勇敢にクラーケンに立ち向かうも、全く歯が立たず。マリーナは命からがら逃げ出し、何とか無事マロ漁港に生還したが、すっかり自信を失い、海に恐怖を抱くこととなった。


✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


「こうして私は祖母を頼りにこのネブリナ国に移り住み、今はこうしてひっそりと暮らしていたんです」

「そうでしたか…辛かったでしょうに。話してくれてありがとうございます」

「あ、いいいいや、そんな…」

「何はともあれ、貴方は今生きている。それで十分です。お父上もお母上も、貴方が元気でいることが何よりも一番の望みかと」

「そう…ですよね。母さん…母さんは……」

「…」

エピステーメーはメガネをクイッと上げ、少し俯く。


「母さんは今ユーダイモニアで元気にバーを営んでます」


(ヤッホー☆マリーナ~!たまには飲みにおいでー♪

あ、まだ酒飲める歳じゃないかぁ?キャハハハ!!)

↑※マリーナの母


「そ、そうでしたか…」


エピステーメーは真剣な顔でマリーナに向き合う。


「海が怖いのなら、怖いままで構いません」

「え?」

「ですが、それでも海に出る人を私は知っています」

「…誰…ですか?」


エピは静かに微笑んだ。


「それは貴方です」

「王子様…!」


「僕達と一緒に世界の海を見に行きましょう!海は貴方を待っています」



マリーナはしばらく黙っていた。


そして小さく言う。


「……行きます」


「もう一度…海に!」


挿絵(By みてみん)


エピステーメーは優しく微笑む。


「では、皆のところに戻りましょう」

「はい!」


エピステーメーとマリーナが商店に戻る道中。


「そうだ、マリーナ、貴方に一つお伝えしなければならない大切なお話があります」

「は、はははい!!」


マリーナは顔を真っ赤にしてエピステーメーを見つめる。


「貴方の仰っていたクラーケンですが…」

「え?は、はい」

「実は…もういません」

「へ?」

「こちらの大陸へ向かう途中、腹を空かせたサバオが捕まえて来たものですから…僕が丸焼きにして食しました。まあほとんどサバオの胃袋に入りましたが…」

「……」


真っ赤だったマリーナの顔は一瞬で青ざめる。


「貴方の仇だとは知らず、勝手に丸焼きにしてしまい、申し訳ありませんでした」

「ひっ…」


「ヒィィィィィ!!!!!」



その後俺達は、商店に戻った二人から嬉しい報告を聞くこととなる。


「ほっほっほ!やっぱりあのバカ息子の娘だねぇ」


こうして、俺達はマリーナを操舵手として迎えることとなる。

ただし、俺だけは変質者で要注意人物としてインプットされていたようで。


「何はともあれ、よろしくな!マリーナ!!」

俺はマリーナと握手をしようと手を差し出す。


(スススー)


マリーナは俺と距離をとる。


「え?」

「変態さんはお断りです…」

蚊の鳴くような声で拒絶された。


「マリーナちゃん、とても賢明な判断です☆」


リリムはにこやかに言った。


「何でだよ!!!」



こうして俺達は翌日、ネブリナ国を後にし、マロ漁港へと戻るのだった。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーおまけ小話ーー


【そのお味は?】


挿絵(By みてみん)


「あ、あの…クラーケンは美味しかったですか?」

「うーん、身が締まり過ぎてましたかねぇ」

エピステーメーはメガネをクイッと上げる。


「オッキイイカヤキ、モウイラナイ」

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