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第19話 登山はつらいよ

挿絵(By みてみん)


ユーダイモニアを出発した俺達はネブリナ国へ向けて街道を歩いていた。


「ネブリナ国はネブリナ山脈の一番高い場所にそびえ立つ城塞都市だそうです。険しい山道を行くことになるので、麓の村でしっかり準備していくといいとエヴァンシアが言ってましたね」

「いつかそのネブリナ国まで鉄道が繋がるといいですね☆」

「はは、彼らならきっと成し遂げてくれるさ!ところで皆、国王陛下からこの大陸に帝国のものと思われる施設が発見されたと聞いてないか?」

「あー、そういえば何か言ってたような…」


俺は王都ゼニス出発の際の国王の言葉を思い出していた。


「見つけたのは私なんだ。ソウジ達を待ってる間、ネブリナ国へ行ってみようと思ったら偶然道を間違えてしまってな。その時に発見したんだ」

「アリシアさんが見つけたんですね」

「ああ、しばらく様子を見ていてどうも気になってな?国王陛下にはもしかしたら帝国の施設かもしれないと手紙を送ったんだ」

「それがこの近くにあると?」

「ああ、この先山脈の前に森があるがその奥だ」

「うーん、一応寄ってみるか?」

「そうだな、今なら皆もいるし心強い。行ってみよう」


そして、アリシアの案内された先には決して大きくはないが、異様な佇まいの建物があった。


「ここが?」

「そうだ。何やら気になってな」

「早速行ってみましょう!ほらほらソウジさん☆」

「え?俺先頭?」

「当たり前じゃないですか!何かあったらソウジさんを差し出して逃げるんですから☆」

「お前な…」


とりあえず入ってみないことには始まらないので、俺はその敷地に一歩足を踏み入れる。


「ッ!?」


「ダメだよぉ~。他人の家に勝手に入っちゃダメって教わらなかった?」


「ーーーーッ!?」


気が付くと、俺は翠の鎧に包まれた男に槍を突きつけられており、その尖端は俺の喉元を確実に捉えていた。

俺は恐怖で声すら上げられなかった。


「貴様!何者だ!!帝国の者か!?」

アリシアは剣を構える。続いてエピステーメー、サバオも臨戦態勢を取る。


「えぇ~、他人の家に勝手に入ってきて何者だって言われてもなぁ…」


『お前ら落ち着け。この者、我でも気配を感じ取れなかった。危険すぎる』


クサレマグロは冷静にアリシア達を制止する。


「で、君は?どうしたいのかな??」

「…入らない」

「よし、いい子だね!賢明な判断だよ」


翠の鎧を纏った男は槍を下ろし、俺達と向き合う。

俺はすぐさま一歩下がる。


挿絵(By みてみん)


「ソウジ!大丈夫か!?」

アリシアは心配そうに俺の肩を抱く。


「あ、ああ…」


「…大きくなったな」

「へ?」

男はそう呟くと、リリムは目を丸くする。


「あ、ごめんごめん。何でもないよ」

「貴方は一体何者です?帝国の関係者か?」

エピステーメーが一歩前に出る。


「ん?帝国?違うよ」

「では一体…」

「うーん…強いて言うなら、今の君達には関係ないかな?」

「なっ…」

「あ、大丈夫!別に悪い事してるわけじゃないから。僕の任務は終わったからもうこの施設ごと消えるよ」


そう言い残すと、男は建物の中へ向かおうとする。


「ま、待て!」

アリシアは止めようとする。

すると男は立ち止まる。


「…やめておいた方がいいよ?」

「ぐっ!」


一瞬ではあったが、俺でもわかる凄まじい殺気に、アリシアは圧倒されてしまう。


『下着娘、やめておけ。向こうから消えてくれると言っているのだ。深追いはするな』


すると、男は振り返り、俺とリリムを見る。


「…君とは仲良くなれそうだ。まあ…また会えたらだけどね?」

「え?」

「お互い自己紹介はその時にしよう!それじゃあね~」


そう言い残すと男は建物の中に消えていく。

そして大きな光を放つと、そこには元々何も無かったかのように全て消えてなくなっていた。


「何だったんだ…」

「わかりませんが…非常に危険であったことは間違いなさそうです」


「どうした?リリム」

「うーん、よくわかりませんが…何だか懐かしい気持ちになりました」

「え?お前アイツのこと知ってるのか?」

「いえ☆全然!」

「はあ?」


「とりあえず事は終わったし、ネブリナ国へ向かおう。皆、危険な目に遭わせて済まなかった」

アリシアは申し訳なさそうにする。


俺は何となくあの翠の男が悪い奴には思えなかったが、とりあえず今は他に目的があるので一旦忘れることにした。


その後俺達は元の道に戻り、再びネブリナ国を目指す。

しばらく進むと、山の麓の村に到着する。


村としてはかなり大きな規模だろう。

建物も多く、村人の数も多い。


「さて、まずは宿の確保ですね」

「なあ、商人達皆ここで荷物を降ろして帰っていくぞ?ネブリナ国には持って行かないのか?」

「そういえば、皆さん山に登る気配がないですねぇ。ネブリナ国出禁なんでしょうか?」

「商人達何をしたんだよ…」

『険しい山道だと言っていただろう?馬車や商人達の足ではネブリナ国まで辿り着くのが困難なんだ』

「じゃあネブリナ国に物資届けられなくねーか?」

『山の入口を見ろ。屈強な男達がいるだろう?運び屋だ。奴らが商人に変わって荷物を運ぶんだ』

「ふーん、ロープウェイとかあれば楽なのにな」

「…エヴァンシアにしたらまた飛びついてきそうな事を言っているな」


「とりあえず今日のところは物資の調達だけしてゆっくり休むとしましょう。僕が宿の確保をしてきます」


必要な物資を買い揃えた俺達は宿に戻る。

宿の部屋で必要物資を各々運べるように整理していた。


「よし、こんなとこか。昔士官学校ではよくこの様に大量の荷物を抱えて山岳訓練を行ったものだ」


アリシアは懐かしそうに話す。


「なあ…この荷物さ、リリムが全部持てるんじゃないか?」

「へ?」

「いや、さすがにリリム一人では無理だろう?」

「そうですよソウジ。か弱い女性に全て持たせるつもりですか?」

エピステーメーはメガネをクイッと上げる。


「いやいや!そうじゃなくて、リリムには収納空間だかってあるだろ?」

「あ…」

「そういえば…大量のカップ麺をそこにしまってあると言ってましたね?」


「……(笑顔)」


「どのくらいの物が入るかわかんねーけど、これ少しでも入るなら随分楽になるんじゃねーか?」


「……(笑顔)」


「そうだな…リリム、もし可能ならお願いできないか?途中魔物や野獣が出た時のことを考えると非常に助かるのだが…」


「……(笑顔)」


「リリム?」


ずっと愛想笑いのような笑顔を浮かべるだけで、全く反応のないリリムを見て、俺はハッとする。


「おいリリム…その収納空間の中見せてもらえるか?」

「え、えぇ!だ、ダメですよぉ!!」


明らかに動揺しているリリム。


「そんじゃあこの荷物、どれか入れてみてくれ」

「え、えーと…ちょっと大きすぎるというか重すぎるというか…私の力では入れるのが大変で…」

「俺達が入れる。収納空間を開いてくれ」


俺は先日、カップ麺を買い出しに行った際、リリムが得意気に収納空間を開いて、大量のカップ麺を突っ込んでいるところをしっかり見ていたのだ。


「え、えーと…」

「リリム!(×3)」※圧強め

「わ、わかりましたよぉ…」


観念したリリムは遂に収納空間を開く。

中を覗いた俺達は衝撃の光景を目の当たりにすることになる。


挿絵(By みてみん)


「嘘…だろ…?」

「なんじゃこりゃあああ!!!」

絶叫のアリシア。

「ジーパン刑事ですか☆」

「何でお前が知ってるんだよ…」


中は大量のカップ麺やお菓子におもちゃ、大量の空き容器が散乱していて、まさにゴミ屋敷といった状態になっていた。


「どうやったらこんな事になるんだよ…」

「リリム、ちなみにこの収納空間はどの程度の収納が可能なのですか?」

「うーん、明確に決まっているわけではないらしいですけど、まあ宿の一部屋分は間違いなくありますかねぇ…」

「かなりの広さだな…」

「と、とにかく、皆でこの中を片付けて、この荷物をリリムに預けられるようにしましょう」


こうして俺達は、リリムの汚部屋(収納空間)を片付けることとなった。


「あ、ソウジさん!コッソリ下着持ってかないでくださいね?」

「ソウジ、そんなに下着が欲しいなら私の…」

「だから何でそうなるんだよ!!!」


片付けが終わる頃にはすっかり夜も更けていた。


そして翌日、俺達は早朝からネブリナ国へ続く山道に入り、険しい道を進んでいく。

アリシアとサバオはスタスタと進んでいく。続いてリリムもフワフワと着いて行く。


「はぁはぁ…ちょ、ちょっと待ってくれ、お前ら…」

「こ、これは…想像以上でした…」


あまりの険しさに既に限界の現代人の俺と元引きこもりのエピステーメー。


「大丈夫か?この先に広くなってる所がありそうだから、そこで一旦休憩をしよう」

「だらしないですねぇ…これだから軟弱男子は…」

「お前は歩いてねーじゃねぇか!」

「ほら、ソウジ。立てるか?」


アリシアは優しく俺の両肩に手を添える。


「アリシアさん、ソウジさんに甘すぎません?」

「ソウジ、エピー!ハコブー!」


サバオは俺とエピステーメーをヒョイっと持ち上げ、そのまま山道を登っていく。


「サバオはあのまま何往復でもできそうだな…」

「さすがセラフドラゴンですねぇ」


その後も俺達は、途中魔物や野獣と戦いながら更に山道を進んだ。


途中野営をしながら二日間かけて登り続けると、

遂にネブリナ国の姿が見えてきた。

城塞都市と呼ばれるネブリナ国は断崖絶壁にあり、周囲からの侵略はほぼ不可能で、非常に立派な城壁に囲まれており、まさに難攻不落といった感じの佇まいだ。


挿絵(By みてみん)


「すげぇ…壁が高すぎて中が全然見えねぇ」

「さすがは城塞都市と呼ばれる国です。ここを攻め落とすのは非常に難しいでしょうね」


俺達は早速中へ入ろうと、門番の兵士にエヴァンシアからの書類を見せる。


「これは、ユーダイモニア市長からの?」

「そうです。国王にマロ漁港での一件を報告させてもらえればと」

「わかりました。どうぞ」


「街の中に入るのも大変だな…」

「このネブリナ国は特にな?外部から入る者には特に厳しいから、この城下町も治安水準が高いんだ」

「ほぇ~…」

「人々も安心して外を歩けますね」


そして俺達はネブリナ城へ。

中へ行くとネブリナ王が既に待ち構えていた。


「やあ、よく来たね。険しい山道だったろう?ご苦労様」


ネブリナ国王はまだ若く、優しそうではあるが、どこか威厳のある、といった感じだ。


「エヴァンシアの使いの者から話は聞いているよ。マロ漁港の窮地を救ってくれたとの事。感謝する」


「い、いえいえ、そんな…」


深々と頭を下げる国王。俺は反応に困ってしまった。


「君達は帝国の暴威を止める為旅をしていると聞いた。先のマロ漁港での一件も帝国だったと。我々ネブリナ国としても看過する訳にはいかない。国として是非君達に協力させてもらうよ」

「ありがとうございます!」

「険しい山道を来たんだ。城の客間を自由に使えるようにしておいたから、そこでゆっくり休むといい」

「お心遣い感謝致します」

エピステーメーは深く頭を下げる。


「あと何か協力できることはあるかな?」

「じゃあ、マリーナって人がこのネブリナ国にいると聞いてきたんですが…」

「マリーナ…?天才操舵手のマリーナかい?」

「あ、そうそう!それです」

「過去に一度、彼女が操舵手を務める船に乗ったことがある。だから僕は彼女の事を知ってるんだが…」

「?」

「…確かにこの城下町にいるよ。だいぶ雰囲気は変わったけど間違いなくマリーナだろう」

「よっしゃ!ビンゴだ!!」

「詳しく何処に住んでいるかまではわからない。今日はゆっくり休んで、明日にでも城下町を探すといい」


その後、客間に案内された俺達は、この日はゆっくり休ませてもらう。


そして翌日。

俺達はネブリナ国マリーナ大捜索をスタートさせる。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


ーーおまけ小話ーー


【汚部屋の不思議】


挿絵(By みてみん)


「こう散らかっていると必要な物がすぐに取り出せないだろう?」

「そんなことないですよ?ほら☆」

「汚部屋あるあるかよ…」

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