第17話 再びユーダイモニアへ。
マロ漁港奪還、そしてアリシア救出から数日後。
町の復旧もある程度目処が立ち、アリシアの鎧の修理も終わったところで、俺たちは再び旅立つ日を迎えていた。
「ソウジさん達もう行っちゃうのか。もっといてくれてよかったのに」
「はは、俺たちも本当はもっといたかったけど、まだ行くところがあるからな」
すると一人の住人が声をかけてきた。
「命の恩人のあなたたちにぜひ使ってほしいものがあるんだ!」
「使ってほしいもの?」
「こっちへ行ってくれ」
俺たちは案内された場所へ向かった。
そこには一風変わった船が停められていた。
「これは魔装船ですね」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「魔装船?」
「魔力を動力にして動く船です」
「へぇ...」
「今この漁港には、この船を動かせる者がいません。昔、この町の英雄である操舵手のものだったんですが、数年前に事故で亡くなりまして」
「そんな貴重な船を私達が頂いてしまっていいのか?」
「彼は生前言っていたんです。『俺が死んでもこの船は死なねぇ!もし俺に何かあった時は、この船で世界を回るヤツに譲ってやってくれ』その言葉通り、彼は亡くなりましたが、船だけはこの港に帰ってきたんです」
「それはすごい話だな…」
アリシアは驚いた表情をする。
「俺たちならエピがいるから動かせそうだな?」
「動かすことはできますが、操舵手がいませんよ?きっとその操舵手さん、魔力もあった方なんですね」
「この町に操舵手はいるのか?」
俺は住人に尋ねる。
「それが、今この町にこの船を操作出来る操舵手はいないんです」
「それは困りましたね。せっかくいただいたのに使えないのでは」
すると、出港の準備をしていた一人の漁師が声をかけてくる。
「その船を動かせるのは奴の娘のマリーナちゃんだけだ!」
「マリーナ?」
「その操舵手の娘です。若くして天才操舵手と言われた方なんですが、父の意志を引き継ぎ海へ出たところ同じ事故に遭いまして。奇跡的に帰ってはきたのですが、それがトラウマとなって…それ以降海に出られなくなりました」
「そのマリーナさんという方は今どちらへ?」
リリムがそう聞くと、
「この町にはいません。海を見るのも嫌だと…恐らく海から最も離れた場所、ネブリナ国に住んでいるかと思われます」
「そんじゃ、そのネブリナ国へ行ってマリーナを探そうぜ!」
「待てソウジ。まさか誘うつもりなのか?」
「え?もちろん!」
「そこまで海を嫌がっている方が私たちに協力してくれるでしょうか?」
「あれだけ海が好きだった子が、海を見たくねえって言ったんだ。よっぽどトラウマだったに違いねえ。まあ、お前さんもあまり無理に誘うことはしなさんな」
「でもさ、亡くなった親父さんと同じ事故に遭って生きて帰ってきたんだろ?すげえじゃん。親父さん超えてるじゃん。いいな、やっぱその操舵手欲しいな」
「さすがソウジさん!デリカシーの欠片もないですねっ☆」
「ソウジ、説得する気なのか?」
「もちろん!俺たちの操舵手はそのマリーナしかいねえ」
「はっはっは!そのセリフ、マリーナちゃん見つけたらぜひ言ってやんな」
「よし、それじゃあ出発しようぜ」
「お気をつけて!船は整備しておきますので」
マロ漁港の人たちから大きく手を振られ、俺たちは港を後にした。
「さて、まずはユーダイモニアへ行って、市長さんに今回の件の報告をしましょう」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
その時だった。
『皆、すまないが、先に祠へ向かってくれないか』
クサレマグロの声が聞こえてくる。
「祠?サヴマの祠ですか?構いませんが、どうされました?」
クサレマグロは何も言わなかった。
「クサレマグロさん、もうホームシックですか?」
「まあ、とりあえず行ってみようぜ」
俺たちは祠のある村へ向かった。
しかし村に着いた瞬間、俺たちは言葉を失った。
村の建物は崩れ、まるで戦場の跡のようだった。
「ひどい……」
「なんだこれは。一体何があったんだ」
「村長さんは無事でしょうか」
「そうだ、爺さんはどこだ」
俺たちは村長を探しながら祠の方へ向かった。
するとそこには村長の亡骸があった。
「爺さん!!!」
俺は村長の体を抱き上げる。
「一体誰がこんなことを」
「クサレマグロ、知っていたのですか?」
『いや、誰がやったかまではわからん。ただ、なんとなく爺さんの気配が感じられなくなったものでな』
「皆で弔ってあげましょう」
するとクサレマグロが言った。
『それならば、この先に高台がある。そこにある墓石の傍に弔ってやってくれないか』
「そこは?」
『爺さんの奥さんの墓だろう』
俺たちは村長の亡骸を高台へ運び、小さな墓の横に埋葬した。
「これで奥さんと一緒ですね!もう寂しくないですよ☆」
「そうだな」
俺たちは皆で祈りを捧げた。
『爺さん、仇はとったぞ…』
「え?」
『何でもない。では行こうか』
そして俺たちは村を後にし、ユーダイモニアへ向かった。
数時間後。
「相変わらずでっけえ街だな」
俺達はユーダイモニアに到着。
街へ入ると、俺たちは早速エヴァンシアの元へ向かった。
「みんな無事だったのね!仲間も無事助けられたようでよかったわ」
「市長さん、いろいろとありがとうございました☆」
そこへ一人の男が駆け寄ってくる。
「剣士さん!」
「おお、君はあの時の商人か。無事にたどり着けたんだな。よかった」
「剣士さんこそ、ご無事で何よりです。あの時は本当にありがとうございました」
「ソウジ君、しばらくこの街には滞在するのかしら?」
「行きたいところはあるのですが、この前のお話も途中ですし、少しの間滞在しようかと思います」
「それはよかったわ。この前の話の続き、ぜひ聞かせて欲しいの」
エヴァンシアは嬉しそうな表情をする。
「イリアス、その時は同席をお願いできるかしら?」
「もちろんです」
その後、俺たちは一軒の大きな屋敷へ案内された。
「この屋敷、君達が自由に使っていいわ」
「え、本当にいいんすか?」
「すごい豪邸です☆」
「オッキイオウチ!」
「君たちはこのユーダイモニアの流通路を守ってくれた英雄よ。このくらいのことはさせてもらうわ。ここに来た時は自由にこの家を使ってちょうだい」
「このユーダイモニアはこの大陸の拠点、しかも世界から見ても真ん中あたりに位置します。僕たちの旅の拠点として使わせていただけるとは非常にありがたい話です」
エピステーメーは眼鏡をくいっと上げる。
「何かございましたら何でもお申し付けください」
メイド服を着た人がいる。お手伝いさんというやつだろうか。
「温泉もございます。お着替えも準備しておりますので、いつでもご自由にお使いください」
その日は旅の疲れを癒すため、屋敷でゆっくり過ごすことにした。
「すげぇよな、まさか温泉まであるなんて!」
「さすが豪邸ですね。まさに至れり尽くせりです」
エピステーメーは眼鏡をクイッと上げる。
「よっしゃ、じゃあ俺、温泉入ってくるぜ!」
「あ、待ってください!今温泉には…」
慌てて声を上げるエピステーメーであったが、早く温泉に入りたくて仕方ない俺の耳には届いていなかった。
「フッ……まあいいでしょう。読者サービスということですね」
エピステーメーは眼鏡をクイッと上げる。
「物語をご覧の皆様。この後、面白いものが見られそうですよ」
エピステーメーはメガネが妖しく光る。
誰に向けて言ってるんだ?
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「お屋敷の中にこんな温泉があるなんて最高ですね☆」
「そうだな。こんな立派な場所で湯浴みができるとは思わなかった」
「ところでアリシアさん、最近なんだかソウジさんにすごく優しいですよね☆」
「そ、そそそそんなことはないと思うぞ」
「そうですかぁ?」
リリムはニヤニヤとアリシアの顔を見る。
「いやリリム、君だってソウジのことを……」
「え? ソウジさんは雑魚ですよ?」
「はは、そうか(笑)さてリリム、そろそろ上がろうか?」
「はーい☆」
アリシアとリリムは立ち上がる。
「しかしアリシアさん、すごくスタイルがいいですね!」
「これでも鍛えているからな」
そんな会話をしながら二人が脱衣所へ戻ると、ばったり俺と鉢合わせた。
「えっ?」
「あら、ソウジさん。下着泥棒の次は覗きですか?」
「ちちち違う違う違う!!!!まさか二人が入ってるなんて!!!!!!」
「なんだソウジ。一緒に入りたかったのか?」
「何を言ってるんだよ!?」
「私たちは先に部屋に戻っているから、ソウジはゆっくり入るといい」
「アリシアさん、やっぱりソウジさんに異常に優しいですよね?」
「そ、そうか? そんなことはないと思うが…」
俺は固まったまま、二人の顔を見られずにいた。
「ソウジさん、私たちはこれから着替えます。こっちを向いたら本当にぶっ飛ばしますからね?」
「あ、はい…」
そして、着替えた二人が脱衣所を出ていく。
俺はそのまま温泉へ。
「ほんとにびっくりした…」
俺の体はすでに熱くなっており、温泉の温かさはよくわからなかった。
後からエピステーメーとサバオが入ってくる。
「オンセン!オンセン!」
「おや?ソウジ、顔が真っ赤ですよ。大丈夫ですか?」
「あ、あぁ…」
「…何かございましたか?」
エピステーメーのメガネが鋭く光る。
「何でもねーよ…」
しばらくして。
「よし、そろそろ上がるか」
そして俺は温泉を出て、部屋へ戻った。
「……今日はもう、何も起きないよな?」
そう思いながら、俺は部屋の扉を開ける。
この後俺は、リリムとアリシアの顔を見れないまま皆で夕食を食べ、明日に備えるのであった。
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ーーおまけ小話ーー
【湯上り後】
「ほらソウジ!ちゃんと拭かないと風邪をひくぞ?」
「ちょっ!自分でできるから!!」
「優しすぎてもはやお母さんですねぇ」
今回からおまけ小話入れてみました。
これから毎回入れていく予定です。




