第16.5話 カップ麺協奏曲 ~はじめてのお使い!?~
ディミトスとの戦闘から三日、五人はマロ漁港に留まり復興支援をしていた。
――宿の部屋の中。
ソウジとアリシア。
「アリシア…お前いつまでその格好でいるんだよ…」
「仕方がないだろう?鎧を修理する羽目になってしまったんだから」
そこにはインナー姿のアリシア。
「ふ、服とかねーのかよ!」
「無いこともないが…ソウジはこの格好が好きなんだろう?」
「ばっ!そんなわけ…」
「ん?」
「…ないこともないけど」
「それならば問題ないな!さあソウジ、復興支援に行くまいか!!」
「お、おう…」
――復興支援現場
「ッ!?(ブルッ)」
「ん?リリム、どうしました?」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「何だか今…ヒロインの座を奪われてしまうのではという不安に駆られました」
「…何を言ってるんですか?」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
そして夜。
宿の食堂に集められた俺達。
声をかけたのはリリムだ。
「んで、話って何だよ?リリム」
「重要な事だと言っていたな?」
「オハナシ、オハナシ!」
リリムは机をバンっと叩く。
「皆さん、お集まりいただきありがとうございます。皆さんに集まっていただいたのは他でもありません。私達は今大変な事態に直面したのです!!」
「ど、どうしたというのだ…リリム」
「…あと一つ、あと一つしか残ってないのです」
「は?(×4)」
「カップ麺があと一つしか残ってないんですぅぅぅ!!!!(泣)」
「だからあれほど考えながら食えって言っただろ!!!」
そう、俺が異世界へ戻ったあの日。リリムは大量のカップ麺をこの世界へ持ち込んでいた。
しかし、カップ麺に目がないリリムと食べ盛り?なサバオは、食事の度にカップ麺をバカ食い。数ヶ月はもつであろう量のカップ麺はすでに底を尽きかけているというのだ。
「これは由々しき事態ですよ!」
「ないもんは仕方ないだろ?こっちで食糧調達しようぜ」
「ソウジさん何を言ってるんですか!私カップ麺が無い生活なんて耐えられません!!」
「カップメンー!」
「ねーもんはねーんだから仕方ねーだろ!!!」
「エピステーメーよ。カップ麺とは何だ?」
「ソウジの世界の食べ物です。湯を入れて少し待つだけで非常に美味しい麺料理が食べられるのです」
「湯を入れるだけで?それはすごいな…」
俺とリリムがギャーギャーと揉めていると、クサレマグロが提案をしてきた。
『それならば相棒の世界へ買い出しに行けば良いのではないか?お前達は自由に行き来出来るのだろう?』
「あ、そういえばそうでした!テヘ☆」
「テヘ☆じゃねぇ!!」
こうして俺とリリムとサバオは一旦この異世界を離れ、カップ麺の買い出しに俺の世界へ行くこととなった。
早速リリムが異空間ゲートを開く。
俺はゲートを覗き込むと、そのまま床へ倒れ込む。
「ソウジ!?」
「大丈夫ですよ!ソウジさんの魂だけ向こうの世界のソウジさんの身体に行きました。では私達も行ってきますので、ソウジさんの身体は適当に安置しておいてください☆」
適当扱いすな。
「安置って…」
「ではいってきまーす☆」
「ステーキ!クレープ!タコヤキ!ギュードン!」
「行ってしまった…」
「何とも不思議な光景ですね。ソウジは魂、リリムとサバオは生身で。これが作者匙加減のファンタジーですか……フッ」
エピステーメーはメガネをクイッと上げる。
「…お前は何を言ってるんだ?」
アリシアは俺をベッドまで運ぶ為、俺を担いだ。
「はっ!」
俺が目を覚ますとそこは俺の部屋であった。
枕元のスマホを見ると、俺が異世界へ旅立ってから十日経っていた。
「あれ?もっと経ってると思ったけど…本当に時間の早さが違うんだな」
『ゴンッ!ドスンッ!!』
「何だ?」
トイレの扉が開くと、リリムとサバオの姿が。
「頼むからゲートは他の場所に作ってくれないか…」
「さあ、ソウジさん!早速…」
「ああ、買いに行くか」
「まずは家系ラーメンです!」
「はあ!?」
「その後に牛丼食べて、クレープ食べて、たこ焼き食べて、ステーキ食べて、あ、今回はトンカツと寿司も食べてみたいです☆」
「そんなに食えるか!!」
『グゥゥ~』
「ソウジさんは私達がひもじい思いをしてもいいと言うのですね?」
「オナカスイタ…」
「さっき食ってきたろ!!」
結局リリム達の謎のグルメツアーに強制連行された俺。見てるだけで胸焼けがする。
その後、ようやくスーパーへ買い出しに。
カゴいっぱいのカップ麺を購入し、また次のスーパーへ。ここでもカゴいっぱいのカップ麺だ。
「お前…こんなにどうやって持って帰るんだよ…」
「入る分はカバンに入れて、あとは収納空間に入れます」
「収納空間?」
「私達女神様の巫女は各々女神様から一つだけ特別な力を頂けます。私はいつでも自由に取り出せる収納空間を頂きました」
(いつもどこぞから取り出してたハンマーはそれか…)
「他の巫女ってのはどんな力を貰ってたんだ?」
「そうですね…治癒魔法だったり、戦闘のお役に立てるような力を皆頂いてましたかねぇ」
「で、お前がその収納空間にした理由は?」
「え?だって荷物持って歩くの嫌ですし、食べ物いっぱい持って歩けるからお腹空く心配もないじゃないですか☆」
「お前ホントに女神様の巫女かよ…」
聞いた俺が馬鹿だった。
「なあ、ところでその収納空間ってやつがあれば皆の装備とか旅に必要な物とかもっと持ち運べたんじゃないか?」
「あ……そうだソウジさん、凛々香さんに会っていきましょう!せっかく来たんですし☆」
「今、あ…って言ったろ」
「ほらほら、早く次のスーパーへ行って凛々香さんに会いに行きますよぉ☆」
「待て待て!まだ買うのか!?」
結局その後も10軒以上のスーパーをハシゴすることとなる。
そして、ようやく買い出しが終わった俺達は凛々香さんの部屋へ。
呼び出しを鳴らすが応答はない。
「おかしいな…電話かけても出ねーし…なんかあったのかな?」
「はっ!これはもしや…恋のライバル出現というやつでは!?」
「そ、そんなこと…」
とはいえ、俺は自分に自信がない。
「ソウジさんが留守にしてる間にネトr…いや、凛々香さんの寂しさを埋める素敵な方が…」
『ズーン』
「あ…ご、ごめんなさい、き、きっとお仕事忙しいんですよ☆」
『ズーン』
「凛々香さん、あんなに素敵な人です!ソウジさんを裏切るわけないじゃないですか!!」
「だよな!だよな!!凛々香さんなら大丈夫だよな?よし、メッセージだけ送っておこう。また会いに来るよ…と」
(うわぁ…この切り替えの早さも腹立つわぁ…)
こうして俺達は再び異世界へ戻る。
「はっ!」
俺が目を覚ますとそこは宿の部屋であった。
「ソウジ!戻ってきたのか?」
「ああ、ただいまアリシ…」
『ドサッ!ドスンッ!!』
リリムとサバオはまた俺の上に降ってきた。
「ただいま帰りましたぁ☆」
「タダイマ!タダイマ!」
「早くどけぇ!!!」
「アリシアさん!カップ麺買って来ました!!これはアリシアさんに特別なカップ麺です。限定品というものらしいんです☆」
「そうか、ありがとうリリム。早速頂くよ!」
リリムはカップ麺にお湯を入れ、出来上がるとアリシアに手渡した。
「アリシアさん、どうぞ☆」
「ありがとう、ではいただくよ」
「……」
「美味い!!ソウジのマヨネーズも衝撃だったが、これはまた違った衝撃だ!!ソウジの世界にはこんなにも美味な物がたくさんあるのだな!」
「ウフフ、喜んでもらえて良かったです☆」
リリムは満足そうな顔をする。
そしてアリシアはカップ麺をすぐに平らげた。
「ご馳走様!本当に美味しかったよ」
満足そうなアリシア、嬉しそうなリリムを見て、俺も心が満たされた気分だった。
「ん?」
(リリム達が買い出しに行ってる間、私が残り一つのカップ麺を先に頂いてしまったことは黙っておこう…)
俺はもう一つのカップ麺の空き容器を見つけたが、何かを察し、誰にもわからないように隠すのであった。
そして翌日、俺達はユーダイモニアに向けて出発することとなる。
(これからカップ麺の在庫管理はしっかりしよう…)
【最後の一つの行方】




