第15話 奪還&救出大作成②
「それでは行ってまいります」
竜の姿に戻ったサバオはエピステーメーを抱え、今まさに飛び立とうとしていた。
『頼んだぞナルシス。お前が失敗したらこの計画は全て台無しになってしまうからな?』
「…心得ておきます」
「あぁ…サバオ、ちょっと見ない間にこんなに大きくなって…」
「お前は親戚のおばちゃんか」
「では行きましょう、サバオ」
「キュイイイ!」
サバオがこくりと頷くと、エピステーメーを抱えたサバオはマロ漁港へ向けて凄まじい速さで飛び立って行った。
「サバオー!寄り道しないで行くんですよぉー!!」
「お前はオカンか」
「驚いたわ…まさかサバオ君が竜の子だったなんて…」
「あはは…まあ色々あって…」
「市長、馬の準備が出来ました!」
一人の兵士がエヴァンシアに報告をする。
「ありがとう。さあ二人とも、この街で一番速い馬を用意したわ!君達も気をつけて」
「市長さん、ありがとうございます☆」
「ソウジ君が馬に乗ったことないなんてねぇ…」
「あ…はは、俺車の免許も持ってないんで」
「車?」
「あ、いや、何でもないす」
エヴァンシアに指定された場所に向かう俺とリリム。
その途中、俺はある人集りに気を取られる。
「さあさあ絶対に当たる占いだよ!皆良かったら診てやるぜ!!これで人生に迷う事なしだ!!!」
ガラの悪そうな男が人を集めていたようだ。
男の横には馬車の荷台があり、荷台の上には檻に入れられた女性が。その女性はこの世のものとは思えないほど美しい女性であった。
(すげー美人…あの耳、エルフってやつかな?)
次の瞬間、檻の中のエルフと目が合う。
「ーー!?」
エルフは驚いた表情をする。
「ん、何だ?」
「ソウジさん、何やってるんですか?早く行きますよ!」
「ああ、悪ぃ」
気にはなったが、今はアリシア救出が先なのでその場をそのまま後にした。
指定された場所に着くと馬を連れた兵士が待っていた。
「ソウジさん、リリムさん、こちらです」
「ありがとうございます☆」
リリムは早速馬に跨り手綱を握る。
「ほら、ソウジさんも早く!」
「おう!」
俺もリリムの後ろに跨る。
「さあ、飛ばしますよぉ☆ソウジさん、しっかり捕まっててくださいね!」
「わかった!」
俺は後ろからリリムにしがみつく。
「…」
「どうしたリリム?出発しないのか?」
「ああ…私この後どさくさに紛れたソウジさんに色んなところをいっぱい触られるんですね…キャッ♡」
「はよ出発せんかい!!!」
**********************
俺とリリムがユーダイモニアを出発する頃、サバオとエピステーメーはマロ漁港の手前まで到着していた。
「マロ漁港が見えました。サバオ、隠密魔法をかけます」
「クキュウ!」
エピステーメーが隠密魔法をかけると二人の姿は見えなくなる。
そしてマロ漁港上空に着いた二人は静かに町の隅の方に降り立つ。
『クサレマグロ聞こえますか?エピステーメーです。只今マロ漁港に到着しました』
エピステーメーはクサレマグロに念話を送る。
『おう、聞こえるぞ。思ったより早かったな?まずはトカゲは例の場所へ待機させろ』
『わかりました』
エピステーメーはクサレマグロにそう返すと、サバオに例の場所で待つよう指示する。
「サバオ、例のあの場所で待っていてください」
「クキュウ!」
するとサバオは静かに飛び立って行った。
『ナルシス、町の様子はどうだ?』
『何やら異常に静かですね…僕は今民家の裏にいますが、こちらに人はいないようです』
『そうか、町の中を見て回る必要があるな。敵の居場所も知りたい』
『わかりました。見てまいります』
『おう、気をつけてな』
エピステーメーは町の中を歩き回る。
途中帝国の兵士が見回りをしている為、エピステーメーは兵士と接触しないよう、細心の注意を払って歩いていた。人と接触すると隠密魔法が解けてしまうからだ。
(おかしい、どこにも兵士以外の人間がいない。一体どこへ…)
町の中央辺りに辿り着くと、エピステーメーは魔晶アーマーを纏ったディミトスを発見する。
『クサレマグロ聞こえますか?町の中央辺りのテントに魔晶アーマーと思われるものを纏った者がいます。恐らくここで陣を張っているのかと』
『そうか、わかりやすくていい。町の人々はどうだ?』
『それが…やはり何処にも見当たらず…』
念話をしているエピステーメーの目の前を帝国兵が通るが、その時帝国兵同士の会話が聞こえてきた。
「しかしディミトス隊長も酷いことするよな。聖剣持った奴を待ってる間、1時間毎に一人殺すってんだからな」
『ッ!?』
「だよな。まあそうでもしないと威厳を保てないんだろ?ほら、なんせあの人…」
「ばっ!お前、聞こえたら殺されるぞ!」
「お、おう、そうだったな…」
あまりの衝撃的な会話にエピステーメーは絶句する。
『どうしたナルシス?』
『…ディミトスと呼ばれる敵将、聖剣を持つ者…ソウジが現れるのを待つ間、1時間毎に一人殺しているそうです』
『何と…まあ小物の考えそうなことだが、看過できないな』
『早く住民達を見つけなければ』
『ナルシス、感情的になるなよ?どうだ、周りに一箇所に全員集まれそうな建物はあるか?』
エピステーメーは必死に周りを見渡す。
すると一人の帝国兵が歩いて来た。
帝国兵に気付いたエピステーメーは兵士の真後ろに付いた。
「そういえば町の人達ってどこにやったんでしたっけ?」
「あん?教会だろ。忘れちまったのか?」
兵士は後ろを振り返る。
「…」
「あれ?気のせいか…」
兵士は何事もなかったようにそのまま歩いて行った。
『教会だそうです。直ぐに向かいます!』
『お前恐ろしいことするなぁ…』
エピステーメーは教会へ急いだ。
教会に辿り着くと、教会の扉に二人の兵士が立っていた。
『教会だけ兵士が見張りをしています。確かにここにいるようですね』
『そうか、それならばここからがお前の見せ場だ。頼んだぞ』
『お任せ下さい!』
エピステーメーは見張り兵士の目の届く場所で火炎魔法を使い木を燃やす。
「何だ!?火事か?」
見張り兵士達は火を消そうとその場を離れると、その隙にエピステーメーは教会内に入る。
教会内に入ると、マロ漁港の人々や商人、船乗り等が怯えた様子でいた。
エピステーメーは隠密魔法を解く。
「あ、あなたは?」
「しっ!今から皆さんを安全な場所へ転送します。僕の近くに集まってください」
教会内にいた人々は全員エピステーメーの周りに集まる。
「では行きます」
大きな光と共に教会内の人々はエピステーメーと共にその場から姿を消した。
次の瞬間、人々は全員マロ漁港の外の海岸にいた。
「ここは…」
「そうです。秘密の海岸、マロ漁港に住む方だけが知っている場所です。ここなら帝国兵も探し出すことは難しいですし、中で派手に暴れられても皆さんが巻き込まれることは…」
エピステーメーは全身の力が抜け、ガクッと片膝をつく。
「お、おい!兄ちゃん、大丈夫か!?」
「さすがにまとめてこの人数を転送となると堪えますね…」
「キュゥゥ」
「ひっ!ド、ドラゴン?!」
「大丈夫、僕達の味方です。サバオ、いい子で待ってましたか?」
「クキュウ!」
「エピステーメーさーん!!」
秘密の海岸に到着した俺とリリムは早速サバオとエピステーメーと合流する。
『上手くいったようだな?』
「ええ、でも魔力切れです。アリシアさんもこの中にはいないようです。すみません…皆さん、後は頼みましたよ…」
「エピステーメーさん、大丈夫ですか?」
『よくやったぞナルシス。その娘がいないのは想定内だ。問題ない』
「メガネの兄ちゃんなら俺達が見てるよ!俺達の命の恩人だからな!!」
「助かります、ありがとうございます!」
俺はマロ漁港の人達に頭を下げる。
『よし、次の段階にいくぞ』
俺達が次の作戦を決行しようとしていた頃のマロ漁港内。
「た、大変です!ディミトス隊長!!」
「何だよ?うるさいなぁ…大した話じゃなかったら殺しちゃうよぉ?」
「そ、それが…教会内に監禁したはずのマロ漁港の者共が、一人もいなくなってます!!」
「あれぇ?もうそんなに殺したっけぇ?」
「ま、まさか…まだ多くの者がいましたが…」
「へぇ…」
ディミトスの顔から笑みが消える。
「テメェら何やってんだよぉ!!いなくなってますだと?ふざけんじゃねぇ!!!」
激昂したディミトスは教会へ。見張りの兵士を押し退け中に入ると、そこはすでにもぬけの殻であった。
「どうなってやがる?!誰の仕業だぁ!!」
明らかに焦っている様子のディミトス。
「はっ!あの女は!?」
ディミトスは急いで地下牢へ向かう。
「お、お疲れ様です」
「どけぇ!!」
「がはっ!」
ディミトスは見張りの兵士を突き飛ばしアリシアの元へ。
「何だ?騒々しいな」
アリシアは意識を取り戻しており、牢の中で凛と座っていた。
「テメェは俺様と来い!!!」
ディミトスは鉄格子を壊し、アリシアを無理矢理引きずり出した。
「何事だ?貴様は何をそんなに焦っている?」
アリシアは冷めた目でディミトスを見る。
「黙れ!」
「…それとも何か?貴様は目の前に人質がいないと怖くて何も出来ないのか?」
「黙れェェ!!!」
激昂したディミトスはアリシアに平手打ちをする。アリシアの口元に血が滲むが表情は崩れず、一切動じない。
「クソぉ、どうなってやがる!?」
一方その頃、サバオの腕にしがみついた俺とリリムは、空からマロ漁港へ突撃していた。
「あっ!見てください!アリシアさんです!!」
リリムが指差す先には、魔晶アーマーを纏った男に無理矢理引きずられているアリシアの姿があった。
「アリシア!」
『ふむ、やはり我の予想通り連れ出したな。奴にしたら人質がいなくなるのは耐えられないということだろう』
「なんだそれ…」
「それだけ小物ということですよ。ソウジさんと同じです」
「俺は人質なんて取らんわ!!」
『ロリっ子よ、あの赤い庇の建物の中に下着娘の剣があるようだぞ』
「アリシアさんは好きであの姿な訳ではないと思いますが、わかりました!回収します!!」
『よし、まずはトカゲ!!』
(トカゲって…)
『クキャァァァァァ!!!!!』
サバオの咆哮が空を裂いた。
凄まじい衝撃波と砂埃がマロ漁港を包み込み、ディミトスと兵士達は一瞬で混乱に陥る。
「な、何だ!?」
「ば、化け物だァ!!」
その隙に俺とリリムはサバオの腕から飛び降りた。
リリムは一直線に赤い庇の建物へ。
俺は着地の衝撃で足がビーンってなった。
サバオは目にも止まらぬ速さでディミトスに体当たりを食らわせ、吹き飛ばす。そしてそのままアリシアを抱き上げ、帝国兵達の混乱の中から抜け出した。
「サバオ、それにソウジまで!私を助けに来てくれたのか!?」
「当たり前だろ!大事な仲間なんだから!!」
「ソウジ…」
「私もいますよぉー!!」
リリムが剣を投げる。
「リリム!」
アリシアは空中でそれを掴み取った。
「アリシアさん、やっちゃってください☆」
鞘から取り出された刃が煌めく。
次の瞬間、インナー姿のままのアリシアは帝国兵士達を次々と薙ぎ倒していった。
「よし、上手くいったな!」
『うむ、あとは仕上げだ』
「仕上げ?」
「ぐっ…クソぉ…!」
瓦礫の中からディミトスが立ち上がる。
そしてーー俺と目が合った。
「あ…」
「あ…」
一瞬時間が止まる。
『ククク、やるではないかトカゲ。メインディッシュをしっかりこちらへ回してくれたぞ』
嫌な予感しかしない。
『さあ相棒よ。仕上げはお前だ。奴をぶっ飛ばせ!!』
「はぁぁぁぁぁ!?!?」
「ちょ、ちょっと待て!!俺にそんなこと…」
「テメェェェ!!やってくれたなァァァ!!!!」
ディミトスが地面を蹴った。
地面が砕け、砂が舞い上がる。
俺は心の中で叫んだ。
(何でこうなるんだよぉぉぉぉぉ!!!!)
俺とディミトスの視線が真っ向からぶつかった。
俺達の戦いは、今まさに始まろうとしていた。
「…なあクサレマグロ、これってどういうルールなんだ?」
『…最後に生きていた方の勝ちだ』
ーー次回、ソウジ死す!?




