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第13話 抜けちゃった…

挿絵(By みてみん)

王都を出港して二日。目的地まで三日かかるとのことで、俺達は大海原にいた。海でも稀に魔物は出るようで、空から鳥型の魔物や海の中から海洋生物のような魔物が襲ってきたりであったが、サバオとエピステーメーのおかげでさほど影響はなかった。警護に付いている兵士もただただ呆然としていた。


「うぷっ…もうダメ…」

リリムは柵に向かって猛ダッシュした。

「おぇぇぇぇ!!」※虹噴射中

「お、おい大丈夫かよ…」

「フッ、王都を出て嘔吐ですか」

エピステーメーはメガネをクイっと上げる。

「言うてる場合か!!」


『ザバァァァー!!』

海中から何か巨大な物が出てきた。

「な、なんだ?」

「イカ、タベルー」

サバオが何か捕まえてきたようだ。

「イカって…デカすぎるだろ」

「サバオ、これはイカではなくクラーケンですね。伝説級の怪物ですが…よく捕まえましたね?」

「ムフー」

「何で落ち着いてるんだ…コイツら」

「そのままでは食べづらいでしょうから丸焼きにしてさしあげます」

「イカヤキ!イカヤキ!」

「改めて規格外なヤツらだな…」

挿絵(By みてみん)

そんな頼もしい?連中と三日間大海原を移動し、プレアリー地方マロ漁港へ到着する。

王都程大きな街ではないが、魚介類の露店を中心にとても賑わっていた。


「小さな町ですけど人がたくさんいますね」

「ここはマロ漁港といって、漁業で栄えた町だそうです。我が王都ゼニスもこのマロ漁港でしか捕れない魚介類を輸入しています」

「ほへぇ…」

「そんなことよりも…ソウジ、貴方の武器を何とかしないといけません」

「そうですよね、せっかく武器庫にある装備は好きに持っていっていいって言われたのに…一つも装備できないなんて」

「あはは…重たくてさ…」

「いくら軟弱といっても、短剣すら持てないようでは話になりませんからね?そこで僕から一つ提案があります」

「提案?」

「はい。このマロ漁港を出ると長い街道に出ます。この街道を北へ行くと小さな村がありまして、そこにサヴマの祠たるものがあります」

「んで、そのなんちゃらって祠に行くと何があるんだ?」

「そこには“星守(ほしまもり)”と呼ばれる伝説の聖剣が刺さっているとか」

「お、何かワクワクする展開だなそれ」

「星守…私も聞いた事あります。はるか昔、伝説の魔剣士クザレ・マクロイヤーが使っていたと言われる剣ですね」

「クザレ・マクロイヤーはミルキーブレードと呼ばれる聖剣を手にし、自ら聖剣を精錬して魔法を何度も何度も付与し星守を作ったと言われているそうです」

「ミルキーブレード!?それは過去に女神様がお作りになられた聖剣ですよ!それを精錬して魔法付与?!」

「書物で読んだ話ですけどね?でも本当だとしたらとんでもない方だったと言えるでしょう」

「ふーん、よくわかんねぇけど俺がそこ行ってその剣貰えんのか?」

「この村にはこの聖剣を求めて名だたる剣士達が訪れるそうです」

「じゃあもうないんじゃねーか?その剣」

「それは大丈夫だと思いますけどね…行ってみないと何とも言えませんが」

「まあ何にしても面白そうだから皆で行ってチャレンジしてみましょうよ!私もやってみたいですし」

「ボクモー!」

「よし、ほんならその村に行ってみよう。そんだけ剣士が集まるならアリシアも立ち寄ってるかもしれないしな」


そして俺達は船旅の疲れを取るため、この日は宿に泊まり翌朝、サヴマの祠に向けて出発する。

途中魔物も出るが、ここら辺に出る魔物はさほど強くないらしく、順調に目的地に向けて進めていた。


「だいぶ傷んでるみたいだけど、一応ちゃんと整備された道だったのか?」

「ここは昔から金の成る道と呼ばれているそうです。マロ漁港を輸出入の拠点としてこの地方全ての町がこの街道を使って物資を運んでいるそうですので」

「それで金の成る道ってか?今は使われてないのか?」

「今ももちろん使われてはいますが、魔物が異常に多い為、警護の付いた定期便しか通らないのです。昔は色んな商人達で賑わっていたようで、道中露店を開いている方もいたそうですよ?あ、ほらあそこがその残骸かと」

エピステーメーの指差す方を見ると、魔物に荒らされたであろうテントとシートの残骸が。

「また平和になればここも昔のように賑やかになるかもしれないってことですかね?」

「そうですね、人々がまた安心して外を歩けるようになれば…ですね」


そんな会話をしながら二時間ほど歩くと小さな村が見えてきた。村の奥の方に例の祠があるようだ。

俺達は早速村の中へ足を踏み入れる。

「ぐわぁぁぁあ!!」

屈強そうな男が凄い勢いで飛んできた。

「な、なんだ?」

「祠から出てきたようですね?出てきたというか追い出されたという方が正しいでしょうか…」


「おや?お主らも聖剣を求めて来たのかね?」

祠の中から一人の老人が出てきた。

「ご老人、貴方は?」

「私はこの村の村長です。と言っても皆出て行ってしまって今では私一人しか残ってないがね」

「…聖剣を守る為ですか?」

「その通り。そろそろ誰かこの聖剣に認められる者が現れないかと思ってるんだが…ここに来る者は腕っ節だけは立派だが誰も聖剣と対話しようともしない。そういう輩は私が今のように排除しているのだよ」

「いや、爺さんもすげぇな…」

「村長さん、ここにアリシアさんというブロンド髪の女性剣士の方は来ませんでしたか?」

「おお、確かに来たぞ?彼女は初めて剣と対話をしようとした人だった」


✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


二ヶ月ほど前、祠の前にアリシアの姿があった。


「ご老人、ここに星守という聖剣があると聞いて来たのだが…」

「おや、お主も聖剣を手にしようと訪ねてきたのかな?」

「はは、私にそんな資格があるのかな?どのような剣なのか是非一度見てみたくてな」

「ほほう、それならばこの祠の中じゃ。話しかけてみるといい」

「かたじけない。では失礼する」


アリシアは星守の前で片膝をつき、じっと見つめる。

しばらくするとアリシアは立ち上がり、祠を出た。


「どうじゃったかな?」

「素晴らしい剣だった。しかし私には応えてくれないようだ。まだまだ未熟ということだろう」

「触れずに帰ってきたのか?」

「ああ、私にはまだその資格はない。腕を磨いてまた訪れるよ」


そう言い残すと、アリシアはこの村を去って行った。


✦ ━━━━━━━━━━━━━━ ✦


「アリシアさんでもダメだったんですね…」

「僕はそのアリシアさんという方をよく存じ上げないのですが、話を聞く限り素晴らしい剣士のようですね?」

「そうじゃの、彼女のまっすぐな瞳、聖剣に対する敬意、どれを取っても聖剣に選ばれるに相応しい剣士かと思ったのだかの…」

「ご老人、我々も聖剣を見せて頂いても?」

「もちろん、その祠の中へ行くといい」


俺達は祠の中へ。入るとすぐに星守は石碑に刺さっていた。

挿絵(By みてみん)

「【星は堕ち、時が朽ちても―――我が祈りは此処に在る】と刻まれてますね」

「エピステーメーさん、古代文字が読めるんですね?」

「古代魔法の研究もしていましたからね。私は剣士ではないですが、このような素晴らしい魔剣を精錬された方です。是非その力を感じ取ってみたいです」

エピステーメーが触れようとすると、

『触るな、この変態ナルシス魔法オタクが!』

「…」

「どうしたんだ?エピ」

「ちょっとこの剣破壊しますね?」

エピステーメーは両手に魔力を溜め始める。

「待て待て待て!どうしたんだよ?」

「なんかとても不愉快な声が聞こえてきたものですから」

「あん?声?何も聞こえなかったけどな」

「ボクヤルー」

サバオが剣に飛びかかり引っこ抜こうとするがビクともしない。

『…ドラゴンは禁止だ。帰れ!』

「ショボーン…」

「サバオ、お前はどうしたんだよ!?」

「私もやってみま…」

『うわぁ…色気ねぇなぁお前。チェンジで!』

「…ぶっ壊しますね☆」

リリムは笑顔でどこからかハンマーを取り出し振りかぶる。

「お前までどうしたんだよ!」

「だって聖剣が失礼なことを…」

「聖剣が不愉快なことを…」

「ボク、キンシ…」


「ど、どうかしたのかの?」

騒ぎが聞こえた村長がやって来た。

三人は村長に詰め寄りあーでもないこーでもないと今の出来事を話す。その姿はまるでクレーマーのようだった。

「ま、待て!お主ら聖剣の声が聞こえたのか!?」

「ん?多分そう…ですかね?」

「ここには僕達以外いませんし…皆そうなのでは?」

「な、なんと…聖剣の声が聞こえるとは…」

「今までなかったんですか?」

「私は何十年も見てきたが…」


(何かえらい盛り上がってるな…)

皆が盛り上がってるところ俺は試しに聖剣に近づき、軽い気持ちで握ってみた。


『キュポン!』


「…」

「…」

「…ん?」

『おいお前、今どうやって我を抜いた?』

「どうって、握っただけだぞ?」


「抜けてるぅぅぅ!!!!」

「ソウジ、貴方がまさか本当に聖剣を抜いてしまうなんて!観光気分で来ただけだったのに!!」

「観光気分だったのかよ…」

「ソウジ、スゴイ」

「聖剣はお主を選んだというのか…まさかこんなにあっさり抜けるとは…」

『違うぞ、爺さん。別に我は何もしていない』

「聖剣が喋っておる…長生きはするもんじゃな」

『コイツが来て目が覚めた感じだ。我はクザレ・マクロイヤー。この星守を作り、使用していた者だ』

「何と…本人だったとは…」

『この石碑は我が認めるような人間でなければ抜けないように弟子に仕込ませたものだ。それを抜いた以上お前がこの剣の持ち主だ。よろしくな、相棒!』

「この石碑はお弟子さんが作られたものなんですね?」

『さすがの我でも死後に石碑を建てるのは無理だ。生前弟子に指示しておいたのだ』

「まあ、それはそうと…」

とても恐ろしい殺気を三人から感じる。

「先程は不愉快なことを…」

「失礼なことを…」

「ボク…キンシ…」

「ちょっ、ちょっと待てお前ら!持ってるの俺だぞ?落ち着…ギャアアアアア!!!!」

三人の容赦ない攻撃が俺に襲いかかる。

俺は聖剣を握りしめたまま逃げ回る。

『相棒よ、何故戦わない?』

「んな事言ってる場合か!!」


「ほっほっほっ、ようやく肩の荷が降りたか。悪しき者の手に渡ることがなくて良かった…じゃが…」

村長は大きく息を吸った。

「お主ら、ええ加減にせんか!!!村を壊すつもりか!!!!」


こうして村長に宥められた俺達。


「ソウジ君、星守を頼んだぞ?決して悪しき事に使わぬようにな」

「ああ、と言っても俺なんか何も出来ないけど」

「ソウジさん雑魚ですもんね?」

「やかましいわ!」

『爺さん、長い間我を守ってくれたこと感謝する。おかげでまた我はこうして無事世界を見て回ることができる』

「ほほ、聖剣にそんな事を言われるとは…では気をつけて行くんじゃぞ?」

そして俺達は村長に大きく手を振りながら村を後にした。



「しかしクザレ・マクロイヤー本人がこの剣だとは驚きました」

『我も驚いている。相棒が我の目の前に来た時に目が覚めた感じだ』

「ソウジさん、本当に聖剣に選ばれた人みたいになってますね…雑魚なのに」

「雑魚はもういいだろ…」

『相棒、お前雑魚なのか?』

「…ぐうの音も出ねぇよ」

『まあよい。お前には我がついておる。安心するがいい』

「伝説の魔剣士がついてるなんて贅沢過ぎますね」

「伝説の魔剣士がついてて、セラフドラゴンを使役…もはやソウジさんが世界を脅かす存在になりそうです」


「なあ、ところでお前の事はなんて呼べばいいんだ?」

「ッ!?」

リリムは焦りの表情を浮かべる。

『我のことか?好きに呼ぶがよい』

「うーん、クザレ・マクロイヤーだっけ?長いし覚えづらいんだよなぁ」

「クザレ・マクロイヤーさん?本当にソウジさんに名前を決めさせていいんですか?」

『我の相棒が決めるのだ。異論はない』

「リリム、何か問題でもあるのですか?」

「…サバオって名前もソウジさんが付けたんですよ?なんというか、そのセンスが…」

「よし、決めた!お前はクサレマグロだ!!」

「―――!?」

「ッ!?」

「…コレ、クサレマグロ?」

『まあ何でも良いが…あまりいい響きに聞こえないのは気のせいか?』

「いいじゃん、よろしくな、クサレマグロ!」

「…伝説の魔剣士がクサレマグロ(腐れ鮪)…」

「エピステーメーさん、だから言ったでしょう?もう手遅れですけど」


『それで、お前達はこれから何処へ行くのだ?』

「まずはアリシアさんと合流したいので、アリシアさんがどこにいるのか探さないと」

「一度マロ漁港に戻って打ち合わせますか?街の中の方が落ち着いて話せますし」

『それならばマロ漁港へ行くよりユーダイモニアに行く方が近いだろう』

「ユーダイモニア、商業都市として栄えた独立国家ですね!商人達が多い街ですし、色んな情報も手に入りそうです」

「独立国家?」

「簡単に言うとどの国にも属していなくて、自分達で治めている国のことです。普通街や村はその土地を治めている国に属しているでしょう?」

『ユーダイモニアは昔商人達が小さな集落からを作ったのが始まりの街でな?ちょうどこの大陸の真ん中辺りに位置してるんだが、集落から都市へと大きくなるに連れて税金やら輸出入に余計な金がかかるから独立国家としてやっているって話だ。まあさすがは商人達ってとこか』

「はわわわー、エピステーメーさんもクサレマグロさんも博識ですねぇ」

「フッ…」

『お前ら…そのナルシスが居なかったらまともな旅なんてできなかったんじゃ…』

「んじゃ、そのユーダイモニアってとこに行ってみようぜ!」


俺達はユーダイモニアに向けて出発をした。

エピステーメーにクサレマグロに新たな仲間が出来てとても賑やかになった。あれから一時間ほど歩いたが、エピステーメーはクサレマグロと魔法の話で盛り上がっていた。



『―――!?』

「クサレマグロ、どうしました?」

『いや、何でもない。魔法付与の話だったか?』

「ええ!是非ご教授頂きたい!!」

『それはだな……(爺さん…最期まで会ったばかりのコイツらを守ってくれたんだな…)』


**********************


「ディミトス隊長、祠以外にも全ての建物の中を確認しましたが、聖剣らしきものは見当たりません!」

「ふーん、じゃあさっきお前がすれ違ったヤツらが持ってったってこと?へぇ、入れ違いってやつかぁ」

「そ、そのようで…ぐっ!」

ディミトスと呼ばれた小柄な男は魔晶アーマーに身を包ませていて、横にいた兵士の首を掴みそのまま持ち上げる。

「そもそもさぁ、お前がさっさとこのジジイ殺してその聖剣とやらを持ってくれば良かったんじゃないのぉ?お前もこのジジイと同じようになりたい?ねぇねぇ?どうなの?」

「ぐっ…あっ…」

「え?なになに?もっと?」

『ゴキュ』

鈍い音が鳴ると兵士はそのまま息絶えたようだ。

「あーあ、死んじゃった。まあ使い捨てのゴミ兵士だしどうでもいいんだけどね…なーに?お前達、何か言いたいことでもあるのかなぁ?」

「い、いえ!とんでもございません!」

「全く、このジジイも何も教えてくれないし、抵抗してきてウザいから殺しちゃったよ(笑)あ、コイツも殺しちゃったから聖剣持ってったヤツらがどんなヤツらかもわかんねぇや。ギャハハハハハ!!!」

「……」

「まあいいや、数時間程度の事だろう?そう遠くには行ってないはずだ。行くぞ!まずはあの漁港を封鎖だ!!」

『はっ!』



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