表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
〔墓守り紋次の物語〕  作者: 猫屋敷 中吉
30/122

一番の理由

 よろしくお願いします、


 もう一度村長の屋敷に戻って来た訳だが……。

 玄関を潜った早々繁忠に捕まって軟禁された。

 まぁ、綿姫救出作戦の打ち合わせと、何やら気になる案件の調査をしてた、名探偵繁忠の調査報告なんだけど。やっぱ、真実はひとつだったんかな?


 会合場所の大広間の更に奥、八畳ほどの座敷に通される。そこには絹さん、河口兄弟、もちろん繁忠と……何故か土門さんもいて、驚いた。

 どうやら『ハッチ』とイチャコラしている間に、繁忠が土門さんを連れて来たらしい。

 とりあえず「遅れてすいません」と謝っておいた。息をするように謝罪が出来る日本人です。はい、すいません。


 チッと、絹さんからの舌打ちが聞こえた気はしたが、ガッツリ無視して。「本題に入る前に見てもらいたい物がある」と繁忠は、畳の上に一枚の地図を広げた。


「……地図?」


 俺の問いに繁忠は、あぁの一言。

 パッと見で解る村の地図で、東の入り口から、一軒一軒バツ印が付いている。

 しかも、既に村の四分の一はバツ印が占めていて、それと同時にバツ印の家々は、賊共に火を付けられた場所と、そうで無い場所と別れていた。


「これって、どういうこと?」

 

 絹さんの口から零れた言葉。

 地図に落としていた視線を上げると、繁忠と目が遭い、頷かれた。


 視線の先にあったもの、地図上の右端の下に描かれたユ〇ケルのロゴマークに似た家紋を、俺は見つめていたから。……ちんちん武者の兜飾りと同じだ。


「この地図は賊の本陣にあった物でな、無地の陣幕と無地の陣旗の他にコレがあったんだが。いかんせん、このバツ印の意味が放火だけの意味か良く分からんでな、直接聴いた方が早いと思うて」


 そう言って、土門さんに視線を送る繁忠はそのまま話し続けた。


「其れにここ、この家紋だが。ワシが調べた結果、これは『山中様』の家紋らしいが……どう言う意味かの?」


 ほう、ほう、この家紋を調べていたのか。鋭くなる繁忠の視線に、土門さんも少々困り顔で。


「……すまん。バツ印については俺等も詳細は聞かされておらんのだ。ただ、金目の物を根こそぎ奪った家は火を付けて知らせろと、それしか。……いや、誠に酷い事をした。申し訳なかった、心より謝罪する」

 畳に額を擦り付けながら土下座する土門に、皆の視線が集まる。そして顔を上げて土門は、また話しを続けた。


「その家紋は……。あー、もし尋問されても名前を出すなと言われていたが、もう関係ないな、うん。繁忠殿が言われた通り、山中の家紋であるのは間違いない。だかなぜ、厳伍様がその家紋を使っているのかまでは分からなんだ。……本当に申し訳ない」


 そう言ってまた、土門さんは深々と土下座をした。

「厳伍様って! あの厳伍様!!」

 絹さん、急に叫ばないでよ、ビックリすんじゃん。


 ああそうだと、うざったい感じに答える繁忠。俺的には厳伍様も山中様も誰?って感じなんだけど。

 俺が首を傾げてる間にもどんどん話は進んでいく。ちょっと置いてけぼりで寂しいんですけど……。 誰か説明して、おくんなまし!


 自称、お優しい絹さんが教えてくれました。はい。

 結局、腹違いの領主様の弟『厳伍』が自分の母方の家紋をしょって森山村を襲撃したらしいとのこと。 でも、自国の村を襲う理由って何? ワケ分からん。


 綿姫様に関しては、本州の最北にある『津之領』に嫁いだはずだと。だが何故か件の砦、厳伍に捕らわれている。 う〜ん、ますます訳分からん。


 アレッ!でも、これってどうすればいいの? 領主様の弟だから手を出すなって意味なの? 綿姫様を諦めろって意味? 学年で中の下しか無い残念おつむの俺には、何をどうすれば良いのか分かんないんだけど。だから素直に質問して見ました。はい。


「……砦に手を出していいの?」


「あぁ、これは明らかに厳元様に対する反逆行為、成敗せにゃならん案件だ。例えそれが、領主様の弟君であってもな。 ……だが、土門に聞いた通りなら相手は二百人以上、それに比べワシ等は十人足らずと、時間的余裕も無い現状では、厳元様の兵を待ってられんし。ワシ等に出来る事と言えば、綿姫様の救出が精一杯だろうな」


 何故か楽しそうに語る繁忠に、絹さんも土門さんもフムフムと頷いている。

 それに引き換え俺と河口兄弟は、二百人と聴いて急激に顔が青ざめてきているんだが。


 これでハッキリしたな、超肉食系と超草食系。絹さんなんか不敵な笑みまで作ってるし。あんた巫女のくせにやる気スイッチ押しまくりだろ、いま!


「いや、待ってくれ。十人足らずでは無いぞ」

 この発言に皆んなの視線が土門さんに集中。


「まず言わせてくれ。皆が信用してくれたお陰で、この会合に出させて貰っていること、深く感謝する」

「私は信用してないわよっ!……何で、あんたなんかをっ」


 胡座をかいたまま謝礼する土門に、絹が噛み付いた。そしてプイッと明後日の方向を向いてしまった。しかし俺は……。


「悪いが、俺は土門さんを信用することにした」


 真っ直ぐな瞳で語るモンジに、睨みを効かせて絹が応えた。


「なんてバカなの、バカモンジ! 私は、コイツを信じる根拠を示せって言ってるの! ……皆んなの命が掛かっているのよっ」


 皆んな命が掛かっているって、そんなのバカな俺にだって解ってる。砦に行った途端、手の平返しでアッサリ裏切られたら、俺達はそこで終わりだ。


 だけど土門さんの話に共感して、慟哭する土門さんを感じて、そんな愛情深い人が悪い奴だなんて、どうしても思えない。


 勿論、俺の思い込みかも知れないけど。土門さんは復讐の為だけに生きているって感じだからな。そんなのはダメだ。

 そんなの、そんなの……。余りにも辛すぎるし、悲しすぎんだろ。絹さんの言う根拠は示せないけど、せめて犯した罪を償って貰いたい。

 そして、出来れば復讐だけの人生じゃ無く、幸せに生きて欲しい。 

 多分、土門さんの家族もそう願っているはずだから……。そうじゃなきゃ誰も報われない。


 だから俺はまた、絹さんを真っ直ぐ見つめて、同じ言葉を口にした。


「悪いが、俺は土門さんを信用することにした」


 深い溜息をひとつ。「だからぁ、何回も言うけど、根拠を示せっていってるのっ、わたしは!」と、ウンザリした表情でまたリピートする絹さん。


「絹、ちょっといいか?」


「なによ」


「ワシはモンジを信頼しとる。だからモンジの信じる人物も、等しく信じられるが……。それじゃあダメか?」


 横から繁忠が割り込む。

 堂々巡りのやり取りに、繁忠からまさかの助け舟。思わぬ所で繁忠の本心が聞けて、俺が一番驚いた。


「あぅ、うぅ、うん。……フンッ!」

 絹はそっぽを向いてしまった。繁忠の物言いに渋々だが、たぶん、受け入てくれたという意味らしい。


「話がズレてしまったが土門、十人足らずでは無いとは、どう言う事か聞かせてくれんか?」


 仕切り直した繁忠の問いに、皆の視線が土門に集まる。


「場を乱してすまんかった。……話に戻るが、砦には俺達の仲間が二十人程いてな、訳を話せばこちら側に寝返ってくれると思う。しかも厳伍様の私兵は百人足らずで、あとは金目的だけの野伏せりだけだ。だから内側から突つけば、上手く混乱してくれると踏んどるんだが、どうだろう」


 マジか、勝機が見えて来たんじゃない? 確かに、賊との兵力差から真っ向勝負は望めない。しかし内側から混乱させられれば、それに乗じて綿姫様救出のハードルが下がり、成功率が上がる。 おー、スゲエー、何とか成りそう。


「そうか……。では土門、これに砦の見取り図と配置状況、あと抜け道と砦周りの状況を描いて貰えんか?」


 そう言って繁忠はA5サイズ程の半紙を数枚、小筆と墨を出して来た。土門さんは受け取ると、サラサラと砦の見取り図を描き始める。


 その間に、繁忠と絹さんにもう少し詳しく綿姫様と厳元様、それと厳伍の関係性について尋ねてみた。 

 最低でも大本命の情報ぐらいは知っておかないと、後々困りそうだしな。

 ん、河口兄弟は座敷の隅で船を漕ぎ始めてる。あの兄弟は俺と違って、日中、復興作業で忙しいからな。このまま休ませて置こう。


 それで、二人が教えてくれた事をザックリ説明すると、領主様、厳元様には二人の子供がいて長女が綿姫様で、その下に年の離れた嫡男、助丸様がいるらしい。

 助丸とは幼名でまだ二歳だと。綿姫様とは一五も年が離れているんだとか。まぁこの情報はどうでもいいか。

 

 綿姫様とは、三年程前の領主様による森山村視察の際に、お目に掛かったとか。

 とても綺麗な方でうっとりしたって、絹さんが目をキラキラさせながら語ってくれた。

 イヤイヤ、絹さんもかなりの美人ですよって言いかけたけど、うん、辞めた。

 普段の俺への当たりがアレだからな。せっかくの美形も台無しにしているからね、このひと。


 話が逸れてしまったが、さっきも聞いた通り本州最北の『津之領領主、相田様』の元へ、いわゆる政略結婚で嫁いだ綿姫様。

 二人とも何故あの砦に綿姫様が捕まっているのか、皆目検討が付かないと。

 しかも、相田様がなんら動いた話も出て来ないのも不思議だと。


 まぁ確かに、水面下で何かしらのアクションを起こしているのかも知れないけど。モモの話じゃあ、相田様の様子がおかしかったなんて話もしてたしな。え〜と、そこら辺の事情はよく分からんな。詳細は直接本人を助け出してからかな。


 それと山中様についてだが、現状、二人供もよく判らないらしい。ただ厳元様の弟、厳伍の、その母方がその名前だと言うことぐらいにしか。

 なんか最後はあやふやな感じになってしまった。で、結局よく判らないで終わってしまったんだが。


 ィヨシッ! それじゃあ俺達は、よく分からない名前を語っている領主様の弟から、よく分からない理由で攫われた姫さまを、命懸けて救い出すぞー! エイ、エイ、オー!


 って、なるかボケ!! う〜ん、あやふやでスッキリしないな。


 まぁ、それでもやる事は一緒だし。なによりモモが命懸けで救いを求めて来た事なんだ、それが一番の理由って事でいいか。



 

 ありがとうございました

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ