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第82話 学院祭パニック23


「わはははは」


 笑うしか無い。


 別に今回が初めてでも無い。


 カノンとお風呂。


 約束したときの状況だ。


 既に、


「これある」


 をミズキは察していたため、自家発電は済ませてある。


 フニャッとした知己は乙女の裸に何の感想も述べず、無感動にシャオリーを体現していた。


「つまんない」


 むくれるカノン。


 少女特有の瑞々しい裸体だが「セックスは両者の合意の元で」となれば「ミズキが受諾するはずもない」……不本意ながらソレも理解はする。


 納得はしないが。


 というより出来ないが。


「カノンとミズキの子どもなら凄い魔術師が生まれるよ? 多分伝説に残るレベルのー。銀河の伝説がまた一ページー」


「それは不幸だろ」


 そもそもの立脚点として、


「魔術は呪い」


 とミズキは思っている。


 ゼネラライズ魔術が良い例だ。


 あれだけ多様な属性を持ちながら、その大凡が攻撃魔術。


 神様の裏技は物騒に過ぎる。


 その攻性の特質が魔術師の文明に於ける何たるかを定義づけているようなモノで、その意味で彼は無条件で魔術を称える気にはなれなかった。


 無論、であればこそ国力……その裏付けとなる軍事力に直結し、


「魔術師として大成すればするほど国家の奴隷に身を沈める」


 がミズキの結論だ。


 別に魔術師の素養が遺伝するとは思っていないが、


「不幸な子どもが世界に生まれ落ちてもな」


 も本音。


「むー」


 カノンは不満そうだ。


「その気になったらな」


 濡れた桃色の髪を撫でる。


 同色の瞳は恋慕に燃える。


 実質それだけのことをミズキはした。


 カノンの王子様。


 深淵から引っ張り出してくれた光明。


 そして何より、






『――格好良い男の子』




 それだけで乙女心は心足り得る。


「まぁな。そのな」


 ヒラヒラと明言を避けるミズキは、


「ある種の外道」


 と評せたろう。


「ミズキ」


「へぇへ」


「おっぱい揉んで?」


「嫌だ」


「おっぱいだよ?」


「おっぱいだな」


 それは否定できない。


 おっぱいはおっぱいであっておっぱい以外じゃない。


 それ以上でもそれ以下でもない。


 有り難いと尊崇は出来るが、


「畏れ多くて揉めない」


 と。


 無論カノンとしても詭弁であることは分かっているが。


「ゲイめ」


「不本意だ」


 胡乱げな瞳のヒロインに、けれどもそこはミズキも譲らず……すっ惚けた口調でポーカーフェイス。


「気持ちいいことしましょうよ~」


「一人でも出来るだろ?」


「虚しい」


「それもまた青春だ」


 大人で無い子どもたちはそれぞれに別の手法を必要とする。


「じゃあ逆レイプ」


「ヤレるもんならヤってみろ」


「うがー!」


 襲いかかるカノンに、


「…………」


 ミズキは人差し指一本で額を抑えて静止させていた。


「なんでよう」


「責任が取れないから」


 それもまた詭弁だ。


「カノンは魅力無い?」


「だったら友だち付き合いなんぞしてねぇ」


「むぅ。友達」


「セックスしたいだけなら他の人間を見繕え」


「無理~」


 カノンの方に一定の理がある。


 カノンは、


「ミズキだから」


 こそ恥を承知で誘惑しているのだ。


「過大評価恐縮ですな」


 ミズキはミズキで軽やかに躱す。


「ヘタレ」


「だな」


「不能」


「かもな」


「ゲイ」


「うーん……需要あるかね?」


「ある!」


 頬が髪と同色に染まるカノンだった。


 そこら辺は乙女の嗜み。


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