表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
83/176

第83話 学院祭パニック24


 一事が万事。


 ならば万事は一事と解釈できるかもしれなかった。


 少なくともミズキにとって、


「あらゆる現象は取るに足らない」


 が基本則。


 カノンの宿舎からの帰り道。


 殺気がミズキを襲った。


 第六感的な察知には違いなかったが、根拠そのものはまったく決して薄弱でもあらず。


 呼吸音。


 衣擦れの音。


 風の避け方。


 人の匂い。


 総合して、


「悪意に満ちている」


 と言えたろう。


 学院内で事を起こす意味が分かっているのか否か。


 理性で解決できるとはミズキも思っていなかった。


 この場合のリスクとメリットの天秤は……襲撃者にとって時々破綻することも目撃はされて。


「…………」


 スッと半身になる。


 ――!


 風鳴り。


 背中から穿たれた矢がミズキの傍を通り過ぎる。


 奇襲は失敗。


 元より、


「奇襲にすらなっていなかった」


 とは後の談。


 仮面を付けた成人男性。


 計五人。


 矢を持っていた奇襲者も弓を捨ててナイフに持ち替えている。


「何か恨みでも?」


 尋ねるも返事は無い。


 あまり期待もしていなかったのでミズキは失望もしない。


 反神教か。


 正常主義者か。


 あるいは麦の国の策謀か。


 同種の怨恨か。


 最後者はおそらく有り得ない。


 事実を知っているのは生きている当事者のミズキとカノン。


 それから話を聞いているセロリとサラダ。


 これだけだ。


 一昼で地上から消滅したミラー砦の事件の経緯は誰にも推理できない珍現象だ。


「さて、そうなると……」


 政治的理由か。


 教義的理由か。


 怨恨的理由か。


 政治的理由ならカノンが狙いだろう。


 その点に於いて、


「関係者を脅す」


 は手法としては正しい。


 マキャベリズムとも揶揄されるが。


 そしてミズキにはあまり効果がない。


 推し量れるのならミズキを襲ったりもしないだろうが。


 これは怨恨的理由にも繋がる。


「カノンへの怨恨の遠回り」


 そう思えば近しい異性……つまりミズキが標的になるのも頷ける。


 最後に教義的……となれば、


「何で俺よ?」


 と相成る。


 魔術ならびに魔術師を否定する人間は多くはないが少なくもない。


 嫉妬。


 無力感。


 劣等感。


 羨望からの逆説。


 知己の仇から身分の違いまで。


 魔術師と云う飛び抜けた異能の持ち主には、どうしても負の感情をこそ向けられてしまう。


 結果、


『正常主義者』


 と呼ばれる集団を生みだした。


 人に魔術は相応しくないとの考えだ。


 悪魔の生まれ変わり。


 鬼子。


 忌み子。


「気持ちはわからんじゃないがな」


 とはミズキの感想だが、本来他人事の様に述べる立場でも無い。


 中には、


「魔術があるから戦争が起こる」


 と頑なに信じている人間まで居る始末。


「攻性の魔術が多いのが証拠」


 というが、


「何にでも理由はあるものだな」


 とミズキは一蹴している。


 実際に魔術師が戦力となっているのは認めるが、それでも絶対数が少ないため各国は騎士や兵士や傭兵を必要とする。


 海の国のグラス砦が良い例だろう。


「結局、人は人であるだけで同胞を殺すのさ」


 笑いながら述べるミズキであった。


 閑話休題。


 五人の仮面男に囲まれて、意識を切り替える。


「さてどうしたものか?」


 殺していいのか?


 その判断が少し難しい。


 コキッと骨が鳴る。


 此方は素手。


 相手は毒ナイフ。


 が、ミズキにしてみれば、


「悪趣味」


 の三文字で終わってしまう。


 無論根拠たっぷりで。


「畏れじ、かかってこい」


 ぬけぬけと言ってみせた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ