いつからルールがあると錯覚していた?
『参加者紹介すっぞ~』
だんだん解説者から素に戻りつつあるエルコレ。
キャラ、ぶれてますよ?
十組の、かくれんぼ発表時点でネコに迫っていたプレイヤー、パーティーが読み上げられていた。なお、ギャラリーは含まれない。
突発参加も可能な鬼ごっこ。
別に参加表明もないしエントリー手続きもない。ネコ対全プレイヤーが原則。
だが今回の「かくれんぼ」は順番制。
早い遅いが有利?不利?
それは定かではないし解釈や技量にプレイヤーのタイプでいくらでも考えられる。
問題は、順番で差が出る、ということ。
たまたまそばにいたギャラリーをカウントすると収集がつかない。
格差を運不運で決めるわけにはいかない。実力で追っかけていた中堅プレイヤーも納得できないし、ギャラリーの大半も「たまたま側にいただけ」でひのき舞台に上がる同類には不満だろう。
だから、実際に追跡を続けていた者達から選ばれた。
その基準は二つ。
判断は一つ。
ブックメーカーの勝手に決めた勝敗予想リスト。中継のスフィアタイムズの記録。
二つを元にした評議会の判断である。
実は追われていた、まあ追われていたのはネコでニートはオマケだが、そのニートの目線も反映されている。実際、追っ手を蹂躙したがるネコに回避する指示をしていたニートなら、一番追っ手に詳しい。もっとも、八百長を疑われるから秘密。
え?
八百長じゃないの?
第一、評議会、ってかね?
・・・・・・・・・・・・・・・ニートから直前に知らされた議長が即断。シスターが賛成。
大手ギルド代表者すべてに諮っていたら、間に合わない。
ハイリスクノーリターンの鬼ごっこ運営に、大半の大手ギルドが距離を置いているので異議は出てこなかった。
(前例を積み重ねてもらいませんとね)
・・・・・・・・・などと内心で嘯くニートの狙いは不明。
幸い、ギャラリーからも参加者からも異議なし。
まあ、万を越えるプレイヤーが見守る中で、クレーマーを演じる人間はいないと言うことだ。
「デス・ゲーム中ですしね」
と嘯くニート。
それな。
リアルなら、どれほどゴネても恥をかくだけ。
だかしかし――――――――――今は?
下手に不評を買うと殺され(自主規制)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そういう自制が働いたのかもしれない。
命にかかわる可能性を否定しきれません、としておこう。
という間も参加者紹介は続いていた。そんな最中のアーネは渋い顔。自分が何をしているのか判らなくなっている。
ただし、何に注意すべきは解っているのが救いかも知れない。
と、本人は思っている。
貧乏くじ少女の選択やいかに!!!
鬼ごっこ、そもそもの発端。
覚えてる?
ニート摘発を命じられたアーネたち。
ニートを追いかけ続けているうちに、ニート、おっと間違えた、二ー誰かがばらまいた噂にアーネも上司も評議会も育成圏のすべてのプレイヤーも・・・・・・・・・・・・引きずられ、ニート逮捕がどこかに消えて、ネコをひたすら追いかけるイベントに。
今となっては、ニートを捕まえることに、意味がない。
ボクシングタイトルマッチでセコンドについているおっさんを殴ったら、バカかキチ○イか犯罪者である。全部載せかも知れない。
すでにネコカフェの監視すら、ままならない。
「大広場は反社会性分子ニートの根拠地である!!!!!!!!!!反体制分子を監視防犯摘発すべし!!!!!!!!!!」
(byクラウン/アーネの上司)との、否定しきれない、怒号に従いネコカフェメンバー、セイ&トモを監視していたアーネ達。
最初はね。
すでに昼間は監視していない。
だから、セイ&トモを媒介したブックメーカー、攻略圏物流業者のロンダリングに気がつけない。
「鬼ごっこでニートを!!!!!!!!!!我々が!!!!!!!!!!キミが!!!!!!!!!!打倒する!!!!!!!!!!それこそが正義の必然である!!!!!!!!!!」
(byクラウン/アーネの上司)との、肯定仕切れない、絶叫に従いアーネ達は皆、鬼ごっこ中(AM6:00~PM6:00)全員ニートを追っているからだ。
「どうしてこうなったの??????????」
『どうしてこうなったの??????????』
――――――――――マジ?わかってない?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・不憫な娘である。
『いーから、続けっぞ』
解説のエルコレが、かくれんぼ参加者を読み上げ続けた。
アーネが思い出し頭痛に悩んでいる間に順番の下の方、下位打線の紹介が終わり、クリーンナップ、ってかかくれんぼ有力候補の紹介に入っている。
『一番手アベンジャーズ』
中継スタッフがマイクを回す。
『やります』
静かに互いの手を合わせる7人。
アベンジャーズのメンバーは、9人。だが、かくれんぼに直接絡むのは7人。もともと前衛7人がネコを追い、2人の僧侶が大広場で管制役に徹していた。
その体制を維持し続けるようだ。
『ミニゲームかくれんぼ後を睨んだ現実的な布陣です』
かくれんぼの狭い範囲を探すのに、2人増やしても余り意味がない。かくれんぼでケリがつかなかった場合、すぐに再開する鬼ごっこ。かくれんぼ場所から、大広場までは距離がある。アベンジャーズが追跡力を維持する為に、大広場の管制役を止めるわけにはいかない。
『だといいけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いつのまに!』
呟きが拾われたアーネ。
「どうしてこうなったの??????????」
から中継にアーネの呟きが拾われてました。
『二番手アーネ様と愉快な仲間たち』
『なにそれ!!!名乗ってない!!!!聴いてない!!!』
あだ名の中でもっともマシだったんですよ?ネコ踏まれちゃったさん、とか、半泣きクイーン、とか、明日の嬢、とか、ドMの星、とか
『黙れ』
『アーネさんはご本人の希望で、かくれんぼに単独参加です』
ざわめく街に大広場。
アーネは初日から、三桁に上るプレイヤーを指揮してネコを追っていた。彼女が評議会最有力ギルド《黄金の夜明け》メンバーであることから、鬼ごっこ八百長疑惑が囁かれたくらいだ。囁かれた、とまあ、今は昔の過去形で、かつ、大した騒ぎにならなかったのは、アレだアレ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・同情されたからだ。
初日から。
ネコに踏まれたり、蹴られたり、かわされたり。ぶつかったり、落ちたり、跳ばされたり。情報屋に騙されたり、マニアに盗撮されたり、理不尽な上司に怒鳴り散らされたり、不慣れな部下に足を引っ張られたり。
全部中継されてました。
『そうなの??????????』
気づいてなかったのが、また、なんとも。
常軌を逸した逆境に、一生懸命戦うアーネ。涙目になりながら、人目を気にして笑顔をつくる健気さ。ギャラリーはおろか、鬼ごっこの競争相手にすら優しくされる位である。
参加者扱いされてない?
競争相手に見られてない?
一部では熱心なファンが
「チラリと覗く絶対領域、いや、涙がたまらない」
「上司に呼び出され、部下に脚をかけられ、台無しになった瞬間に見えるレイプ目、いや、ハイライトを失った絶望顔が神」
「ブックメーカーに張り出された、ネコ踏まれちゃったランキングに抗議する時の羞恥に満ちたポンコツ、いや、ぷんぷん膨らませた頬で一生食っていきます」
などなど応援多数。
『まさにドMの星ドSホイホイ』
『やめてよー!!!!!!!!!!』
そんなアーネが、いくら範囲限定とはいえ、天敵ネコにニートを相手として、単独で挑む?自ら?
『まさにドMの鏡』
『正々堂々とするだけです!!!!!!!!!!』
街全体が舞台だったときは三桁プレイヤーで追うが、20m半径では一人で挑む。理屈は解らないが、気合いは伝わった。
みんな驚いた。
みんな大賛成である。
もっと泣き顔がみたいマニア多数。初めてのお使いを見る気分なギャラリーもっと多数。そして紹介は続く。
「上の空ですね」
アベンジャーズのリーダー、戦士が話しかけてきた。すでに順番待ち状態。一番のアベンジャーズ、二番のアーネ。隣同士。
アーネは彼らの挙動だけを注視していた。
つまり、名前がわからない。
「応援してたんですよ」
「は?」
アベンジャーズリーダーの言葉に、無愛想に応えてしまったアーネ。
普段のアーネは、こんな塩対応はしない。
鬼ごっこのせいで声をかけられる事が多くなった。がんばれ。負けるな。くじけるな。元気出せ。これ食べていいよ。もう、ゴールしてもいいのよ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
もちろん、知らない人達にも笑顔で応対。アイドルの鏡である。
「違います!社会常識です!!!」
羨ましい。憧れます。僕も頑張ります。素晴らしいプレイでした。砂利道でグリグリされるなんて!完全スルーこそ至高!尖塔に串刺しなんてヴァーチャルならではですよね!いつかフィールドにご一緒に踏まれたい!
「ち・が・い・ま・す!!!!!!!!!!」
などなど。めくるめくフラッシュバック。それ良い意味じゃないよね?あ、正確か。
「つらいですよね」
まったくだ。
そんなもっともな言葉をかけられる日が来るとは!
アベンジャーズリーダー、そしてメンバーが頷いた。察した顔。白昼夢から醒めたアーネは、もしかして叫んでいたのか、と肝が冷えた。
まあ、ドMホイホイな心象風景を叫んでいたらイタい
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃすまない?キチ○イ?
アベンジャーズの女魔法使いがアーネの手をとる。優しく、善良で、良い人だと思うアーネ。こんな時、こんな風に出会わなければ――――――――――友達になれたろう。
彼女は微笑んだ。
アーネの眼には、彼女がニートを追っている時の目が浮かぶ。
「もう大丈夫よ」
病院にツテがあるのか?スッゴく優しい、暖かい、笑顔。不安になるアーネ。ちょっと、いや、だいぶ、退く。
「ヤツは私たちが」
え?アーネは困惑する前に、背筋が凍り、怖気に震えた。それが最期の機会。繰り返し繰り返し、悔やみ続ける。
『一組目!位置に着いてください!』




