アーネのターン
恨まず、憎まず、嫉まずに。
強く、優しく、賢明に。
機に応じ、知を絞り、勇を持つ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そーいうタイプではない。
彼女、アーネ。
恨んで、憎んでいる。
――――――――――――――――――――――主にニートを。
「あいつがヒドイ目に有ったら喜んじゃうでしょうね」
嫉んでいる。
――――――――――――――――――――――主にニートにより引き合わされた有力プレイヤーたちを。
「わかってるわよ!」
敗けた経験しかないし、フミノを傷つけたし、運営プレイヤー=悪と思い込んでいたし。
――――――――――――――――――――――本人の見方。
「勢いに釣られたし、他人の意見に流されてまた失敗するし、フミノさんに謝りたいけどよけい傷つけるだけだろうし」
――――――――――――――――――――――愚痴じゃね?
ゲーム上は、ただの中堅プレイヤー。
中堅プレイヤーと一言で言っても、いろいろある。中くらい、というのは結局は相対値。全プレイヤーのレベルバランスで決まる。
ヴァーチャルゲーム・スフィア
デスゲーム開始までの中堅は、どうだったか?
攻略組への階段を着実に昇るタイプ。
リアルとのバランスを見極めてレベルを決めるタイプ。
ただなんとなく遊んでいたら、新規ゲームの物珍しさもあってログイン時間が増え、開幕キャンペーンの恩恵も受けて、レベルも何も意識しないでいたら、デスゲームになってから慌てて周りをみると中堅でした。
アーネは、三番目。
特別なスキルもアイテムも人脈もない。最大手ギルド《黄金の夜明け》に所属する、無数のモブの一人。
リアルはもっとつまらない。
ただの高校生。
中流意識に満ちた給与所得者の家庭に育ち、中流よりちょっと豊かな環境で、親子の葛藤とも無縁に成長した。
理系は苦手。
文系は好き。
得意とは言ってない。
ヴァーチャルゲームはスフィアが初めて。リアルの姿でアバターを創ったのも、不慣れゆえだ。
デスゲーム初体験はみんなと同じ。それもおそらくは、以後のリアルで、それなりに居る、ステータスになるだろう。
そう思っている。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だといいね。
「え???」
ともあれ。
「ちょっと!」
アーネがどんな角度から見ても、ヒーローやヒロインではないことは明らかだった。
『では、限定かくれんぼ参加者を紹介します』
解説のエルコレさん。実況が大変多忙な為に、一人二役。
なにが大変って話は後日発売予定。
「最終決戦!JKvsJC!涙目口喧嘩!予約受付中!」
※R-15・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
中学生出てますけど――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!!!
ギルドメンバーを売り飛ばすギルド《スフィア・タイムズ》。
お前ら報道ギルドじゃなくて、芸能ギルドだろう?
「張った張った!微笑む泣くは神さまの言うとおり!最後の機会!限定かくれんぼ±牝馬J2ダート対決セット販売!連勝複式三単元リーチ一発フルハウス!」
ブックメーカーはどんなルールかわけわからん最終店仕舞いセール開催中
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――三日前から店仕舞いはお約束。
「一瞬後に決着するかもしれないんだから決して嘘はついてないご意見ご要望は今後の営業の参考とさせていただきますまだなにかあるなら先生どうぞ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・賭博営業中のブックメーカー胴元達の言い分である。
着流し姿で徳利と剣を担いだ先生方、が周りに集まっている中で平身低頭する姿はクレーム対応の鏡。
なお、先生方は通行人であり胴元とは関係がない。
本人達がそう明言しているし、たまたま、偶然、通りすがりの善意の第三者として助言する事もあるだけだ。
声にドスが効いているのは生まれつきです。
ガンをつけたのなんのとつっかかって来たセイに、
「ニー、老師のとこのガ、お嬢さんだ」
「すいやせん!老師、ートさんにはご内聞に」
などとヘコヘコしたので、セイがニートを追求する羽目になるのも偶然です。
っていうか、女子中学生が浪人風用心棒な方々にケンカを売るのもどうかと思います。だからって、ニートの疑惑、疑惑か?ってまあ、が晴れたわけでもないですけどね??
さておき、かくれんぼである。
これで決着しそうな大騒ぎ。
専門家事情通予想屋の意見は一致。
冒頭一発決着は意外性を狙いすぎて白ける。三番手以下の参加者には華がない。ならば?
本命は二番手。
対抗が三番手。
大穴が一番手。
かくれんぼ、タイム制限交代制。二番目に挑むプレイヤーが勝つのではないか、とまあ予想。
解説のエルコレさん?
『要は、ニートと参加者の知恵比べ、です』
誰が、いつ、勝利するのが盛り上がるか。
参加者vsネコ。
良くて中堅プレイヤーvsハイ(廃)プレイヤー。
単純な力比べじゃ最初から勝負にならない鬼ごっこ。ゲームをゲームたらしめるのは演出である。
それは言わないお約束。
公然の秘密。
周知の合意。
クイズ番組、ハプニング企画、公然イベントなどなど。
シナリオがないなんて信じる視聴者がいるだろうか?
だからこそ、参加者の大半は、棚ぼた狙い。
それを演出ミスとも言う。
当たれば大きく、安全圏故にリスクもない。デスゲーム中ともなればやることもなく、つまりはノーコスト。
やらなきゃ損!!損!!!
中堅以下の、大半の育成圏プレイヤーには意味がない?
どっこい、鬼ごっこはそこまで手が届く。
ギリギリの演出で突然にチャンスが回ってくる時!
それはそれは射幸心を刺激して参加者どころかギャラリーも大興奮!!!
二日目冒頭のネコ自由落下がそうだ。
あの時に何も考えずに突撃するプレイヤーが多ければ、歴史が変わっていただろう。デス・ゲームが更に破滅的に悪化する方向に。
そんなことを知ったこっちゃない。プレイヤーは逃した魚の大きさ、まあ、ネコだが、を語り合い、それだけでも楽しめる。
それに、鬼ごっこ優勝の莫大な賞品以外でも、プレイヤーはこまめに儲かっている・・・・・・・・・・・・・ように見えている。
チャンスが回ってきている気がする時がある。
二日目大半の、かくれんぼ。中堅以下もこぞって参加したのは先述の通り。
しかもニート主催のミニゲームで、結構アイテムをゲットした初心者も多い。
大したレベルのアイテムではない。
何も得られないプレイヤーの方がはるかに圧倒的。
だがしかし、数が多かった。たった一人がすべてを得るハズの鬼ごっこで、三桁に上るプレイヤーがアイテムを手に入れた。
手に入れかけたと信じられるプレイヤーはその十倍。
それが肝心、狙いどころ。
何かをつかむこと、つかんだ瞬間を見ることで、当事者意識が芽生えるのだ。
それこそ狙い目、思う壺。
数多くのソレをニートがどこから調達したのかは不明である。中堅プレイヤーの小金持ち程度では賄えない金額だ。
大広場に待機しているセイ&トモ。
大広場には別の街に繋がるゲートがある。
二人のネコカフェメンバーが、時々ゲートに行っていた。
ゲートからは時折、ギルド《馬借》メンバーがさり気なく出てきた。
アイテムストレージに特化したキャラメイク、そんなメンバーが集う運輸ギルド。
もちろん、ストレージにどんな大荷物を抱えていても、パッと見にはわからない。鞄、風呂敷、箱などが必要ないゲーム表現。
彼や彼女はセイ&トモとハイタッチしてからブックメーカーに向かう。鬼ごっこ観光にやって来るプレイヤーのように。
そして賭けを眺めて、周りを眺めて、予想屋と会話して、ハイタッチ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なるほど、である。
なにも欲をあおるばかりではない。
実際のところ、ギャラリーの大半の目当ては、鬼ごっこそのもの。
見る楽しみ。
廃プレイヤーの高速軌道なぞ、はじまりの街にいる大半のプレイヤーは初めて見ている。
育成圏では観られないからだ。
廃までいかなくとも、ハイプレイヤーは育成圏にはいない。通りすがることがあっても、全力を出したりしない。
もちろん、見に行く事はできる、初心者にこそ攻略圏観光は人気だ。ツアーを組むギルドもあるし、個人、私的グループでも行ける。
だがそれで見ることができるのは、安全な都市の中だけだ。ハイレベルプレイヤーを見ることはできる。安全圏でさえ、それなりの動きをすることはある。
寸暇を惜しんでフィールドに突撃する攻略組。
彼らは観光プレイヤーなど歯牙にもかけない。いや、気がつかない。観光ツアー添乗員プレイヤーは中堅くらすなので、スカウトされる事はあるかもしれないが。
お調子者もいなくはないし、添乗員やツアー主催ギルドの交渉力次第でゼロではないけれど。
鬼ごっこ最前線、ネコvs中堅プレイヤーのバトル。
ギャラリーにとっては、望んでも観ることが出来ない、高レベルプレイヤーの演舞。
見応え十分。
ネコが手を抜いているからこそ、見えるのだが――――――――――ネコの手加減など、攻略組でなければわからない。
それが見放題!
しかも、熟練の報道ギルドがリアルタイム中継でベストショットを提供。
こうしてイベントは、最高潮に達しようとしていた。
「わたしのターンは、いつ来るの????」




