追跡者、観察者、傍観者
『『NI――――――――――TO――――――――――!!!!!!!!!!』』
キレてるキレてる。
中継で響き渡る怒声。
血走った眼と浮かぶ青筋は、ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』の無駄クオリティ。
アベンジャーズの前衛二人。魔法使いが剣士をブーストし、剣士が魔法使いを導く。剣士と魔法使いの絶妙なコラボレーション。
長モノと弓がネコをけん制し、足を鈍らせ誘導し、盗賊が奇襲。
食らいついたら離れない。
ネコは青筋を浮かべはじめ、ニートは笑いを深める。
再び剣士が斬りつけ、るのに紛れ、魔法使いがゼロ距離爆炎。槍と鎌、弓と女魔法使いが続く。
ネコがかわし、ネコが避け、降り立った場所で2人の盗賊が左右から特攻。
ナイフを弾いたネコは、お手玉しながら路地裏に。
中継映像を見ているギャラリーから歓声が上がる。はじまりの街中からだ。
そして、大広場。
「右に逃げ出した!」
「回り込め!いや、もう一つ先!路地左!」
指示が飛び交う『はじまりの街』大広場。ネコとお手玉を追う中継映像。それを見ながら指示を飛ばす僧侶二人。
アベンジャーズの指揮担当だ。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――呆れ顔のセイ&トモ。
「なんで怒ってんだ?」
セイが肩をすくめた。
「ロハで代わりをつれてきてやる、なんて、おっさんにしたら破格だろ。後で元をとるだろうけどさ」
「ダダですーって言ったんですよ?ニートさんは別に儲けるんでしょーけど」
セイ&トモ。
呆れかえって、やれやれなセイ。
心底不思議そうに腕をくんでクビを傾げるトモ。
正気かおい。
「アーソリャフシギッスネェ」
棒読みC。
常識ある人殺しであるCには、ハードルが高い会話である。
高すぎないのが、ミソ。
まあ、アベンジャーズが怒る理由は、他人の葬式で位牌に抹香を投げつけるとわかる、んじゃないかな。
Cが奉じる主、ユエ。ユエが溺愛するセイ。
セイが預けられた・・・・
・・・・・本人に自覚はないが・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・先がニート。
「単なるアホの子だったっすけどね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
今もアホの子ではあるのだが、付加価値がついてしまっている。
預け先、間違ってね?
主に代わって心配する常識人のC。
生き残るなら、ニートの傍が一番だろう。ニートが殺さないから、誰にも殺されない。
セイ&トモ。
オモチャか作品か・・・・・・・・・・ニートの造形趣味が、体ではなく心に向かっているのが良いのか悪いのか。
人体造形趣味はサイコパス、フィクションあるある。
ソレは免れたセイ&トモ。
単に乱暴者の学習不適応生徒(中学生)とその友達の落ちこぼれが、サイコパスの模倣品に!
親友とセットだから、後戻りも自覚も不可能だ。
ニートが単純にコピーを創りたがるタイプには見えない、だからこそ、作りかけなのだろう。だからこそ先が見えない。
ニートはこの二人をどんな形にするつもりだろうか。
だがまあ世間には関係がないわけで。
『さーさー意外なダークホース!かわされながらも喰らいつくパーティー二組、アベンジャーズ』
『中継映像を索敵に使うだけならともかく、戦闘指揮に使うとは』
『新機軸ですね?たいていの鬼はネコさんにまかれてしまい、一日中、仕切り直しを繰り返していますが』
『彼らより多人数の追跡グループはいくらもいますが』
アーネとか。
『皆、街中からネコを見つけ出す事に人数を費やしていました。鬼ごっこの勝者は一人。ライバルを蹴落とすためです』
解説のエルコレ。頷くルーシー。
『だから、肝心のネコを囲む段階で人数不足連携不足。人数の利は戦術レベルで消費していたわけです』
例えば、鬼ごっこ中にネコに踏まれ続け、ネコふんじゃった女王の名を受けたアーネとか。
『アベンジャーズは索敵を中継に任せ、戦力をネコに直接ぶつけています』
中継が大広場で指揮をとるアベンジャーズの僧侶に向く。
『彼女たち以外は全部ネコの周りです。安全圏の鬼ごっこだけに、回復役の僧侶がいりませんから指揮に回したんでしょう』
『なるほど』
『有効ですが、他の追跡者は簡単には真似出来ませんよ。ああして街の全景を幻術で表示、中継映像と照らし合わせてネコを把握して味方を誘導しています。一朝一夕にできる事じゃありません』
『という事は?』
『鬼ごっこは、初日から中継されていましたが、それを利用する手段を磨いていたんじゃないかな?』
『鬼ごっこ初日、二日目を捨てて?』
『この戦法を思いつき、気心知れたパーティーで、圧倒的レベル差を埋める練習を繰り返したんでしょう』
『おお!みなさん!三日目にして未だ混沌!鬼ごっこは続きます!』
鬼ごっこ、三日目。
デス・ゲーム開始から十日目である。時系列を整理すると、Cが路地裏問答で脱力し、ネコに蹴り飛ばされたのが二日目。
昨日だ。
え?時間が飛んだ?スタ○ド攻撃?いやいやいやいや。
鬼ごっこ、二日目は無事完了。
誰もマネ出来ない廃スキルで皆の度肝を抜いたネコと抜かせたニート。
その後は趣向を変えて、ネコが隠蔽スキル全開。
かくれんぼ!
スタート!
鬼ごっこ中継の報道ギルド『スフィア・タイムズ』こと『球スポ』。
「スフィア・タイムズが正式名称ですから!!!!!!!!!!」
さよけ。
により、ネコの潜伏場所は常にリアルタイム中継。ただし、俯瞰ではなく、ネコと同じ目線。しかも、ワザとネコは移動力をセーブ。
逃走より隠ぺいに全力を挙げた。
鬼ごっこ参加者は、中継を見ながら、あーでもない、こーでもない、とネコの隠れ場所を推測しながら街中をうろつきまわる事に。
『はじまりの街』はヴァーチャル・ゲーム『スフィア』最大の街
中継アイテムを付けた身長130cmほどのネコ。
かくれんぼ提案者のニート。
たった二人が隠れる場所はいくらでも。
完全に隠れるなら、鬼ごっこが盛り上がらない。だが、巧みに痕跡を残してアピール。
今までの人数やレベルに任せた力ずくから、プレイヤーの思慮や判断力が生きる頭脳戦に。最初から全力全開で参加していたアーネのようなガチ勢に加え、棚ぼた狙いのギャラリーから、さらに積極的参加者を増やしたのである。
賭けも中継も盛り上がる盛り上がる。
「まあ、結局、ステータス勝負っす」
頭脳戦、駆け引き、知恵比べ、に見える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だけ。
ソコ!重要!
と言うのがニートである事は言うまでもない。
見える、は、在る。
魔術師奇術師「詐欺師っす」なニート。
イリュージュンは一瞬の芸術。
刹那に全てをかけてこそ皆を魅了「その場しのぎっす」なわけである。
もちろん実際はそうじゃない。
隠蔽スキルは安全圏でも有効。ハイエンドプレイヤーのネコが本気で隠れたら、見つかるのはニヤニヤ笑うニートだけ。
見つけられたニートが、笑笑集まった追跡プレイヤーに司会者よろしくクイズを出したり、ミニゲームを仕掛けたり。
クイズに答えて、賞品を貰い、我に返るとはるか彼方でネコが跳ねている。
ニートも跳ねあげられている。
マジでムカつく今すぐに。
見せかけでごまかしているだけで、結局スキル/レベル勝負。跳び、走り、躱し、止まる・・・・・パワーと違って、レベル差が解りにくい隠ぺいスキル。
完全に気配、音も匂いも振動も、ゲームスキルで隠せるのだ。
透明化でも迷彩でも幻術でもない。
ないが、しかし、人間の認識能力を、視覚だけではなく、五感まで完全に再現しているヴァーチャル・ゲームだからこそ、隠蔽スキルが効果的。
目で見えるのになぜ捕まえられない?
それどころか跳び回っていた時より見つかりにくいのはなぜか??
・・・・・・・・・・・・・・・・・・当たり前である。
もともと人間は目だけで相手を認識していないのだから、リアルそのものなヴァーチャルゲームで、リアルではありえない五感遮断をされたら、見えていても見えない。
それでもそうは思えない。
参加者は、スキルやレベルではなく、人の意識や錯覚のせいだと思ってしまうのだ。
しかも、ニートが、ムカつくやらイラつくやら、ネコ捜索に役に立ちそうで、たたない感じで参加者を翻弄。
最初から棚ぼた狙いの初心者は、ニートのミニゲームを楽しみ始める始末。
当然、かなり真剣にネコを追う中堅プレイヤーと温度差拡大。喧嘩にこそならないが、両者は距離を置く。初心者はニートを、中堅はネコを。
追跡者も中継も分散しまくり、隠れネコを探す目が普段の半分以下になる。
かくして、大いに盛り上がった『鬼ごっこ』は、まるで何一つ、進展なし。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――以上、二日目ダイジェストでした。
そして三日目。
ニートは常に同じ手を違う相手に使う。手札は尽きず、獲物も尽きない。それが人生ゲームのコツ。次は・・・・・・・・とニートが演出する前に、プレイヤーがゲームを変えてきた。
アベンジャーズ。
アベンジャーズの追跡は続く。ネコがかくれんぼをやめたから。珍しく、ネコが追い詰められている。
『鬼ごっこ』の焦点は、ネコカフェVSアベンジャーズ。
衆目が一致。
今日は、これだ、と。
アーネもだ。
それを見ていた。
期待と、不安と、疑念の眼で。
アベンジャーズを。




