決着の前
相も変わらずニコニコと。殺される側のニート。
いつもニヤニヤ薄笑い。殺す側のC。
どこかに隠れているネコは、気配すらしない。
「ネコ!此処に?いるの??????????」
食いつくアーネ。あ、キミ居たの。さっきから、居ますよ?話に置いてかれてるだけ。
っていうか、この娘も空気を読みません。
まあ、さっきから、わけがわからない話を聴かされているので、仕方ない面もある。
聴けと強いられてはいないけど。
アーネが聴いていること。
一つ。
Cがニートを殺すらしい
二つ。
ニートは殺されてもいいらしい。
三つ。
ニートは、なんかはっきりわからないけど、納得しがたいけれど、自分が殺される前に、アーネに情報を教えてくれようとしたらしい。
ついでに、もしかしたら、誰かを、あるいは気のせいかもしれないけれど、何があっても絶対に口にできないけれど、アーネを含む誰かを、守るとは言わないけど、それなりに、気遣っているらしい。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしかして、ニートは、いい人?
これを『劇場版ジャイ○ン』の法則という。
普段から、嫌われている人間はいる。
ひんしゅくと不評を買っているが、実はいいことをしていた、かもしれない。
するとあら不思議!
善人より善良に見えてしまいます。
解りやすい善人より、解りにくい隠れ善人。
見返りを求めない真の善人に見えてしまうんですね。
理屈はあっています。
真似しようとしてはいけない。
貴方が真似をすれば、気がつかれずに終わるか、より胡散臭く見られるだけである。
だが、まあ、それに飛びつかない分別があったアーネ。
ネコの話題に食いついた。
殺し合いが始まりそうであり、いままで自分が信じてきたことがいろいろと揺らぎそうであり、まさにアイデンティティークライシス。
心のもやもやを解消したい!ただ追いかければいい話に戻りたい!!
うん、仕方ないね。
人はソレを逃避と呼ぶ。
Cがちょっと脱力してしまいました。
それでもアーネは大騒ぎ。
殺し殺される話は置こう。いいのか?
ニートの真実なんて棚上げ。それ正解!
ネコはどこだ!!!!
アーネが仲間を動員して街中を捜させているネコ。どこに行ったか分からない『鬼ごっこ』の標的。
『鬼ごっこ』参加者、見物人、中継ギルドに解析プレイヤー。
はじまりの街全体。
数万のプレイヤーが探している『鬼ごっこ』の標的が、ここに居る?
この狭い路地に?
Cが、注釈。
ついつい助け舟を出すのは、Cの人柄だろう。
「ネコちゃんは、せんせから10m以上離れられないっす」
離れると暴走する。
ニートがログインしていれば、ニートに向かい。
ニートがゲームに居なければ、祟り神のように。
10m
わずかな範囲。
アーネは周りを見回して、見つけられず、思い出した。安全圏では攻撃の効果が無いだけ。主にHP的に。しかしスキル自体は発動する。
例えば、隠蔽スキル。
ネコとそれ以外のプレイヤー。
圧倒的なレベル差。
ネコが身を隠している限り、感知出来ない。
もの陰に隠れられたが最後。
隠蔽スキルがあらゆる気配(音、影、風、匂い)を絶ち、周辺のプレイヤーの動きをその予測移動範囲から視界までネコに察知される。
ネコは、ただスキルの指示通り止まり動くだけでいい。それだけで他のプレイヤーの知覚範囲から逃れ続けることができる。
しかも、最高レベルのネコの動きは、初心者プレイヤーなら知覚すらできない。
育成圏にいる中堅以下プレイヤーが何千人集まっても、誰にも見つからない。
スキルとレベルだけで、だ。
その上で、ネコの、プレイヤーとしての直感力を加味すれば。攻略組最精鋭でも対抗できるかどうか。
ネコがわざわざ姿を表さない限り、どうにもならない。
Cは、悩み始める事で動きを止めたアーネから、ニートに向き直った。
「ここで使えば、逃げられますよ」
ネコを使う。
「ここでだけ、ね」
ニートは考える。
ネコは考え無しだが、プレイヤーとしては最強スペック。今なら、Cだけが相手なら、攻撃をかわして、ニートと一緒に脱出出来る・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かもしれない。
今、だけ、なら。
だが、ギルド『GG』が組織をあげて攻撃して来たら?
個人最強では、最強組織には勝てない。
組織戦なら、時間をあけて切り崩してもいいが
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・『鬼ごっこ』を放棄して、育成圏を捨てれば、出来る。
ニートは、そうしない。
「そこそこ」
ツッコむC。
「聖人にJobChangeしたんすか」
自分の事しか考えないサイコパス。
釣って騙して操って、他人をパズルのピースにしているロクデナシ。
利害得失のみで割り切れる確定要素。
それがギルド『GG』が知るニート。
しかし、今はどうだろう?
デスゲームからこっち、ニートはなにをしている?
違和感に気がついているのはDだけだ。
見込み違いを確信したのはCだけだ。
だからCは『ニートの再調査』を求めるDに応えたふりをした。
ニートがCを止めるために配置した、セイたちを切り捨てて独断で。
必要なのは調査じゃない、と確信したから。
不確実性の無い、判りやすいニートなら、良かった。
どれだけ出し抜かれても、どれだけ利用されても、どれだけ謀られても
――――――――――――ニートが自分の利益だけを考えているなら――――――――――
危険はない。ユエを脅かすことはない。
だが、それが間違いなら。
危険だ。
ニートが、把握出来ない理由、衝動で世界をかき回すなら。Cに理解し得ない目的で動くなら。
ユエの安全にとって最悪の脅威となる。
Cの仲間たち、主たるユエが『ニートを知っている』と思っているから、余計に質が悪い。
「だから、殺すんでしょう?」
自分を。
ニートが促す。
Cは見て取った。
ニートの眼。
違う。
ない。
自己犠牲に必ず生まれる、陶酔がない。
「せんせ、最後にタネ明かし、お願いします」
Cはニンジャ刀を抜いた。
「聞けば答えが得られると?最期だから教えてやろう、とか?」
ニートの嗤い。
出来の悪いフィクションじゃなし、答える気にさせてみせろ、と。
「待ちなさいよ!やめなさい!」
アーネは割って入った。この二人に、常識的な制止が通じないのは、判る。それしか、わからない。どう止めればいいか、判らない。
だからとりあえず間に入るのは、向こう見ずというか、自殺行為というか、自覚がないから自殺ではない。
その報いを受けるアーネ。
「とにかく!ひっ!」
「教える気になったっすよね」
アーネの喉を潰して、掴みあげるC。
ゲーム世界、プレイヤーアバターに窒息死はない。だが、喉の部位を潰されると声が出せなくなる。
息が詰まらなくとも、首周りのダメージ判定は大きい。
フィールドではすぐに回復措置(魔法とかアイテムとか)をとらないと死ぬ。
声だけを狙うのは安全圏PKテクニックの基本。
140cmそこそこ。アーネは160cm弱。
だが、軽々と掲げられ、軽々と投げられるだろう。
はじまりの街郊外。
フィールド上のモンスター溜まりに。




