狂言回し
(――――――――――チックショ――――――――――)
しかも罵声や悪態を口にださないように我慢するアーネ。我慢出来たとは言っていない。
だが、チクショーとは、今時の女子高生にしては珍しい言い回し。思い回し?年齢詐称疑惑?ニートがハッとして目を背けた。
「まさか・・・・・・・・・・・・」
「ウソやと言って――――――――――!!!!!!!!!!」
「わたし!年齢なんか言ってませんけど!!!」
なんかムカッとしたアーネ。
「ええ、わたしたちが勝手に女子校生と勘違いしたんですね」
フォロー?なニート。その当て字はいかがなものか。
近くの宿屋の二階。窓を開け放ち叫ぶヨイツ。
「変やとおもっとったー!リアルJKプレイヤーなんかネットレジェントやったんや――!!しかもリアル準拠で顔が可愛くて!!!オッ○イがデカくて!!!!お尻がぶるんぷるん!!!!!太ももプリンプリン!!!!!」
だんだんと擬音ばかりになる語彙力「も」底辺なヨイツ。あ、「も」を付け足したのはニートです。
「リアルに居そうな絶世やない微妙美少女が顔面加工ヴァーチャルやなんて」
血の叫び。
微妙?ってところに反応してしまうアーネは女の子です。
「十代女子なんかオンラインになんかおらん!リアルにしかおらんのや」
おいまてやめろ!その発言は危険だ!不都合な真実に触れるんじゃありません!!!!
「――――――――――アラサー自称のBBAがリアル特殊メイクでアバター造ってヴァーチャル・ゲームスキャナーごまかすなんかどんな高等テクニックや!!!!!!!!!!」
ヴァーチャルゲームではエントリー時点でプレイヤーのリアルボディをスキャンする。
ゲームアバターとのずれを含め、システムに認識させないと神経信号の伝達ができず一歩も動けないからだ。
美女美少女美男美少年を創るときは普通、ゲーム内でアバターを加工します。性別入れ替えも含めかなり自由にできるが、リアルとの差は一定限度にとどめるように規制がかかっている。
とはいえ、化ける/演じるのもヴァーチャルゲームの楽しみ方。容姿であれ性別であれ、リアルとの違いを判定するゲームスキルはない。
だからばれないかといえばそんなことはない。
アバター/リアルとのズレを生かす/突く戦闘技術があるくらいなので、挙動の違和感からリアル/アバターの差を見抜くプレイヤースキルもある。解剖学的な、スポーツ科学的な知識と経験があれば可能だ・・・・・・理屈の上では。
とはいえ、専門家がそんなことの為にエントリーするわけがない。それができるプレイヤーは、つまりは特殊な嗜好が高じた結果、プレイヤースキルを手に入れたというわけだ。
特殊な嗜好とはいろいろあるが・・・・・・。
【対人戦闘マニア】
・・・・・の中のマニア。
クエストクリアやモンスターハントなどゲームの本筋より、プレイヤー同士の戦闘を好むタイプ。
PKプレイヤーとは限らない。
大手ギルドにも対プレイヤー専門人員がいたりする。人数が多く活動が派手になると、周りのギルドと軋轢が生じる。PKが禁止されないゲームではプレイヤーギルドとの戦闘を想定せざるを得ないからだ。
まあ、それだけならリアル/アバターを見抜く必要はない。パーティー戦闘など集団で戦う分には影響しない。
だから、対人戦闘プレイヤーの中でもアバター/リアルを見抜けるのは決闘好きだろう。個人の強さを追求するプレイスタイルは、極少数ながら古典的なプレイスタイルだ。
リアルでの武闘修行を極めて、一人一人がその域に達してからエントリーした北方攻略ギルド『蝦夷共和国』は例外の中の異種族である。
【解析中毒】
ヴァーチャルに限らないが、プレイヤーはゲームシステムを知りたがる。ゲームを攻略する上でどれだけ役に立つか考えれば当然だろう。
有利不利などの情報は、プレイしていれば自然と身につくし耳にもする。ある程度の安全/必勝パターンを決めないプレイヤーの方が少ない。
さらにその情報を売り買いする市場もできる。情報交換であったり、アイテムや便宜と引き換えであったり、リアルマネーを使う向きもある。リアルマネーを使うと凄く嫌われるが、まあ、ルールの範囲で頑張ってください。
で、解析プレイヤーは攻略組なら必ずいる。ギルドやパーティーの中に解析担当は当たり前だ。
そこを踏み越えると、
「ゲーム攻略のために解析する」
から
「解析の為にゲームを攻略する」
とまあ、転倒してしまう場合がある。攻略ギルドならゲーム攻略と解析と、どちらが優先なのかわからなくなる瞬間があるはずだ。
解析専門ギルドがあると聞けば「開き直ったんだな」という気分になる。
「アバター/リアルを見抜ける」プレイヤースキルは、解析中毒者があるレベルに達すると自然に開眼する。
・・・・・・・・・・いや、自然って?
第三宇宙速度を突破してしまった・・・・・・・もう帰れ、帰らない・・・・。
コワ!
【出会い系】
言わずと知れたそれである。まあ、ヴァーチャルゲームってより、コミュニケーションを必要とするゲームの楽しみ方として、否定はしない。
いえ、いいんですよ?
節度ある振る舞いでなら、どこでナンパしようとご自由で。ただし、ものすごく、ソレを嫌う人もいますのでご注意を。
実際、ヴァーチャルゲーム『スフィア』には結婚システムがあるくらいで男女交際を禁止するルールはない。そんなルール設けるゲームもないだろうが。
・・・・・・・・・同性交際を禁止するルールもありません。
むしろ、運営企業としては
「最低限、友達は作れるかもしれませんよ」
「ゲームに参加したら恋人ができました」
くらいのことは吹聴するのである。
ならばヴァーチャルですべて済ませればいいじゃないか!知らないほうがいい事なんていくらでもあるよ?ヴァーチャルとリアルを混同してはいけない!!君の世界はここだけさ!!!
・・・・・・・・・・・・なかなか、そうはいかないのである。
リアルという欠陥ゲームを捨てられない。
ヴァーチャルで見つけた嫁や婿をリアルに持ち帰りたい。
いや、わかる。わかる。よーくわかる。どれだけ限りなく生産され続けたフィクションでも「ヴァーチャルゲームの中で完結するハッピーエンド」なんて見たことがない。
※情報提供お待ちしております
まさに、お約束。
彼彼女らの苦難に満ちた歴史の数々は涙無くして語れない。
時間と体力と精神力と時にアイテムやリアルマネーまで総動員した挙句、性別や容姿が大暴投ってまあ、あれだ、大やけどである。
ネカマネナベに騙されたのかだましたのかだれが悪いのかいろいろある。そっちの趣味はないのに相手がそっちの同志と勘違いしてリアル接近遭遇なんぞしたらあなた。
救急車呼んであげて!!!!
リアルにつなげるためにヴァーチャルゲームにエントリーしたのに、容姿をごまかす例も後を絶たない。
最期にリアルに回帰するなら、それは結局、自作の時限爆弾でしかないのではないだろうか?
見栄に後先なし・・:・・よく言ったものである。
容姿や性別以外にも、年齢詐称だか誤認だかもよくある。
あれだけ愛し合ったあのひとがリアルでは玉手箱を開けた浦島太郎だったなんて!
あれだけぶっちゃけた関係のあの娘がリアルでは一桁だったなんてなんてご褒美!!
パトカー読んであげて!!!!
だからこそ、彼らは目を鍛えるのである。
いつかパトカーに乗る覚悟・・・・・・じゃなく、アバター/リアルを見抜いて予想外の悲劇を防ぐために。
予想内の悲劇もあるのかとツッコんではいけない。
悲恋を求める・・・・・・・・・たぶん違うから。
悲劇的幕切れを知ってなお愛さずにはいられない・・・・・・うん、まあ、いいや。
ヨイツも目を鍛えている。
努力と時間と勉強と経験で。
その結果、栄光の歴史を積み重ねた。
まこと様やゆいちゃんやミネさんやようこやマリさまやジュンコや澄子さんやまこと様や悦子くんや女王様やちータンやマッキーやしのぶやステファニーやまこと様やご主人さまや未來クンやピンクや閣下やまこと様やケイや鈴やローザンヌやヤオや永遠の天使やまこと様や・・・・・・。
ヨイツから、ありとあらゆるアイテムや便宜を吸い上げた、徴収し続けている方々。
みんな間違いなく、リアルで女性、リアルで年齢ストライクゾーンな、リアルで標準を超えた美しさや可愛らしさを持つみなさんである。
中にはヨイツにはリアルでで会ってくれない方もいるが、ギルド『蝦夷共和国』の土方に頼んで確認してもらったことがあるので、そこは間違いない。
なぜ土方かといえば、よいつの友人で唯一のイケメンだから・・・・
「誰が誰の友人だって?」・・・・・・・友人、でいいんだよね?
さて、触れてはいけないことをスルーした、よいつの栄光に満ち満ちた・・・・
・・・・・・・栄光?
「我が青春に一片の悔いなし!!!」
などとヨイツは自供しており・・・・・。
そんな、栄光に満ちたヨイツの目利きに隙は無い。アバター/リアルを完璧に識別できる。だがしかし、だからこそ、ヨイツは真剣に恐怖する。
リアルで偽装していたら?どうなる??
科学の進歩は既に神の領域に踏み込んである。
本人の資質もあるが、様々な先端技術を動員すればソレは可能なのだ。
成型や性転換ほど大がかりなものは無視してもいい。希少な例外に出くわすことまで考えればきりがない。ここで再びだがしかし。
一見そう見える、程度なら、かなりの人間に実現可能だ。科学の特徴である普遍性。それがもたらす恐怖。
若作り。
化粧という名の顔面成型。
補正という名の体型強制。
怖い世の中である。
リアルもヴァーチャルも外殻アバターばかりなら、僕らは何を信じたらいいのだろうか?
脱いだらある意味すごかった!30cm以内立ち入り禁止!!独りだけ映って周りがハレーション起こしてるって!!!
ライトで日焼け・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ、素肌さらしてませんかそうですか。
「イヤや――――――――――」




