スフィア
高度10000m、突破。
ネコがワンアクションで飛び上がった高み。
どーせ手抜きだろ?舐めプだろ??
攻略組すら蹂躙するネコが初級者や初心者や中堅クラス止まりを相手に本気のカケラも出すわけねーじゃん!!
こちとらデス・ゲーム解析で忙しいんだよ!!!
と『鬼ごっこ』をスルーしていた事を血の涙を流して後悔した攻略組合同解析チームが『鬼ごっこ』中継映像から計算した推定高度が一万メートル以上。
(――――――――――丸い、か)
ニートは婉曲する地平線からスフィアの面積を把握した。
地球相当。
西、北、南、は陸地。東は大洋。
地形もおおざっぱに確認。
鬼ごっこの、ついでに。
(はじまりの街からだから、こそ、か)
発射台には安全圏が相応しい。
ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』には作用反作用の法則が適用される。砂地や柔らかい土壌では、突進力が弱まるのが攻略組には知られていた。
安全圏の街中ならオフィシャルアイテムの地面が破壊されない。
ジャンプ力はほぼすべて上に向かう。
フィールドでそれをすれば、クレーターが出来る。
その分上昇中が失われ、ここまで高くあがれまい――――――――――同じ力では。
鬼ごっこのついでに、それも確認。
(息は苦しくない)
速度による大気圧は地上をネコに咥えられて疾走していた時と同じ。もちろん、手抜きの『鬼ごっこ』中の話ではなく、デス・ゲームになる前。
散々フィールドを全力疾走していた時に、ニートが体験した、させられた感覚との比較。
ヴァーチャルゲームとはいえ、大気密度は再現していないのか?
窒息判定がないのと同じ理由か?
手足を動かしてみて不自由を感じない。もちろん、空中なのでネコの体を足場にしてほんの少し動いただけだが。
今後、高山フィールドに遭遇したら、もう少し確かめ『させた』ほうがいいかもしれない。
適当な他ギルドのメンバーにやらせるのはたやすい。
なら、次は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ベクトルが変わる――――――――――――――――――――落下だ。
ネコ――――――――――。
ニートは、イヤイヤするネコに、強制した。
ネコは逆らえない。
ニートを噛むだけである・・・・・首がちぎれかけていますがそれは・・・・・。
(この高さでも『安全圏』か)
HPも減らないし攻撃エフェクトも起きない。
安全圏なのは『はじまりの街』つまりは安全圏の上空だからか?
それともある程度上昇すれば安全圏になる?
要確認・・・・・・って、ニートも知らなかったのかよ!しんだらどーする!!
まあ、サイコパスは自分の死にも関心がないのかもしれないが。
こうなるとニートの病名はフィアレスかもしれない。
さておき。さておいてしまうニート。
予想外の収穫を得てなお、ニートの予定は変わらない。変える必要がない。
人間はとても単純。
だから、意外性を楽しむためには工夫が必要だ。
何もかも放置したら、もっと楽しめるのだろうか?そう思わないでもない。
想うだけだ。
結局、使う楽しさに負けて手を出してしまうニート。
(――――――――――世界は易しい――――――――――)
それは、自他の生死に興味しかないからじゃないですかねぇ????????
そのころ、ニートの生死に大変興味が有り余っている方々はというと・・・・・。
はじまりの街。
爆発。
はじまりの街に上がる爆煙。
轟きわたる実況中継!
『――――――――――――――――――――墜ちた―――――――――――!!!!』
『なぜ爆発????』
大広場。
「お~~はやいはやい」
「おお!速い速い!!」
「ひょ!早い早いっす」
はやく早く速い何かが向かった場所。
爆心地。
グランド・ゼロ。
墜落地点。
なんか轟音と煙が上がった場所。
上からセイ、トモ、Cである。
はやいのは、まあ、アーネだが。
瞬く間にバリケードを乗り越えて広場を飛び出して爆心地方面へ消えた。
はやいかどうかは審議中。
しかし急いではいる。
アーネは中堅プレイヤーで速度全フリでも重視でもない。オールラウンダーと言えば聞こえが良い、ぶっちゃけ器用貧乏なキャラメイク。
・・・・・・・・・・人柄と運命が滲み出している彼女。
ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』では精神力でアバターが速くなったりしない。
当たり前である、ゲームなんだから。
だから、ネコ墜落地点に疾走中のアーネも、特別速くはない。
それでも速く感じるセイ&トモ。たぶん、アーネが余りに必死なので応援気分になっているのだろう。あとは、周りが初心者初級者ばかりだから、比較で速く見える、ということもある。
「いや、早いっすよ」
と解説するC。
アーネの反応速度はかなり早い部類だそうだ。
確かに判断速度は早い。
ネコの大技に対処法を見いだしたり、とっさにそれを全プレイヤーに知らせる必要に気がついたり、その為に『鬼ごっこ』中継席に突っ込んでマイクを奪ったり。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それを即後悔したり。
「考えなし?」
「アドリブ上手?下手?早い?」
「それもっすね」
瞬間的な状況把握力、構想力はお見事!
うまくいっているかどうかはまた別の話だが。
ただし視野が目先のみななので、繰り返すとあっという間に思わぬ場所に突入して破綻する。
それがアーネだろう。
これらはアバターやゲームスキルとは違い、プレイヤーの人格部分。
セイ&トモがCを見た。
「それ以外も早いっす」
他に何が?
「動作の反射速度っすね」
アバターの動きはゲームのルールに基づく。強さ、速さ、丈夫さ。みんなステータスがあり数値がある。
ならばこう考えてみよう。
同じレベル。同じスキル。アバターが同じ。更に行動フィールドと時間を一致させて、同じモーションをさせたら、どうなる?
「同じになんねーの?」
「ひっかけ問題?なら、やっぱり同じ動き?違う動き?うーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーんうーん・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
テストは考えない感じるんだ!なトモ。
クイズは真剣だ。
クイズじゃないが。
「もういっす?」
「ああ」
「いい?わるい?えーとえーとえーとえーとえーとえーとえーと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
もうええっちゅうねん。
「じゃ」
まってまってと騒ぐトモ。無視したCの答え。
「違っす」
そう。
ゲーム内の、あらゆる数値をそろえても、結果は違う。
例えば剣術の同じ技を同じタイミングで同じ・・・・・・・・・・・・
中略
・・・・・・・・・・・・・・・・・・でさせても、見てわかるほどのズレがが起きる。
「速さはゲームシステムなんすけどね」
速さ。
例えばアーネがネコ墜落地点に向かうまでにかかる時間。
それはゲーム内の数値で決まる。
早さ。
例えばアーネが大広場バリケードの椅子を飛び越える時、踏み切るタイミング。
後者の認識と反応はリアルプレイヤーのモノ。
アクションにいたるまでの、アクション中の、相手を含む周囲の情報を認識する時間と反応する時間。
コンマ以下の、思考が追いつかない反射反応。
それがアバターのアクションに差を生む。
「天性の、リアル準拠っすから」
システムに関係ないから、ゲーム内では鍛えられないし、リアルでも鍛えられる部分なのかどうか。
「あの女、はえーの?そこ?」
「抵抗が多そうです!」
セイ&トモ。トモはセイの胸をみて考えていた。
アーネとセイの差について。
「っす」
Cは頷いた。アーネは早いほうだろう。
初級者、中堅、攻略組、ハイプレイヤー関係なく、全プレイヤーの中で上位。
それだけで優れているとか、勝負に勝てるわけではない。だが、レベルもスキルも一定の手順を踏めば誰でも手に入る。
ゲームだから。
他人のまねできない要素を保持していることは、大きなアドバンテージになる。
(今後、ゲームが長引けば無視しえない相手になる・・・・せんせがめぇーつけたのは・・・)
とCは言わなかった。言ったのは別の事。
「ネコちゃんほどじゃないっす」
「くらべねーよ」
「ほとんど同じですよ?」
トモは指幅で確認。
セイは中学生です。
ネコは一桁かもしれません。
トモは年齢的には平均です。
まあ、全女性を見回せば、まな板はステータスじゃないけどね。
よくあるよくある。
普通ふつーフツー。
「ん?」
「でも、なんで判るんですか?」
「みりゃわかるっす」
そりゃそうだが。素朴な疑問と端的な回答。
何が何かと言わないで。
・・・・・・・なんかまざってるぞ・・・・・・・・。
「ゲーム内数値とアバターの動きの比較、基礎数値は実験で集めたっすよ」
そのたぐいの解析は、攻略組の解析厨すらやらない。と言うよりできない。
出来るのは、やるのは?
ギルド『GG』ってよりリアルのユエ一党。
もちろん、Cも含む。
彼らはゲーム攻略を進める一方で、多くの実験プレイヤーを雇ってエントリーさせた。
様々な疑問を解消する為に。
そもそも、ユエの目的はヴァーチャル技術が人間に与える影響の解析。ある意味、トッププレイヤー&最強ギルドの称号などオマケに過ぎない。
「おい」
不機嫌なセイ。
まあ、セイのようなゲーマーには、ゲーム攻略以外を目的にしたユエ、この場ではCの姿勢は気にくわないかもしれない。
「誰の、何が、ネコと変わらないって?」
ゲーマーとしての基本姿勢・・・・・・・・・・・・・・・
「言えや」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、すいません。
「中学生女子のバストサイズが小学生と変わらない件」
あ。
大広場に怪獣のような咆哮が響いた。




