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コミュニケーション・オンライン~コミュ力最強!仮説~  作者: C


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真昼の死闘



アーネはキレた。うん、キレてもいいと思う。


「もう少し!もう少しで手が届くのよ!!」


・・・・・とてもおとなしいキレ方でした。


ともあれ、アーネは本番に備える。ケリをつける為に。

そのために準備万端整えた。


昨夜はネコカフェのキャンプに引き入れられ、車座になって怖い話を聴かされ・・・・・・ニートの「全部殺せばだれにも責められませんよ」って吹っ切れたトークはすごく怖かった。

何が怖いって、ネコカフェのメンバーが「まあそうだけど」って調子なのが怖かった。


(フミノはよくわかってなかっただけです)


部外者のはずのCは退屈そうで、反応すらせずに、アーネは自分がおかしいのかと混乱した位である。キチ○イの中で一人だけ正常な人間がいるとそんな感じになる。


・・・・・誰がどうだとは言いませんけどね?


しかも、ソレ(とってもリアルな怖い話)をだれにも相談できない。

証拠もない話で、ニートが「冗談です」と言えばそれまで。あの目は真剣だったとアーネは思うがそんなことは世間に通用しない。


いや、通用しない、ならまだいい。


通用してしまう。

アーネの上司、報告先はクラウンなのだ。


一を聴いて十を断定し、念のためとか用心してとか裏付けをとってという言葉がなく、警戒する前に即全力で行動に移るクラウン。


ギルド『黄金の夜明け』最終兵器。

何かが終わるという意味で最終?

総てが尽きるまで出したくないという意味で最終?


クラウンに、ニートの話を知らせたが最期、まさに最期。

評議会の決定を無視して、大手ギルド全てを敵に回してニートに殴りかかっているだろう。もちろんすべてを敵に回すのはギルド『黄金の夜明け』がであって、クラウン一人では済まない。


ギルド戦争再び。



今度こそ、はじまりの街が滅びる。

「ニートが育成圏を滅ぼす可能性がある」

と通報したせいで

「クラウンがはじまりの街を滅ぼしてしまう」

のである。



だからアーネは一人で対処することにした。ニートを暴走させず、クラウンを狂騒させず、事態を収拾する為に・・・・・・・・・。


「健気な娘ぉや!」

泣くヨイツ。

「貧乏くじっすね」

笑うC。

「中継はいります。30秒前」

合図するギルド『スフィア・タイムズ』のメンバー。




アーネは一晩かけて大広場から四方に向かう道を塞いだ。

道以外は建物だが、見物人兼棚ボタ狙いの人だかり。地上十数mのアドバンテージがあり、中堅プレイヤーも交じっている。


いかにハイレベルプレイヤーでも、空は飛べない。

ネコも、一見NPCだがプレイヤーだ。初日も建物の屋根から屋根を飛び回り、鐘楼を駆けのぼって飛び降り、路地裏を低空飛行するように駆け回ったが・・・・・・・プレイヤーの限界は越えていない。


アーネもそうだが、中堅プレイヤーがジャンプできるのは十m程度。そう考えれば、大広場を囲む建物は、上にいるプレイヤーの跳躍能力と合わせれば二十数mの壁に当たる。

それをわざわざ知らしめるために、大声で建物上の見物客にネコが飛び越えていく可能性を伝えてある。



(きっと、こちらの罠に飛び込む!!)



自分の率いる100余名を使い街中から移動可能なオフィシャルアイテムをかき集めた。

椅子とか机とか看板とか屋台とか窓に扉に家具一式。

バリケードである。


もちろん、ネコの突進力なら一撃である。だがしかし、オフィシャルアイテムは破壊できない。安全圏ではプレイヤーアイテムが破壊されると同時に再生されるのに対し、壁や道と同じ扱いのオフィシャルアイテムは壊れない、どこであっても形を失わないのだ。

弾き飛ばされるとしても、一瞬速度を抑えることができればいい。


そしてバリケードの上にはアーネの仲間を配置。バリケート上の目立つ場所には初心者を、バリケードの死角に中堅プレイヤーを配置している。

バリケード突破の一瞬、落下とスキルを駆使して、人海戦術でネコの上にとびかかる。


ただ一人、ただ一手がネコの体に触れれば・・・・・・・・・・・そのお仲間が賞品を放棄しなかったらどうなるか?とは考えないのが、彼女らしいというかなんというか。



「ピュアすぎて、目がつぶれそうっす」

「仲間って知り合って何日も経ってないんだろ?」

「一生裏切られないままで、まっとうしてほしいですよね!」

C、セイ&トモ・・・・・・・・・・とても生暖かい目が集中する。

いや、バカにはしてないよ?


どちらかというと、そんな感想がするする出てくる君たちの方が心配だよ!!



アーネは大広場の、寝ているネコとニートの側にいる。戦場はここ、大広場、の外周。つまり、指揮官が一番周りを見渡せる場所にいるわけだ。



「10カウントー!」

と通系スタッフ。

実況のルーシーと解説のエルコレがスタンばってる。ニートは枕のネコにかじられてる。甘噛み?アバターがゆがんでいるような??


「5!」


「4!」


アーネが全景を見渡し、仲間に合図を送る。


「2!」


「貴女じゃなきゃダメなんですけどね」


ネコが飛んだ。

真上に。


「は」


『飛んだ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――!!!!!!!!』

『跳んだねえ』

実況大興奮。解説は呆れ声。


高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く高く

!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!



アーネ(中堅レベル)の想像を超える世界。

ハイレベルプレイヤーのポテンシャル。



豆粒のように。遥か高く、空に向かうネコ、とニート。

「うそ、でしょ・・・・・・・・・・」


『って、これなんです、解説のエルコレさん!!』

『ジャンプです』

『どうにもならなくないですか!!鬼ごっこにならなくないですか!!』


いきなり『鬼ごっこ』終了の知らせ。確かに、ハイレベルプレイヤー(ネコ)がこんなことをしてしまったら、出来てしまったら、中堅以下しかいない追跡側参加者には何もしようがない。

ゲームとして成り立たない。

それに皆が気が付いたら・・・・・・・・・。



『落下地点!J-12』



アーネが中継席から怒鳴る。

放送席に乱入である。

実況のルーシーは驚きすぎて固まっている。解説のエルコレは周りのスタッフを抑えて笑っていた。



『やつらは飛んでない!跳ねてるだけ!!落ちてくる!!!落ちるまで身動きできない!!!!!全員全速突撃!!!!!!!』



アーネは指揮下の全員が落下点を目指すのを確認すると、走り出した。


「バリケードなんか作るんじゃなかった!!」


超えるのが大変だった。

まさに徒労。

昨夜の寝不足が悔やまれるアーネである。



『エルコレさん??』

『このヴァーチャルゲームは飛べません。ジャンプしたなら落ちてくる』

『ええ』

『空中では足場がないから身動きできません。加速も、減速も、進路変更も、なにもかも』

『・・・・・・!』

『あのハイレベルプレイヤーのネコが、落下して地面に着くまで無防備になるんですよ!!!』

『みなさん!今、落下予想地点を出します!!付近の方は逆転チャンス!!二度とないチャンスですよ!!!!』



ヴァーチャルゲーム『スフィア』では、作用反作用の法則が生きている。攻略組では戦闘時に飛び上がるのが御法度。特に対人戦闘では全く無防備になるからで、飛び蹴り、飛び斬り、大振りパンチなどは雑魚の証とみなされる。


だから、ハイプレイヤーなら数百mほどジャンプできるが、あまりその事実は知られていない。

跳べても跳ばないからである。


巨大モンスター退治などは足元から昇っていく方が多い・・・・・・駆け昇ったりするわけだが、必ず足場から離れない。


ダンジョンなどでいきなり跳び上がったりしない。

罠があるからだ。

高所に向かうときは、先発が慎重に昇り、上を確保してから更に慎重に・・・・・となるのが普通。



とはいえ、ネコのジャンプは高すぎる。

ここまで跳ぶと、飛ぶといってもいいかもしれない。

ネコが落下に入るまでたっぷり1分以上。



何km跳び上がったんだ?????


だからこそ、落下地点に多数の、数百単位のプレイヤーが集まることができた。

元々そのあたりにいた連中なら、下に回るのは簡単だ。

誰がネコにタッチするか?

初心者でさえ、リアルのオリンピック選手以上の運動能力を発揮できるヴァーチャルゲーム。


数百人のプレイヤーが落下地点に群がれば、身をかわせないネコにタッチできないわけがない。

これは戦いではなく、『鬼ごっこ』なのだから。



「マズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズいマズい」



アーネは走る。たとえ間に合わなくても走る。終わるまで走り続ける。絶対に間に合わなくてもあきらめない。

彼女はそういう子だ。



これでゲームオーバー。

『鬼ごっこ』はお終い。

どこかのプレイヤーが賞品を手にして、評議会は紛糾して、ニートは責任逃れをするために、全てをぶち壊す引き金を引く。

ニートがためらう?

ありえない。


アーネはニートが逡巡すらしないとわかっていた。世界を、何万人の命を、数とすら見ていない。

・・・・・・・・・・エライ言われようである。



アーネはとっさに、動いてしまった、ゲーム終了の引き金を引いた、自分を責める。


『鬼ごっこ』を守ろうとした。


ネコには誰も追いつけない。


そう思われたら、参加者はみんなシラけてしまう。昨日参加したプレイヤー、今日参加するつもりだったプレイヤーは怒るだろう。騒ぎになるかもしれない。


だから、とっさに、思い付きで、対処方法があると皆に知らしめてしまった。それが、対処方法としては正解だった。


正解だから最悪の不正解。


何もしないほうがマシだったのかもしれない。


アーネは必死で走り続けた。




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