真朝の決闘
『鬼ごっこ』二日目。
朝の六時の大広場。
なんとなくスタート地点。なんとなく不可侵。なんとなく納得。
よし!みんな空気を読んだな!!
ルールは簡単。朝6時ちょうどにスタート。ネコにタッチすれば勝ち。ふつーに『鬼ごっこ』。
ニートとネコはまだ寝ている。
着ぐるみネコを枕にして寝てるニート。
『鬼ごっこ』開始は朝6時から。現在5時55分。
おい。
想定外である。
不可侵っぽい場所からネコが出てこなかったら、どうすんの?
誰が誰を追いかければいいの??
不可侵場所に時間制限付ける???
誰が決めるのこのルール??????
「これ、二人が起きなかったらどうなんっす?」
「不戦敗でしょうか?」
「ルール??」
「6時過ぎたらみんな大広場に突入すりゃいいんじゃね?」
C、フミノ、トモ、セイらセコンドである。
セコンドついてるの???
ちなみにセコンドとはボクシングなどしているときにコーナー付近で声援したりタオルを投げ込む人である。
最近はシルヴェスター・スタローンが・・・・え?違う?
まあ、ネコカフェ一同+Cが声援以外で役に立つとは思えないが、なんとなくそんなポジションと思われている。
なんとなくばっかだな?
『鬼ごっこ』はなし崩しにはじまり、首謀者も不明なことになっており、首謀者が不明であるということも不明になっているために、『それっぽく見える』ことに参加者が警備のプレイヤーたちが従ってしまうのである。
誰も決めないそのルール。
まさに『みんなで一緒に創る鬼ごっこ』、民主的というか、やっぱ言わないなこれ、空気読めがルールな当たりが実に日本的。
ダメな意味で。
どこがダメかというと、そういう状況を得意とする奴がいるのである。それが良いか悪いかは言わないが、たいていろくでなしである。
ニー○とか。
ソレを適当に利用して自分に都合がいいように状況を操る奴がいて、ニートにはその責任負う気が全くないあたり、まさに日本的である。
もう伏字にしなくていいよね?
しかし、そのダメダメダメな状況に誠意を持って真面目に取り組んでしまう人がいる。
決して報われることはない。
決して褒められることもない。
きっと『私は貝になりたい』とかつぶやく羽目になる・・・・・・
「やめてください!!!!!!!!!!!!!」
アーネである。
この薄幸貧乏クジ苦労性少女は、グースカ寝ているニートとネコをしり目に作戦を実行中。
「なにつくってたんでしょうね?」
「さあ・・・・・・・オブジェか?」
眠い目をこすりこすり、彼女は何のためにそこまで身を犠牲にできるのであろうか?ドMであろうか??
「鬼ごっこを終わらせるために決まってるでしょう!!」
そう。
アーネは思った。
はじまりの街、そこにいる育成圏のプレイヤーたち、そして自分のギルド『黄金の夜明け』を守らなくては!
っと。
誰から?なにから?どうやって?
ニートから守る。
適当な口約束でごまかして、育成圏全体を揺るがす騒動を起こし、最後はギルド『黄金の夜明け』ギルドマスターを暗殺して、約束も責任も無かったことにして、コネのある攻略圏でのほほんと安全にかつ心の痛みもなく楽しく暮らすであろう極悪非道下劣卑劣な悪魔。
「いい加減にせーや!嘘つかなきゃ殺されないと思うんじゃねーぞ!!」
「だいたいあってますね♪」
セイ&トモ。
「誰も、否定しないんですか???」
「何をっす?」
フミノ&C。
『鬼ごっこ』から守る。
このバカ騒ぎ。何の役にも立たない狂騒。深刻な現状を忘れさせるようなお祭り・・・・・え?・・・・に付き合うのはアーネの本意ではない。根が真面目なんですよこの娘は。
鬼ごっこの完遂は評議会の意思。
それは仕方がないと思うアーネ。そうせざるを得ない状況にいつの間にか追い込まれてしまったのだ。みんなが。誰がやったのか、だいたいわかるけれども、アーネはソレを口にしない。憶測で誰かを糾弾できない。それがこの少女の性格だった。
「良い娘やん」
「抱え込み過ぎてないかしら?少し心配ね」
「敵と判ってから斬っても手遅れです。判別できないなら命じられるままに斬るべきなのです」
ヨイツ、近藤(リアル高校教師)、山崎(アーネと同じくリアル女子高生・・・・・発想が怖いんですがそれは)。
『鬼ごっこ』に勝利することで守る。
そう、アーネが、あるいはアーネの仲間が勝利してしまえば『鬼ごっこ』終了条件は満たせる。鬼ごっこは完遂され、賞品は贈呈され、そして回収できる。
いまから他の評議会ギルドメンバーが参加すれば八百長くさくなり不自然だ。
幸いというかなんというか、アーネたちは最初からニートを追いかけていた。だから最初から参加者と目されており、ブックメーカの賭けリストにも乗り、声援も集まっている。
つまり、アーネなら、アーネにしかできない。
「まあ、あんだけの目にあえばな」
「映像特典がバカうけですよ!ブックメーカーでも別なオッズが立てられる位で」
実況コンビ、解説のエルコレさんにアナウンサーのルーシー。
アーネの大活躍は、ギルド『スフィア・タイムズ』放送の『鬼ごっこ』中継の目玉である。
ネコのフェイントに引っかかってアバターが爆散する勢いで壁にぶつかったり、ネコに踏んづけられてテーマ『ネコふんじゃった』を流されたり、百人近い部下(黄金の夜明け新人メンバー)を叱咤激励し吶喊粉砕されたり・・・・・・。
「さあさあスピードクジはこちらだよ!アーネちゃんが何回踏まれるか!一時間!午前中!午後!一日!はったはった!!」
「アーネファミリー百人蹴り最短記録更新なるか!」
「結果はすぐ!払い戻しも即!!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・憮然とするアーネ。
アバターが爆散する衝撃は、真似したくないくらいつらいのだ。
痛くないけど。
やったつかまえた!と思った瞬間、ニートを咥えたネコに頭上から踏みつぶされたりする。
痛くないけど。
新人たちを叱咤激励し、逃げ出そうとする者を説得し、涙をこらえながら心が折れそうになるたびに、アーネにしか見えない角度でニヤニヤ笑ってくるニートにはらわたを煮え繰り返し、しかも中継映像に出ている時だけ「大丈夫ですか?無理しないでくださいね」などとネコの足元でつぶれているアーネに本当に気遣っているとしか思えない優しい声をかけてくるニートに耐え続け・・・・・・・・・・・かわいそう。
「すっごく痛いわよ
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「かわいそう」
トモ、言っちゃったよ!!
「あ、うん・・・・・・ごめんな」
気まずそうなセイ。
「まあ、気にしなくってもいいんじゃないっす?中学生に憐れまれて謝罪する気持ちにさせる高校生ってのも、あれっす」
絶対慰めてないよね!煽ってるよね!!
なC。
(そろそろやめてあげた方が・・・・)
聞こえないように小声で注意するフミノはネコカフェの良心です。
「え?」
「可哀想だから慰めないほうがいいって言ってますよ!!」
注意力散漫なセイをフォローするトモは優しい心。
もしもーし。あと一分なんですが?本番いいっすかー!!




