PtoP
「という訳で、よろしく」
『すいません、よくわからないんですが。エスペラント語は苦手で』
日本語だから!
苦手って少し判るの??流暢に話せても誰に通じるかってのに?無駄スキルすげーよ!
・・・・・・・・などと聞いてはいけない。
聞いたが最期、ツングースカ大隕石とカンブリア期地衣類について延々と話されるだろう。それは何だ意味があるかと聞いたが最期、アルツハイマーと地球空洞説について・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・ニートはネコタクシーで音速ローリング中も平常運転。
人を煙に撒くためだけに京都放火を躊躇わないニートである。
薄々はっきり気が付いている人も多いだろう。
どっちだ!
手段と目的が転倒しがちなのだ、ニートは。
ボス攻略にリトライし続けてタイムアタックや縛りプレイを始める一部プレイヤーのように。
え!なにそれ?
よし、解りやすく言えば
『平和だから戦争に備える』
と連呼して
『戦争だから戦争に備える』
と連呼する戦争音痴のような・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・歌か戦争かはっきりしない?
よし、はっきり、え!もういい?
そんな感じ。
そして男二人の密談。
チッ!まったく、いやはや、な会話の主は、ニートと部屋の主。
ここは評議会議長執務室である。
間違いない。
部屋の入り口に看板(型のアイテム)が掲げられてている。
《評議会議長執務室》
とこれはテキスト描写不可能な非常に流麗な判読困難な飾り文字のごとき書体で書いてある。
きっと、名のある書体なのだろう。
どうせ、はじまりの街、円形劇場の観劇用VIP席でしょ?
と言うなかれ。
円形劇場入り口案内板にも評議会議長執務室と明記されている。
わざわざ円形劇と都明記されている既存の案内板に重ねて案内板、型のアイテム、を設置したくらいだ。クラウンが。
なんだかんだで円形劇場って言ってんじゃん!
などと言うと、10000倍になって帰ってくるから言ってはいけない。クラウンには。
『円形劇場でしょ』
「そうだけど?」
ニートの突っ込みに、素で不思議そうな議長は、彼に忠義を誓うクラウンのこだわりに無理解だった。
「じゃあ、説明するね」
『けっこう』
言わずもがなかもしれないが、評議会議長執務室にニートはいない。
はじまりの街の上空、あ、今は大通りを音速疾走中のネコの上、から口に咥えられなおされたところである。
それは昨日にさかのぼる。
鬼ごっこ開始から数時間。円形劇・・・・・評議会本会議場。集まった有力ギルド代・・・評議員。めんどくせーな!!
と思うのは、クラウンの肩書呼称指導を受け続けているギルド『黄金の夜明け』メンバーの心の叫び。
言葉の叫びにできない理由はお察しください。
評議会席上。相手の意志を無視しない事が多い議長が説明した。
「このお祭り騒ぎは止められません」
出来るか出来ないかじゃない!やるかやらないかだ!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、クラウンが居たら絶叫していただろう。
じゃ、やらない。
やるんだ!!!!!!!!!!っと絶叫していただろうクラウンは居ない。
だから、評議会議員、つまり大手ギルド代表者たちは頷いて聞いた。
仮に不承不承でも、皆、納得せざるを得なかった。
するかしないハッキリしろ!異論があるなら声に出せ!!!!!!!!!!と呼吸困難に、ゲームなのになるクラウンがいないから、皆、納得できた。
異論がなくてもとにかく反論したくなり、最後は口喧嘩になる流れが避けられただけでも、クラウンの功績は大きい。
欠席してくれてありがとう!!!!!!!!!!
「お分かりの通り」
皆が解っていることを再確認する態をとる議長。
もちろん、ここ数時間で始まった事態を把握している評議員の方が少ない。
大手ギルドも万能ではなく、複数ギルド連携の評議会はまだ始まったばかり。情報の共有伝達の流れは稼働テスト中にこのバカ騒ぎで破綻した。
何故評議員ともあろうものが状況を把握していない!!と絶句するクラウンは不在である。絶句してる割に叫んでいるのが彼の器用なところ。
な、ぜ、か、状況を把握しているシスターはおなかが痛い。胃腸性疾患など存在しないヴァーチャルゲームでこれである。
緊急事態故に評議会に泊まることになり、控室をキープしたままで、そこにいろいろと表ざたにしてはマズい人たちを隠しているからだ。
口実からなにからすべてシナリオを書いているニート、とネコ、が議題だけに忘れることも気を紛らわせることもできず、ストレスがマッハである。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・隠し事自体が苦手な人なのだ、シスターは。ニートと違って。
状況!
議長の説明。
評議会が、警邏本部が気が付いた時点で参加者が千人オーバー。等比級数、雪だるま、ねずみ算、どれも違うがイメージそんな感じでイベント拡大。
これを鎮圧するなら、はじまりの暴動直後、なし崩しに始まったギルド戦争の再来だ。
つまり一度出来たのだから、また出来る!全ギルドが総力を結集!!総動員だ!!!総力戦だ!!!!とまあ、作戦計画を瞬時に作り上げるクラウンはいない。
だからクラウンのおかげである。
そもそも、ギルド戦争を繰り返したくないからこその評議会だと皆が納得した。
議長の言うことは正しい。勝手にはじまり、しかも、ここにいるほとんどのギルドの名をかたり、多くの人手を吸い上げてなお、負担を増やしている《お祭り騒ぎ》は止められない。
まさにクラウンのおかげである。
あれ?途中まではいい感じだったのに、最後は元凶なの?はさておき。
つまり、クラウンは警邏本部に詰めており不在です。
え!違う?
そして今日に戻る。
議長は評議会の方針に基づき事態を収拾する為に、評議会とは無関係にニートと通話中。
《鬼ごっこ》は止められない、なら、どうする?って話である。
「最期まで完遂する」
『また思い切った事を』
この、鬼ごっこ。明示されたルールはひとつ。勝利条件はあるが、期限指定がない。
「だから、終わらせる方法は一つしかない」
後付けで期限切れを導入したら、暴動になりかねない。
『そこまで意欲的ですかね』
「評議会の信用が無くなるよ。選挙中だってのに」
だから、鬼ごっこにはルール通りに対応する。本来関係ないのに、一般プレイヤーは評議会がイベント運営側だと思っているから仕方がない。
「だけど、賞品は出さない」
ギルド『黄金の夜明け』以外のギルドが、鬼ごっこに巻き込まれている。賞品を、ギルド資産つかみ取り、というかたちで。
「みんな、ヤダって」
まあ、コレばかりは、説得出来なかった。有限のプレイヤーストレージ一杯ってが条件にあるし、ギルド資産には代換えが効かない伝説級装備は置いてない。そもそも、参加者が中堅以下ならレベルによる装備限界も低い。
けっして無制限ではないんだら、別にいいじゃないか。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思えるギルド『黄金の夜明け』は、賞品提供ギルドのリストに何故か入っていない。
ルール通りに鬼ごっこを完遂した場合、議長率いる『黄金の夜明け』だけ損をしない。まあ、これじゃ、納得しないわな。
「損をしない、ように見える、よね」
議長のような人間、数千人をまとめる人間には、自分だけ損をしない、がどれほど恐ろしいか知っている。ヴァーチャルゲームで独り勝ち???
大損なんてもんじゃない。破滅的損害だ。みんなで一緒に破産したほうがいいくらいだ。
『補填されればいいでしょう』
ニートは興味を持ったようだ。
(まだ、ウチを潰す、はないか)
とニートの敵意がこちらに向かっていないことに少し安心する議長。いやいや、ゲーム最大手ギルドのギルドマスターが何を思っているのか。
そもそも、サイコパスに敵意や悪意が存在するのかどうか・・・・人間と石ころを区別しない真の平等精神の持ち主だけに。まあ、ニートの性質を理解しているのはギルド『ネコカフェ』メンバーと部外者ではユエ個人くらいだが。
「そりゃ無理だよ。なんだかんだでごまかしが効かなくなる」
アイテムのやり取りは上下関係を生む。抱えたくないしがらみをさらに積み増す。
最大手ギルドだからと言って、トップに立つ気はない。ヴァーチャル・ゲーム、しかも破綻したデス・ゲームで天下をとってどうする?
と考える議長は常識人だ。この期に及んでなお。ともあれ、この問題について議長は方針を決めた。
要約するとこうなる。
1、ルールは守る。勝者には賞品が出るところも含めて。
2、ノーゲームにはしない。鬼ごっこはネコがタッチされることで終わらせる。
3、賞品は出さない。1と2を尊守した上であることは言うまでもない。
お――――――――――――――――――――・・・・・・・?
「だからよろしく」
『すいません、よくわからないんですが。日本語は苦手で』
なんでだよ!!!!




