紳士のたしなみ。淑女のはじらい。
ニートは常々言っている。
大人は子供に嘘をつく。
辛くない仕事なんかない。
生きるのは大変だ。
みんな頑張っている。
「何も知らない相手なら、自慢できますからね」
はじまりの街。
街の中。
宿屋とは、ゲーム世界内でログアウト/ログイン場所に最適とされる場所である。費用はかかるが、安全圏の中でもさらに安全。部屋に入ればルール上侵入できない。
街中なら力づくでフィールドに放り出せる・・・・・運営のペナルティを喰らう可能性もあるが。
デス・ゲーム、運営行方不明となればその価値はいや増すばかりである。
やり遂げた男の顔。
丸まっこいマシュマロマン。白い魔法使いローブに体型がアレなので。
宿屋の一室、春風さわやかベッドの上、布団にくるまり、フミノの生音声を楽しみつつ、うつらうつら。
え゛
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うわー!ひくわー!!ひくわー!!!
しかも、生音声?録音だろ?
「加工前やし」
??????????
――――――――――――――――――――――――――――――ヨイツは目の前の机を叩いた。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
「諸君!!!!!!!!!!」
ベッドの布団の中だろ?机?
「わたしは知っている!!!わたしは信じている!!!!わたしは道を示す!!!!!生か生でないか?大きな問題である!!とても大きな問題である!!!!わたしは今こそ道を示さん!!!!かの美少女の声吐息滴らんばかりの慌て声これを味わわんと欲すれば完全無加工無農薬無修正こそが至高であり薄汚い穢らわしい浅ましい人の手を加えるなど以ての外にして慮外の極みではないか同レベルの美少女美熟女美幼女美童女男の娘なら編集参加を懇願したい!!!!!!!!!!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――あーつまり、男の手を触れさせたモノのが、イヤダ、と。
「しか――――――――――し!!!!!!!!!!それは驕慢な処女厨の非人道的かつ狭隘な
思想的倒錯である!!!!!!!!!!」
お、おう。
「諸君は忘れしか!人妻の魅力を!!お母さんの魅力を!!!母娘丼という至極のアンモラルを!!!!!思い出せ!!!!!!!!!!メインヒロイン幼なじみが世話焼きツンデレ攻略困難全力投入し転がりころがりコロガッテ初めての夜を昼間に迎えんと突入寸前に前の彼氏を告白されてしまった衝撃をマジやめてどんなシナリオや殺しにかかるどころや無いでヴァーチャルからもリアル窓からも跳びだしたわ三年ぶりの外出でした――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
??????????
最初と最後と途中がわからない。
「だがしかし考えてもみよ!!!!!!!!!!」
オマエがな。
「フミノちゃんの声でピ――――――――――やpi――――――――――と言っていただく夢が今現実にならんとかなったら――――――――――」
なげーよ! 一文かよ!官能小説を朗読させる気か!
「――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――」
あれ?――――――――――帰ってこーい!!!!!!!!!!
「いかんいかん、逝ってもうた!諸君!究極の職人芸が産み出す国宝たる音声ファイルを思え!そして、まさに、想うのだ!フミノちゃんの御尊顔と制服姿をボディラインがけっこうわかる誠導館のセーラー服から我々を圧倒した少女の魅力を!!!!!!!!!!」
誠導館高校はギルド『蝦夷共和国』の主要メンバーが通う学校である。はじまりの街潜入に当たり、フミノも女子制服を着用したのだが・・・・・・・まあ、あれだ、セーラー服萌は全年齢対応、と。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
アレ?
はじまりの街。
評議会。のある円形劇場。
窓を開き、閉めた山崎。
はじまりの街。
宿屋の一室
「そう!知的女教師の近藤先生シリーズを思い出すまでもない!思い出さなくてもいつでもリフレイン!!!!!!!!!!」
だんちゃーく、今。
「や、山崎、ちゃんのドS、トークにクール、ビュー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お世話になりました」
マシュマロマンが串刺しな件。違和感仕事しろ!!
窓から飛び込みヨイツを串刺しにした槍先。そこに仕込まれていたマジックアイテム《ドッキリクッキー》が炸裂した。
マシュマロを焼く。
うん、なにもおかしくないな。
ギルド『蝦夷共和国』監察方、山崎。
彼女はゲームスキルとしての投擲は持っていない。ゲームアバターがもつ、超人的筋力にのせ槍を投げたのは、プレイヤーの技術だ。
え゛
「現実と違って、ゲームは楽ですね」
空気抵抗や風速風向、自転修正がいらないから、らしい。まあ、人間の力では、惑星自転修正が必要な飛距離はあり得ないが・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・器械的な何かでなさったり、とか?
「バリスタを少々」
リアルで??――――――――――そんなのおかしいよ!!!!!!!!!!
はじまりの街。
街の中。
ニートは宿屋から爆発とともに飛び出すヨイツを踏んづけるネコを見た。ネコの上で。
はじまりの街。
大広場。
「おおーと!!残念!!!踏まれたのは触った内に入りません!!!!!解説のエルコレさん?」
「捨て身過ぎるアタックですね。レベルやスキルではなく、爆発アイテムを使って、しかも、自分に使って加速とは。宿屋の性質上爆発判定は窓側にしか働きません。アイテムの衝撃をすべて自分の体に当ててかつ窓から発射しました」
「部屋を砲身替わりに?」
「アバターが即再生する安全圏でしか出来ません。フィールドなら爆圧を生かす前に粉々です。驚くべき戦術ですが、なによりも評価すべきはネコの通過ルートを予想し、その一点に何もかも賭けたことです」
「なるほど!皆さん、真似しちゃダメですよ?安全圏のみならチャレンジGO!」
「いや、やはりゲームはスキルやレベルじゃありませんね」
「――――――――――観客から拍手です!感動しました!!すごい!!!かっこいいです!!!!まさにMVP!!!!!!」
はじまりの街。
路地裏。
「せやろ?」
何故か多くの育成圏プレイヤーに感動を与えたヨイツは、美人レポーターの賞賛に復活した。
路地裏で。
部屋で架空の机の位置に出たメッセージウィンドウを叩いたのが良かったのかもしれない。
ヨイツに次の行動を促すために、仕方なくコールした山崎と通話がつながったのが良かったのだ。
唖然として凍りついた山崎がヨイツの時局大講演会を聴かざるを得なかったことが、さらに良かった。
山崎が精神的ダメージを受けながら、通話を切るなんてタイプではなく、ウィンドウ画面に映る映像から、ヨイツの位置と窓の解放を確定したのは運命的だ。
ヨイツにはご褒美を。
山崎には報復を。
多くのプレイヤーには自信と希望を与えた。
報道ギルド『スフィア・タイムズ』の中継班は、もちろんネコを追っている。日の当たらない路地裏で、ドヤ顔のヨイツがそれに気が付くのは、また、別の話。
「ね?世界は易しいでしょう?」
そんなのおかしいよ!




