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コミュニケーション・オンライン~コミュ力最強!仮説~  作者: C


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ラビリンス(数字と英字と記号)



フミノは運営拠点内部で、ディスプレイを立ち上げた。


プレイヤーのコントロールウィンドウではない。いわゆるゲーム世界の基幹システム管理とは関係がない。運営拠点管理者、今は亡き柴田さんが利用していたギルドホームのコンソールである。


運営拠点は通常の、つまりプレイヤーに与えられているギルドホールと同じシステムだから、管理者のコンソールはゲーム内にある。


『予想通りや』


運営拠点も、プレイヤーが持つ既存システムと同じ。探索計画立案時点からの、ヨイツの予想。




回想回想。

運営拠点調査計画が発案された時点で、懸念されていた。

調査ができるのか?と。


そもそも、運営拠点はプレイヤーが触れてはいけないもの。

それがどれだけくだらない、些末な情報でも、運営側の情報にプレイヤーが接触出来ればゲームの前提となる公正さが疑われる。


運営側からすれば企業の信用問題。


運営情報が詰まっている拠点は、プレイヤーから守らないといけないものだ。ならば、そもそもプレイヤーが触れないようになっているのではないだろうか?


「ありえん」


と懸念を切り捨てたヨイツ。

例えば


「プレイヤーだけが立ち入れない特殊空間」

「プレイヤーには触れないアイテム」

「プレイヤーには見えないデータ」


などを用意すれば運営側は安心出来るだろう。そして、それは可能だ。運営はゲーム内では神なのだから。


「割にあわん。ゲーム世界はな、法則の集積や。新しい法則は、新しい世界と同じや。でけるけど、運営上の都合でまるまるひとつゲーム立ち上げるようなもんやで。誰がやるか、アホくさ」


プレイヤーが体験する世界は、プレイヤーの、人体の脳が構成している。

それはリアルもヴァーチャルも同じだ。


ヴァーチャルはリアルの五感の代わりに、脳が世界を構成するきっかけ、方向付けを電子的に行い、プレイヤー全員に共有出来るように調整しているにすぎない。


その基準を法則と言い換えよう。


単に現実準拠ではゲームにならない。


だから、大前提となる「現実という法則」に対立しないように、かつ、幅を持たせる法則を付け加える。

対立させればどちらかの法則が消滅する。

現実が消えれば精神異常、ヴァーチャルが消えればやはりゲームにならない。


幅を持たせなければ「つまらない」という意味でゲームにならないし、幅が広すぎれば脳に無視され効果がない。


無数の現実法則に、架空のゲーム法則を打ち消されない範囲で加味して、さらにそれらが矛盾しないように検証し、ワンパッケージで機能する世界法則を作る。


「洒落にならんで?」


法則さえ出来れば一人相手でも、100万人相手でも、全く同じ。通信処理の負荷だけの差だ。

つまり


「運営用特別ルール」


を作るというのは


「ゲーム世界をもう一個創る、のと同じや」


しかもプレイヤーがいる世界に重ねて存在させる?


「ゲーム三つ創るどこやないわ」


そんなコストを、百を超えない運営プレイヤーの為に、10万人のユーザーに対するのと同じコストを払う企業があるものか。


「だから、絶対に、プレイヤーと同じルールの中に、運営はんもおるんや」


回想終了。




そんな訳で、フミノはギルドホール管理コンソールが開けた。


「あの、わたし、権限ない、ですが」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え゛。

まあ、当たり前ではある。


ギルドホールの利用制限を含む権限は、名義人しか使えない。どこでもそうだし、運営拠点でも、まさに同じルールだった。


管理権限の認証画面は、誰でも開ける。でなきゃ認証出来ない。

よってシステムの起動は保証されているわけだ。


でも、一ギルドメンバーに過ぎないフミノには、この先に進めない。

進めなければ、情報など得られない。


その前に何をしているのかと言おう。ゲームシステムそのものをのぞけるわけでもないのに、運営という、言ってしまえば、一ギルドの何を調べようというのか?ソレに何の価値があるのか?



それは運営プレーヤーや管理者の、ゲーム内作業用の資料やデータ、個人的なメモやなにか、である。なにかって?だんだんあいまいになるのは仕方がない。

探してみないとわからないものもある!仕方ないんだよ!!!

こほん。


当たり前だが、ヴァーチャル世界でメモ紙やノート、写真などが落ちたり引き出しにあったりしない。

する訳がない。


携帯メモリもディスクもない。メモアプリはあるが、使用後使用中断時はプレイヤーストレージかギルドストレージに任意/自動保存される。

ちなみにメモ中に作業を中断すると、自動保存。モンスターに襲われた場合などを想定している。


今回の場合、プレイヤーストレージは期待出来ない。運営情をお持ちの柴田さんはお亡くなりだらだ。その話題に入ると、フミノが泣き出してしまうから、みんな注意して避けている。



だから、なにがだから、とツッコまず、今回の調査対象はギルドストレージなのだ。


ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』では、ギルドは優遇される。

空前規模のプレイヤー参加者数を目指し、実現運営する上で、プレイヤーをギルドにまとめた方がいい。

運営、ゲームプランナーは、そう考えたのだろう。


ギルドを作るだけでついてくる特典が、ギルドホームであり、ギルドストレージだ。


ストレージは様々なアイテムやデータを収納する場所と考えればいい。ギルドホーム管理者により、共有データやアイテムのアクセスや利用権限は制限出来る。


運営プレイヤーのゲーム内拠点なら、そのストレージにデータアイテムがあり、わざわざリアルに戻らなくても日々の仕事に困らないようにしていただろう。

そうしたデータをプレイヤーストレージに収めたら、データの共有ができない。責任ある管理者のプレイヤーストレージに収めるとしたら、管理者が休みをとれない。バイトを含む全員で人員管理を含むデータを各々保存するなんてありえない。


結論。

いま、調査班が必要な、運営としての仕事に関するデータはすべてギルドストレージにある。


まったく正論。間違いない。よほど間抜けな会社じゃなければそうしてる。まさに情報のパンドラ・ボックス!

だが、だから、管理者以外は触れないわけで・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?


「あの」


フミノは、その対処方も聴いてない。本来の管理者からも、ここ、運営拠点に彼女を送り込んだ探索作戦発案者からも。

おいおい。


『フミノちゃん!画面確認たのんます♪』


ヨイツが遙かな街中の、宿屋からフミノに呼びかける。重ねて言うが、ギルドホーム内での映像付き通話はできない。設定を変えられるが、あまりやるやつはいない。わざわざ持ちえたプライベートスペースをだれがさらすかという話、通話もできずメッセージオンリーだと不便すぎるよねギルド仲間以外にも友達いるんだしさという話、がまあ標準意見でデフォルトのホーム設定だったりする。

管理者の柴田さんは、デフォルト設定をいじらなかったようだ。


『まず右下どや?時刻表示あらへん?』


画面の右下、小さなデジタル時刻表示がランドマーク。


『そこから右に何もない?無いなら無いでええんやで』


無かった。ランドマーク確定。

そこから上に、左に、どんなアイコンがあるのか?そのアイコンから数えて上、左右、下・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・スタートの認証画面の把握に40分。



宿屋の中。

ヨイツは目の前で、タッチツールで書いた図形をチェック。柴田さんは、デフォルト画面て使う人だったようだ。


「たいへん、よろし」


ヨイツはわかりもしない癖にいじり回す奴が嫌いだった。


「ゆーとーり、してや」


ゆっくり、ワンタッチごとに確認し、時々休み、20分以上。


『あ』


フミノの驚きに、ヨイツは冷や汗。


「どしたん?どしたん??」

『えとえと』


慌てるヨイツにつられるフミノ。ヨイツの傍らのメッセージウィンドウに、


《オマエが落ち着け!フミノちゃんが慌てるから!!!》


と文字表示。大手テクニカルサポートセンターに勤めているギルドメンバーからだ。


『画面が、英語?えと、別れて』

「深呼吸深呼吸~」


フミノの呼吸音。を録音するヨイツ。

《データコピよろ》

のメッセージ、複数。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えーと。


「英文やないやろ?ウィンドウがいくつかでたんやない?」

『あ、はい、アルファベットと数字の羅列に8画面』


ヨイツは一息。


「大丈夫!成功や!」わかりやすく表示されたUIユーザインタフェース を閉じて、プログラムを出しただけ。同じ画面の表示切り替えが終わった。あとはキー操作で」

『休憩しては?』


ニートだ。街中で走り回・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・るネコの上下左右のどこかから。


体感音速のノンストップ、コースターからいつ状況を把握してるのやら。休憩10分後、ヨイツは8画面を順に確認。


「ウィンドウはちょうど画面を8分割・・・・・・・・・・・・・・・なら、左上のウィンドウから・・・・・・・・・・・・・・・二列目は一行何文字?・・・・・・・・・・・・ふん、左の・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


そして当たりをつけた。


「英数字1~5行の両脇読んで・・・・・・・・・・・・・・・あ、いいや、隣のウィンドウ、も同じ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それ」


ヨイツは舌なめずり。最初から開きっぱなしで時々メッセージが出ている自分のアバターのコンソールをのぞき、遙か攻略圏の仲間から意見を聞いた。


愛数字だけでよくわかるな。


「新しきものなし」


しょせん、プログラムの99%以上は、既存のものだ。わざわざ全部読ませる必要もない。ある一部ををまとめてしれば、見なくてもいい場所はわかる。

ホンの僅かな、極一部、それだけ見つかれば・・




・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・5時間後・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。





「フミノちゃん」

『はい』

「いまから言うとおりに、打ち込みよろしゅう」


『はい』



11分後。読み込み開始。


『な、なんか、すごく、画面かわったんですけど !!!!!!!!!!』

「Mission Complete!!!!!!!!!!」



いや、アクセスできただけなんで。





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