ミスディレクション
鬼ごっこ、ルールはカンタン、商品たくさん。
鬼はみなさん。
目標は着ぐるみの猫。
猫は当然プレイヤー。
猫に触れたら優勝です!!!!!!!!!!間違いありませんよ?
ただ、ただ、触るだけ。
尻尾か、おヒゲ、耳、背中?
乱暴にしちゃだめですよ。
猫ちゃんをかわいがってあげましょう!!!
鬼どうしでケンカもダメです!!
優勝者には、協賛ギルドのアイテムストレージ掴み取り!!!!!!!!!!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ただし、自分のストレージいっぱいまで。
さあさあ、こぞって参加して、装備をA級に整えちゃいましょう!!!!!!!!!!
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「誰が参加するもんか!!!!!!!!!!」
クラウンは怒鳴り散らした。
「まあねぇ」
頷いた議長。呆れ顔のシスター。
プレイヤーイベントは、大手ギルドでもなかなか動かせない。
内容もさりながら、告知に時間がかかるものだ。
そういう意味で『はじまりの街』の治安維持を目指す評議会の議長も心配はしてなかった。
「内容は悪くはないけどね」
このイベントが本当なら。
既に名が上がったギルド複数から『知りません』と回答がきている。
「むしろ『黄金の夜明け』は無関係か?って聞かれたしね」
「なぜ我々のせいにされる!!!!!!!!!!」
謂われのない疑惑に怒り狂うクラウン。
「「「「「まあねぇ」」」」」
謂われの無い疑惑、で罵倒される事に覚えがあるマルコ達が呟いた。
慌てて議長がクラウンを、シスターがマルコ達を宥める。
ギルド『黄金の夜明け』は、ばらまかれたメッセージに名前が無かった。
大手と名が付くギルドは皆、名前が乗っていたのに。
「つまり、我ら以外が犯人です」
胸をはるクラウン。
なんと正論なのでしょうか。
犯行声明に一人だけ名前が載っていないから、犯人じゃありません。
他の全員が犯人です。
自分のギルドの名前を勝手に使われて、怒り心頭な他ギルドのみなさんにそう言ってあげたい。
議長が絶対に言わせないけれど。
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議長がまあまあ、とみんなを宥めた。
「でも、なぜ、ニートさんたちを?」
シスターもあわててため息を隠して話題を振る。
着ぐるみの猫。
鬼ごっこの標的。
ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』の公式アイテム着ぐるみは、開始暫くで販売中止。
購入者も災難を恐れて装備しない。
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今でこそ天災扱いで皆が関わらないようにしているネコ。
ゲーム開始から暫くは、迷惑プレイヤーとして有名だった。
無言でPK、無言でイベント破壊、無言でアイテム奪取、無言で無言でやりたい放題。ログイン時間が尋常でないために、常に皆の上を行く、ハイプレイヤー。
あまりにあまりなマナー違反、討伐作戦が繰り返されたくらいである。
ニートが保護者っていうか、飼い主扱いされるまでは。
着ぐるみは皆同じに見える。
いや、並べれば大分違うのだが。
だから、着ぐるみ装備は、ネコの悪評の巻き添えを食らう。
よって装備者が減り、余計にシンボルマークとして定着し・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・着ぐるみ=ネコ(ネコカフェのプレイヤー)となった。
既に悪評を超え、特に十万エントリーに伴って参加した大半のプレイヤーには、名物扱い。
だからこそ、このイベント告知にある標的を勘違いすることはない。
そして今回、標的にされたのは何故だろう??
「奴らが狙われるのはいつものことです。飼い主があの、ニートですからな」
断じたクラウン。
確かに、いまさらネコが狙われるのは考えにくい。
ネコが狙われたら、保護者であるニートが出てくる。
なら、この仕掛けはニートが狙いだろう。
イベントが不発でも『はじまりの街』で活動するニートへの牽制にはなる。
「ニートを取り押さえたいのは我々だけではないですから」
クラウンの断言に議長とシスターは首を傾げている。
(彼に敵は多いが、正面から挑むかね?)
と、議長。
ニートはそこかしこで恨みをかっている。
だから、攻撃陰謀を向けられて当たり前・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・に見えて、そうでもない。
ニートの凄みは人脈の広さ。
自分に陰謀が向けられる前に嗅ぎつける。
事前に止めるか、直後にカウンター。
だからニートの敵対者は大抵、陰から足を引っ張る事を目指す。
正面から挑むのはクラウンくらいだ。
(ニートさんが言っていたのは、これかしら)
シスターは思う。
「議長、警邏本部からです」
盗賊スタイルの女性が議長に声をかけた。
最大ギルド『黄金の夜明け』ギルドマスターは、処理すべき事が多い。
だから、直通のメッセージは限られた相手のみを指定して受ける。
だから、彼女は取次役だ。
「何かな?」
警邏は評議会合同の活動。
つまり複数ギルドが入り乱れているので、ギルド間の交渉事になりやすい。
ギルド『黄金の夜明け』としてのフォローが必須。
だからこそ、現場を知らない議長が介入する必要性を減らす為、ギルド幹部に裁量権ごと委ねている。
その幹部からの連絡となれば、大事かもしれない。
『申し訳ありません、議長』
「なーにいってんの、何でも言ってよ」
『街で大騒ぎが起こりました。いえ、今も続いています』
「増援?交渉?状況は?」
『ネコが街中を跳ね回り、大勢が追跡し』
「ニートくん、追われてんの?」
はっ?となる議長。
「心配ない。追っているのはウチの連中だ。バカげたイベントとは違う」
クラウンが割って入った。議長がメッセージをオープン。
『違います』
「そうだ、安心していい」
『警邏どころじゃありません!!!!』
「泣き言を抜かすな!追跡班はアーネ君が指揮している。既に命じた通りだ!さっさと協力しろ!!!!!!!!!」
議長が手で制した。
「クラウン、誰かが追跡してるの?ニートくんたちを?」
「は!」
胸を張るクラウン。
嫌な予感が確信に変わった議長。
「何人?」
「新人ばかりですが、100名は下りません」
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統制のない、一般プレイヤーに近い姿の100あまり。
警邏は制止しない。
「今、街でニートくんを追ってるのは、何人?」
議長は警邏に聞く。
「・・・・・・・・・・・・・・・およそ1000は下らない、かと」
「バカな!!!なにごとだ!!!!」
叫ぶクラウン。
「群集心理・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「サクラって言ってもいいけどね」
シスターと議長。
イベント告知。
街に貼られたポスター。
まあ、ヴァーチャル・ゲームなので、掲示許可付きのデータと考えればいい。
それを見かけた何人かが、ゲーム内SNSに画像を上げた。
そのデータが瞬く間に『はじまりの街』限定SNSに広がる。
問題。
本当に、見かけたのだろうか?
そして街を揺るがす逃走劇。
イベントとは別に、追うアーネたちに逃げるネコ(の上下左右どこかににニート)。
轟音を上げるネコ。
閉じこもり気味のプレイヤーが一度は耳にする。
彼らもSNSをチェックする。
何もする事がない彼らは話題に飢えている。
何人かが外に出た。
大勢の、自分と同じ雑多なプレイヤーが、Wikiに載ってる名物キャラクターを追って走り回る。
普段なら騒ぎを威圧する大手ギルドの戦士が黙認している。
みんなが参加している。
評議会が認めている。
キャッチフレーズ『笑顔のために』。
それも瞬く間に広がる。
街頭にプレイヤーが出始めて、何割かは『鬼ごっこ』に加わって、
「千人でおさまりそうにありません!」
「止めろ!」
「止めるな!!!!!!!!!!」
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「「「「「議長?」」」」」
議長は歩きだした。
「大声だしてごめんね~全員、オフイベスタッフを、よし、警邏本部に集めて」
シスターに、また後ほど、と一礼。
議長は足早に立ち去り、クラウン達が続いた。
「シスター、こちらへ」
「近藤さん」




