証言:はじまりの暴動
ニートがその罪業に相応しいヘイトを集めている時。
歴史的会談は続いていた。
まあ、個人史止まりかゲーム史か、はたまた人類史はないだろうが。
たぶん。
シスターとニートが何故か差し向かい。
有名プレイヤーと局所的悪名プレイヤー。
大ギルド『マルタ騎士団』ギルドマスターとゲーム最小ギルド『ネコカフェ』ギルドマスター。
あらゆる意味で対照的。
ちなみにヴァーチャルゲーム『スフィア』ではギルド設立に条件がある。
エントリー時に隠しポイントがあり、基準不明な一定値を超えるとギルド設立申請が出せるのだか。
ギルド優遇で
『ギルド単位でのみ参加イベント/クエスト』
『ギルドホール割り振り』
『ギルド内称号』
『ギルド紋章登録権』
・・・・・・・・・などなどがある為にたいていのプレイヤーはギルドに入るかギルド設立を目指す。
必要なポイントはイベントクリアやモンスター退治、さらにクエスト受注解決で増える・・・・・・・・・・・・・・・・・・らしい。
NPCへの強盗では減るが(検証済み)、PKでは増減不明。
PKギルド『モヒカン』のような連中がいるのだから、推して知るべし。
まあ、無難に言えば、人数を揃えればギルドは創れる。
だから『ネコカフェ』設立に皆『やっぱりな』と思ったとか。
なにが『だから』でなにが『やっぱりな』なのか?
たった二人、ネコとニートが設立メンバー。
それでもしかし『なんで?』と思われないあたりが『ネコだし』と独りレジェント、一人自然災害は伊達じゃない。
むしろ
『ネコ一人でギルド創れたんじゃね』
と言われ
『なぜ単身申請させなかった!!!!!!!!!!』
と解析マニアから抗議を受けた。
ニートが。
『ネコカフェ』増量中はデス・ゲーム以後のことだ。
フミノで打ち止め。
だといいな。
そんなニートは謝罪が与えるフミノへの影響を勘案する。
精神的負担増加。
だがフミノに罪悪感を抱き続ける中堅パーティー。
これだけでも使える・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フミノには無理か。
しかしそのパーティーを身内に抱え込み、その心理的負債を引き受ける希有なほど有力なコネ(シスター)。
これはフミノが独り立ちする時に役に立つ。
(今すぐに切り捨ててもシスターが拾ってくれますね)
とか考えるニートいやだ怖いちょっと待て。
ニート視点で成果は十分、そろそろ利益率頂点。
ニートは収穫を切り上げる事にした。
フミノ用の収穫は。
え゛。
「どうぞ座ってください」
謝罪姿勢から席に戻るシスターたち。
「山崎さん」
シスターたちが腰を落ち着けた時。ニートはぴったりのタイミングで背後に呼びかけた。フミノを護る山崎に。
「先にチェックインしてきてください」
山崎は無言で立ち上がった。
「近藤さんと3人で」
ついて行こうとしたヨイツが転ける。
近藤局長は先導。山崎はヨイツを無視してフミノを押し酒場の表に。
酒場は食堂を兼ねており、二階は宿屋でもある。
中世ファンタジーな欧州風世界。
チェックインと言うねは雰囲気を壊すが、部屋を使うなら手続きが必要なのは現実と変わらない。
しばらくニートに釣られてフミノに視線が集まったが、短時間であり山崎の陰に隠れたフミノは気が付かなかった。
それを確認したニートは向き直る。
シスター、そしてシスターの傘下に入った剣士マルコをリーダーとするパーティー。
フミノを殺しかけた罪悪感。
彼らを取り持つ責任感。
再度フミノに注目させたおかげで、心の傷を再発掘させる事が出来た。
ニートは見取ったソレに満足したが、表さない。
むしろ、心配そうな表情をつくった。
「なぜ、フミノを、運営プレイヤーを追うことになったのですか?」
ニートの質問は、表情と合わせて『マルコさん達のせいではなかったんですよね』という雰囲気を醸し出す。マルコは苦渋の表情、背後のパーティーは救われた表情。
「アイツが追え」
「よせ」
パーティー仲間を制したマルコ。
ニートはシスターに視線を向けた。
あえて。
「俺から話す」
恩人であるシスターを巻き込むまいと、マルコが乗り出した。
ニートは内心で舌をだし、シスターは沈痛な表情で頷いた。
「直接的には、頼まれたから、いや、『運営が黒幕だ!』と言う声の中で、『運営を追え』と頼まれたからだ」
マルコ達も追跡にかかるころには『運営がデス・ゲームの黒幕だ!』と信じていた。
「今から思えば、なんの根拠もない」
今から思えば。
「なあなあなあ?」
ニートの隣に座ったヨイツ。
「仮に運営黒幕説っていうけどな?声ってのは?」
「街中で怒鳴り声が響いていた」
マルコは淡々と応え、パーティーメンバーは頷いた。
マルコ達は、一昨日朝、暴動が起こる前から『はじまりの街』にいた。
知り合いに頼まれて、『運営の発表』を見に来たのだ。
その時、ゲートは普通に利用出来た。
だが、既に雰囲気はおかしかった。
トゲトゲしく、ざわついて、イラついた雰囲気。
マルコ達パーティーはデス・ゲーム初日は教都にいた。
だからこそ、その落差が激しかった。
「ああ・・・・・・・・・・・・」
ヨイツの納得。混乱が広がった育成圏で唯一微動だにしなかった街。
三日目、惨劇が起きる直前の『はじまりの街』。
教都から移動したマルコ達が警戒するに十分だった。
だが引き受けた役目は役目。
自分達も気にならない訳がない。
そこでマルコ達は、いったん大広場を離れた。
「運営の発表は正午って話だったからな」
それまで周りを確認して退路を確保しよう・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と思ったのだと言う。
さすがに準攻略組の中堅どころ。
いや、中堅の中ならトップクラスだろう。
だが、大広場に見張りを置こうとは思わなかった。
だから、繰り上げて始まった運営の発表に気が付かなかった。
「5人なら分けられへんて」
と同情的なヨイツ。
だから、マルコ達は運営の発表がどんな流れだったのか、全く知らなかった。
気が付いたら大広場で怒号、悲鳴、爆発。人が流れ出し、近づけない。
だから、『はじまりの街』を見にいく事を頼んで来た知り合いに連絡した。
「その怒号で既に運営黒幕説が?」
「叫ばれてはいた」
ただ、マルコ達はその意味が飲み込めなかった。
「ならなんでや」
その直後にフミノ、運営を追い始めたのはなぜか?半信半疑から運営黒幕説をすぐに信じたのはなぜか?
マルコは深呼吸した。
「その知り合いの指示ですか」
とニート。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そうだ」




