先手必勝!先制土下座!!
ニートは思う。
大切なのは『真心』だ。
あらゆる作為は『思いやり』から生まれる。
だからこそ『みんな』が幸せになる。
幸せにならない奴がいる?不幸になりゲームを引退した奴らがいる?
あれ?
引退したんですよね。
なら『いない』じゃないですか。
よかったよかった。
もし、まだ、残っていたら、教えてください。
私は嘘をつきませんから、ね。
そんな危険人物の日常。デス・ゲーム編。
「ご無事でしたか!!!!!!!!!!」
ニート、渾身のスライディング土下座。
その先には、串刺しのシスターと串(刀)を掲げるフルメタルプレートの女騎士。
刀がどうしてもミスマッチ。いや、もっとミスマッチの傍らだからいいのか?
正体を隠す気があるのかないのかギルド『蝦夷共和国』局長近藤である。
ニートを追い越した、ってより跳び越したネコ。
「な!」
シスターの串刺しを維持したまま飛び退く近藤に、ネコが追いついた。
ニートに気をとられて反応が遅れた近藤の、剣ってより刀を爪の一薙で消して飛ばすネコ。
フィールドだろうが安全圏だろうが、武器破壊はハイレベルパワーかスキルが必要だ。
ネコはパワーのみ、今回は。
だが安全圏だけに壊れたアイテム、剣は再生する。
首を跳ばされても復活するアバターと同じだ。
シスターを貫いていた刀、串刺しの串部分を失ってシスターが落ちる。
ニートの上に。
「きゃ!」
巧みにシスターを受け止め地面に着けないニート。
背中だけで器用だな!
近藤はアイテムの再生を待たず柄を振り捨て、その動作の流れで別な刀をアイテムストレージから取り出した。
「アタッ」
近藤は支援に動いた山崎を刀身で制す。ヨイツの悲鳴は無視。ヨイツもフミノを庇ってるんですよ?一応。
「山崎」
近藤の一言で、山崎は視線をシスターから失神中の五人(以前フミノを襲っていたパーティー)に戻した。
近藤はニートがもの凄く苦手で、戦闘中に優先しなくてはいけないネコより先に警戒してしまった程だ。
なぜ苦手かと言えば、近藤の臓腑を抉るような無神経な事実をズケズケと指摘するからだ。
事実とは近藤が発案した集団エントリーのせいで、土方たち生徒や佐々木たち趣味仲間がデス・ゲームに巻き込まれた、とまあ、現在の状況なのだが。
デス・ゲーム初日。用もないのに北方に来て、みんなの前で言うだけ言って帰った(激昂したギルドメンバーが追い返した)ときは、マジ泣きしてしまった。
ギルドメンバーの、生徒の前で――――――――――今、思い出しても顔から火がでそうな近藤。
いい大人が逃げて泣いてたら土方に怒られた。
それはそうだが、でも仕方ないような気もする。
みんなに捜索されて迷惑を積み重ねてしまった。
あれ以来、醜態は見せていないが(土方以外には)、みんな、ギルド外の北方プレイヤーまでが、生暖かい目で近藤をみてる・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ような気がする近藤。
それはそれですでにバレバレなのではないかと疑わないのは、生徒と友人を心から信頼しているからなのか、恥ずかしさを見つめたくないだけなのか。
自分の不手際と不甲斐なさで嘘を言われたわけではない、から、近藤はニートを恨んでいない。
って、あんた、天使か!ほんとーにまっすぐな奇跡的社会人である。
シスターを串刺しにしたとしても。
大卒ですぐに教職に就いたせいか、良い意味で世間知らずなのかもしれない。
ただ串刺し系天使でも聖人や神様ではない。
だからニートが苦手なのだ。
ど突いてもいいのよ?
そして苦手や好悪とは別に、まあ、ぶっちゃけニートが嫌いな近藤だが、状況対処能力は認めている、土方が。そっちかよ。
近藤は知らない。
ギルドの仕切りは土方任せ、直接、ニートとの関わりは先述の泣かされた時だけだし。
ギルドマスターとはいったい・・・・・・。
だが近藤は土方を信頼する。
その土方が信用するほど能力が高いらしいニートなら、今、ここにいない土方に相談するより早い。
だから任せる事にした。
心配してもいいのよ?
ニートがシスターに叫ぶ。
「ご無事でしたか!信じておりました!」
どの舌が言うのか。
絞り出すような、それでいて滑舌のいい、シスターの耳元に響くニートの声。
ただしシスターのお尻の下から。
「きゃ!」
慌てて立ち上がって、足元の感覚に凍りつくシスター。
右足下のニート後頭部。
もちろん、顔は地に伏せローアングル(ってかアンダーアングル?)を見上げたりしない。
隙のないニート。
「チェンジチェンジ!や」
「ご、ごめんなさい!」
慌てて飛び退き、シスターが土下座。
身を伏せ騒ぐヨイツは、みんな無視。
僧侶の基本衣装はミニもあり、ゲームではそちらが主流なのだが、シスターはロング。
真下からでないと覗けない、何をとは言わないが。
ゲームで覗けるのがヴァーチャルゲーム『スフィア』クオリティ。
ならばアンダーアングル不可なのにローアングルをとるヨイツは何を狙っているのかその苦しそうな位置を決して崩さないのは何なのか?
夢を諦めないのさ!
「ふっ土下座のすばらしさはな、頭を下げると必然的に上がる部位に・・・げふっ」
ヒップラインのすばらしさを語ろうとしたヨイツのヒップを刺し貫く山崎の槍。
ニートはシスターに向き直り、更に深く頭を下げた。
顔を伏せたまま一連の動作を流れるように。
僧衣の裾が乱れていた事に気が付いたシスターは慌てて整えた。
不躾に視線を向けないニートは確実にポイントを稼ぐ。
まあ、下から見上げると普段スカートが多い女性に警戒されやすい。
そして、眼と表情はゲームシステム上感情が現れやすい。
見せない方がいい。
っておい。
だから隠したなら、なぜ隠したか大変に分かり易い。
『だから』さえバレなければ何も問題はない。
いやいや大問題ですよ?
内心にいろいろ、相手に知られてはいけない何かを隠す為に顔を上げな
い。
見えないかな~~と欲望を隠さずに顔を上げる。
どちらがマトモでしょうか?
どちらもアウトですかそうですか。
シスターは顔が真っ赤。
目上の男性に頭を下げられるなど、シスターの人生ではじめてである。
しかも、謝罪の理由がない相手から、真摯に謝られる。
なぜか普通の日本人は、自分が申し訳なく感じるのだ。
なんででしょうねぇぇぇぇ。
更に串刺しから解放してくれ、落ちる所を助けられた、というか背中から押しつぶした。
結果として、だが、意図せざる結果にも罪悪感を感じるシスター。
重ねて後頭部を足で踏みつけるというフルコンボ。
恩を仇で返すどころじゃない。
穴があったら入りたい・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
不思議な事に、謝罪を受けて頭を踏みにじるまで、確かに事実だ・・・・・・・・・・・・・・・
だがシスターの意志はまったく関与していない。
だから関係ない、で済ませる事が出来ないシスターは容姿が平均以上でも感性は平均的だった。
シスターは心から、ニートに平謝り。
ニートはシスターに心から平謝りに見える。
いやいや、シスターの感性は容姿以上に平均を吹っ切り上だった。
善良を上にしたら、だが。
詐欺師に注意、手遅れかも。目の前で土下座していませんか?
『シスターにヒップアタックを受けた後、そのおみ脚で頭をグリグリされる』
(主観的記述)
を目撃しただけで、ヨイツが昇天している、がみんな無視。
あ、山崎が『真っ白なハイになった』ヨイツを両断。
懐から印籠のような
『おにいちゃん!ガンバ!』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・音声再生アイテムを起動させた。
「ハ!ワイはいったい何を!!!」
ヨイツは慌てて隠蔽幻術を再開させた。
録音音声はギルド『蝦夷共和国』副長、土方の妹。
リアル女子小学生である。
慌てて音源を探すヨイツを横一文字に両断する山崎。
縦横両断くらいではへこたれない、つまり幻術を解除しないヨイツ。
は、さておいて。
「し、失礼いたしました」
純粋な謝罪。シスター。
「いえいえ!こちらこそお助けするのが遅れました!」
助けたアピール。ニート。
「いえいえいえ!落ちないように配慮いただきましたのに!あのような!申し訳ありません」
罪悪感を自分で積み増すシスター。
ニートとシスター土下座連鎖。
ニュアンスの差で『方向付け』がされているのに、
気が付かないか(シスター/山崎/ネコ)、
気が付いてもどうにもならないか(ヨイツ)、
どうする気もないか(近藤)。
「なんやの」
無限連鎖土下座に呆れ顔のヨイツ。
背後から覗くフミノ。フミノの背後から覗くネコ。
「え!」
一応、フミノを守っている、ニートに言われたし、ニートが危険じゃないから離れる指示を受け入れたネコ。
近藤は刀を担ぎ周辺警戒。山崎は失神中のパーティーを時々ド突いて無害化継続。
二人ともニートに丸投げ。
「シスター、では、お互い様、と言うことで」
「はい」
謎結論。だが以外に汎用性が高いのでぜひご利用あれ。
「場所を変えましょう」




