生きてるって素晴らしい!(棒読み)
窓から飛び降り、ネコに着地したニート。
空中でニートの頭上から足元へ移動するネコの機動は、まさにゲーム。
ゲームだから誰でも出来る訳じゃない。
レベルが高くなればアバターは非現実的な動きが可能な性能にいたる。
特に速度。
だがそれを使えるかどうかは、中のプレイヤー次第。
特に速度。
システムが動かしてくれるスキル以外で
『人間を超える挙動』
、例えば剣捌きや体術を使えるプレイヤーは、まずいない。
速いだけの単純突進なら、いや、大抵は途中で目を回すか。
ネコのように落下の刹那、ニートの体を支点として頭上から足元に移動する、とはそういう事。
ハイプレイヤーの中の廃プレイヤー、ネコだから出来る。
だがニートは気がつかない。
そもそも週末プレイヤーのニートには、ゲームシステムを超えた凄さがわかる訳がない。
アバターのスキル。
プレイヤーの経験。
ともにニートは平凡なものだ。
中の上、ギリギリ攻略組にひっかかるニートのキャラクターレベルは、ネコと一緒にいたから到達した。
ニートは到達したかった訳でもないが。
燦然と輝く『イベントクリア称号』の数々も、ネコが暴れまわっている場所に一緒にいたからだ。
ネコが離さなかったからだが。
イベント中も成否問わずに『居た』と言うより、爆心地(ネコの上か下)にいる羽目になったのだが。
しかも参加、させられた、イベントの半分は無効になった。
称号にもなんにもならないPKフィールドで、みんなから罵声を浴び続けながら、見物していた事もある。
久しぶりにログインすると『ネコ被害者の会』から大量のメッセージ。
ニートがログインしていない間のネコは自然災害状態だから。
PKKやら報復やら遠巻きにヒソヒソは普通である。
ゲーム掲示板で炎上専用サイトが出来るくらい。
普通のプレイヤーなら、トラウマになりゲームを引退するような修羅場。
「なんっすよ?」
ここは大広場、はじまりの街。
シュークリーム、トモ謹製であまり知りたくないモンスターが材料に使われてるが美味なソレ、を人のみにするC。
「あーたしかに、あたしも初めて殺されたのはネコに、だったな」
「ですかー」
Cとセイ。何気にPKされた事がないトモ。
チョコレートのような味の何かがたっぷりまぶされたクッキー(トモ謹製)をつまむセイ。
二人にお茶を注ぐトモ。
教都の聖から分けてもらった茶葉で、イベントアイテム品。
紅茶と緑茶を混ぜたようなゲームメイド(オフィシャル製)。
現実には不可能な食材、料理を楽しむのはヴァーチャル・ゲームのセールスポイント。
オフィシャルも専門のデザイナーがエントリーしているし、プレイヤーメイドもツールだけは簡単にレンタルできる。
「βっ時はネコちゃんいなかったっすね~」
「アレだろ?おっさんが『GG』のインストラクター」
Cが頷いた。
脳科学や人口知能にハマっていた深月がヴァーチャル・ゲームを始めたので、彼女に仕える皆が先回りしたのだ。
「ミツキ?」
「本名出すなよ」
セイのツッコミにわかったトモ。
「ユエ様のリアルネームだね!」
「だからゆーな!」
周りが困る会話だ。
『アルゴ』メンバーのお姉さん(筋肉)が苦笑。
「その話、あたし達が聞いてていいのかな?」
ここはギルド『アルゴ』のキャンプ。
クラウンの嫌がらせ(と本人は思ってないだろうが)対策で、『アルゴ』メンバー(筋肉)がネコカフェメンバーに付いている。
お礼にロールケーキのクリーム乗せ(トモ謹製)がふるまわれていて大好評。
『アルゴ』メンバーだけではなく、大広場の警邏担当ギルドから甘党たちがとっかえひっかえやってくる。
『アルゴ』キャンプじゃなくて、ケーキ店?
「いっーすいっーす!」
軽いC。
ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』最強ギルドのギルドマスター、ユエ。
名前にこだわりもないし。
リアルも隠していない。
ユエだけでなく配下の『GG』メンバーだってキャラクターネームや、ハンドルネームの意味を知らず、βテストは本名でエントリーしたくらいだ。
βテストの時点で目立ってたから、テスト参加者でユエや『GG』メンバーの本名を知っている奴は多いだろう。
悪目立ちしすぎて、リアル情報がかなり特定されていたし・・・・・・特定されたリアルステータスが高すぎて、ある意味でヘイト対策・・・・まあ、粘着的な中傷者を減らしたくらい。
『雰囲気を壊される、と感じて本名を嫌がる人もいますよ』
とニートに教えられたので一応考えた。
それで付けた名前がアルファベットなギルド『GG』メンバー。
いろんな意味で筋金入り。
「だからニートさんがGGさん達の先生なんですね!」
トモがバンザーイのポーズ。
「YES!YE!s!!」
まあ、センセ呼びはCだけだが。
ともあれ、Cたちはゲーム前に基本的(とニートが考える特殊なやり方)を身につけて本番に取りかかれた。
Cはβテストを懐かしく思いだす。
あの時は勝手を知らない深月たちを、出会ったばかりのニートがサポートしたのだ。
『独り立ちするまではおつきあいします』
と言って。
それが本ゲームでは?
「ネコちゃんがやらかすたびにセンセが後始末」
謝って済ませたり、相手がネコにこだわる暇を無くしたり、責任転嫁して有耶無耶にしたり、虎の威を複数調達して話を付けたり、賠償を約束した相手がゲームを引退したり・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え。
「面倒見いいっすよね」
「ですねー!」
「そうか―――――??????それでいいのか??????????」
とそんなこんな、なニートたち。
ギルド『ネコカフェ』の半分が雑談中、ネコは現場に着いた。上のニートも。
ここは上空、はじまりの街。
セイ&トモたちがいる大広場から数km離れた空中。
ちなみにゲーム『スフィア』には飛行スキルはありません。
ネコも飛んでいるわけじゃない。
跳んでいる。
「ネコはまっすぐな子ですからね」
とはニートの言。
だからフィールドでは森や岩石やモンスターやプレイヤーを貫いて進む。
おい。
誰か止めろと。
「いや、気が付いたら走り出してるので」
さておき。
流石にネコも、安全圏の建物を突破出来ない。
システム的に壊せないから。
だから街中では空を行く。
一跳びで数百mは固い。
あまり高度をとると見つかりやすくなるから手加減している。手加減する理由をネコは判っていないが、ニートに言われたからしてるだけ。
屋根の上をまっすぐ直進。最短距離。ニートが見たところ評議会は高台に見張りを立てていない。
クラウンが大騒ぎして追跡を仕立てる。
クラウンが大騒ぎして目撃情報を集める。
クラウンが大騒ぎして追跡隊を陣頭指揮して迷子になる。
時間に余裕はある。ある程度、だが。
ネコは現場上空をフライパス。
早い。
はじまりの街はスフィア最大の街だが、数十km単位を砲弾のような勢いで移動できるハイレベルキャラクターには狭い狭い。
(お、いけるいける)
ニートが頷いた。
建物に蹴りを入れ真反対に急制動。
ゲーム的に衝撃が緩和されてなかったら、即死だ。
ニートはキャプチャリングを使い、ネコに運ばれる間のFPS風動画をとった事がある。
公開したら乗り物酔いが多発したらしい。
現場にすぐ近くの死角にニートが降り立った。ネコが置いたのだが。
Cから調達した霧吹きで汗を演出。
呼吸のタイミングを計る。
位置関係を頭に描き声が伝わる方向を決める。
深呼吸。
ネコに合図。
サンッ!ハイ!!
「シスター!!!ご無事ですか!!!!!!!!!!」
にんげんとしてど-なんだろーか。




