第一印象からキメてました
出会った瞬間に判る事がある。
――――――――――この人達は――――――出会い頭に斬る人だ、と。
山崎は、魔法使いと弓兵を貫き通した。
ハルバード、先端が斧と槍の穂先になっている武器、で二人を串刺し。弓はどうしたのかといえば、ハイレベルのアイテムスイッチである。
穂先を地面に突き立て動きを封じる。
近藤局長は三人の首を撥ね感覚を失わせた瞬間に、剣、槍、斧を叩き落とし、蹴り飛ばした。
そのまま互いを鋼糸(ゲーム内のワイヤー状武器)でつなぐ。
安全圏ではPK出来ない。
痛みはなく衝撃のみ。HPは減らない。武器も壊れない。
だから、防具の隙間からアバター同士を繋ぎ合わせて拘束、防具が壊れない事を利用してワイヤーで抑え、同じくアバター同士を使い拘束。
ただひたすらに衝撃を与え続けて敵の意志を砕く。
安全圏用戦闘術。
まあ、攻略圏でも、ここまで極めているのは少ない。
対人(PC)戦闘最強ギルド『蝦夷共和国』だけだろう。
ハルバードも鋼糸も簡単に抜けられる。
実際、攻略圏なら足止めにもなるまい。
だが、育成圏では効く。
アバターを引きちぎって、穂先やワイヤーを抜ける判断に至らないからだ。
ヴァーチャルといえば、リアルな体感覚。
あなたは、自分の体を引きちぎって、拘束を逃れる気になるだろうか?
なにが。痛ないやろ。――――――――――攻略組の感覚。
何が普通とは言わないが、多数派プレイヤーはそう考えない。
自分の体にスキルや武器を突き立てて、反撃の糸口にしたりしない。
だが、近藤局長も山崎も、そんなことは知らない。
中堅以下との闘いは初めてだ。
当然のように経験を踏まえ、敵は自分のアバター(体)を引き裂いて反撃に転ずると思う。
だからその隙を与えてはならない。
背後に脆弱(中堅クラスのPCへの攻略組の感覚)なフミノを抱えている。
ヨイツは後衛の魔法使い(中堅クラスの前衛より強い)にすぎない。
待ち伏せてきた以上、敵には後続があるとみるべきだ。
目の前に出てきた敵戦力を完膚なきまでにつぶす。
敵戦力を減らし、後続の戦意をそぐために。
まあ、ここまで考えるのはさすがに、ギルド『蝦夷共和国』だけかもしれない。
だから、攻略組流の安全圏戦闘術は完全にオーバーキルとして炸裂した。
し続けた。
ラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュラッシュ!!!!!!!!!!
「ごめんなさい!やめてください!はなしあぁう!」
土下座したシスターが投擲された剣で串刺し。なぜいるのか?と思ったのはヨイツだけだった。
思う前に刺す!
戦闘中の飛び入りは大変危険です。
十分に距離をとり、事前に繰り返し呼びかけ、左右上下と戦闘者の眼の色を確認してから入りましょう。
「ちょ――――――――――」
ヨイツが止める。手遅れだが。一方的に叩きつけられている、鋼糸で振り回され続けている、敵(?)剣士も叫ぶ。
よく叫べたな。
「やめろ!その人は関係ない!!」
それはこちらが決めること。
近藤局長はそう思ったし、山崎は聞いてすらいなかった。
山崎が戦闘不適格者であったわけでは、もちろん、ない。
難聴や、周りが目に入らないくらいに集中するような『あつらえ』ではない。
無意味な音は聴こえるだけで理解されないのだ。
「フミノはん!」
とっさにヨイツは思いつく。
と、同時に腹パン、いや、手刀が刺さってる。
「待ってください!」
ヨイツの首を握りつぶした近藤。フミノの嘆願は後回し。
基本優先順位考えて動く社会人の鏡。教師として、社会人として評価は高い。
歴女だが。
だが戦闘中は反射的に動いているから考えてない。
「名前を呼んじゃダメ、って言いましたよね♪」
隠蔽幻術を解除しないヨイツの精神力!どんな目に合わせても解除しないと信頼する近藤の○○術。
戦闘を周囲から隠しているのはヨイツの魔法である。
HPが減らないし状態異常も起きないだけ。
アイテムもスキルも使えるのがヴァーチャルゲーム・スフィアの安全圏ルール。
「ツラいです~~~~~」
近藤が上を見た。
ヨイツの教育が済んで周りに目を配るタイミングと一致したから、聞こえたというか認識した。
だがしかし。
上?
「なにしてるんですか?」
「く、串刺し?」
されてる、されてる。
してるのではなく、串刺しにされて頭上に掲げられても穏やかそうなシスター。
涙目だが。
串刺しにした刀を掲げ、刀身の背に引っ掛けて落ちないように。串刺しにし続けるように。したままで不思議そうな顔をみせる近藤。
に嘆願するシスター。
「ぬ、抜いていただければ嬉しいのですが」
怒ってもいいのよ?
シスター。
ギルド『マルタ騎士団』のマスター。
西南北、攻略圏育成圏を問わずに誰もが知っている存在。ヴァーチャル・ゲーム『スフィア』ではレジェントと呼ばれる存在。
(ソースは『スフィア』Wiki)
『黄金の夜明け』は『最大』のレジェント。
ユエと配下のギルド『GG』は『最強』のレジェント。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ネコは個人初のレジェントで、カテゴリーは『災害』だったり。
以後、個人がレジェント認定される事はないだろう。認定を考えると必ず『ネコと比べて』と考えるからだ。
そしてシスターは、『お助け』のレジェント、たった独りのユニークスキ・・・・・・・・・・・・ユニークカテゴリー。
困った時はシスターへ。ギルド『マルタ騎士団』に駆け込もう!いつもだいたいそこにいる。
『マルタ騎士団』って何処?
どこにいるか判らない?
シスターって誰?
それなら他人に聞いてごらん?其処らの誰かのどちらさん。
何処の誰でも知っている。
知らない他人に聞いたなら、別な他人に聞けばいい。
片手の数より少ない他人が、必ず教えてくれるから。
そして現状。
しくしくしくしくしくしくしくしくしくしく・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「うーん」
刀を掲げて考え込む近藤。
「いや、降ろそうや!マジ!」
「副長に連絡いたしましょう」
山崎はザコを失神させて上申。迷えば我が師に問うべし。
状態異常は起きないが、衝撃を与えればPLの意識が持たない。
これも安全圏用戦闘術。
「やめてー死んじゃうー」
マジ声で止めるヨイツ。
山崎はヨイツの声を認識していない。
女、可愛らしい、が絡めば自分を含めて他人のモノまで貢ぐグズだ(山崎視点)。
シスターはヨイツを惑わす外見基準(最低値はかなり低い)をクリアしているだけではなく、より積極的な裏切りに走り出すレベルだ。
「ちゃうちゃうちゃうんちゃう!」
ヨイツがマジ声に切り替えた。いや、演技する余裕が無くなった。
「ガタに知られたら戦争だ!まてまてまて!」
土方ならどうするか。
三人は知っている。
デス・ゲーム開始以来、現実感覚で行動する傾向が強まっている。
他のギルドマスターを串刺しにした。
その一報だけで動く。
攻略リトライを中止。稼働全戦力で相手ギルドに特攻。
何故?
事情確認とか話し合いとか釈明とか時間稼ぎとか・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・土方の辞書にはない。
あるのは、敵情確認とか鍔迫り合いとか介錯とか遅滞戦闘とか。
土方の認識。
ヴァーチャル・ゲームは無法地帯である。
闘いになれば即時全戦力を投じ最大効果を狙う。
理非曲折は勝ってから考える。
負ける可能性?負けた後など存在しない。
だから、考えない。
威力偵察で真珠湾を攻撃する男。
U2が墜ちたらワシントン他全てに全面核攻撃をする男。
キューバに革命が起きればモスクワ他全てに全面核攻撃をする男。
「じゃあ、仕方ないわね」
――――――――――イヤ――――――――――!




