Present For You!/No,Thank You.
悪い人なんかいません。
我も人なり、彼も人なり。
初めから終わりまで、始めから果てまで。
悪人なんか、いつでも どこにも 、いないんですよ。
アナタが見ているのは悪い人じゃありません。
愚かな人です。
セイは背中を見ていた。
逞しくもなく、大きくもなく、広くもない。
女子中学生の中でも小柄なトモよりはでかい。
「セイちゃんもあんまりかわらないよ?」
「うっせ」
「まあまあ」
背丈は高くも低くもない。やや、猫背。
その背中――――――――――を蹴り飛ばした。
「じゃま、おっさん」
ゲートは広い。
ゲート前はもっと広い。
ゲートは数百人のPCが同時突入でもしなければ、事故が起きたりしない。
最近、起きたが。
だがしかし。
人が行き来する場所を塞ぐのは如何なものか?
例えば、エスカレーターの登り口。
出口付近で即方向転換。
危ないって。
人がどんどん送り出されてくる場所だよ?
左右どちらでもいいが、出口ゼロ距離で曲がればどうなるか?
ぶつかりやすく、しかも、普通の階段より危険。ドミノ倒しになりかねない。
エスカレーター出口から、まっすぐ進みましょう。
最低2m以上離れ、背後を確認したら、曲がりましょう。
「ということですね?」
「それです!」
「なげーよ!」
セイに蹴り出されたニート。
どうしたのかと聞くトモ。
トモに説明するニート。
簡潔に
『通り道をふさいで邪魔だったから蹴った』
と言えないものか。
そろはまあ、良いんだが(え?)。
ニートが気にしてないように見えるから、良いんだろう。
「・・・・・・見える?」
「謝っちゃいなよ!セイちゃん」
ゲート出口で立ち止まったのは、ニートが悪いだろう。
注意が蹴り、ってのは、セイが、わ
「いや、私も自販機の前にただ立っている人を蹴り殺したくなりますし。殺ったことは無いですよ?この目を見てください。生まれる前から一度も誰かを騙そうと思った事がない、正直な人間の目です」
「もーしわけありませんでした!不要な暴力を振るってしまいました」
深々。
セイが、自発的に、謝罪!有り得ない現象を前に戸惑ったネコ・カフェ一同。
いや、ネコはまたうつらうつらしてるけど。
「すっごい!」
バンザーイ、なトモ。
「最高の反面センセーです!」
ニートを賞賛。
悪いと思ったら、すぐに謝罪。
ニートみたいになっちゃいけない。
謝罪する/しない。
非を認める/認めない。
どこからだって得るモノはある。
得だけじゃなくて、損だって売れる。
タダで頭を下げて一儲け。
下げた頭を取り消してふた儲け。
更に更に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
なんて事を計算している大人になりたくない。
心に誓うセイだった。
いや、それ、大人の範疇ちゃうわ。
分類不能なニートは周りを見渡す。
はじまりの街。
大広場。
はじめて人が殺し合った場所。
ゲームで?
いや、ヴァーチャルで、と言うべきだ。
フミノは目深にフードをかぶっていた。
仲間を殺されて、自分も殺されてかけたその場所。
あたりが見えないように。あたりから見られないように。
「間違っていました」
「え゛」
セイがニートを見た。世界が変わったような恐怖。
「人生ですね♪」
トモ、即断。デス・ゲームが終わったかのような、晴れ晴れとした笑顔。
「いえ、それも有りますが」
おい。
「普通、売りますよね?」
は?
「わたしやフミノを密告するでしょう?これは遊びじゃないんですから」
デス・ゲーム=現実、ニートの持論。
「誰が誰に売るかしらねーけど、遊びじゃないから、じゃね」
セイは殴り合いなら大丈夫だ。
リアルでも。
いや、リアルの方が得意なくらい。
だけど。
人を陥れるのは、怖いと思う。
加減が効かない。
確認ができない。
自分たちが100%安全でも、いや、なおのこと 。
「あの子が心配ですね」
セイ&トモは沈思黙考・・・・・・・
「わりぃ、だれ?」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんて熟語を知らなかった。
国語教育の現状を憂えたニート。
「それいーいから」
「アーネちゃんさんですよ」
高校生を『さん』付けで呼ぶ中学生の鏡。
「あのスパイ、ってか、密偵?」
「カモさんです」
アレが何か?と見上げる三人、セイ、トモ、フミノ。
任務に失敗。
仲間は逃亡。
指示支援無し。
ギルド本部に戻れない。
遠い敵地でたたずむ少女。
せめて、一度、ただ一度、手柄をたてる事ができれば!
「おおー大変だな」
「可哀想です!」
他人事セイに元気なトモ。
「だから、フミノ、って言うより、私の動きを報告するはずだったのですが」
アーネの上司は、きっと喜ぶ。
ニートの裏をかければ。
その上司を道化師(仮)と呼ぼう。
しかしだがしかし。いまどうだ!
はじまりの街、大広場。
奇襲なし。
伏兵なし。
敵影なし。
ニートの予定では、血管をキレさせた道化師(仮)がまっているはずだった。
狙いはフミノ、ってよりニート。
道化師(仮)は単純。
待ち伏せ出来れば歓喜雀躍。
アーネの失敗を忘れて賞賛しただろう。
アーネはギルド内序列も上がり、安全な任務、あるいは、他人を評価する人間の補佐あたりに納まれたかも。
いつまでつづくかデス・ゲーム。
最良の過ごし方だ。
だから、教えたのに。
安直過ぎて罠を疑った?
ばかな!
ゲート転移で聴かせた。
「はじまりの街へ」
と。
卓上でメッセージを仕込み、報告。
道化師(仮)は手勢を揃える。
転移と同時に連絡すればコンプリート。
あれは誤魔化せない。
ゲートを使うときは目的地を音声入力しないといけない。
ゲームだけに誰でも音声を使えるからだ。
ニートがはじまりの街に現れさえすれば、手柄は成立する。
道化師(仮)はニートが居れば攻撃してくる。
仮に罠ならハマるのはそいつらだ。
どんな結果でも、次に責められるのアーネ以外のだれかだ。
アーネは安全。
ニートは気がかりが減る。
なにも問題はない。
だが、そうはならなかった。
もしかしたらとは思ったが。
同情はともかく、そこまでは考えもしなかったが。
アーネは、本気でフミノを心配し出したのかもしれない。
自らの立場を捨てても守りたい、と。
「もう少し、ひどい目に合わせるべきでした」
反省。
次はもっと憎まれよう。
相手が判断する余地がない程に心を踏みにじろう。
まっすぐレールを走りきれるように。
「忘れないように、メモメモ」
「さー行こう」
「ぷれいです?」
あ、え、その、はわ。
聞きたくないセイ&トモ、流されるフミノ。
聞かせるわけにはいかない。
アーネは終わりだ。
優しさの末路。
裏切り者。
大手ギルドを追放されたソロPL。
良く見積もって、中堅レベル。
ギルド前提で育成したなら、スキルも装備も偏っている。
ギルド外に人脈もない。
デス・ゲームのど真ん中!
だから、こういうことになる。
「早かったな?ニート」




