真面目なあなたに贈る詩
世の中には二種類の人間がいる。
相手の身になるほどに共感しやすい人。
相手との区別が無くなるほど共感しやすい人。
他人の不幸を我がこととして怒るあなたは後者。
間違いなく周りが不幸になる。
まだまだ続く、続いてしまう、評議会。
野外劇場の客席。
主に南北西方の2~4つ目の街から集まっている大手(構成PC三桁以上)の代表者たち。
中には複数のギルドが一つの代表を選んで送り込んでいる場合もある。
檀上。あるいは舞台上。
ギルド『黄金の夜明け』のギルドマスター、閣下改め議長。
ギルド『マルタ騎士団』のギルドマスター、シスター。
それに、サポート役が数人ずつ。
二人とも通称なのがなんとも。
「次。クラウン?」
もう一人の補佐役、シーフ少女の珠李を制し、閣下と呼ばれた恰幅のいい男、議長は青年、クラウンの肩を叩いた。
「カマルの連中です」
客席は同意と困惑が6:4か。
「何を思ったのか、奴らは我々の狩場を荒らしまわっている」
右側から疑問。
「このタイミングで狩り?」
「事態を理解してないのか?」
「いや、そうじゃないらしいが・・・」
「まあ、長引くようなら、いずれは俺たちもな」
クラウンが眉を吊り上げた。
「静粛に!発言は挙手!!」
議長が後を受けた。
「悪いねみんな。まずは報告だけさせてね」
客席が静まったのを確認し、クラウンが続けた。
「西方カマルを拠点に主だった攻略ギルド、パーティー、ソロが攻略前線の内側で狩りや迷宮踏破、遺跡探索を始めた」
皆がウィンドウを開き確認する。地図やメッセージ、メルマガなどから関連情報を拾い上げる。
「悪質なのがGGだ」
ギルドマスターや幹部ばかりだ。最強ギルドを知らぬ者はいない。
関わった事がある者は少ないが。
「ヤツらはPKギルドを吸収して勢力を拡大、中堅エリアで軍事演習をしている!」
シスター他4割ほどがポカーン。2割ほどが苦笑。
「まあ、ヤバげなPCが100人単位で集まって行進したり訓練してるんだ」
議長が補足。
「はい」
シスター挙手。
「あーどうぞ?」
頸をかしげて素朴な質問。
「・・・あの、なにか問題で」
「なにを言ってる!!」
シスターを遮ったクラウンに左右から厳しい視線。
「ストップ」
議長がクラウンの肩を抑えた。
「ルール決めよう。評議会、ってより評議の」
見回してから続けた。
「発言を遮らない。ただし長すぎたり焦点がわかりにくい場合は俺に調整させて?一応、議長だしさ」
左右、どちらかと言えば左側を見た。
左側はシスターを見てから、不承不承頷いた。
「発言は挙手不要。ただし同時に話し始めた場合は俺に順番決めさせてくれるかな?」
閣下、改め議長は皆を見回した。
「反対の人」
なし。
「じゃあ、つづけよう」
議長が要約して説明を始めた。
「要はこういうこと」
・攻略PC達が今まで出現しなかった前線の内側、中堅から初心者エリア近くで一斉に狩り/攻略/マッピングを始めた。
→クラウン追加。西方だけではなく南北の攻略PCも同じ。
・評議会の物質調達作戦の策定が、攻略PCの活動と競合してはかどっていない。
→クラウン主張。育成圏の都市に避難している初心者PC達の生活が圧迫されている。
「でまあ、この動きの中心が最強ギルド『GG』な」
「閣下!奴らはPKギルドです!!」
誰にでもかぶせるクラウンに議長は苦笑した。
続き。
・攻略組の動きを主導しているのはギルドGGのようだ。
→クラウン主張。攻略組PCはGGからアイテム提供を受け服属している。
・ギルドGGは多くのPKギルドを吸収した。
→クラウン主張。拡大を続けている。
・GG傘下に入ったPKギルド最大手『モヒカン』が初心者エリア近くで狩りを始めた。
→クラウン主張。評議会への恫喝だ。
「さて、どうしようか?」
議長が見回した。
「あの~」
「ご遠慮なく」
議長がシスターを促した。
「狩場のバッティングが懸念されるなら、棲み分けでいいのでは?」
モンスターの出現ポイントにPCが集まりすぎるのは珍しくない。
それが原因でPKが起きる時もある。
だが大抵はエリア別けや時間交代で調整する。
「うちは挨拶されたけどな」
「うちは無いぜ?」
「無いのは伝手だろ?」
「で?だれか狩場争いが起きたか」
「そもそもいま、狩りに行くってさ?」
左側から笑い声。揶揄する調子がある。
「相手の言いなりになるのが棲み分けだと?」
クラウンが睨み回す。反論が上がった。
「そもそも狩場に出る人間が少ないんだ。我々が利用していない時は」
「今後もそうだと?いったい誰の狩場だと思っている!」
クラウンが皆を見回した。
育成圏の狩場は育成圏PLのもの。
そんなルールはない。
だが。
そんな意識はある。
だからこそ、攻略組が挨拶してきたし、受けた側も自然に応えた。
「今でさえ先有権を認めさせられているんじゃないか?次は『お願い』して割り込ませていただくのか?我々の狩場で!我々だけの話じゃないんだぞ!」
左右のPLは黙ってしまった。
誰の物でもないフィールド、アイテムやモンスターの出没する狩場。
早い者勝ち、の論理は確かにある。
「はじまりの街だけでも、何人のPCがいると思う!みながみな、霞を食って閉じこもるか?飢えがなければ我慢出来るか?いずれみな、フィールドで日々の糧を得なくてはならん!!」
否定はできない。ギルドマスターだからこそわかる。
単純な安全策は限界だ、と。
安全策とは安全圏、つまり都市への引きこもり。
基本的に収入はない。
職人や商人だとて、産物をフィールドで入手してくるPCがいてこそ利益が出せる。
飢えないために、ではなく、ゲームに閉じ込められた状況にたえる為に、日々の食事が必要になる。
要は一番単純な娯楽だ。
ゲームシステムが、ログアウト以外機能しているから、ソレを楽しむにはアイテムやコインがいる。
いや、日々消費している。
はじまりの街に残るっている、いや、残ることができたギルドはそれなりの物資を抱えている。
彼らですら、このままでいけば、ほどなく破たんする。
「いずれ皆が糧を得る為にフィールドに行かざるをえない」
大手ギルドでさえそうなのだ。
はじまりの街にいる無数のPLはどうなる?
すでにそれが大きなフラストレーションを生んでいるのは明らかだ。
潤沢な資金やアイテムを持つPLばかりではない。
行きつく先は?
闇雲にフィールドに出て死ぬ。
街の中でで争って奪い合って、いずれフィールドに走り出して死ぬ。
それとも、何も得られずに物乞いをして、人としての矜持を失うか?
冗談ではない!!
だからこそ、クラウンは怒りに燃える。
だからこそ、怒鳴りつける。
誰かが手順を整えないとならないからだ。
誰もそれをしようとしないからだ。
「ほどなく狩場と資源の奪い合いになるぞ!そのとき連中は言うだろう!今更なにを、と!」
誰のせいだ!と言わないが糾弾だ。
だが、皆、実感を伴わない。
育成圏を通り道程度にしているのが攻略組だ。
だからこそ、狩場を奪われると考えず、育成圏にはみ出した彼らの挨拶を受け入れたのだ。
難易度は高いが実入りがいいい攻略圏を抱える攻略組。
彼らが、リターンが少ない育成圏にとどまるだろうか?
とはいえ、クラウンの危機感も理解は出来る。
安全第一でノーリスク・ローリターンを選ぶ可能性がないとは言えない。
理解はできる。
理解、は。
「よしわかった!!」
怒鳴ったのは右席の大男。
腰布一つにマント。長髪に筋肉。ギリシャ神話風英雄、まんま。
「解っていない!お前たちには!!」
大男は立ち上がった。
壇上のクラウンに背を向けた。
ギリシャ英雄風な外見がこの場、野外劇場によく似合う。
「俺は『黄金の夜明け』の傘下ギルド『アルゴ』の頭領エルコレ」
頭を下げた。2m近い長身に前進筋肉と来たら大迫力である。
「俺が全部悪い!」
は?
みな、左右と檀上がポカーン。
「誰かの首が必要なら、俺の首にしろ」
胸を張る。
「ききき」
クラウンが、顔を真っ赤にした。
「貴様ごときの首で何ができるか!!!!!!!!!!!!」
ゲームアバターには肺活量の概念はないのだが、クラウンは絶息寸前。
「まったくだ。首は何の足しにもならねーな、だからよ」
他人事にしか見えない様子でうなずくエルコレ。
「首を出す以外の事は任せる!!」
は??
二回目。
みな、左右と檀上がポカーン。
「な?ボス!」
「OK!」
議長が頷き、今度こそ、クラウンが絶句。
「クラウン」
絶句のまま。
「誰かの首が必要になったら俺んとこに来い」
エルコレは客席からささっと、歩き出した。
「きききど!!!!!」
「お前が割り振ったんだろ」
振り返りもしない。
「広場の警備は『アルゴ』だと」
きょうはこれくらいにしよっか~?
えーとえーと??
個別の調整は一時間後です。みなさん、軽食は立食形式で舞台上で行います。
などの声が響く中やり遂げた(?)男は背中で語って立ち去った。




