誠実なあなたに贈る詩
世の中には二種類の人間がいる。
相手の身になるほどに共感しやすい人。
相手との区別が無くなるほど共感しやすい人。
他人の不幸を我が事のように悲しむ貴方は前者。
間違いなく不幸になる。
「いったいどういうことだ!!!!」
野外劇場に怒声が響いた。
はじまりの街。
中心部にある広場の周りにはいくつもの公共施設(PLが自由に利用出来る施設)が設えられている。
円形劇場もその一つ。
半円の階段が中心に向かい客席をなし、中心に舞台、反対側は舞台装置と控室その他。客席の最上部は照明や音響設備が設えられている。
なんちゃって中世とはいえ、現代チックに過ぎるが・・・演目をやりたがるPLに、松明や楽器などのアイテム、魔法効果でソレを再現させるのはムリがある。
と、運営は判断したのだろう。
そんな娯楽をヴァーチャル・ゲームに求めるな、という意見は置くとして。
そして怒声。
なにぶん、デス・ゲームから6日目。芝居やパフォーマンス、娯楽的なそれ、ではない。
壇上に5人。
客席最前列に19人。
すぐ後ろに30人余り。
客席後列側に100を超えない程度。
色とりどりの髪、主に白い肌、デフォルメされた鎧に剣、杖に衣装。
それらが自然に調和しており、ファンタジー映画(出来映えが良い大作)を彷彿とさせる。
だが、雰囲気はファンタジーから真逆だった。
「これでは評議会の権威が疑われる!」
ここは後々まで評議会と呼ばれた。
「一昨日!確認しただろう!!犠牲者の数を調べると !!!」
壇上の青年が早口で続けた。
戦士風の革鎧だが、杖をもっているので魔法使い、あるいは魔法剣士だろう。
「なのに!まったく進んでいない!どういう事だ!!!前回、評議会に参加してなかったとでもいうつもりか!」
客席左側を睨んだ。こちらには西方、北方に拠点を構えるギルド代表が多い。
皆を見回してから、一番年嵩の剣士が答えた。
「仕方な」
「仕方なくない!皆で決めた事だ!現に我々は終わっている!出来てないのは君たちだ!」
言葉を被せられた剣士は殺意を込めて睨みつける。
檀上と議員席の間の距離が『剣の長さ』に由来する国がある。現実の話だ。
そしてここはゲーム世界。
剣はアイテムボックスにしまい装備していない。
息をつき、反駁した。
「北は、西もだが、それほど交流は強くない」
「みんな同じだ!」
「いやだから!犠牲者を出したギルドはそれ自体が混乱してるんだ!被害確認を呼びかけても・・・」
「みんなそうだと言っている!だから前回確認したんだろう!」
「前回はやってみると言っただけだ!」
客席の左側から魔法使いが立ち上がった。
「第一、あんたら西方だって暫定数だろう!」
「じゃあ南北の暫定を教えもらおうか!!」
「そもそも数字がいるのか?必要か?」
左側から一斉に怒声が上がった。
「アンタらは犠牲を出してないがな!こっちは違うんだ!」
「自分たちだけでデス・ゲーム情報を回しやがって!」
黙っていた右側がいきり立つ。
「蒸し返すか!」
「こんな荒唐無稽な、未確定の話を他人に回せるか!」
「だいたい自分で気がつかないのが・・・」
こちらに集まるのは南方のギルド。
多くが一つのギルド連合に加盟する傘下ギルドの代表たちだ。
言ってしまえば、ギルド『GG』にPKギルド『モヒカン』などが降ったが、システム上は同じ。
親ギルドと子ギルド。
ギルドステータスを共有出来たり、システム上のギルド得点を受けられるなどの利点が多い。
互いの関係が同盟なのか従属なかは、結局、人間関係によるが。
「お願いします!!!!!!!!!」
怒鳴りあい、にらみ合う、左右双方の間に立つ小柄なシスター。
クラスは僧侶だろう。
壇上から飛び降り、双方へ平身低頭。
「なにを・・・」
と言いかけた壇上の青年、恰幅のいい男が肩に手をそえ、抑えた。
男は平服以外の装備をつけていないためにクラスが見た目では判らない。
「犠牲者の友人、もしかしたら家族は危険な状態です。子供のPLもいます。自暴自棄になって自殺やPKにはしるかもしれません」
左右に頭を下げた。
「確認、とまで出来なくても互いに、ギルド外にも声を掛け合うように呼びかけてください」
再び平身低頭。
「今のところ沈静化する方法が他にありませんから、必要なら睡眠魔法持ちの娘を派遣できるように努めますし、もちろん、現実に医療関係だったり経験がある方々にも、引き続き協力を呼びかけています。そして実際に、仲間を失って、その、直面している皆さんからもご意見をお聞かせいただきたいのです」
伏し目がちに見回す。
「・・・だ、ダメ、でしょう、か・・・」
左右双方ともバツが悪そうに目を逸らした。
「じゃあさ、それでいいよね」
恰幅のいい男が壇上から呼びかける。
「互いに犠牲を出してしまった人たちに気をつけ、気をつけ合うように呼びかける」
わかるわかる、とばかりに手の平を向けた。
「もうやってるよね。ただ、ギルド内で抱え込まないで情報交換、プラス、ソロとかにも気をつけてあげて」
見回した。
「一応、各ギルドで引き続き犠牲者をカウントしておいてくれないかな?ゆっくりでいいよ」
怒り出す檀上の青年を数人のPCが抑えた。
「対処方法やリアルでカウンセラーのPLがいないか確認、情報交換しようよ。専用アドレスは用意するから。最初からやれば良かったね、ゴメン」
恰幅のいい男がシスターに手を貸して壇上に戻した。
「次、なんだっけ?」
青年の肩を叩いた。抑える手を振りほどいて憮然としている。
「・・・」
「備蓄物質の一覧は皆さんに送りました」
革鎧姿、盗賊クラスの女性が恰幅のいい男に報告。
「・・・出してないギルドもあるがな!!!」
青年が聞こえるように吐き捨てた。
「仕方ない!」
右側から大声。
「ギルド単位でアイテムを運用しているところばかりじゃないからな!」
「オマエも隠してないか?」
「おいおい」
左右から笑い声。
「こんな時に私利私欲に走るなど人間のやることじゃない!厳しく詮議して糾弾する!だいたい!」
しらけた雰囲気に更に言葉を継ごうとする青年。
「ごもっとも!ですが!」
拳を振り上げた青年に、慌ててシスターが言葉を被せた。
「今日明日にまとめるのは無理ですから、出来ることから、ね!進めましょう!ね!ねっ!」
青年は胸を張った。
「我が『黄金の夜明け』はアイテム把握も今後の調達計画も出来ている」
壇上から睨みつけた。
「みなの為に協調しない連中には提供しない」
右側が黙り込み、左側がシスターを見た。
「えーと」
シスターはあわあわして言葉を探した。
パチパチパチパチ。
拍手。
恰幅のいい男だ
「マルタ騎士団は凄いよね!ウチより先に数字出してくれたし」
恰幅が良い男が拍手を続けた。
「零細ギルドですからな!」
毒つく青年の肩を叩いて男が続けた。
「そんな小回りが利いてるシスターにアイテム管理、みんなで使う評議会のを、お願いしちゃおう!」
「え?えぇ~~~」
「はぁ?閣下!」
閣下と言われた男は皆を見回して拍手の音頭をとる。
シスターがあわあわあわ。
青年が逆上。
「珠李!お手伝い。シスターにしばらくついてて。よろしくね?マルタのみなさん!」
盗賊スタイルの女性、珠李が頷いた。
シスターについている僧服姿の少女や戦士スタイルの子供たちがは、え?という様子だが拒否はしない。
「各ギルドからも事務得意な人たち出してね?シスターのお手伝い。交代制もアリ。最初だけ多めにね」
左側に呼びかけ。ざわつきながら皆頷いた。
「アイテムや金貨が入り用ならシスターに、足りなけりゃ俺がギルドストレージから出すよ?もちろん、みんなにも拠出をお願いするかもしれない」
右側を見た。戸惑いは有るが皆頷いた。
「はい」
閣下は壇上から見回した。
「拍手!」
皆が閣下に続く。
「決まり、次」
シスターは溜め息。
(どうして、こうなちゃったんでしょう?)




