プレーヤーの敵はプレーヤー
『ジャマ。黄金の夜明け』
佐々木見廻組組長がホワイトボードに書き込み。
「本題いくぞ」
土方。
「運営拠点調査の障害がこいつらな」
「コイツらだけやん?」
可能性注意。
「とはかぎらねーが、どうでもいい」
知らない事、判らない事は考えない。
土方スタイル。
だからゲーム解析でヨイツに劣る。
だから戦闘中は誰の追随も許さない。
そして長所も短所も気にしない。
本人は。
「今コレだ」
土方が振り向いた。
「やり方がマトモじゃねぇ」
何の、とは言わない。皆わかっている。
フミノを襲った事だ。
運営の情報を知りたい。
同意。
運営から話を聞きたい。
同意。
運営を捕らえたい。
何故?
なして?
なにゆえ?
「イベントじゃないんだから、ドロップアイテム(クリアキーとか)が有るわけ無いのに」
「どんなゲーム脳や」
お前らもな。
マサムネとヨイツ。
最初の襲撃者はフミノを殺しかねないやり方だった。最後は捕まえようとしたが。
「殺すだけなら、わざわざ囲んで近寄らないでしょう」
とはニート。
HPレッドゾーン、Lost寸前のフミノ。
彼女は文字通り必死で反撃しなかった。
反撃出来ない、と追っ手のパーティーは踏んだはずだ。
矢を惜しんでも、殺すだけなら間合いを詰め一気に斬るだけで十分。
なのにあえて囲みこみ、近づいた。
つまり
『殺してかまわないが、可能なら確保』
という動き。
まともじゃない。
『デス・ゲームは現実に等しい』
と考えれば?皆、土方に同意。
「バカだ」
断定、土方。あれ?
同意?
殺したら何も得られない。
現実なら遺品から得られるものは少なくない。
だが、ゲームだ。
ドロップアイテムは得られるが、備忘録やフレンドリストなどはアバターと同時に消える。
正確に言えばPLのシステムウィンドウを開けるのは本人だけ、と言うべきか。
もちろん現実の話に戻しても、持ち物より本人から得られるモノの方が多い。
どちらにせよ、このタイミングで、運営のPL相手に、わざわざ手間暇かけて、殺す(かもしれない)選択肢は有り得ない。
それをやらかした『黄金の夜明け』の関係者。
無駄手間イコール馬鹿。
現役高校生、土方君の常識でした。
アレ?ソウイウハナシダッタカナー?
高校生は大人だな~と関心するセイ&トモ。
中学生。
そんな二人を微笑んで見守るニート。
訳が分からなくなるフミノ。
高校生。
トラウマの話になってるのに気がつかないくらい、こんらん。
「しかも育成圏全部の街で喧嘩売るって・・・言葉通じんのかいや」
ヨイツが弱り目。ってどんな目?
『黄金の夜明け』はネコカフェに邪魔されてフミノに逃げられる。
即時、次の手を打った。
「これはすごいと思いますよ。銃殺にしたほうがいい働き者というか」
昨夜。
フィールドを逃げ回るフミノを待ち伏せするために、一カ所あたり十数~数十のPCを動員。
逃げ込む可能性がある西方すべての街に送り込んだ。
低レベルPCばかりとはいえ、数を揃えて同一目標の為に協調行動させられる。
「真似できませんね」
最大手ギルド『黄金の夜明け』以外にそんな動員力はない。
「目標を絞る能力が無いのか、動員する人数が余ってるのか」
はじまりの街市街戦。戦後の影響力を握ったのも、数で優勢を保ったからだ。
「勝てないのが、らしいな」
バカに見合った末路。ブレない土方。
「彼らを含めて、みなさん目的不明で戦っていたんでしょうから」
「色違いの馬鹿」
頷いたが、ブレない土方。
「真似したくないわね」
その消耗戦の泥沼のさなか、ネコカフェ追跡の為、全部の街で騒ぎを起こせば呆れを通り抜ける。
真夜中(リアル感覚なら真昼だが)に各街の門前で街に残った有力ギルドと一悶着。
ログアウト不可から数日経過。
環境(要はゲーム的昼夜)に合わせないと疲れる事に自然に気がついたPLたち。
大方の皆が生活サイクルをゲーム上の昼夜に合わせ始めた矢先。
時差ボケ状態で皆が怒りっぽい時にわざわざ。
夜中に他人をたたき起こしたのである。
まあ『黄金の夜明け』にも言い分はある。
各街に入ると各街の『事情通』が『門の外からこっそり何かが・・・(有料)』と囁いて来たのだから。
門のすぐ内側で待ち伏せようとすれば「やっぱりか」とうんざり顔を揃えた地元の有力ギルドと睨み合い。
(踏んだり蹴ったり)
とニートは思う。
もちろん何も言わない。
羽目た相手にネタばらしなんかしたら、彼らを慰めてあげられないじゃないか?
「噛めば噛むほど味がでるんです!」
?
キョトンとする皆。
「カモっ」
ガシッ!
ニートがトモの頭を、撫でた。
「かゃほへぶ(そこは顔です!)」
「掴んでる掴んでる」
呆れ顔のセイ。アイアンクローに抗議するトモ。
「カモ肉?」
「あんの?」
「ますわ」
「噛めば噛むほど味がでるんか?」
「調理法、では?ゲームで可能かどうか、存じませんが」
はなしもどすぞー。土方の一声。
「育成圏中に喧嘩売ったヤの字のはなしからやな」
ん?
「育成圏?」
だけだったか?『黄金の夜明け』が出張ってたのは?攻略圏で檻に入れられていた初心者は・・・・・・・・・?
セイがニートを見た。
「焦りのせいもありましょう。しかし、こんなムチャを続けられたら、情報を潰してしまいます」
ニート、スルー。
セイも、まあいいか、と忘れた。
おい。
攻略圏で標本扱いされている皆様。さようなら。さようなら。
だが、ニートがスルーついでに持ち出した問題提起は重要だ。
『黄金の夜明け』に破壊的な活動を続けられたら、運営情報源そのものをぶち壊してしまう。
「止めないといけませんね」
単純に考えても、フミノ以外に運営PLが生き残って居た場合、『黄金の夜明け』に殺されかねない。
狩りに殺されなくとも似たようなもの。
「逃げて潜伏されたら情報どころやないで・・・・・・・・・せやけど、やめゆーて聞くか?」
教都で出くわした『黄金の夜明け』のメンバーを考えると・・・・・・・・・・・・・・・話出来るか?
不安ではある。
「その、あちらも、情報が欲しいなら、互いに協力する、というのは?」
と、マサムネ。協力関係から意見を調整する形で軌道修正させる。
対立しがちなギルドを協調させる定石、ではある。
「あ!もちろん!!乱暴なやり方を許しません!」
チラッと見られたフミノが微笑みかえした・・・つもり。顔色が悪すぎる。
頭を抱えるマサムネ。
「かかわりたくない相手に、かかわらなくて済む人生は理想っすね~~~」
夢見る乙女風のC。
「金持ちになったのは、嫌いな奴と話したくなかったから」
「誰の言葉っす?」
「ボストン・レッドソックスのオーナー」
ニートとCが脱線気味。
「だから『なるべく』かかわらない、なのよ」
と軌道修正するD。
「いいでしょう」
イサミ局長。
「彼らと話し合いましょう」
ただし、
「私たちの活動とは別にね」
デス・ゲームの調査。
リトライ続行。
運営拠点調査も始める。
他にも良いプランがあれば検討し実行する。
「ここまでは今まで通り」
イサミ局長が見渡した。
「ここからは育成圏ギルドとの話し合いを今まで以上に広げましょう」
今まではリトライ作戦に伴い、近隣の街ギルドへの挨拶程度だったが。
「先ずは顔つなぎから、かしらね」
「方針転換やん?」
なるべくかかわらないはどーした。
「関わらない為に、ですよ」
ニート解説。
同じ世界で接触しないのは難しい。結局は不期不定で接触し、そのたびに対処を練ると、抜き差しならない対立に陥りやすい。
なら、最初から窓口を決めて常に距離をコントロールしやすい形にした方がいい。
なるほど。
皆、納得。
「それについては、別に相談しましょう」
とイサミ局長。実際、攻略組のトップギルドが音頭をとらなければ進まない話だ。
「今話し合っている調査作戦は、育成圏ギルドとの接触とは別に進めます」
イサミ局長が決定。
「どうぞ」
イサミに質されたマサムネ。
「調査の障害が『黄金の夜明け』なら、話し合って邪魔をしないようには」
遠慮勝ちな異論?質問?
「うまく話が付くとしても、いつになるか判らないわね」
と『GG』のD。
「話し合いが出来るのか?合意が出来るのか?そもそもこれから窓口を開くというからには時間がどれくらいかかるか?」
「鮮度が落ちるなら、作戦中止が妥当っす」
Cがまとめた。情報は、必要な時に必要な人間が最新の状態で把握しなければ意味がない。
「決まりね」
北方攻略圏御三家筆頭のイサミの言葉。
西方攻略圏主導のギルド『GG』全権代表Dが黙って承認。
南方攻略都市バザールを支配する会合衆や主要な探検、運送ギルドから頼まれてやって来たマサムネも頷いた。
合意。
攻略組ギルド合同の、
『運営拠点調査作戦』
が動き出した。




