知ってた。
高まる緊張。
溢れ出す戦意。
自重しない中継。
教都側レイドは配置完了。
ヒャッハー百鬼夜行は静かに分散待機。
解説席。
「おおっっっと!ここで動いた!!!」
とフィフィ。
「はじめまして」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・と聖。
はぁ?
な解説席。
「あ、挨拶ですよ!」
「血塗れの斧を構えるジェイ○ンにも挨拶する良い子は違います」
「したんですか!ホラーゲーム?!」
百鬼夜行、中央の大男。
ジーンズにシャツ、そして筋肉の軽装、っていうか、普段着。
防御力皆無のアイテム。
わざわざゲーム内で普段着で寛ぐPLもいないので公式アイテムではなく、すべてPCオーダーメイドだ。
五日前までは富裕なPCの中のさらに少数の遊びとして出回る程度だった。
だが、デス・ゲーム開始以来、懐に余裕があるPCが購入を進め始めている。
ログアウト出来ない以上、休息もゲーム内な訳で、一日中鎧だと疲れる(ステータスには影響がない気分の問題)。
しかし、フィールドはもちろん、街中をそれでうろつく奴はいない。
安全圏でも、皆、不安なのだ。
にもかかわらず普段着姿の大男。
レベルかスキルによほどの自信があるのか?それとも策略か?
まあ、この男の場合、筋肉だけで攻撃力がありそうだが。
「はじめまして」
・・・・・・・・・聖が繰り返したのではない。
大男だ。
一礼して胸を張った。
え?
皆が呆然。一部例外。
「なあなあ」
解説席脇に近づいていたナスチオンが囁く。
「知り合い?」
視線をそらすセイ。セイを覗き込んだトモ。
「お初にお目にかかります」
聖、合掌。
「知り合いじゃないようで」
とニート、いやいや「あの二人のことやない」とナスチオン。
解説席。
「何を話すのでしょう?最期通牒?どうですニートさん!」
「いけませんねぇ。最期通牒や宣戦布告なぞ都市伝説」
嘆かわしい、と額を抑えた。
「やる気が感じられません」
フィフィと野次馬が頷いた。
聖が首を傾げる。
「コレ、だけですの?」
傍らのアーネが蒼白。
いつの間にか『聖球寺』の真ん中に飲み込まれ、動きがとれない。
聖が前に出るに合わせて、押し出された。
間違いなく最前線。
関係ないのに。
「我はA、ユエ様の盾なり」
「わたくしは聖です」
解説席。
「名乗りを上げましたよ!源平合戦的な懐古趣味でしょうか?」
「にしては短いのが残念ですね。八代前とは言いませんが、もっと設定を盛りませんと」
大男は獰猛な笑顔のまま。
「まずは589名、転移中だ」
ざわめき。
解説席。
「こ、これは降伏勧告?教都側は・・・『聖球寺』が199、あとは」
「ざっと400くらいです」
1.5倍。
圧倒的、とは言わないが、勝敗を決するには十分な差。
「まずは、ですか」
「後続があるということですね」
解説席が盛り上がる。
聖がにっこり。
解説席。
「何でしょう!『聖球寺』ギルドマスターの笑顔は凄く攻撃的です」
野次馬ともども思い起こす。ゲーム最大ギルドに『喧嘩を売り返した』あの、笑顔を。
くるか!
来るか!
クるか!
聖の錫杖が降ろされた。
「いらっしゃいませ♪どうぞ教都へ♪♪」
ぽか――――――――――ん。
『聖球寺』が道を開けた。仁王立ちの大男、Aが一人で歩み寄る。狂犬ヒャッハー百鬼夜行は待機。
「宿舎になりそうな建物、あとは城壁内になります」
ウィンドウを見せる聖。
「傷み入る」
聖が兄の禎を視線で指す。
「詳しいことはこれに」
な、な、な、な。
「「なんですかー――――――――――」」
解説席絶叫。
「ど――――――――――ういうことよ!!!!!!!!!!」
天徒絶叫。
左翼から聖のもとに突撃してきていた。
「あらあら・・・お気になさらず・・・どうしたの?」
独白・・・Aへ・・・天徒に。
「どういうことよ!」
「なにが?」
頸を傾げる。
「だから!コイツ等よ!」
「こちらが?」
「そうよ!!」
「どうしたの?」
(長くなるので、すれ違いをスキップ)
聖の説明。
ゲートから出てきたのはギルド『GG』のPL、A。PC名がA、一文字。
世紀末ヒャッハー伝説百鬼夜行の群れは、ゲーム界最大のPKギルド『モヒカン』を中心に、中小のPKギルドやシーフギルド。
「ブラックリストばっかじゃない!」
公式なものではないが、非公式ガイドブックや掲示板などに犯行手口や活動エリアがさらされる札付きのギルド、パーティー、PCをそう呼ぶ。
「大丈夫よ」
なぜ?
つまりはこの場にいるレッド(PK目的PL)オレンジ(ゲーム内での略奪や窃盗、詐欺などの愉快犯PL)は最前線最強ギルド『GG』の傘下に入った。
「彼等の行動は『GG』主催のユエさんが責任をおもちになるそうよ。」
他のPLならいざ知らず、ユエの名前なら納得する教都PL。
最大ギルドの『モヒカン』すらユエ独りに皆殺しにされた経験がある。彼らを屈服させる力は実証済み。
そしてユエの性格なら、狂犬達に責任をもつだろう。
そう思わせるものがあった。
「なに言ってるんですか!あいつらPKですよ!!」とアーネ。まだいた最前線。
と思うのは教都のような、攻略圏と接している、ユエの評判を知っているPLたちだけだったようだ。むしろアーネのほうが育成圏PLの総意に近いか。
まあ、デスゲームの真っ最中にPK目的、PK容認を標榜している(していた)集団に会えば怖いわな。
「それともPKしないとでもいうんですか!」
「いえ、別に」
おい。
アーネと聖。
かみ合ってるのかどうなのか。
「あの方々が誰を殺そうと殺すまいと、わたくしたちが決めることではありませんわ」
聖のマイペース・ドクトリンに頭を抱えるアーネ。
「あの方々の目的に協力するだけです。わたくしたちに必要な範囲で」
「ちょっとーーー!」
天徒の突っ込み。
「それ何の話よ!!」
「・・・・・・・・メッセージ届いてるわよね?」
聖はウィンドウを天徒に見せた。
《ご挨拶》が件名。
《拝啓。
時下ますますご健勝・・・というべき段階じゃありませんね。
お久しぶりです。
ギルド「GG」の魔法使い、Dことディアナです。
こうしてご連絡差し上げますのは10日ぶりでしょうか。
今回はご相談したいことがあり、連絡いたしました。
今回の異常事態に対し、南北西方の攻略組並びに育成圏有志による対処を開始いたします。
当面は「ログアウト不可以外の異常が生じていないか」の確認です。
端的にいえば現状把握ですね。
そのために私たちは一斉に、街中、フィールド、ダンジョン、クエストのリトライを実行します。
モンスターやトラップ、NPC、マップ設定が既存の記録と一致するか否か。
ランダム振幅範囲を逸脱していないかどうか。
複数人数のダブルチェックと、リアルタイムに情報集積。
ありとあらゆる変化を洗い出し、異常と言えるものであるか調べます。
プラン概要は添付しましたから、お暇なときに確認してみてください。
作戦参加者の構成から主に攻略圏が対象になります。
ただ調査範囲は広いほうがいいので育成圏有志には、育成圏で同種の作戦を行っていただくつもりです。
つきましてはご協力いただけないでしょうか。
私たちは作戦領域として教都周辺を考えています。
ギリギリ育成圏で特に東側はレベルが手頃なこと。
従来PC密集地域であったために周辺情報が出そろっていること。
攻略圏とのターミナルであり補給補充増援派遣が容易なこと。
それが理由です。
教都のPCのみなさんは今のところフィールドに出ない方針と聞いております。
狩場の独占やお邪魔にはなりませんよね。
もちろん、今から出るのであれば調整いたします。
そういった調整と、宿泊環境などの協力をお願いしたいのです。
私たち「GG」は「10万人突破イベント」で値下がりしたアイテムが値を戻すと予想して、かなりの備蓄があります。
リトライの結果がどうあれ、感謝を示すことはお約束します。
もちろん、情報交換も望んでおります。
どうか前向きにご検討ください。
敬具》
「いや、来てたけど!」
と天徒。
「有志って、コイ・・・アレ?」
聖ににらまれ言葉を直す。
『コイツら』を『アレ』に、というのは直すうちに入るのかどうか?
「わたくしもフィールド探索はしないといけないと思っていましたし、ちょうどいいから了解しました」
フィールド上のセーブポイントに置き去りにされているPCがいないかどうか?
これは聖がずっと懸念していたことだ。
「リトライついでにわたくしたちの捜索隊も同行させてもらえますし、見つけたら保護して引き渡していただけるそうですよ」
聖は首を傾げた。
「言いましたよね?」
確かに聞いていた。
別に、天徒だけではない。
教都に本拠を構えるギルド、パーティーのリーダー(生き残っている範囲でだが)有力ソロには切り口は違えど同じ内容のメッセージが届いている。
聖と同じ、あるいは別な理由で、皆了承していた。
だが。
しかし。
だがしかし。
「予想するわけないでしょう!!」
著名な札付きばかりが大挙してくるとだれが考えたであろうか。
「わかってたなら言いなさいよ!!!」
聖をシェイクする天徒。神仏分離の危機
「え・だ・っ・て・み・ん・な・も・き・い・て・る・か・と」
聖はDに直接メッセージで誰がどのくらい来るか、概算を聞いていた。みんなそうしてると思っていた。
「あたしは!あんたに人数を訊いたでしょう!!個別に直截に訊いてたら!あんたに訊くわけないでしょーが!!!」
ハードシェイク。
「ちょちょちょ!まちーな!!」
「落ち着きましょ!ね!」
「俺らもまかせっきりにしてたしさ!な?」
神仏衝突に介入するイスラム教、キリスト教、ゾロアスター教・・・系ギルドのマスターたち。
待機していた教都ギルドは戦闘隊形から警戒に移行。
建物の上から百鬼夜行改め『リトライ参加PC』たちを監視する体制に入っている。
「あーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!」
今度は何だ!
と皆が注目した。
アーネに。
「いない!」
ニートたちが。
解説席からも。
周辺からも。
「あ、ゲートをくぐられましたよ」
と取材の手を止めたフィフィが言った。
逃げられたーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!




