表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Ambassador rain  作者: 輝ぽてと
第3章 神夢
30/31

第10話



 僕達は驚いて、取り敢えずナウを落ち着かせてあげようとあたふたしてしまった。しかし流石大人といったところか、カリスが落ち着いた様子でカバンを下に置くとナウの背中を優しくさすった。


「どうした?どこか痛いのか?」


 しかしカリスの問いに静かに首を横に振ったナウの涙が止まることはなく、溜まる事が困難となった雫が頬を伝っていった。

 どうしたものかと皆で顔を見合わせていると、ウィンクが少し気まずそうな顔をしていた。


「ウィンク…分かったんだね」


 そんなウィンクを見て、ヤクが苦笑いをしてそう呟いた。

 そうか、ウィンクは人の心が分かる能力を持っているんだ。自分の意思に関係なく人の思っていることが分かってしまうということは、ナウが今何故泣いているのかが分かってしまったのだろう。

 ウィンクは意を決したようにナウを見ると、ぽつりと小さく呟いた。


「お兄さんですね」


 ナウははっと顔を上げると、ゆっくりとちいさく頷いた。


「みなさんを見ていて…やっぱりお兄ちゃんって良いなって…思って…」


 僕達は顔を見合わせた。

 一体何があったのだろうか。何歳なのかは知らないのだが、とても落ち着いていて、大人っぽい人だなぁと思っていた。そんなナウがこんなに泣いてしまうくらい、何か悲しい事があったのだろうか。


「何かあったのか?」


 聞いても良い事かどうか分からずに沈黙だけが続いていたが、真剣な面持ちでリスクが口を開いた。

 ナウが中々口を開かないのを見て「言えたらで良いんだけど」と優しく付け足す。

 僕達だけが乗っているわけではない汽車。他のお客さんもいて少しでも話し声が聞こえても良いはずだが、ナウを待つ僕達の耳には何もなく、ただ僕達だけしか乗っていないかのようなそんな感覚さえ覚えた。

 そのくらい、空気が重かった。

 何を言おうとしたのか…きっと、もう大丈夫だと言おうとしたのかもしれないが、リスクが口を動かそうとした所でナウが口を開いた。


「私のお兄ちゃん…少し前から病気で…もう少しの命なんだって…。今の医療技術じゃ手に負えないって…。頑張って、私に気付かれないようにって、元気なフリをしてるのが…もう見え見えで…それがなんだか、苦しくて…」


 それを聞いて僕は胸が苦しくなった。

 ナウにとってお兄さんはとても大切な人なのだろう。

 僕にもカリスがいる。でもまだ、完全に家族だと思う事が出来ずにいる。けれど、それでもこんなにも僕の事を思ってくれていて優しく接しているカリスがいなくなってしまうと思うと、とても悲しい。

 ならナウは。とても大切なお兄さんがもう少ししか生きられないと知って、悲しくないはずがない。本当は案内どころじゃないだろう。出来ることなら少しでもお兄さんと一緒にいたいはずだ。こんな僕に言われたくはないだろうが、泣き出してしまうのも分かる。

 カリスはただ何も言わずに背中に回していた手でナウの肩を引き寄せた。僕達も何も言えないままナウを見つめることしか出来なかった。

 沈黙の中、あぁもしかしたら何かお兄さんを助ける手がかりがあればと探していたのかもしれないと思った。だからカリスの能力が人を回復させる事だと聞いた時にあんな驚いたような顔でカリスを見ていたのかもしれない…と。


「何か…お兄さんを助ける方法が何かしらあれば…」


 思わず口に出してしまい、なんて僕は馬鹿なんだろうと後悔した。

 さっきナウが言っていたばかりじゃないか。今の医療技術では手に負えないんだって。それなのになんてことを言ってしまったのだろうか。

 ナウの心を更に傷つけることになってしまっているのではないだろうか。

 それでも、何かにすがっていたかったのかもしれない。勿論僕からしたら知らない人だし全く関係のない人かもしれない。けれどこうして悲しんでいる人を見ていて、何か少しでも希望があればと自然と思っている自分がいて…だからってそれで彼女を傷つけてしまったのでは最低なわけで…。

 僕は気まずくなって下を向いた。ここから逃げ出したかった。ナウの顔なんて見れなかった。


「1つだけ…聞いたことが…」


 ナウの小さな声が聞こえ、僕ははじかれたように顔を上げた。

 そして次の言葉に驚きを隠せなかった。


「昔、ルナンス家にお兄ちゃんと同じ病気を治した人がいたと…。それで調べていたらナイト学園にルナンス家の方がいると知り、案内役として志願したんです…」

「ルナンス家!?」


 カリスが驚いたように声を上げる。

 確か僕の名前はスリク・ルナンスだったはずだ…そしてそのお兄ちゃんであるカリスも同じく。

 ということは、ナウは僕達が目当てで案内役を買ってでたということなのか。

 なるほど確かに、ナイト学園を出発する前に一度ちゃんと自己紹介をしているわけで、そんな後にカリスの能力が人を回復させる能力だと聞けばあのような反応もするだろう。結局のところ病気を治せるような能力ではないと分かったわけだが…。

 僕はカリスを見た。勿論ほんと今の今まで自分の能力すらも知らなかったわけで、自分の名前だって曖昧だ。そんな僕には全然分からないため、ここはカリスに任せるしかない。しかしカリスも困った様子で腕組みをしていた。


「聞いたことないな…。あの父さんや母さんの事だから、オレ達兄弟に自慢してもおかしくないとは思うんだが…」

「父さんと母さん…?」


 僕はそう言って首を傾げた。僕以外の家族はカリスだけではなかったのか。あの学園で暮らしているようだったため、お父さんとお母さんがいるという事を全く知らなかった。

 ふと、何かを思いついたかのようにリスクがニヤリと笑った。


「スリクは記憶がないから知らないのも無理ないな…。だから、取り敢えずナウの話も聞くためにスリクの家に行かねぇか?あんのジジイが説明しねぇでナウにそれを任せたって事は、恐らく悪心を持つ者が本当に復活したかどうかの確認と冬の悪魔の事件の調査ってところだろうしな。悪心を持つ者の討伐っていう緊急の任務なら、あいつが直々に説明してるだろうよ。…違うか?」


 その通りだったのか、リスクの問いにナウがコクコクと頷く。さすが親子。

 それならばと、僕達はトランスパーピィまで行かずに途中のトゥーラというところで汽車を降りた。ナイト学園のある街…どうやらこの国のお城がある街でもあるらしいのだが、そことはまた違う雰囲気だった。栄えていないわけではないが、周りからも人が集まってくるようなナイト学園のある街とは違い、その地域の人達同士の繋がりといった賑わい方をしている。のんびりと時間が過ぎて行くような、とてもゆったりとした街だった。

 見慣れないものだらけでキョロキョロしていると、「迷子になるぞ」と笑われながらカリスに手を掴まれた。手を引かれて歩き出す。

 なんだか子供扱いをされているようで僕は頬を膨らませた。


「僕、子供じゃないもん。それにカリス1番前歩くのずるい!」

「なんか言ってること矛盾してないか」


 嘲笑しながらそんなことを言ったリスクをキッと睨むと、困ったように苦笑いをしたカリスが背中を向けて座り込んだ。


「ほら、おいで。これなら1番だろ?スリク場所覚えてないんだろうし」


 僕は嬉しくなって頷くと、カリスの肩に飛び乗った。


「そっちがいいのか」


 笑いながら立ち上がったカリスを見て、小さく首を傾げた。僕はてっきり肩車かと思っていたのだが、なるほどおんぶだったのか。


「どちらにしても子供っぽいですよ、スリク」


 ウィンクに心を読まれ、内容も内容だっただけに少し肩を落とす。

 続けてヤクには『精神年齢5歳の11歳』とか言われるし。肩車をしているカリスには『小さくて身軽だから出来る』だのなんだの、褒めているんだか心を抉ってきているんだか疑うようなことを言われるし。

 そうこうしているうちに、住宅街から少し離れたところに一軒の赤い屋根の家が見えてきた。


「あそこがオレ達の家だ」


 家の周りには沢山の色とりどりの花が植えられていて、少し離れたところには芝生の広場があった。広場の隅には練習などをしていたのか傷だらけの木の棒などが立っている。

 ドアの前で僕を肩から下ろすと、カリスは軽くノックをした。




読んでいただきありがとうございます!

前回の更新から時間が経ってしましました…!すみませんでした!!

約一ヶ月も…!


今回でやっと脱汽車ですね!

汽車の場面長かった…

これでやっと少しだけお話が進めた気がします。


次回更新の日程はまだ決まっていませんが、なるべく早く書き終わらせたいと思います!

よろしくお願いします!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ