第9話
「ところで、皆にも能力があるって言ってたよね。皆はどんな能力なの?」
僕はリスクに向けていた顔を皆へと向けた。
自分に能力があるのは分かった。ずっと感じていた痛みの意味も。テレパシー能力であるフォーラは使おうと試行錯誤していくうちに使えるようになってくるだろう。これもまた、体が覚えているだろうから。
まず、最年長だからだろうか、それとも僕がじっと見てしまっていたからだろうか、カリスが口を開いた。
「オレは楽器を演奏して人を回復させる事が出来る能力、パラルを使える」
そう言った瞬間、ナウがハッとカリスを見た。不思議に思いナウの方をチラリと見ると、僕の目線に気付いたのかカリスから目を逸らした。
一方カリスはナウに気付いた様子もなく、言葉を続ける。
「あぁでも、病気とかはいくら軽い風邪だったとしても治せないんだ。オレが出来るのは傷の修復とちょっとした白魔法系の癒しだけ。大きすぎる傷は出血多量で死んでしまう場合もあるし、その場合は死の危険から少しでも遠ざけることしか出来ないからオレの能力だけでは足りないしな」
カリスはそう言って苦笑いをした。ナウはというと、さっきとは打って変わって少し残念そうな寂しそうな面持ちで下を向いていた。何かあったのだろうか。
ナウの事が心配になったが、それよりも気になる事があったため自然と意識がそちらへと向いてしまう。先程から思っていたのだが、カリスの目がなんか変だ。任務前に僕の部屋でカリスを泣かせてしまった時に瞳の色は水色だった。それが少し慣れてきたためにカリスの目を見て話を聞く事が出来てきたのだが、今は何が起こったのか黄色へと変化している。もしかしたら触れられたくないかもしれないし、気にして欲しくないかもしれないし…かといって何か悪い病気とかなら心配だ。
聞くに聞けずじっとカリスの瞳を覗き込んでしまっていたのに気付かないわけもなく、カリスは苦笑いをしたまま頭をかいた。
「この目な、生まれつきこうなんだよ。感情に合わせて色が変わっちゃうんだ。だから本当の瞳の色っていうのがなくて…強いて言うなら無色透明か。まぁ、何も感じなくなった時にそんな色になるんだろうな」
それを聞いて僕は納得した。だから泣いていた時に水色だったのだ。リスク達が驚いていないことから、どうやら前から皆知っていたことらしい。強いて言うならウィンクとヤクが少し驚いたような納得したような表情であることから、2人はもしかしたら初めて聞いたのかもしれない。
それにしても何か病気とかじゃなくて良かった。どうやら心配することもなさそうだ。
「じゃあ次は僕の能力だな!」
そう言ってリスクは胸を張った。一体どんな能力なのだろう。
「僕の能力はハリエス・トライアングルだ!」
「ハリエス・トライアングル?」
「ほら、授業で僕がリスクさんにやられてしまった技ですよ。あのピラミッドみたいなやつです」
リスクの能力名に首を傾げていると、ウィンクが丁寧に説明してくれた。なるほど、あの凄い連続攻撃はリスクの能力だったのか。能力と聞くとウィンクの人の心を読む能力やカリスの人を回復させる能力など自分に何か付与されるような力のイメージがあるが、このように攻撃手段としての能力もあるようだ。能力にも色んな種類があるんだなぁ。
リスクのあの強い技を羨ましく思いつつ、ラルやミカリの能力も気になった。僕がラルの方を向くと、ラルは少し不安そうな顔をして口を開いた。
「私の能力は未来を見る能力よ」
「未来を見る!?」
驚いた僕はまたもや大きな声を上げてしまってすぐさま口を閉じた。
それにしても凄い。未来を見ることが出来るなんて素晴らしいことなんじゃないか。これからどんなことが起きるのか、どんな自分になるのか先回りして知れるなんて。
僕が好奇心のままにラルを見ていると、ラルは悲しそうに首を横に振った。
「そんな良いものじゃないわ。スリクは記憶がないからまだ実感を持てていないのでしょうけれど、私達は常に死と隣り合わせで生きているわ。だから…未来を見るのが怖いのよ」
僕は息を飲んだ。
そうだ、僕達は戦わなくちゃいけないんだ。僕がハールスで何も感じたくないのと似ている…のかもしれない。
未来は勿論変えられるだろうが、何をどのようにすれば変えられるかなんてそんなもの分かるわけもない。その選択が時に更に悪い方向へと向かうきっかけになってしまう時だってある。
僕はなんて考えをしてしまっていたのだろうかと俯いた。すると、僕の頭に手が置かれた。優しく、大事そうにサラサラと撫でられる。顔を少し上げると、その手はラルのものだった。
「ごめんなさい。あなたを困らせるつもりはなかったの。ただ、そんなにいいものではないわよって、言いたかったのよ。だからそんな顔しないで。あまり使わないけれど天気とかくらいなら見ることもあって、絶対当たるから便利なところもあるのよ」
ラルはそう言って優しく微笑んだ。僕はまだ少し申し訳ない気持ちがあり少し俯いたままだったが、「ほら、顔を上げなさい」というラルの言葉に顔を上げた。優しく開かれた瞳と目が合う。どうやらラルも大丈夫そうだと分かり、少し体が軽くなった。
「次は私の能力ですね」
柔らかい口調でそう言ったミカリ。その口調に反してどうやらとても強い攻撃魔法を主とするらしいのだが、そんなミカリの能力はどのようなものなのだろう。
「私の能力は視力が20あることです」
「20!?」
カリス達も知らなかったのか、驚いた様子で声を上げた。
一体視力が20とはどのくらいなのだろうか。そもそも僕の視力でどのくらいなのだろう。そこまで悪くはないと思うので1はあるだろうが、目が良い人で一般的な数値は1.5とか2とかそのくらいではなかっただろうか。
「20…って、あまりイメージが湧かないな」
カリスはそう言って腕を組んだ。それはそうだ、普通に良いと言われている視力の10倍近くあるのだ。
ミカリは少し考えているような仕草をしていたが、やがて左腕にしている通信機のタッチパネルを操作した。そして少しして画面を僕達に向けてきた。
視力検査などでよく見る、ドーナツが齧られてしまったようなアルファベットのCのような形。結構大きめだ。
「これを5m離れた場所から見て穴が開いている方向を見分けることが出来たら、視力は1ということになります。なので…単純計算ですが、100m離れた場所からこちらを見て判別することが出来るくらい…ですね。人の顔などの方が勿論分かりやすいのでもっと遠くからでも見分けがつきますが…」
僕達はそれを聞いて更に驚いていた。100mなんてとてもじゃないが遠い。勿論歩いたり走ったりする分にはそんなに遠くには感じないが、直線で100mの地点にある物を見るということを考えてみれば、とてもじゃないが遠すぎる。それを軽々と見分けることが出来るなんて。もう凄いとしか言いようがない。
しかし、それと同時にある疑問が湧き上がった。
そんなに遠くのものが見れてしまうのであれば、僕達の顔なんて近すぎて見えないのではないだろうか。
同じことを思っていたらしく、ヤクが僕と全く同じ意見のまま質問した。ミカリは目元に軽く触れた。
「大丈夫ですよ。勿論能力ですから、自分の好きなように視力を変えられます。通常は1.5や2くらいに視力を設定しています。能力であるためか、眼圧などによる頭痛などの影響も一切ありません」
なるほど、と思わず口から零れた。
能力は人それぞれあって、それのどれもが凄いものなんだと改めて感じる。それでいて、その能力を所持している人それぞれにそれぞれの悩みなどもあるのだろう。
僕は最後にナウに話を振ろうとした。その時だ。
「ナウ…さん…?」
ナウの目には沢山の大粒の涙が溜まっていた。
読んでいただきありがとうございます!
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汽車は進んでいると思われますが、ストーリーとしては本当にノロノロという感じですね(汗
今回出てきました視力検査のCのようなもの・・・ランドルト環視標というみたいなのですが、ミカリの出した大きさは7.5cm、線の太さ1.5cm、穴の幅1.5cmという物で実際にそのランドルト環視標を5m離れて見分けることが出来れば視力は1ということになるようです。
ミカリさんの能力が視力20というのはノートに書いている時から決っている物ですが、ちゃんとした見え方についてはよく考えていなかったので調べてみました(笑
もっと細かいみたいなんですけれどね!




