第7話
そんな時、ドアを激しく叩く音が聞こえ、僕はビックリして飛び上がった。
「何かの任務か?」
「軽い任務では、なさそうですね」
ノックのリズムが焦っているように聞こえる。
僕はすぐに駆け寄ると、激しいノックに小刻みに震えているドアを開けた。
「大変よ!」
そこには、走ってきたのか汗でビショビショになっているルーラ先生が肩で息をして立っていた。それは、ただ事ではない事を物語っていた。
「皆!任務室に集まって!早く!」
ルーラ先生はそれだけ言うと何処かへ走り去っていった。
「よし、行くか」
それぞれの準備があるようで、皆1度自室へと戻り、任務室が分からない僕のために一緒に行く事になった。
それにしても、複雑な創りになっていて1人では迷いそうだ。
そんな僕の気持ちが伝わったのか、リスクがこちらを見てニヤリと笑った。
「迷路みたいだろ。でも慣れればどうってことないぜ!」
「まぁ、オレも全てのフロアに慣れるまで1年かかったからな…」
1年と聞いて少し驚いたが、確かにこんなに入り組んでるフロアが沢山あればそれだけかかるのも分かる気がする。
それでも僕は、元々ここにいたんだよな…。そんな僕は、どれだけの期間で慣れたのだろうか。
そんなこんなで、10分程で任務室に到着した。まだラルやミカリ、ヤクはいないようだった。
「遅くなってすみません」
カリスがそう言うと、僕がここに来てすぐの時にもいた白髪混じりの茶髪の男の人が小さく溜め息をついた。
そういえば、僕はあの時の人達の中でこの人だけ知らない。一体この人は誰なのだろう…。
「アシス先生、すみません」
カリスがそう言って頭を下げる。
「アシス先生…?」
そんなカリスに首を傾げると、アシス先生は笑って「そういえば」と言った。
「お前は記憶を取られていたんだったな。俺はアシスだ。お前達剣使いに剣術を教えている。よろしくな」
「よろしくお願いします」
僕は慌てて頭を下げた。
「んで?何の用だ?任務…じゃないだろ?」
カリスとは正反対に軽い口調でアシス先生に話すリスク。怒られないのだろうか。
しかしアシス先生は特に気にする素振りもなく、真剣な顔になった。
「いや、任務だ。全滅したはずの悪心を持つ者がまた現れ始めたんだ」
「!?」
アシス先生の言葉に、カリスとリスクは言葉も出ないとでもいうようなほど驚いている様子だった。ウィンクも、少し驚いているようだ。
僕は最初何を言っているのか分からなかったが、カリスが言っていた事を思い出し、最悪な事態だという事を自覚した。
悪心を持つ者というのは、無差別に人を殺す殺人鬼だったはずだ。そして、その人達は僕が天と地に命を収めた事でいなくなった…とカリスは言っていた。
しかし、それが現れ始めたというのは…。
「恐らくここにスリクがいることから、天と地に命を収めたのは一時的なものだったのだろう。だからまた現れ始めたんだ」
僕は胸が苦しくなった。僕のせいで、僕が今ここにいるせいでこの世界が大変な事になろうとしているのだ。
息が荒くなる。自然と俯いてしまった。
そんな中、急に笑い声が聞こえた。
「おいおい、僕達ナイト学園はそのためにいるんだろ?大体、最初からスリクの力を使おうとなんかしてなかったじゃん?僕達が倒せば問題ないってわけだ」
僕はハッと顔を上げた。リスクがニカッと笑顔になり、Vサインをしてきた。
息が整い始める。僕はリスクに向かって小さく頷いた。
「ってことで、僕達に倒してこいってことだろ?」
アシス先生も頷く。
「言っておくが、絶対に油断するな」
「分かってるって」
またもや軽く返事をしたリスクをアシス先生が指差した。
「特にお前だ!」
「は?」
「お前はいつも油断しすぎだ!だからあんな目に遭うんだ!」
リスクは口を尖らせた。
一体リスクに何があったのかは知らないが、どうやら大変な事があったというのは雰囲気で分かる。
「わけわかんねー」
「何だその口の利き方は!」
「っせぇよ」
「うっせぇよとは何だ!」
流石にやばいだろう。先生に対してそんな口の利き方…。
2人共怖い。
「まぁまぁ…」
そんな怖い2人の間に入るなんて…ウィンクかなり勇気あるなぁ…。
そういえば、ふと思ってしまった。聞いてもいいのか分からないが、こんな事を1度思ってしまえば聞かざるを得ない。もちろん僕の好奇心が。
「もしかして…親子?」
「はぁ!?」
2人に怒鳴られ、僕は飛び上がって後ずさった。やっぱりこの2人怖い。
リスクは小さく溜め息をついた。
「んなわけあるよ」
「あるんかよ」
僕は思わずそんな事を言ってしまい、また怒られるのではないかと恐る恐るカリスの後ろに隠れた。
しかし、カリスも初耳なのか驚いているようだった。
「あぁ、このバカ息子。カリス達には迷惑かけてるよな」
「はぁ!?」
自分から言い出した物だから自分で言うのもなんだが、あまり似ていない。ただ僕はこんなリスクの口の利き方が反抗期の息子とそのお父さん…のように見えただけだった。
まさか親子だったなんて。
「バカ息子ってなんだよ!ふざけんな!」
「だから何だその口の利き方は!」
ふとウィンクを見る。
握り締められた手が、プルプルと震えていた。
「いい加減に…して下さい…」
リスクとアシス先生がその言葉に気が付き、ウィンクを見る。
僕には、一瞬ウィンクの目が光ったかのように見えた。
「いい加減にして下さい!早く本題に入ってください!」
ウィンクの物凄い迫力にその場が凍りついた。ウィンクは怒らせると怖いタイプの人だ。絶対そうだ。
アシス先生は咳払いをし、真面目な顔になった。
「そ、そうだな。えーっと、案内役としてこの子に連れて行ってもらうことになった」
アシス先生の言葉の後、ゆっくりと扉が開いた。
「こ、こんにちは…」
そこには、ミカリのように凄く大人しそうな少女が1人立っていた。
「私はナウ・フォルツといいます。皆さんのお手伝い役としてここに来ました。よろしくお願いします」
ナウと名乗った少女はそう言って礼儀正しく深くお辞儀した。
僕達もそれぞれ自己紹介をする。僕は名前の時点で戸惑ってしまったが、カリスに助けられてどうにかその場を乗り切ることが出来た。
因みに、ここに今いない3人についてはカリスが紹介した。
「よし。自己紹介も終わったところで、任務に向かってもらいたい」
カリス達が頷く。僕もそれを見て遅れながらも頷いた。
「目的地はどこですか?」
「トランスパーピィだ」
「!?」
カリスとウィンクが顔を見合わせる。何かあったのだろうか?
僕とリスクで首を傾げながら見ていると、2人してぼそりと呟いた。
「そこって…」
「僕達の街…」
ウィンクの言う僕達の街というのは誰の事を言うのだろうか。カリスも驚いていることから、カリスもその街に住んでいたのだろうか。そしたら、僕も住んでいたことになるのか。はたしてどうなのかは分からないが。
「詳しい事はナウに聞いてくれ」
「よろしくお願いします!」
僕達はそう言って頭を下げた。ナウも恥ずかしそうに頭を下げる。
まだまだ自分が何者かも分からない今、緊張で胸がドキドキする。
これから何が起こるのか、そして何をするべきなのか。
答えが出た時に、僕はちゃんと記憶を取り戻せているのだろうか。
読んで下さりありがとうございました!
かなり遅くなってしまいすみませんでした…
この間にも、沢山の方が見に来て下さっていたようで…
本当にすみませんでした…
章は変わりませんが、とりあえずここから新しい冒険が…という感じです!
その代り物凄く話がごちゃごちゃになってきます←
お付き合い頂けると嬉しいです!!




