第3話
「ここがお前の部屋だ」
カリスに案内されて入った部屋には、小さめのテーブルとベッド、3段の棚、ノートパソコン、そしてうさぎのぬいぐるみがあった。
「このウサちゃん可愛い!」
「だろ!?」
カリスが自信満々にそう言う。
僕は不思議に思い、首を傾げた。
「あぁ…これな。カリスの手作りなんだ」
そんな僕を見てかリスクがニヤニヤ笑いながらウサちゃんを僕に抱かせてくれた。
「じゃあ、カリスさんは裁縫が上手なんですね!」
「まあな!」
「裁縫と音楽だけはな」
リスクにそう言われ、カリスは親指を立てて僕に向けていた右手でそのままリスクの背中を殴った。なんだか面白くて笑ってしまった。
それにしても、1人にしては広い部屋だ。ベッドも大きいし、パソコンだってある。
しかし何より驚いたのは、一面コルクボードの壁いっぱいに貼られた写真だった。
部屋の壁が一面コルクボードという時点で驚きだが、そこに溢れんばかりに貼られている写真の多さに目を疑う。
どうやら誕生日なのであろう写真から、どうってことない日常写真まで。その中でも、この建物をバックにした集合写真が山のようにあった。
「それはお前が2才の時から、お前の希望で始めたものだ。その集合写真は、任務に行く度に撮っているものなんだ」
「任務…?」
「オレ達の任務は、悪心を持つ者と戦う事だ」
僕は驚いてもう1度写真を見た。
集合写真が多すぎる。遠足にでも行くのではないかと思うほど楽しそうに撮っているが、これが戦いの前の写真だと思うと次の集合写真を見るのは躊躇われた。
僕にとっては全く知らない人だ。しかし1人でもいないと、心が苦しくなってきっと押しつぶされてしまう。
「1年に1度、大規模の大掃除をした時に1番古い1年分の写真をフォトブックに入れてそこの棚に保管してるんだ」
この棚はそのための棚だったんだ…。
「まぁでもお前のおかげで世界が平和になったからな!集合写真も撮らなくなるだろ!」
僕がどれほど酷い顔をしていたのか、リスクが後ろからポンポンと背中を軽く叩いてくれた。
僕は笑ってそれに応えた。リスクも笑い返す。
腕に抱いたウサちゃんをじっくりと見て、もう1度抱き直した。
「君の名前はウサちゃんって名前ね!」
ウサちゃんに話しかけるようにそう言うと、カリスとリスクが急に声を上げて笑い出した。
「何?」
口を尖らせてじっと見た。
「いやぁ…お前、記憶がなくなったのにそのぬいぐるみの名前が同じだったからつい…」
カリスとリスクの笑いのツボがよく分からない。
「それで、お話って?」
皆頷き、僕を座らせると自分達も座った。
最初に口を開いたのはカリスだった。
「えっと…オレの名前はカリス・センナス。お前の名前はスリク・ルナンス。オレ達兄弟なんだよ。お前は12月18日生まれでB型の11歳だ。オレは12月20日生まれでO型の21歳だ」
僕は頷こうとして、動きを止めた。
「え…でも、名字違うよ?」
不思議に思っているのは僕だけではないようで、ヤクとウィンクが体を乗り出してきた。
「それそれ!僕もそれ思ってたわ!」
「僕もです」
そして不思議そうにしているしていない関係なく、かなり驚いている様子でリスクやラル、ミカリは目を見開いて驚いていた。
「おいおい、僕そんな事聞いてねぇぞ?大体、スリクだっていつそれ知った…って、記憶喪失なんだから分かるわけねぇよな」
「私だって聞いてないわよ」
「私もです」
ということは、ウィンクとヤクは前に聞いていたってことか…。僕はただ単純に説明を受けているような感じだから驚きも何もない。
「まぁ、それは後でな。オレがこの学園に来た頃は、まぁ…色々あった後だったんだ。それで、いきなり記憶にないような奴が兄だと言ってきたらスリクが混乱してしまうだろうということで、お前の兄だって事を知られないように名字を変えたんだ」
僕は色々大変な時期があったのかと驚いた。もちろん、自分の記憶を探っても何も出てこない。だから言葉としては分かるが、本質としての理解は出来ない。
しかし、周りの人達はどうやら納得しているようだ。
「あーまぁ、分かった。でもなんだ。何か新鮮だな!ってことで僕はリスク・ライン。AB型の4月6日生まれ。昨日17歳になったばかりなんだ!よろしく!」
二カッと笑い握手を求めてくるリスクを、なんだか太陽みたいな人だと思った。
僕は微笑んでその手を握った。
次に、ウィンクが口を開いた。
「僕はウィンク・スノーレイです。8月28日生まれの16歳でA型です。宜しくお願いします」
「じゃあ、ウィンって呼ばせて!」
僕がすかさずそう言うと、またまたカリスが笑い始めた。一体何なのだろうか。
その間に、ヤクが話し始めた。
「僕は、ヤク・ディレン。6月2日生まれのウィンクと同じ16歳でA型。まぁ、こんなにかっこいい僕の事をもう忘れる事はないだろうね」
「え、ナルシス…」
「なになに?スリクも僕の事かっこい」
「うざい」
僕にじわじわと寄ってきていたヤクの頭を抑え、カリスが言葉を遮った。
ヤクはナルシストなのか…。よく分かった。
遮られてしまったヤクとカリスでわんやわんやと騒いでいる間に、名前は知らないがさっきの部屋にいた薄ピンクの短髪の少女が軽く溜め息をついて口を開いた。
「私はラル・ア・ミステナよ。このミステナ国のお姫様なの。6月3日生まれの15歳でA型よ」
「お姫様なんですか!」
僕は驚いて無意識に大きな声を出してしまっていた。恥ずかしくなり、少し縮こまる。
そんな僕の頭をカリスが優しく撫でてくれた。僕がハッと顔を上げると、ニコリと微笑んでくれる。
僕はラルの隣の少女を見た。薄黄緑の短髪の少女だ。細い薄ピンクのフレームの眼鏡をかけている。
「私の名前はミカリ・フリスです。7月26日生まれで13歳です。B型です。宜しくお願いします」
「よろしく、ミカリさん」
ミカリはニコリと優しく笑って軽く会釈をした。
僕は改めて皆を見て言い直した。
「お兄ちゃんのカリスにリスクさん。ウィンにヤクさん。ラルさんとミカリさんですね」
皆が微笑んで力強く頷いた。
読んで下さりありがとうございました!
更新遅くなってしまいすみませんでした…
今回は自己紹介のようなもので終わってしまいました…すみません。
カリスの言っていた「色々あった」というのは今後出てきます!
その時に、「あ、あんなこと言っていたな」と思ってもらえるよう頑張ります!




